スパイウィッチとウォーロックの遺児   作:haguruma03

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007見てたら、書きたくなったので


『起』 モナコ騒乱
1話 思い出と呼び出し


1.

 

雪が見える。

 

分厚い雲に覆われた暗いオラーシャの空。

オラーシャ帝国には珍しくもない曇り凍えるように寒い、そんなある日。

日光が防がれ日の暖かさは消え去り、残るのは寒さ。ハラハラと雪が大空を舞う。

本来ならば燻んだ空の黒と、寒さを象徴する雪の白が舞うだけのはずのそんな空には、その2色以外の光が瞬いていた。

 

青白い閃光と火薬が破裂するオレンジ色の閃光。

その二つの色が何十何百と光を放ち瞬いていく、

 

火薬の光を、マズルフラッシュを振りまく二人のウィッチ。

それに対抗するのは不気味な排気音を立てながら飛行する巨大な怪異。

 

その怪異は二人のウィッチによる苛烈な銃撃を受けながらも、一向に怪我を負った様子を見せず、逆に身体中についた機銃で反撃を行なっていく。

 

身体中についた大型機銃から放たれる閃光は青白く途切れることなく繋がる。

その攻撃は苛烈であり、たとえシールドを持っているウィッチでもその攻撃を長く受け止めることはできないと容易に想像ができる死の光。

 

通称『ディオミディア』と呼ばれる怪異からの青白く光る機銃の攻撃を、たった二人のウィッチはそんな死の光の中に身を投じながらも、なんとかかわし続け反撃を続けていた。

 

金髪をオールバックに固め、猫耳を生やした幼顔のウィッチが持つトレンチガンが火を噴き散弾がばらまかれる。

するとディオミディアの体表に着弾すると同時に大量の小規模の爆発がおこる。

散弾が榴弾のように爆発するというありえない現象。だがその現象を起こしたウィッチは当たり前のようにそれを見つめ、再び手に持った愛銃で攻撃する。

爆発に疑問を抱くわけがない、なぜならばこれが彼女の固有魔法なのだから。

 

もう一人のウィッチである黒髪長髪で頭にカラスの羽を生やしたウィッチが持つ重機関銃が火を噴く。

毎分700発の12.7×81弾が怪異の体に突き刺さっていく。

重さ63ポンドであり、人が手に持って打つべきではない重機関銃を手に持ちブレもせず正確に打つ姿は空に浮かぶ対空砲を思わせた。

 

 

爆発する散弾。空を飛び回り正確に射撃される重機関銃の攻撃

そんな摩訶不思議を引き起こすことができるウィッチたちによる決死の攻撃。

 

だがそんな攻撃もディオミディアの防弾装甲により致命傷になりえず、逆に相手による倍返しのような攻撃が帰ってくる。

 

二人のウィッチは分かっていた。この巨大な空の怪物を二人だけで落すことは不可能であると。

だが二人は無駄と分かっていても引くことはできなかった。

 

それはこの怪異の進路上には、オラーシャ帝国が誇る大型ダムと街が存在しているからだ。

 

 

この怪異の一番の凶悪な点は身体中につけられた大型機銃でもその防弾装甲でもない。

 

この怪異は超大型爆撃機なのだ。

 

そんな爆撃機を通してしまうと、そのあとに残るのは爆撃によって廃墟となった街と崩壊したダム。

最悪の場合、爆撃だけではなくダムの崩壊によって起こる水害によって多くの人命が失われてしまうだろう。

 

 

そんな人命の危機なのだが、それを防ごうとしているのはたった二人のウィッチ。

しかも、彼女たちはオラーシャ軍所属ですらなく、オラーシャ人ですらなかった。

 

彼女たちはブリタニアの秘密情報部に席を置くウィッチたち。

スパイと呼ぶべき彼女たちは、本来ならばこういった表立った戦闘などしないはずであったが、こんな寒地でまさかのディオミディアを一番に発見してしまい、その際に辺りにディオミディアを止める存在がいなかったため、こうして2人で戦っている。

 

潜入した敵地での戦闘行為。

これは正体が露見しかねない危険な行為であり、秘密情報部の身を置く存在としては失格な行為であった。

だが、彼女たちはまだ幼いと同時に人類を守るための存在であるウィッチである。

たとえ表立って戦えぬ薄暗い組織に身を委ねているといえど、迫る脅威を無視し人々が殺されるのを放って仕事に専念できるほど人ができているわけでもなかった。

 

