荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第15話「その少女、躍動につき」

 

 

クラスに戻ればまだ話題はわたしのことで賑わっていたけれど、

その姿を見るなり気まずそうに、またわざとらしくこそこそし始める。

そんな状況じゃ箸も進まず、半分以上残したまま昼休みは終わった。

 

そのまま授業も他の人の視線が気になってしまい集中できない。

終わりのホームルームももうすぐ体験入学が終わるという内容くらいしか覚えていなかった。

 

「(そっか、終わっちゃうんだ。でもまあ、別にいいかな)」

 

色んな人に知り合えた。お姉ちゃんの知り合いにも、みのりちゃんにも、

ちょっとだけだったけど憧れの人も見ることができた。想いを伝えられはしなかったけど。

 

放課後に入って皆がそそくさと教室から出ていく。

わたしの居る前で態々する勇気もないんだろう。それに一緒に居れば悪い噂も立ちかねない。

物事の考え方が悪い方へと傾いてく。

本来ならミクちゃんの曲とかを聞いて気分転換するんだけど、そんな気すら起きなかった。

 

「ほんと、馬鹿みたい」

 

気落ちしている時の口癖も今日何回言ったか分からない。数えるだけ無駄だった。

机でぐでーっとしていれば教室の外から視線を感じる。

ゆっくりとそちらへ視線を送れば、別のクラスの人達が気になってこちらを見ていた。

 

見世物じゃありませんよー、とそんな冗談めいた言葉すら呑み込んで無視することに決める。

今はもう何も考えたくなかった。

吹奏楽の音楽が微かに聞こえてくる。

お姉ちゃんももしかしたら学校で吹奏楽とかに入るのかな、

なんて呑気なことを考え始めるくらい、やる気が起きなかった。

 

このまま学校に居ても先生に怒られるだけだしなー、

と背もたれに体重を預けてながら揺らしていると急に重心が後ろに傾き倒れる。

顎を引いて柔道のように受け身を取ったまま、天井を見上げた。

背中が痛かったけど頭は打たなかったし大事はないと思う。

 

「(なんか起き上がるのも面倒くさいなー)」

 

どうせこれもどこかで隠し撮りされてて編集されてはネットに上げられるんだろう。

そう思ったら本当にどうでも良くなってきた。

そんな中椅子の倒れる大きな音に囃されたのか、一人の女の子が教室にやってくる。

 

「突撃、隣のわんだほーい! あれれ、文ちゃんどうして寝てるの?」

「えむちゃんだー。これはねー。ロケット発射する時の練習ー」

 

上に向かって座ってる状況なんて日常では考えられない。

とっさにしては旨いジョークだったと思う。

 

「ロケットの発射!? ねえねえ、アタシも一緒にやってみていい?」

「いいよー」

 

となりの席を持ってきて一緒に上に向かって座る彼女は終始笑っている。

何が面白いのかは分からないけど、たぶんわくわくしているんだと思う。

 

「それでそれで? ここからどうするの?」

「んーとね。カウントダウンするから、0になったら、──っこう!」

 

足を伸ばし腰を上げて両手を着いて肘と上半身の力だけで体を上に打ち上げる。

そのまま足を開いて着地した。感覚としては寝てる状態から急に飛び跳ねて立つみたいな感じ。

小学校にある椅子くらいだから、うまくやらないと背中と腰を両方砕きそう。

 

「すごいすごーい!」

「じゃあいくよー、ごー、よーん」

 

あんまり考えないままに元に戻ってカウントダウンを始める。

と、そこでよく考えたらえむちゃんがそんな芸当出来るわけがない。

 

「「さーん、にー、いーち」」

 

あちらはノリノリでカウントダウンに参加してくれているけど、そういう問題じゃなかった。

それを止める前に、カウントはゼロに到達する。

 

「「ゼロ!」」

「ファイヤー!!」

 

体は打ちあがり無事着地する。わたしは床の上に。えむちゃんは机の上に。

 

「ええ……」

「あははは! 面白いねー!」

 

その身体能力には流石のわたしも唖然としていた。

 

「ねえねえ、この後はどうするの?」

「流石に考えてない……かな」

 

冗談もこれまで。ここまで騒いだら流石に先生が飛んでくるだろう。

これ以上問題を起こしたら入試以前に目を付けられて最悪出禁になってしまうかも。

 

「とりあえず、教室から出よう? ほら」

「およ?」

 

とりあえずカバンとえむちゃんの手を取ってその場から離れることにする。

相変わらずその様子を他の生徒の人が見ていたけど、

今は来るかもしれない恐怖から逃げるだけだった。

 

 

 

なんとか誰にも見つからずに校門まで逃げてきて、胸をなでおろす。

 

「あ、ごめんえむちゃん、手つないだままで」

「ううん気にしないで。……えへへ」

 

そんなわたしの謝る言葉を、笑顔で返してくるえむちゃん。何かおかしなことをしただろうか。

考えても答えが出ないので、おもわず首を傾げた。

 

「文ちゃん、さっきまで元気なかったからちょっと心配だったんだー」

「あ、アハハ。バレちゃってたか」

 

きっかけはどうであれ、わたしを気遣って付き合ってくれたんだろう。

途中からは本気で楽しんでいた気もしなくもないけど、そっちの方が気楽で良かった。

 

「あっ、アタシもうすぐショーに行かなきゃいけないんだった! じゃーねー!」

「うん、ばいばーい!」

 

元気を取り戻してくれたお礼の意味も込めて

わたしは走り去るえむちゃんの姿が見えなくなるまで手を振り続ける。

 

2回も助けてもらったんだから何か恩返ししなきゃなー、と考えながらも帰路につく。

教室にいた時よりも心は晴れていたけど、まだ少し物足りなさが残っているのだった。

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