荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第9話「その少女、交流につき」

途中で購買に寄りつつも、5人で揃って食堂に移動すれば、そこそこ混みあっていた。

本当に食堂を利用している人もいれば、

雨という事でわたし達と同じようにお弁当を食べている人達も居る。

 

「結構混んじゃってるねー。いい席空いてないかな」

「志歩ちゃんは今日学食だよね。わたし達で席とっておくから、お昼買ってきたら?」

「ん、お願い」

 

そういってそれぞれが分かれてお姉さんと一緒に席を探す。

近い所は大体埋まっていたから、多少遠くなるものの何とか席を確保できた。

それでもテーブルを1つまるごと取れたのは大きい。他の人を気にしなくていい。

そしてなにより。

 

金髪の人が両手いっぱいに持っていたお菓子をテーブルに広げる。まるでお泊り会みたいだ。

 

「咲希、凄い量のお菓子だね」

「だって全品3割引きだったんだよ! 買わなきゃ損だってー」

「ちょうど入れ替え時期だったからかな? よかったね咲希ちゃん」

 

それぞれが座りながらも黒髪の人へ視線を移せば、こちらも焼きそばパンだけが入った袋が。

心配になってお姉さんに視線を移したら、普通のお弁当箱だったのでものすごく安心した。

 

「え、えっと、何かおかしかった?」

「いえいえ! その、変わってるなって思っただけなので」

「ほら咲希、言われてるよ」

「えー、いっちゃんも大概じゃない?」

 

わたしからしたらどっちもどっちなんだけど、まあ好きなものはいっぱいある方がいいよね。

それが種類の方でも、量の方でも、幸せなのは変わらないと思う。

わたしもご飯をお腹いっぱい食べられるのは幸せだし。

 

「どっちもどっちでしょ。咲希、ちょっとお菓子よけて」

「あはは、ごめんねしほちゃん。ところで何買ってきたの?」

「B定食。食べたかったのは売り切れだったから」

「B定食って確かハンバーグ定食だったよね?」

 

お盆を持ってやってきたグレーの髪の人。

そこには確かにハンバーグを中心として小鉢や白御飯、お味噌汁がのっている。

 

「それじゃあ皆揃ったし改めて自己紹介しよっか。私は星乃一歌です」

「改めまして天馬咲希です。よろしくねー」

「望月穂波です。あの後は大丈夫だった?」

「日野森志歩。よろしく」

「鶴音文です。皆さんよろしくお願いしまーす」

 

自己紹介するまでに随分と時間がかかってしまったけど、

それまでの会話で充分どんな人かっていうのは大体わかった。

 

一歌さんは一歩後ろから見守って、咲希さんは皆を引っ張って、

穂波さんは皆を温かく包んで、志歩さんは悪い所を指摘してくれる。

 

「えっと、呼び方は……どうしよっかな。先輩って付けた方がいいのかな。

 一歌先輩に、咲希先輩に、穂波先輩に、志歩先輩……」

「おお~! ねえねえ聞いた!? アタシにも遂に後輩が~」

「聞こえてるって。でもそれじゃ呼びづらいでしょ? 私は好きな方でいいから」

「そう言うしほちゃんも嬉しいくせに~」

「……別に。そんなことより早く食べないと時間なくなるよ」

「そうだね。文ちゃんも食べよっか」

「はい。いただきまーす!」

 

そこからそれぞれのペースで食べ進めながら、いろんなことをお話する。

普段は何をしているか、趣味は何かとか、好きなものは何かとか。

途中からは一歌先輩とミクちゃん談義になってすっごくマニアックな話になったりもした。

ミクちゃんを知るきっかけは何かとか、よく聞く曲とか。

 

でも流石に自分の動画のことは知らないみたいだったから、そのあたりは伏せておいた。

 

「でもダンスしてるなら、バックダンサーで踊ってもらったら面白いかも?」

「バックダンサーって……それじゃアイドルバンドになっちゃうでしょ」

「あ、そっか。じゃあ遥ちゃんとかの方が合うのかな」

「咲希先輩、遥さんと知り合いなんですか?」

「知り合いっていうか友達かな。同じクラスなの」

「あ、それならちょっとお願いしようかな」

 

遥さん経由ならどうにかしてみのりちゃんと都合がつくかもしれない。

同じユニットだし一緒に練習していることもあると思う。

 

「サインとか握手なら、桐谷さん本人に直接伝えた方がいいと思うよ。

 受けてくれるかは……分からないけど」

「ああいえ、そうじゃないんです。

 実は友達がその遥さんと同じユニットを組んでて。花里みのりちゃんっていうんですけど」

 

その名前に思い当たる節があるのか、そのまま3人の視線が志歩先輩に移る。

本人は知らぬ様子で箸を進めていたけど、自然と感じ取ってジト目で返していた。

 

「何? 3人とも」

「志歩って花里さんと同じクラスだったよね」

「まあそうだけど。都合をつけるのは難しいよ。あんまり話さないし」

「そ、そこをなんとかお願いします!」

「そんなこと言っても、咲希だって連絡先知ってるからお願いするならそっちに」

「あはは……実はまだアタシも持ってないんだよね。あれからあんまり都合が合わなくて。

 お願いしほちゃん! 可愛い後輩のためと思って!」

「……はあ」

 

咲希先輩も頭を下げてくれる。

しばらく悩む仕草を見せるも他の2人の無言の圧もあり、折れたようにため息を吐いた。

 

「今回だけだからね。咲希、連絡先交換しておいてよ」

「はーい! 文ちゃん、スマホ貸してー」

「あ、はーい」

 

こうして私は思わぬ形でみのりちゃんへの伝手を手に入れることができた。

それがいつになるかは分からないけど、きっかけが作れたのはいいことかも。

 

「えへへ、お姉ちゃんとの共通のお友達だー」

 

そしてそれはともかくとして初めて先輩と連絡先を交換できたことも大きかった。

それに4人の先輩が出来た。一緒に居られるのは体験入学の期間だけだけど、

入学出来たらもっともっと長い時間一緒に居られる。勉強、頑張ろっかな……

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