荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第5話「その少女、再会につき」

自己紹介が終わってそのままクラス委員も成り行きで決まっていく。

わたしはやりたいことがあるから辞退させてもらった。

推薦で学級委員に選ばれそうになったけど、それだけは全力でガラじゃないって否定した。

 

一限目と二限目はそんな感じでクラス間の交流を深める為にレクリエーションが行われ、

わたしに話しかけてくれる人も多かった。

まああんなことになったら嫌でも面白い子って思われるのは当然だよね。

それでもクラス全体のそわそわした感じはずっとなくならなかった。

 

レクリエーションの終わりに先生から告げられたのは、

この体験入学最終日に模擬試験があるということ。

この結果によっては今後の入学試験において有利になるかも、なんてほのめかされる。

 

挨拶と共にお昼休みに入った途端、生徒達のソワソワした空気は爆発した。

 

「ねえねえ鶴音さん! 一緒に遥ちゃん探さない!?」

「遥ちゃん……って、あのASRUNにいた遥ちゃん?」

「そうそう! この学校にいるんだって!」

「あー、わたし学園探索しようと思ってたから……ごめんね?」

「そっかー。じゃあ私達は行くね!」

 

クラスで話す子も早速出てきたけど、皆のお目当てはやっぱりそれだった。

遥さんの他にわたしの憧れの愛莉さんもいるのは知っていたけど、

いざここにやってきてから、ふと思うことがあった。

 

廊下からは、ぽつぽつと残るわたしを始めとした生徒を覗き込む別のクラスの人達がいる。

お弁当を片手に教室から出ればここの生徒の人達も体験入学生の話題で持ちきりだった。

 

「やっぱりお嬢様学校って言っても、普通の学校なんだね」

 

敷居が凄く高いものかと思っていたけど、いざ入ってしまえばただの高校。

少しだけ校則がきっちりしてるかな、って思ったけどそうでもない。

わたしの行っている中学校ともあんまり変わらないかもしれない。

 

「(会いに行きたい、って言うのは分かるけどそれよりも、邪魔しちゃったら悪いよね)」

 

わたしも動画投稿とプライベートはキッチリ分けているし、

何よりプライベートが浸食される不快感や曇る感覚は知っている。

主に荒らしや熱狂的なファンの影響で。

現に1-Cの教室前では体験入学生が殺到して、数人の先生が沈静化に当たっていた。

 

「そんなことより探索しよっと! 遅刻した時の抜け道とかも見つかるかも!」

 

わたし1人でどうにかなる問題じゃないし、

1-Cの人には悪いけどこの学園のいい所や穴場スポットがあるかもしれない。

誰にも見られることなくダンスの練習とかが出来る場所もあるといいんだけど……

 

そんな色んなことを考えながら、スキップと鼻歌交じりに廊下を駆けていった。

 

 

 

ほとんどの教室は生徒が殺到してたから諦めて、そのまま上へと足を進める。

目指す先は屋上。わたしの行ってる中学校は柵が無いから立ち入り禁止だけど、

ここではなんと自由解放らしいのです!

 

「屋上から夕陽見たりするのって憧れだったんだよねー! いざいざ突撃ー!」

 

ドアを開け放てば火照った体を冷やす風が吹き抜け、軽快な音楽が耳に届く。

 

「ひええ、寒ーい。あれ?」

「わわっ! ……ってあれ?」

 

茶髪にグレーの瞳の女の子が、制服のままで踊っていた。いやいや、それよりも。

 

「みのりちゃんだー! 宮女の人だったんだね!」

「文ちゃんも宮女だったんだね! すっごい偶然!」

「あ、違う違う。わたしまだ中学3年なんだー。体験入学で抽選に当たったの」

「あれ、そうだったんだ。そういえば今までずっと見かけたことなかったかも……?」

 

意外な人との再会。ひとまず昼食は置いておいて喜び合う。

 

「ならちゃん呼びは失礼だよね。うーん、みのり先輩? みのりさん?」

「あはは、なんだかよそよそしいし、先輩ってわけでもないからそのままでいいよ」

「え、いいの! やったー!」

 

同じ年だと思ったら一つ違うっていうのも新鮮で。

私からしたらお姉ちゃん以外で年上の知り合いなんていうものは生まれて初めての存在。

どこかよそよそしい感じがしたのか、みのりちゃんも苦笑しながらやんわり断った。

それに喜んだわたしは思わず抱きつき、そのまま押し倒してしまう。

 

「ああっ! みのりちゃん大丈夫!?」

「頭とかぶつけてないから大丈夫だよ。でもそっかー、じゃあこれからは毎日会えるね!」

「あ、そっか」

 

毎日会える、ということもすっかり忘れている。

どうしても昔のことがあるから、明日とか未来とか、よくわからないものには関心がなかった。

あの時お姉ちゃんが『今日だけじゃない』って言ってくれた時も嬉しかったけど、

そっか、明日も会えるんだよね。まだ実感はないけど、どこか不安がなくなった気がした。

 

そこで相変わらず流れている音楽が耳に届く。

 

「あ、ダンスの練習邪魔しちゃってたよね。わたし見てていい?」

「うん! って言ってもあんまり上手くないけど……」

「大丈夫! みんな違ってみんないいんだよ!」

「そ、そうだよね! よーし頑張るぞー!」

 

右腕を上げてガッツを見せるみのりちゃん。曲を初めから再生しダンスを再開する。

三角座りで少し離れてそのダンスと曲に集中する。

ってこれミクちゃんの曲だ。それも彗星の如く現れた神調教の人でラップも凄い人の。

私も動画を数百回くらいは見て振り付けの基本として身に着けた。

 

歌い踊る彼女の姿は確かにうまくないけど、何よりも楽しんでいた。

そのせいで振り付けが遅れたり軸がぶれたりもしたけど、

応援してあげたくなるような健気さがある。

 

「ど、どうだった……?」

 

最後の決めポーズを決めて、不安そうに聞いてくるけど、わたしは拍手で応えた。

 

「凄い凄い! 楽しい気持ちがどんどん伝わってきて、こっちまで踊りたくなっちゃうくらい!」

「ほんと! あ、でも振り付けとか、どうだった?」

「振り付け……は、そうだねー。もうちょっとかな」

「はうう~……やっぱりそうだよねー」

「もしよかったらわたしのでだけど、見てみる?」

「え? 文ちゃん踊れるの?」

「このくらいならすぐに。スマホ借りるねー」

 

カーディガンを脱いで曲をもう一回再生。曲に合わせてビシッと踊りを決める。

いつもやってるアクロバティックなものに比べたらこんなの全然簡単。

 

「す、すっごーい! まるで遥ちゃんとか愛莉ちゃんみたい!」

「あはは、ありがとー」

 

踊り切った後の開口一番がそれだった。

プロアイドルだった人達の名前が出てきて悪い気はしないけど、それに比べたら全然だ。

 

「これってもしかして私の方が後輩だったり!? なら文先輩……文さん? 文師匠!?」

「さっきと立場が逆だよー? 今までのままでいいって」

 

そんなふうに私達のお昼休みは過ぎていく。

予鈴が鳴った頃に別れてそれぞれの教室へと入った。

何か忘れてることがある気がするけど……再会できたし、ま、いっか!

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