荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第3話「ただの噂」

翌日の放課後。

ようやく授業が終わり、この後の予定を立てる者や部活に向かう者でにぎわっていた。

 

「委員長ー、この後どうする?」

「特に予定もないから帰って宿題と勉強かな」

「流石真面目だねー。私は今から友達とカラオケ行くから」

「うん。また明日」

「じゃねー。っとと」

 

言葉の友人が教室を後にしようとしたところで、何かに気付き急ブレーキをかける。

その後短い会話を挟み再び教室の中へと向けた。

 

「委員長ー! お呼びだよー!」

「私?」

 

導かれるように席を立つ彼女を見て、その待ち人にも別れの言葉を告げ足早に去っていく。

放課後の客人はクラスメイトを除けばそんなにいない為、

先生にでも呼ばれたのだろうと頭で予想を立てる。

 

しかし外で待っていたのはある意味予想外の人物であった。

 

「おっ、きたきた。ごめんねー急に押し掛けたりして」

「暁山さん? どうしたのこんな時間に」

「これにはちょっと深い事情があってね」

 

言葉としては今日彼女の姿を見たことはなかった為、学校には来ていないと思っていたのだが。

それに学校が終わってから瑞希が登校している辺り補習か何かだろうか。

どちらにしても珍しいことには変わりなかった。

 

「おいあれって暁山じゃねーか?」

「噂で聞いてたけどほんとにあんな格好してるんだ」

「委員長って暁山さんと知り合いだったんだ……何があったんだろ」

 

しかし今は放課後。自由時間の為自然と興味は2人の方へと集まっていく。

噂を鵜呑みにしている者達からすれば、

その噂の再確認と新たな関係性の発見によって一気に話題が塗り替えられるのは時間の問題。

本人達の知らないところでまた一つ、新たな噂が生まれようとしていた。

 

「ここじゃ邪魔になっちゃうね。いこっか」

「そうだね」

 

瑞希の発案で場所を移すことにする。

と言っても行く当てもなく自然と二人の足は行きつけのファミレスに向かっていた。

 

 

 

ファミレスにつくや否や店員が出てくるも、瑞希が断りを入れてあるテーブルへと向かう。

そこには神山高校の制服に身を包んでいる一人の少女が、不機嫌そうに紅茶を傾けていた。

既にチーズケーキとスマホが置かれているが手を付けていない。

二人を確認してカップから口を離す。

 

「まったく、返事くらい返しなさいよね」

「ごっめ~ん、でも律儀に待っててくれる絵名も絵名だよね」

「は? こっちは資料の為に来てるんだから。

 連れてこなかったら全部瑞希に奢らせるつもりだったし」

「それってひどくない!?」

 

口論をしながらも隣に座る瑞希と、未だ座ることに戸惑う言葉。

ここに来たのも瑞希がお気に入りのようだったので、

自然とこちらに向かうだろうと予測を立て、一致しただけに過ぎない。

教室を訪れた理由も腰を落ち着けてからと思っていただけあって、完全に取り残されていた。

 

「あの、暁山さん、これは?」

「会わせたい人がいるって話だったんだけど、まあいいや。ほらほら座って座って」

「は、はあ」

 

申し訳なさそうに笑う瑞希に促されようやく席に座るが、

流石に知らない少女の正面ははばかられる為、カバンを席の奥に置き通路側に寄っていた。

 

「驚かせちゃってごめんね。私は2年D組の東雲絵名。あなたは?」

「1年C組の鶴音言葉です。……東雲って確か東雲君の」

「あっ、彰人と同じクラスの子だったんだ。教えてくれたらいいのに」

「絵名ってば弟くんと全然学校の話とかしてなさそうだよねー。何かと連れ回してるのに」

「別にする必要もないでしょ。それで鶴音さん、早速聞きたいことがあるんだけど、いいかな」

「は、はい」

「神高の音楽室の噂、知ってる?」

「はい。暁山さんから聞いたので」

 

そういって瑞希に向き直れば、当の本人はあの時のことを思い出し苦笑いを浮かべた。

変わった様子に多少違和感を覚えつつも絵名は言葉を続ける。

 

「なら話は早いかな。実は私達ネットで曲を作って上げてるんだけど、

 その噂をモチーフしようって話になって」

「なるほど」

「それで、作品のイメージを少しでも近づける為にも協力してほしいなー……って」

「構いませんよ」

 

言葉の心境を探る様に段々と声量を落とし上目遣いでねだってみれば、

返されたのは二つ返事での承諾。

否定された時に張り巡らせた対抗策が一気に無下にされた為か少し心が濁る。

 

「東雲さんは作曲されるんですか?」

「ううん。私は動画用のイラストだから」

「それでボクがその動画編集~。作詞と作曲はまた別のメンバーがやってるんだよ」

「ちょっと瑞希!」

 

ここぞとばかりに自分をアピールするも、それに対して小突き耳打ちをする。

 

「そんなこと言って私達がニーゴだったバレたらどうするの!」

「大丈夫だって。ほら、絵名だって知ってるでしょ? 1年生の学級委員の話」

「え? なにそれ、すごい優等生じゃない」

 

ニーゴの存在はネット上では新曲が上がるたび、話題になるほど有名なサークルである。

そのメンバー数まではファンに知られている為、関連付ければ感付かれると思ったのだろう。

それはない、と言う瑞希にも特に保険があるわけではないが、

噂好きな自分だからこそ知っているもう一つの噂について説明する。

 

絵名からすればそれもまた知り合いから聞いた話に過ぎないが、

まさか同じ人物だとは思っていなかったのだろう。

またそんな()()()()()が引き起こした変化であったために、

ここまで音楽室の噂が広まったのだと理解した。

 

「でしょー。だから多分ボク達の動画すら見てないんじゃない?

 ま、そうでなくてもきっと踏み入って聞いてくることはないと思うけど」

「それはそれで悔しいんだけど……」

 

動画を見ていないという事は、曲はおろかイラストや編集すら見ていないわけで。

今まで作ってきた渾身の作品群が見向きもされないというのは、承認欲求の強い彼女の気に障る。

 

「あ、紅茶とフライドポテト大盛でお願いします」

 

話題の渦中にある本人はそんなこともいざ知らず、

注文を取りに来た店員にいつもの組み合わせをお願いしていたのだった。

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