「おーい類ー! いたら返事してくれー!」
人もまばらになった校舎の中で天馬先輩の声が木霊する。
普段なら聞きなれた声なのだけど、彼の集団に加わっている分周りのことを気にしてしまう。
既に2名ほど頭を痛めている様子だった。
「はあ……類を探すのはともかく、なんでアンタと探さなきゃいけないわけ」
「何を言う、冬弥の知り合いのようにまたはぐれたらどうする!」
「むしろアンタの方がはぐれそうなんだけど」
サラッと少女が毒を吐くもそれには慣れている様子。
いや、それよりもこの二人が知り合いという事が驚きだ。
そして先ほど神代先輩に連絡を飛ばしていたところを見るに、3人は何らかの関係があると見る。
「天馬先輩とあなたって知り合いだったんだねー。意外」
「寧々は俺と一緒にワンダーステージでショーをしているからな。知っていて当然だ!」
「あーはいはい。その話は今関係ないでしょ」
「あはは、そうだね。この話はまた今度かな」
ワンダーステージとなると、当然フェニックスワンダーランドのことであり、
あの時よく見ることができなかったショーのことを思い出す。
クラスメイトが私の疑問をぶつけてくれるが、
お互いの同意を得られなかったらしく大人しく引き下がる。
実際彼女であっても天馬先輩のハイテンションについていくのは難しいらしい。
彼女が引いたのなら掘り下げる必要もないだろう。
「ところで司先輩、もうほとんどの教室は見て回ったと思うんですが」
「そうだな。ここまで探していないとなるともう既に……いやいや、アイツのことだ。
きっと隠れて後夜祭の準備をしているに違いない」
青柳君が相談しているが彼は諦めない。そこまで彼のことが気がかりなのか、それとも。
「暁山さんももしかして帰っちゃったとか、は無いよね」
「それはどうともいえないな。元々不登校なんだろ? 場合によってはあり得るな」
「んー、誰か連絡先知ってる人がいてくれたらいいんだけどねー」
「あれ、彰人に冬弥じゃん、何してるの?」
いよいよお手上げかと思い始めた頃、噂をすれば影と言わんばかりに白石さんが現れる。
確か彼女は暁山さんと日常的な付き合いの仲だったはず。
「あ、白石さん。暁山さんの連絡先って知ってたりしませんか」
「瑞希の? 知ってますけど……どうして?」
「あー、オレから説明する。実はだな」
彼が最初からタメ口であることからお互いを知っているらしく、説明を代わってもらう。
すると納得したように二つ返事で連絡を取ってくれた。
「……あー、ダメみたい。手が離せないかミュートにしてるかのどっちかだね」
「ダメかー。なら暁山さんの行きそうなところ解ったりしない?」
「それなら屋上かな。この前私が屋上で歌ってた時にも顔見せてたし」
「そういえばオレが学校で類を見つけたのも屋上だったな。よし! 全員で屋上に向かうぞ!」
「あ! 廊下を走るのはダメですよ天馬先輩!」
先陣を切り駆けだそうとした彼に静止の声をかける白石さん。
流石にお祭りムードとはいえ風紀委員である彼女の方がしっかりしていた。
・
・
屋上にて暁山さんと神代先輩を見つけることができ、各自が思い思いの言葉を述べている。
こうしていると私達の方が関係ないながらも巻き込まれた感じがしなくもない。
「おや、誰かと思えば言葉くんじゃないか」
天馬先輩の先導を受け屋上から一人また一人と後夜祭へ向かっていく。
そんな中で神代先輩が私の名前を呼んだ。
何かの間違いかと思ったが彼は足を止めてしかと私を見ていた。
隣には知り合いであろう綿あめの少女もいる。
「ご無沙汰しています、神代先輩。一人ぼっちの錬金術師は卒業しましたか?」
「おっと。……そうだね。僕はただの錬金術師さ。ただし笑顔の錬金術師、だけどね」
その表情はあのストレートパフォーマンスをしていた時よりもずっと明るい。
誰かを真似て悪戯な言葉で仕掛けてみるものの、それはもっと素敵な答えで返された。
「さて君の方はどうだい? 独奏の奇術師さん」
「どうでしょう。変われたかもしれないし、変われなかったかもしれません」
本来の私に戻った、というならば変わらなかったともいえる。
そういう意味を含めてさらりと受け流した。
「類、あの人と知り合いだったんだ」
「知り合ったと言っても最近さ。大事なお客さんだよ」
「ふうん……」
一方で綿あめの少女はこちらの方をちらちらと見ている。
流石にここまで来てお互いの名前を知らないというのもあれだろう。
「初めまして。1年C組の鶴音言葉と言います。良ければお名前を伺っても?」
「あっ……いっ、1年B組の草薙寧々……。よろしく」
「よろしくお願いします。草薙さん」
こうしてまた一人私の知り合いが増えていく。
これが私にとってどういう意味を持つかは分からないけれど、悪い気はしなかった。