荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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A.お化け屋敷です。


KAMIKOU FESTIVAL編
第1話「出し物は何にする?」


秋も深まってきたころ、神山高校の生徒達は次第に浮足立っていく。

それもそのはず。ここでは生徒主催の一大イベントが開催されようとしていたからだ。

ここ1年C組の教室も例外ではなく、LHRではある役員決めが行われている。

 

「ではこれより文化祭実行委員の選出を」

「私やるよー」

「えっと、まだ内容とか説明してないけど……いいの?」

「大丈夫大丈夫、委員長も手伝ってくれるんでしょ?」

 

教壇に立って実行委員をクラスの人に伝えると、いつもの彼女がすぐに手を挙げた。

実際は誰も渋ってなりたがらないと思っていた為意外だった。

 

「解りました。ではよろしくお願いいたします」

 

クラスからは厄介ごとがなくなったからか善意によるものか分からないけれど、

自然と拍手が起こった。それに対し頭の後ろに手をやりながら笑顔でお辞儀をする彼女。

まるで囃し立てられて調子に乗っているようではあるが、あの子らしいともいえる。

 

「では早速出し物を決めるので黒板の前までお願いします」

「はーい。──じゃあみんな、何がやりたい?」

 

皆の前に移動した彼女の開口一番がそれだった。

それでも、誰も手を上げることはなく各々で話し合ったりしている。

 

「あれー、意外と皆大人しいね。なんでだろ」

「実行委員さーん、具体的に何が出来るんですかー?」

 

高校生ともなれば今まで大人が作り上げたようなものなくそして義務教育ではない為、

派手になることが多い。

だがどこまでやっていい範囲なのか解らないのも、一年生ならではの疑問点でもあった。

 

「あー、確かにそうだね。委員長、どこら辺までオッケー?」

「テントを使ったりして露店も出来るからある程度のことなら。

 ただ露店だと場所とテント借りるのに申請が必要で、

 どちらも抽選になるから狙った場所は取れないかも」

 

実際はその内容に関して集まりが後日行われるのだが、

事前に学級委員のみ招集が掛かっており、

簡単ながら実行委員の選出と内容については触れられていた。

 

「なら教室の方がいいかもだね。露店やりたい人っている?」

 

そんな声に対して、「最近寒いから外はあんまり」や「一般参加ありで接客はなー」と、

難色を示す反応が多かった。

こういった具体的な案を出せば、はい か いいえ で答えやすい為案も絞りやすい。

 

「じゃあ屋内だけど、何ができるかなー。挙手お願いしまーす」

 

屋内という方針がはっきりしたからか、

まばらながらも挙手をして何をやりたいか言ってくれる人達が出てきた。

その案をとりあえず黒板にまとめていき、数が5になった頃に終わりの合図を出す。

これ以上出ても票が分散する可能性があったからだ。

 

「はーい皆ありがとー。案は喫茶店、縁日、お化け屋敷、演劇、映画だね」

「じゃあ、順に皆何したいか挙手してもらって……」

「あー、ちょっといいか?」

 

そこで一人の青年が申し訳なさそうに手を挙げた。東雲君である。

自分の趣味──いや、夢を追うために努力している彼のことだ。

恐らく断る理由を述べるのだろう。

クラス全体も仕方ないか、みたいな雰囲気になっていたところで、意外な事を口にする。

 

「アイディアを潰すこと言って悪いけどよ、演劇は2年の先輩が絶対やるだろ」

「「「……あー」」」

 

クラス全体の想いが別の意味で合致する。

2年の先輩とは神山高校きっての変人と名高い天馬司先輩のことだ。

フェニックスワンダーランドでショーのキャストを務めている上に、

街中で大声を出しながら演技する様子は神山高校どころか、巷で噂になるほどであった。

 

それほどの人間がこれを機に演劇をやらないわけがない、ということだろう。

 

「なら映画も実質被っちゃうね。配役決めて演技するから」

「アイディア出した私が言うのもなんだけど、確かに天馬先輩相手じゃ勝てないね。

 委員長、消しちゃってー」

「あ、あはは……解った」

「あ、後喫茶店だけどよ。それも被るかもな。あの風紀委員様が考えてそうだ」

 

ちょっと悪い笑みを浮かべながらさらに指摘する。

こちらは全員が、というわけではなかったがある程度の納得を得た。

 

風紀委員様とは1年A組にいる白石さんのこと。

親がビビッドストリートでお店を経営しているのもあって、

手伝いをしているのはそこそこの範囲で知られている。

まだ行ったこともないし場所も知らないけれど、私もいつか訪れることがあるかもしれない。

 

どんなお店をしているかは分からないものの、

ビビッドストリート常連の彼が言うのなら恐らく間違いはない。

 

「確かにアレで接客とか慣れてそうだもんなー」

「この前天馬先輩と神代先輩にも堂々と注意してたからね。あの時の杏ちゃん凄かったよー!」

「委員長ー、そのアイディアもなしでー」

 

先ほど天馬先輩の話が出ていたからか、風紀委員の子が言った事で意見が取り下げられる。

 

「んー、じゃあ縁日かお化け屋敷だね。では縁日がやりたい人―!」

 

上がった手はまばらである。縁日も結局接客、というのがあるのかもしれない。

 

「じゃあ、お化け屋敷がやりたい人ー!! ということでお化け屋敷に決定!」

 

上げてなかった人達が全員上げるが、それを確認するわけでもなく決定と言ってしまう友人。

 

「でもさ実行委員さん、お化け屋敷ってどうやるんだ?」

「お化けのメイクとか仮装って1からそろえると高そうだな」

「あー、確かに。どうしよう委員長」

 

案は決定したものの、それによる問題点も出てくる。

お化け屋敷なら当然、どうやって相手を怖がらせるかという話で。

 

これには友人も困ってしまいアイディアを求めてくる。

一方の私はお化けを担当する人、買い物をしてくる人などの配分を決める為に、

それっぽいことを黒板に書き出していた。

 

「えっ、私?」

「こういう時委員長の奇抜なアイディアがあれば凄く助かるんだけどなー」

「うーん、そんなこと言われてもハロウィンセールに便乗して揃えるとか、

 脱出ゲーム風にして迷う構造にするくらいしか言えないよ?」

「いや、それで充分だろ……」

 

こうしてクラスの出し物はお化け屋敷に決定し、皆で準備に取り掛かるのだった。

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