荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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──踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら?──


第20話「その少女、親友につき」

「それでは、始めてください」

 

問題用紙と解答用紙が配られて、先生の合図で皆がペンを取る。

問題自体は今まで学校で習ってきた範囲と変わらない。お姉ちゃんにも教えてもらった。

今まで思い悩んでいて手付かずだったことも、穂波先輩のお蔭で集中できる。

そしてなにより、みのりちゃんのお蔭で頑張ろうって思えたから。

今のわたしの全力をこの試験にもぶつけよう。それで少しでも未来に届けば、嬉しいな。

 

 

 

「うわあああん! お姉ちゃーーん!!」

 

家に帰ってお姉ちゃんに飛びつく。少し困った顔をしていたけどお構いなしだ。

 

「それで、試験の結果はどうだったの?」

「0点だったー!!」

 

カバンから返してもらったテストを見せる。

それには全部チェックが付いていて不正解であることを表していた。

 

「ほんとに0点だ……。何かの間違いじゃないよね」

「先生に何回も確認したよー! でも毎回「解答用紙をよく見ましょう」って言うんだよー!」

 

他の子にはちゃんと指摘しているのに、わたしだけ何が間違っているのか教えてくれない。

こうなったらお役所勤めの叔父さんに電話して貰って……!

 

「あ、なるほどね。文、ここを見て」

 

何かに気付いたお姉ちゃんが優しく引きはがしながら椅子に座らせた。

指していたのは答案用紙の左上。文字が1つ入るくらいの小さい空白だった。

 

「あっ」

 

その空白こそが0点の理由。

高校ともなれば答え合わせを楽にするために全て記号か、マークシートで行うことが多い。

これも前者のパターンでぱっと見ではどこにどの内容の答えがあるかは確認しづらい。

つまりこれは『回答欄のズレ』ってこと。

 

「ちゃんと見直しした?」

「制限時間ギリギリだったからしてない……」

「途中でなんだか違うなってならなかった?」

「解答欄全部バラバラだし、最後のは枠忘れたのかなって外に書いてた……

 で、でもでもこれってもしかしてズレてなかったら100点満点だったり!」

「じゃあ、私が代わりに答え合わせするからちょっと待ってて」

 

そういって問題用紙も受け取ったお姉ちゃんが素早く丸付けしてくれる。

その間にわたしは私服に着替えておいた。

 

「解答欄がズレてなかったら、84点、ってところかな」

 

現実はそんなに甘いわけではなかった。

それでも良くて平均点ぎりぎり、悪くて赤点ぎりぎりのわたしからすれば凄くいい点だった。

 

「お疲れ様。よく頑張ったね」

「えへへ。ありがとー」

「でも、0点なのは変わりないからね。入試の時はこんなミス絶対ないように」

「はーい」

 

また優しく頭を撫でてくれるお姉ちゃんだったけど、ほんのり怒った感じで釘を刺してきた。

まあ、当然って言えば当然だよね。

 

「じゃあお姉ちゃん、ちょっと行ってくるね」

「行ってくるってどこに?」

「友達のところ! 晩御飯までには帰るから!」

 

そう言い残して家を飛び出した。

 

 

 

待ち合わせ場所には既に1人の女の子が白い犬を連れて待ってくれていた。

あの時のシャツのまんまだったけど、今はそれも気にならない。

 

「みのりちゃんお待たせー! 待った?」

「ううん、わたしも今来たところだから大丈夫」

「よかった。サモちゃんも久しぶりー!」

 

靴の辺りの匂いを嗅いだ後、嬉しそうにスリスリと寄ってくる。

それを優しく撫でてなだめてから2人で歩き出した。

 

「一時はどうなることかと思ったけど、やっぱり元気になってくれて嬉しいな」

「あはは、ライバルって言うのは冗談半分だけど。

 まだやりたいことが見つかっただけで、夢もなんにもないから」

 

それに比べたらずっとみのりちゃんの方が凄いけど、

夢とか想いとかそういうのってどっちが上とか下とか、そういうのはない気がする。

だからわたしなりの歩き方で見つけていけばいい。

 

「文ちゃんならきっと見つかるよ! わたしもいっぱい応援するね」

「ありがとう。それならもっとすごいダンスでお返しするから、覚悟しててね」

「ひええ! そ、そこはちょっとお手柔らかに……」

「何言ってるの。友達だからこそ手加減無しなんだから!」

 

1人で駆けだせばそれにつられてサモちゃんも追いかけてくる。

そうなればリールで繋がれたみのりちゃんも引っ張られるわけで。

しばらくランニングのペースで散歩をして、

お互いの息が上がったところで適当なところでベンチに腰掛けた。

 

「なんだか文ちゃん、愛莉ちゃんみたいだね……」

「うん。わたしの憧れの人なんだ」

「えっ!? そうだったんだ……」

「うん。QTの時は知らないけど、昔見たバラエティー番組でよく見てたんだ。

 あ、これ愛莉さんには秘密だよ!」

「うん。でも文ちゃんもそうだったんだね。わたし達もしかして似た者同士かも」

「ちょっとわかるかも。初めて会った時他人の気がしなかったし!」

 

この公園で出会った時のことを思い出す。あっという間に仲良くなって名前も教えてもらった。

1年上の先輩なのに全然気取った感じもなくって、今もこうやって一緒に話している。

 

ふとわたしの膝にサモちゃんが顎を乗せてきた。遊んでほしいんだろう。

 

「ふふ、サモちゃんとも仲良しだもんね。ほーらサモちゃーん? おもちゃだよー」

 

ボールをチラつかせるみのりちゃんに興味を向けたところで遠くに投げられる。

リールを外されたサモちゃんはそのふわふわした毛並みをなびかせて駆けて行った。

 

「体験入学は終わっちゃったけど、またこうして会えるよね」

「うん! それに文ちゃんも宮女希望、なんだよね。頑張ってね!」

「ありがとうみのりちゃん」

 

今はまだ年も違うし学校も違うけど、いつかまた出会えるように。

そして憧れの人にちゃんと伝える為にも、今をわたしらしく生きていこう。

胸の中に滾る灯火は消えることを知らなかった。




ご無沙汰しております。毎度のことながらkasyopaでございます。

今回は宮女編、といいつつもオリ主の妹『鶴音文』のお話をお送りしました。

そして例によって次回からは宮女編サイドストーリーとなります。
もうちょっとだけ続くんじゃよ。

P.S. 活動報告にて、鶴音文の設定を公開しました。
   ご興味ある方はご覧ください。
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