荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第18話「その少女、未熟につき」

結局わたしはあったこと全部を話してしまう。お昼休みも半分以上使ってしまった。

 

「わたしは、どうしたらいいと思います?」

「そうだね……」

 

聞いている間はずっと目を合わせて聞いてくれていた穂波先輩だけど、

流石に難しい内容とだけあって思わず目を閉じ真剣に悩んでいた。

 

「これが正解、っていうのは分からないけど……自分のやりたいことをやる、かな」

「自分のやりたいこと?」

「うん。文ちゃんにもきっとあるよ。わたしも見つけられたから」

「うーん……」

 

すっごく素敵な答えなんだけど、最後の一押しが足りない気がする。

でもお話を聞いてくれただけでも心が随分と軽くなった。

 

「穂波先輩、ありがとうございました。まだわからないことはありますけど……

 何とかなる気がしてきました!」

「良かった。……ふふ」

「? なにか面白いこといいましたか?」

「ううん、いつもの文ちゃんに戻ってよかったな、って」

「あっ……」

 

自分の声量もトーンも上がっていることに言われてから気付く。

心なしかうまく笑えてるような気もする。

 

「えっと、このお礼は絶対、絶対します!

 でもわたし忘れちゃうかもしれませんけど、覚えてもらえてたら、絶対にお返しします!」

「気持ちだけで十分だよ。やりたいこと、見つかるといいね」

「はい! ……でもその前に~、いただきます!」

 

再びお弁当の蓋を開ける。半分以上残っているけど今のわたしなら余裕で完食できる!

時間があんまりないからと傾けながらかきこむ。

よく噛まずに飲み込むものだから当然のど奥で急ブレーキがかかった。

 

「んぐぅっ!?」

「ふ、文ちゃん!? これ、お茶!」

 

差し出されたコップの中身を流し込む。

ちょっと前にも同じようなことがあった気がするけど、

その日も今日も心地よかったことには変わりない。

 

 

 

その後は無事お弁当を完食できてお昼休みはおしまい。

授業も久々に真面目にうけて、終わりのホームルーム。

 

「明日で体験入学は終わりです。短い期間でしたが皆さんは充実した学園生活を送れましたか?」

 

そんな先生の問いかけに周りの人達は各々の声を上げる。

 

「そうだった人もそうでもない人もいるでしょうが、明日には試験があります。

 結果によって入試が有利になる、という事はありませんが、皆さん頑張ってくださいね」

 

その言葉で締めとなり、日直さんが合図をする。

クラスメイトの人達は翌日に控えたテストでもちきりになっていて、

早く帰って勉強するとか、さぼろうかな、みたいなことを言ってる人もいる。

 

そんな人達をしり目にわたしは教室を出てゆっくり廊下を歩く。

他の人の視線はあるけれど朝より気にならなかった。これも穂波先輩のお蔭だろう。

 

「自分のやりたいこと、か」

 

今までなら友達と遊びに行ったり、ミクちゃんの曲を聴いたり、愛莉さんの動画を見たり、

とりあえず自分の暇が潰れるならそれでよかった。

自分のことを考えないように頑張ってきただけあって、

いざ自分がやりたいことと言われても難しい話だった。

 

そのあたりはこれからゆっくり探していけばいいかなと思っていると、スマホが鳴り響く。

何事かと思ってトイレの個室に駆け込み、確認すればみのりちゃんからだった。

 

「えっと、もしもし?」

『あっ! 文ちゃん、良かった繋がった~。あのね、実は見せたいものがあって!

 屋上で待ってるから、絶対来てね!』

 

それだけ言い残して通話は切れてしまう。まだ行くって言ってないのに……

きっとみのりちゃんのことだからわたしを励ますために何か考えてくれてるんだろう。

 

これが朝の気分のままだったら、そのまま帰っていたかもしれない。

もしかして穂波先輩がみのりちゃんにお願いして……って思ったけどそもそも繋がりあるっけ?

それとも志歩先輩があの時のお礼にってお願いして……それもないと思う。

 

「まあ、考えても仕方ないよね」

 

そう言い残してわたしは足取り軽くトイレを出る。向かう先は勿論屋上。

 

 

 

屋上に上がれば1人でみのりちゃんが待っていた。

キリっとした表情で何か決意を固めている様子で、いつにもまして真剣さが伝わってくる。

しかし彼女が着ていた1枚のシャツによってすべてが台無しになっていた。

 

水色の半袖シャツにはデフォルメされた大きなラッコがプリントされ、

『どこか行きたい』と小さく文字が書かれている。

 

お姉ちゃんが休日に来ている服のセンスと似たり寄ったりで、

自分の友達もこんな調子なのかと思わず目を逸らしたくなった。

 

「わたしの方がどこか行きたい……」

「あ、待って待って!? どこ行くの文ちゃん!」

「ちょっと近くのセレクトショップで自分の美的センス見つめ直してくる……」

 

これ以上お姉ちゃんみたいなセンスの人が増えたら、

自分のセンスの方が怪しいんじゃないかって思えてくる。

 

しばらくの間屋上ではどこかに行きたいわたしと

どこにも行ってほしくないみのりちゃんの引っ張り合いが続くのだった。

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