荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第4話「噂の先輩」

長い列の終わり、私達で最後のお客さんとなっていた。

友人のお願いは無事通り、少女が綿あめを作ってくれている。

 

「お、お待たせしました」

「おおお~!!」

「凄い……」

 

差し出された綿あめは見本にと写真に写っている物と何も変わらなかった。

時間こそどうしてもかかってしまう物の、随分と手先が器用なのだろう。

2個目もまた見本そっくりに出来上がっていき、手渡してくれた。

 

「いきなりお願いしてごめんなさい。ありがとうございます」

「こちらこそ、その、ありがとう」

 

これなら文も喜んでくれるだろうと少しばかり胸を高まらせる。

自分の分はないけれどそれはそれ。

 

「よーし、後は後夜祭だね。委員長出るんでしょ?」

「ううん、私は申し込んでないから観客かな」

 

周りの生徒達は露店を畳み始め、校庭の方へと集まり始めていた。

一般のお客さんは既にどこにも見当たらない辺り、随分と長く列に並んでいたらしい。

後夜祭と言っても校庭にある簡易的なステージで生徒がライブを披露するものだった。

 

「ふっふっふ、そういうと思って実は私が申請書を通しておいた!」

「……嘘だよね?」

「嘘だと思うならこれを見てみてー」

 

彼女が懐から取り出したのは後夜祭のライブ出場者の一覧表。

実行委員であるから持っていて当然なのだが、確かにその一番下に私の名前が記されていた。

 

「もしかして、勝手に私の名前書いたでしょ。それ職権乱用っていうんだよ」

「ごめんって。でもお昼休みとか放課後とか弾いてるんだし、そのこと皆も知ってるよ?」

「知ってるって言ってもクラスの子だけでしょ」

「まあねー。でも学校中の噂くらいにはなってるから変わらないって」

 

この学校にはもっと噂になっている人物がいるのに、

ただ練習するだけでそんなに有名になるわけがない。

 

その筆頭たるのが2年生の天馬先輩と神代先輩。そして1年生の暁山さん。

それぞれが違った問題児として知られているけど、まだ人柄を知らないのでどうともいえない。

唯一知っている神代先輩は噂程悪い人ではなかったのも大きかった。

 

「もしかして、お昼休みに弾いてるのって貴女……?」

「そうそう、この委員長がねー。ほら、自己紹介したら?」

「自己紹介って、まだそんな「おーい! 寧々!」」

 

先ほどまで綿あめを作ってくれていた少女も知っていたからか、先導するように促す彼女。

若干言いよどんだ時、更に大きな声によってかき消された。

見れば金髪の青年がぞろぞろと人を連れてこちらに向かってきている。

 

「げっ、司」

「露骨に嫌そうな顔をするな。それより類がどこに行ったか知らないか?」

「類? 2年の教室には居なかったの?」

「ああ、なんでも途中から居なくなっていたらしい。

 しかし頼みの綱である寧々もダメとなると、本格的に探すしかなさそうだな」

 

真剣に悩む天馬先輩だったが、それよりも私は彼が連れていた人物に目が行く。

 

「東雲君に青柳君も一緒だったんだ。少し意外」

「ああ委員長か。別に、ただ人探ししてるだけだ」

「確か鶴音だったか。久しぶりだな」

「図書室ではいつもお世話になってます」

「あのー、私もいるんですけどー」

「お前は関わると厄介だからあえて話しかけてないんだよ」

「彰人君ひどくなーい!?」

「それより、人探しって?」

 

抗議しつつ笑顔でじゃれているところを見ると、さほど気にしているわけではないらしい。

軽く事情を聴くには、今日知り合った知り合いと天馬先輩を探し回っていた。

無事見つけることができたものの、当の知り合いとははぐれてしまっている上に、

連絡先は交換していないから連絡出来ないとのこと。

 

「因みにその知り合いって誰かな」

「暁山という。鶴音は見てないか?」

「暁山さん……私達は見てない、よね?」

「うん。結構有名だし見てたら私絶対覚えてるもん」

 

暁山さんの知名度は神高の誇る二人の先輩には劣るものの、

その容姿・優秀さ・出席日数の少なさという3つの要素からそれなりに知られた存在であった。

私も見たことはないが特段気にしたことはない。

 

「もしよかったら私も探そうか?」

「いや、流石にこれ以上大所帯になったら「おお! お前達も探してくれるのか!」」

 

ここまで事情を知ってしまって「はいそうですか」というわけにはいかず、

いつものお節介が顔を出したところで天馬先輩が割り込んできた。

先ほどまで寧々と呼んでいた少女と話していたから油断しており、勢いに負けて首を縦に振る。

 

「三人寄れば文殊の知恵というからな。六人も寄ればもっといい知恵が出ることだろう!」

「それをいうなら、船頭多くして船山に上る、の方じゃない?」

 

そんな少女のツッコミもいざ知らず、

私達は暁山さんと神代先輩を探す為校舎をめぐることとなった。

 

「はあ、こんなみっともないところ絵名に見せられねえな……ホント今日来てなくてよかった」

「しかし、お姉さんが来ていれば暁山の連絡先もわかったんじゃないか?」

「解ってたところで、絶対ここまでして探さねーし、頼まねーよ」

「暁山さんと東雲君のお姉さんって知り合いなの?」

「さあ? 詳しいことは知らねえけど、それなりに深い仲って言ってたからな」

 

案外世界という物は狭いのかもしれない。改めてそう思う私であった。

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