荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第4話「その少女、体験につき」

グレーのセーラー服に真っ赤なリボン、クリーム色のカーディガン。

何度も鏡で確認して、おかしい所が無いか確かめる。

 

「お嬢様学校っていう割にはちょっと地味かも?」

 

一応カーディガンには色んな色があったけど、今のところはおとなしめにクリーム色で。

人間、第一印象が大事だってよく言われるもんね。

 

「文、髪の毛跳ねてるよ」

「えっ!? どこどこ?」

「ちょっと待ってて」

 

制服ばっかりに気を取られてて自分の髪まで意識が回らなかった。

後ろで一緒に身だしなみを整えてたお姉ちゃんがわたしのくしを使って髪を整えてくれる。

 

お姉ちゃんはいつもならもっと早く出るんだけど、

今日は特別だからタイミングを合わせてくれた。

 

「うん、これで大丈夫」

「ありがとー。お姉ちゃんはビシッと決まっててカッコイイね!」

 

一方で神高の制服は白のカッターに紺のブレザー、赤と黒のストライプネクタイ。

リボンもあるらしいけどお姉ちゃんはネクタイ派みたい。

ネクタイすら一寸の狂いもなく止められてていかにも優等生って感じ。

……家だとあんなにダサい服着てるけど。

 

「ほら、今日は少し早く行かなきゃいけないんでしょ。忘れ物はない?」

「もー、お姉ちゃんってば心配症なんだからー。ちゃんと資料も筆記用具も揃ってるよ」

 

洗面所から出てカバンの中を開いて見せつける。

昨日のうちに一つずつ確認して入れたから間違いない。

 

「なら、このお弁当はいらないわよね?」

 

そんな中、台所から顔を覗かせた叔母さんが片手にひらひらとわたしのお弁当箱を振る。

 

「あーあー! ごめんなさいごめんなさい! 意地悪言わないでー!」

 

必死に飛びつくわたしはまるで猫と遊ぶようにもてあそばれ、

数回繰り返した後にようやくお弁当箱はカバンの中に入れることができた。

 

「それじゃあ叔母さん、いってきます」

「いってきまーす!」

「いってらっしゃい。遅くなる時は連絡頂戴ね」

「「はーい」!」

 

こうしてわたし達は一緒に家を出る。目指す先は宮益坂女子学園!

 

 

 

体育館で学園長さんや先生達の紹介を終えて校舎内へ。

心なしか他の子達もそわそわしていている。

 

それもそのはず。この学校は都内では有数のお嬢様学校で有名だった。

単位制で芸能活動をしている生徒さんも多くて、

現に1年生、2年生には元アイドルだった人達や、現に芸能活動をしてる人達もいるんだとか。

わたしはそのあたりのことを追求しないから全然知らないけど。

 

1-Eと書かれた教室にたどり着く。

説明によれば、1年生であっても勉強している範囲が違うからそのあたりの差を埋める為に、

空き教室を特別に開放して作られた特別クラスらしい。

と言っても1週間にも満たない期間の特別処置、みたいなものだけど。

 

そこで黒板に張り出されていた順番、といっても名簿順で着席を始める。わたしの席は……あれ?

 

「先生! わたしの席違います!」

「えっ、そんなはずはないわ。ちゃんと名簿通りに……」

「わたしの苗字、鶴音(たずね)なんです!」

 

案内の為にわたし達を先導していた先生に自己申告する。

先生も確認すれば、私よりも前に「田中」という名前の人が配置されている。

 

鶴音、なんて苗字は正直日本中を探してもないだろう。

もしあったとしても『田鶴音(たずね)』って感じで前に田んぼの田が入る。

小学校でも、中学校でも間違われ続けているから慣れたものだけど、

間違いがそのまま通っちゃったら後々困ることが出てくる。

 

「ごめんなさい。じゃあ田中さんとは席を変えてもらって」

「こちらこそ、読みにくい苗字ですみません! 田中さんもごめんね」

「あ、ううん!? 気にしてないよ!」

 

お互いそんなに気にしてないのか、ちょっと後ずさり気味に席を交代してくれた。

うーん、第一印象は失敗しちゃったかも……

 

全員が着席したところで先生が教卓の横に立ち、自分の名前を書いていく。

軽い自己紹介と、体育館で受けた校則とかの話をもう一度説明した後、

クラスメイトの自己紹介が始まった。

一人ずつ前に出て自分の名前を書くあたりしっかりしてる。

 

クラスの半分くらいが終わったところでようやくわたしの番がやってきた。

よし、ここでさっきの挽回をするぞー!

 

「はじめまして、鶴音(たずね) (ふみ)です! 京都の方出身です! 中学の時にこっちに出てきました!

 趣味はミクちゃんの曲を聴くことと、ライブに行くことで、ダンスやってます!

 よろしくお願いします!」

 

勢いよくお辞儀をしたところで、

思いっきり教卓に頭をぶつけ、痛みで反射的にのけぞれば黒板の粉受に後頭部をぶつける。

 

「痛っ! ~~~~~!!」

「だ、大丈夫鶴音さん!」

 

そのまま教卓の後ろで崩れこめばどこからかクスクスと笑い声が聞こえる。

先生が思わず声をかけてくれたからか、少しだけ意識がそっちに向いて痛みが治まった。

 

「はい、大丈夫で──うぎゃー!!」

 

勢いよく立ち上がって何とか挽回しようとするも、今度は教卓の出っ張りにぶつかる。

それがトドメとなったのか、クラス全体で大爆笑が巻き起こった。

 

だ、第一印象としては……なんとかなったかな。あ、でもごめん、涙出てきた。

そのまま教卓の後ろでうずくまるわたしは、痛みと恥ずかしさでしばらくの間動けなかった。

 




今回の宮女編は、
「雨上がりの一番星(ステラ)」
「走れ! 体育祭 ~実行委員は大忙し~」
「ここからRE:START!」
「揺れるまま、でも君は前へ」

後の時系列となっております。


「Color of Myself」は執筆中に開催されてなかった…
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