荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第7話「その少女、空腹につき」

次の日になったもののあいにくの雨。

こんな時期の雨は冷たいから流石に屋上で練習はしていないだろう。

いや、一応確認しに行ったけど居なかった。解ってたけど。

 

頑張ってみのりちゃんを探そうと思ったものの、

昨日の今日でそんなすぐに教室を覗き込むわけにもいかない。

それになによりも、友達だからこそプライベートの時間には踏み込みたくなかった。

 

「でも気になるしなー……うーん」

 

当てのもなくお弁当箱をもって飛び出しただけに、どこに行けばいいか分からなかった。

学園探索もまだまだ終わってないし、ちょうどいい感じの場所も全然知らない。

他の教室も暖房をきかせているからかドアは締め切られている。

 

大人しく自分の教室に戻って食べようかな、と諦めかけたその時だった。

 

「わっほっほーい、お昼だぞー!」

 

曲がり角から桃色の風が駆け抜けてくる。

本能的にぶつかる、と判断して若干助走を付ければ棒高跳びみたく思いっきりジャンプ。

そのまま体をひねって『風』の向こうに着地した。

 

「あ、危なかった……」

「おお~!!」

 

女子高だから別にスカートの中が見えても大して気にすることはない……よね。

それよりぶつかった方が痛いし後が怖いし。

二重の意味で安心していると、その前方で何かがつぶれる音がした。

 

「「あ」」

 

それはわたしのお弁当箱で。

生徒もまばらな廊下だったから誰にも当たることはなかったけど、

それは盛大に中身をぶちまけていた。

 

「ああ~……わたしのお弁当が……」

「ご、ごめんね! あたしが前見てなかったから」

「ううんわたしこそごめんねー、調子乗ってへんな避け方したから」

 

とりあえず教室から掃除道具を持ってきて先生にも謝って事なきを得る。

ピンクの子が心配そうにこちらの様子を伺っていたけど、

お昼の時間が無くなっちゃうから、と返して全部一人で片付けを済ませるのだった。

 

 

 

結果、お昼は食べる時間なんて残ってなくて終始お腹の虫が鳴き声を上げていた。

クラスでも私がドジをやらかしたという話題で持ち切りだったけど、

深く聞いてくる子もいなかった。

そのあたりはすっごくありがたいかもだけど、この空腹の行き場を教えて下さーい……。

 

授業にも身が入らなかったけど根性だけで乗り切って、何とか放課後。

 

「キュ~……」

「た、鶴音さん大丈夫?」

「大丈夫、じゃないかも~」

「ご、ごめんね何も持ってなくて……それじゃあ」

「じゃあねー……」

 

前の席の田中さんが心配そうに声をかけてくれるも返すので精一杯だった。

そしてそれは気にかけてます、っていうアピールで、見捨ててないってアピールで。

心の支えになるけど、欲しいのはそれじゃないんだよね……

 

だからって、誰かに期待するのも間違いで。

まだこのクラスに友達は居ないし、いたとしてもここまで世話を焼く人なんていない。

 

「確かこっちの方だったよーな……あ、いたー!」

 

元気いっぱいの声が教室に木霊する。

ゆっくりそちらへ視線を向ければ、目の前にお昼休みですれ違った(?)、

ピンクの女の子が立っていた。

 

「大丈夫赤色の人!? 今助けを呼んだからね!」

「あ、うん」

 

わたしの手を取ってわたしの意識をなんとか保とうとしてくれる。

あ、すっごくあったかくてお日様みたい。

 

「えむちゃん、急に走っちゃ危ないよ」

「穂波ちゃん、早くこっちこっち!」

 

ギュルギュルなっているお腹の音に紛れながらも、もう一人誰かの声がした。

それよりもほんのり漂う甘い香りで反射的にそちらを向く。

その手にはアンパンと蒸しパンがあった。

 

「購買の残り物だけど、よかったら食べる?」

「いただきまーす! むぐぅ!?」

 

おおよそ女の子とは思えない獣の様な速度でそれを受け取り食らいつく。

そんな事をすれば当然喉に詰まるわけで。

 

「み……水……」

「はい! 水!」

「あ、ありがと」

 

勢いよくペットボトルが手渡され一気に飲み干す。

一時はどうなることかと思ったけど二人のお蔭で助かった。

 

「ありがとう二人ともー! お蔭で助かったよー!」

「「わわわっ!?」」

 

その嬉しさと感謝を伝える為に二人に抱きつく。感極まるってこういうことだよね!

ピンクの子はそのままキャッキャと嬉しそうに返してくれたけど、

もう一人のお姉さんはすっごくびっくりしていた。

 

「えへへ、それほどでもないよー。でもごめんね。あの時行っちゃって」

「そこは気にしてないよ。むしろ助けられちゃったし。ところでお姉さんは?」

「あ、えっと、大丈夫みたいだしわたしはそろそろ行くね」

「待ってください!」

 

私とピンクの子が仲良くしてたからか、場違いと思ってしまったんだろう。

教室から離れようとするその人を呼び止める。

 

「わたし、鶴音文って言います!! この度は、ありがとうございました!」

「鶴音……? えっと、どういたしまして?」

「このご恩は絶対忘れません! 絶対お返しします!」

「そんな気にしなくてもいいよ。当然のことをしただけだし」

「いえそんなことありません! 凄いことだって思います!

 だから「鶴音さん、ちょっといいかしら」あ、先生」

 

肩を後ろから叩かれたと思いきや、すっごくいい笑顔の先生が立っていた。

 

「ちょうどよかった。お昼の件も兼ねて少しお話したいことがあるの」

「ヒィ!? あ、お二人とも、また今度、会いましょう! それじゃああああ……」

「う、うん……」「ま、またねー」

 

わたしはそのまま肩を掴まれ、連行されていく。

最後にそれだけ言い残して、ピンクの子とお姉さんとはお別れ。

その後私は生徒指導室でコッテリ絞られるのでした。とほほ……。

 

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