荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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エンドロール
誰もが望んだエンドロール


 

1人のバーチャル・シンガーが丸いステージの真ん中で、幾多の想いの光を受けながら立っている。

ここはどのセカイにも属さない場所。

バーチャル・シンガー達も本来の姿で彩られる『セカイの狭間』であった。

 

「みんな、今日も来てくれてありがとう!」

 

長いツインテールを揺らしながらミクがアピールする。

 

「今日は特別だから、みんなに楽しんでもらおうと思ったの。

 だって、新しい子達が本当の想いを見つけられたから」

 

このセカイではないどこかで、6つ目のセカイが形を成し少女達が前に進んだ。

それはここにいるミクにとっても、特別なことらしい。

 

「だから、今日はみんなに会いたいって思った子達と一緒に、ウタをうたってもらおうと思うんだ!」

 

このセカイは観客として存在する『誰か』の想いが強く影響するらしい。

現に桜の季節にこういった催しがあったのだが、

その際の出演者は夢か何かとして消化されている事だろう。

 

「それじゃあ、みんなは誰に会いたいかな?」

 

ミクの問いかけに多くの想いが揺れる。その中で最も大きかったもの。

想いを汲み取ったミクは、来客の予兆を感じていつかのように舞台袖へと下がった。

 

「あれ……ここ……」

「……いつものセカイじゃない」

「ちょっ、どこよここ! なにこのステージ!」

「絵名ってば落ち着きなよー」

 

現れたのは『25時、ナイトコードで。』のメンバー。

見慣れぬ場所に戸惑う中、唯一奏だけが落ち着いて周囲を観察していた。

 

「……うん、間違いない。ここ、何度か来たことがある」

「え? 来たことあるって、どういうこと?」

「奏、落ち着いてるね」

「まあ、そっちの方がいつもの奏らしいっていうか……でも、そっか。奏が来たことあるなら安心かな」

 

メンバーの中で絶大な信頼を得ている奏が落ち着いているためか、

それぞれも落ち着きを取り戻していく。

 

「安心、かは解らないけど、危ない場所じゃないよ。ただ」

「みんな、いらっしゃい!」

「「「「ミク」!」」」

 

ミクが奏の声を遮るように声をかけてくる。

その容姿にまたも驚きを覚える面々だが、いちいち驚いていては始まらない。

ミクから一通りの説明を受けて、観客であろう想いの光と向き合う4人。

 

「そっか、私達の歌を待ってくれてたんだ」

「あはは、それならいつもとあんまり変わらないね」

「そうだね」

「じゃあ、何歌う?」

「なら……私達の想いから生まれたウタがいいと思う」

「ふふ、そうだね! なら、一緒に歌おう!」

 

ステージに鳴り響くのは揺れる紫の音色。苦しみに満ちた想いが形作ったもの。

今の心境に差異はあったとしても、これが彼女達の想いから生まれたもの。

 

高らかに歌い終えて歓声が鳴り響く。

そんな歌声と歓声に引かれ、もうひとつのユニットが姿を表した。

 

「ウタが聞こえてきたと思ったんだけど……」

「わわ! すごーい! ステージだ!」

「それに想いの光もいっぱいあるねー。賑やかし甲斐がありそうだ」

「ふむ、しかし来客は我々だけではなさそうだぞ」

 

ステージの奥から姿を表したのは『空蝉Stranger』の4人。

当然、先程まで歌っていたニーゴの面々と鉢合わせになる。

 

「あれー!? 言葉じゃん!」

「鶴音さん……どうしてここに?」

「宵崎さん、暁山さん、ご無沙汰してます」

「あ! 絵名さんだー!」

「ふ、文ちゃん!?」

「おいっすまふゆー。暫くぶりだね」

「そうだね。でも意外だなぁ、こんなところでまた会うなんて」

 

お互いの友人達に挨拶を交わすも、千紗都は1人ミクを見つめていた。

 

「ふむ、こちらのミクとはいささか容姿が違うな。となると別の……」

「ふふ、そこはいわないお約束だよ。さあ皆、今度は何を歌おっか?」

 

これだけの人数が揃うのははじめてのこと。

ああでもない、こうでもないと熟考を重ねた結果ある楽曲が浮上する。

 

「ねえ、8人だしあの曲やってみたいな」

 

文の一声で提案された楽曲。

これ以上観客の前で悩んでいても仕方ない、とそれぞれが配役につく。

 

響く旋律は、幾多の夜を繰り返し真実へとたどり着くための楽曲。その最終章であった。

夜、時、救済。報われるかどうかはいざ知らず、真実はやがて訪れるもの。

 

曲の終わりと共に、一帯が闇に包まれる。

キャストも、舞台も、すべて無くなった場所で、観客達は1人、また1人と席を立つ。

 

やがて誰もいなくなり、物語は幕を閉じる。

見るものが誰もいなくなるという、実的な終わり。

 

次の幕が上がることはなかった。




EveR ∞ LastinG ∞ NighT / ひとしずくP・やま△

キャスト(イメージ)

村娘  :宵崎 奏
少女人形:東雲 絵名
少年人形:暁山 瑞希
お嬢様 :朝比奈 まふゆ
主人  :鶴音 言葉
奥方  :鶴音 文
メイド :斑鳩 理那
執事  :雲雀 千紗都
謎の声 :???


というわけで、『荒野の少女と1つのセカイ』。いかがだったでしょうか。
まず、1話自体はそんなに長くないものの、莫大な話数となり、
総量もたいへんな量になってしまったことをお詫びします。
毎日更新で半年、それから約1週間スパンの休止と更新を繰り返し、
ようやく最終話を書き上げ投稿することができました。
これも読んでいただいた方々のお陰だと、ひとえに思っています。
本当にありがとうございました。

このエンドロールは、投票によって結末が変わるマルチエンディング的な何か、
だと思っていただければと思います。

それでは、また機会があればお会いしましょう。
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