荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第6話「後夜祭を楽しもう!」

『神高生徒ー! 盛り上がってるかー!』

「「「ワー!!」」」

『皆元気だねーよしよし! では早速神高祭最後の一大イベント、後夜祭をやっちゃうよー!

 ってわけでトップバッターは私が行きまーす!!』

「「「ええええ!?」」」

 

校庭に設けられた特設ステージでマイクを握り締め、

クラスTシャツに身を包んだ友人が会場を盛り上げていた。

あの時言っていた「今からがその時間」というのはこういう意味だったらしい。

 

司会なのをいいことに後ろに合図を飛ばしカラオケ音源が再生される。

それは初音ミク達とは違うバーチャルシンガーの曲。

前奏の穏やかな弦楽器の音色から一変、ロックな曲へと早変わり。

再生数は500万を超える名曲の一角。

 

「ねえ、一応確認だけど、あの人あなたの友人、なんだよね」

「そうだけど、まあお祭り好きなんです。見ての通り」

「……好きって言っても限度があるでしょ、普通」

 

一方で私はというと、飲み物を片手に草薙さんと後夜祭の様子を眺めていた。

私と彼女のテンションの違いからか、本当に友人なのかと思われるもそうと頷くしかない。

 

「ただ『ビビッと来たから』って理由だけで色々連れまわしてくれる子なんです。

 他にも友達とかいっぱいいるのに、最近は結構絡んできてくれる、そんな人」

「疲れたりしないの?」

「たまには疲れるけど、それでもいい人には変わりないので」

「……なんか、わたしの知り合いに似てるかも」

「草薙さんも?」

 

首を縦に振り、少しだけ自分のことを語ってくれる。

最近になってフェニックスワンダーランドのステージでショーをするようになったこと。

そんな中で一人同い年のキャストがいるのだが、その子がとにかく元気だそうで。

自分が断ってもしつこく絡んできたり、何かと話をしてきたりと振り回されてばかりらしい。

 

「……ほんと、馬鹿みたい」

 

自虐にも聞こえるそんな言葉だったが彼女の顔はどこか楽しそうだった。

 

「そういう意味では、似た者同士かもね。わたし達」

「そうですね。今日知り合ったばっかりですけど」

 

接客していた時の彼女はどこかたどたどしかったものの、今やその面影はない。

いつかの私であれば冷たく切り捨てて終わりだっただろうが、

こうやって話してみて得られる物もあるのだと実感する。

 

ステージの方へと目を向ければいくつものグループが出し物を終えて、

飛び入り参加枠へと移り変わっていた。

 

『では続きまして、あの天馬先輩が仲間を引き連れ飛び入り参戦だー!』

『はーっはっはっは! 皆待たせたな!』

「うわあ、いつも以上に張り切ってる」

「天馬先輩の独壇場って感じですね」

 

曲は有名なミュージカル映画の主題歌。

その後ろには東雲君と青柳君が構えており、バックコーラスとしての役割を果たしていた。

確かな歌唱力もさることながら狭いステージを縦横無尽に駆け回り、

自分の身体能力をいかんなく発揮したライブパフォーマンスを披露する。

 

最初は戸惑っていた生徒達も次第にノリはじめ、手拍子や歓声を送っていた。

 

「凄い……」

「へえ、やるじゃん」

 

東雲君と青柳君のライブとはまた違う、人々を笑顔にさせる為の音楽。

パフォーマンスもまるで違うものの、人の心をくすぐるとても良いショーだった。

 

『みんな笑顔になってくれたな! 今回のショーも大成功というわけだ!』

『おっと、ここで終わってしまうなんてとんでもない!』

 

そんな歓声の鳴りやまぬうちに現れたのは神代先輩だった。

それを見てステージ裏へと消えていくバックコーラスの二人。

 

『確かにショーは素晴らしかったけど、お客さんとしては刺激が足りなかったんじゃないかな』

『だが、後夜祭のステージではそんなに凝った演出など……』

『というわけで、この装置の出番というわけさ』

 

友人が指示に従って天馬先輩の前に円柱状の装置を7つ設置し、急ぎ足でステージから離れる。

そんな前振りがあったためか、ステージ最前列の人達が数歩後ずさりした。

円柱状の装置もさることながら、

観客側に向けられた金網と、その上に取り付けられたロボットがハンマーを構えており、

恐怖を引き立てている。

 

『さあ司くん、このスイッチを押してみてくれたまえ』

『いやいやいや、あからさまに怪しいだろう!? あの司会さえもどこかへ行くほどだぞ!』

『大丈夫、安全性については僕の折り紙つきさ。

 司くんもこのショーを完成させ、またお客さんに見てもらいたい、と思わないかい?』

『それは、そうだが……ええい、ままよ!』

 

ハンマーが振り下ろされ、大きな破裂音と共に装置が七色の煙を噴き上げた。

 

「ぎゃああああ!?」

 

裏方の人がマイクの電源を切っていたからか、その爆音を拾うことはなかったが、

その代わりに最も近くで爆音と謎の煙に巻かれた天馬先輩が悲鳴が響き渡った。

 

「あっ、あれ」

 

秋風に運ばれて漂ってきた香ばしくも甘い香りで、

草薙さんが何かに気が付いたかのように装置へ目を向ける。

確かに金網の中には色とりどりの何かが詰まっていた。

 

『というわけで七色のポン菓子さ! 早い者勝ちだから急いだほうがいいかもね』

『あ、じゃあボクが最初に貰っちゃおっかな~』

 

こちらも先ほどのショーと同じく不気味がっていた生徒達だったが、

暁山さんを皮切りに一人、また一人と舞台に上がって受け取っている。

口にした生徒は次第に笑顔になっていく。

 

『赤色はイチゴ味で、オレンジはオレンジ味なんだね。やるじゃん類』

『お褒めに預かり光栄だよ』

「笑顔の錬金術師らしい、素敵な発明ですね」

「……ふふっ」

 

あながち自称でもないその肩書を、彼は仲間達と共に続けていくのだろう。

神代先輩が装置を引き上げた頃には、ポン菓子に舌鼓を打つ友人が再びマイクを握っていた。

 

『もぐもぐ……っ、さーて後夜祭もいよいよ次のライブで最後となりました!

 最後の出演者は我らが誇る──って、委員長ー! 次出番なんだから早くこっち来て!』

 

はりきってるなあ、と他人のふりをして溶け込んでいたがどうやら誤魔化されなかったらしい。

私は草薙さんに断りを入れて篠笛を手に、観念してステージに向かおうとしたところで。

 

「あなたの演奏、毎日聞こえてきてて。嫌いじゃなかった。だから、その。……期待してる」

「ありがとうございます」

 

視線を逸らしながら消え入りそうな声で応援される。

それに笑みを浮かべ答えてからステージへと上がった。

 

「ねえ、やっぱりやらないとだめ?」

「だめでーす! ここまで来たんだからさ、バシッと決めちゃって

 では皆さんお聞きください! 委員長の『―――』!」

 

そんなことを言いながらも着々とマイクのセッティングが終わっていた。

そして藪から棒に飛び出した楽曲の名前はよりにもよって超高難易度の曲。

恐らくバーチャルシンガーによるオリジナル曲で一般認知度が高いとされる曲。

 

それでも彼女や他のライブに出た人達、先輩達が生んだ笑顔を絶やしたくはなかった。

 

「「「おお……!」」」

 

演奏中のことはよく覚えていない。

ただ演終わった時に友人が飛びついて来て、観客達も祭囃子に乗せられ賑わいを見せていた。

 

こうして、神高祭は様々な思い出を残しながら、無事幕を閉じるのであった。

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