それに、別に完全に正体が露見するわけでもない。

オラーシャ軍が来るまでこの怪異の足止めをすればいいのだ。オラーシャ軍が来れば、あとを任せて離脱すればいい。

 

そう秘密情報部に席を置くウィッチは考え、今こうして戦っていた。

 

 

トレンチガンを打ち続けていた幼顔のウィッチが、自身を狙う機銃の数が集中したのを確認するとすぐさま距離を離し離脱を開始する。

当たれば死ぬ機銃の攻撃が次々に放たれる。そんな光にライトアップされ、おびただしい死の光に狙われながらも、回避機動を取りながら狙われたウィッチは急速にディオミディアから全力で離脱する。

その表情にはすぐそばに迫る死に対する恐怖と、殺意を向けられたことによる怒りが映されていた。

その怒りによるものなのか、彼女は離脱のさいに最後っ屁のように怪異に対して攻撃した。

しかし全力で離脱を行ったせいで、すでにトレンチガンの有効射程距離を離れてしまっており、怪異の巨大な体にすら発射された散弾がわずかにしか当たらない。

散弾が着弾した瞬間再び起こる小規模の爆発。

しかし、その爆発による煙が晴れた後に見えるディオミディアの肌は無傷であった。

 

そんな現状に幼顔のウィッチは舌打ちして猫耳を苛立っているようにピクピクト動かす

「あー!もう!もっと射程の長いトレンチガンはないの!?有効射程600ヤードぐらいのやつ!!」

 

そんな無理難題の呟き

そんな独り言に対しての返信が彼女の耳につけたインカムから聞こえてきた

 

「だから、あれほどまともな武器を使えっていっただろうジェイミー?」

 

心底呆れている声。

ジェイミーと呼ばれた幼顔のウィッチは、自身の相棒に向けてインカム越しに反論した

 

「うるさいわよアレン!潜入作戦なのにわざわざそんな重機関銃を持ってくるバカには言われたくないわよ!」

 

真っ当な反論。そう彼女たちは一応スパイなのだ。

それに今回の任務も大規模破壊行為を行うのが目的ではないし、こんな大型銃器が必要な作戦でもない。

 

そんな真っ当な反論に対してアレンと呼ばれた重機関銃を派手に打ち続けるウィッチは少し思考してから言い訳を言う。

 

「......これは拾い物だ」

 

「どこに重機関銃が落ちている国があるのよスカポンタン!」

 

大空に銃撃に紛れて罵倒が響く。

当たり前の反論を言われてもアレンはまだ言い訳を諦めなかった

 

「持ち込む武器と酒ぐらい好きに選ばせてくれてもいいだろう相棒?」

 

「持ってくるもの選べって言っているでしょ!!しかもその銃ブリタニア製でしょ!?ここはオラーシャよ!身元がわかるもの持ってくんな!」

 

阿吽の呼吸のような言葉の応酬。コメディアンのような言い合い。

ここが舞台ならば、評価されていたかもしれないが、ここは死神が這い寄ってくるような死の空。

 

今もなお、そんな会話をする二人のウィッチに対して死の光が瞬いている。

 

こんな会話をする彼女たちも余裕があってこんな会話をしているのではない、こんな空気の読めない会話をして心を平穏に保たなければ、ディオミディアの真横といういつ死んでもおかしくない場所に留まり続ける事ができないからだ。

 

「それにしてもオラーシャ軍はまだなの!?ボランティア活動もいい加減限界よ!色々と可笑しいわよ!」

 

ジェイミーの苛立ちが募る。

 

ジェイミーはディオミディアから離れてから、自らの持つトレンチガンのリロードを終えると再度突入するために空中で姿勢を整えた。

 

未だディオミディアは健在。やはり二人ではこの存在を倒しきることはできない。

 

それに今二人が履いているユニットは潜入と移動距離に機能を重視したユニットのため戦闘向きではないのだ。

そのため、攻撃に魔力を重視しても火力は伸びず、攻撃に集中しようにも戦闘用ユニットのような機動力がないためいつも以上に回避機動に意識を割くことになりなかなか攻撃ができない、しかも相手がディオミディアという機銃の塊のような存在が相手となってしまっては回避が主体となってしまう。

 

そのためこうやって二人でディオミディアの前を飛び回り、隙があれば攻撃をするというちょっかいをかけて移動を妨害しようとしているが、かの怪異は目の穴飛び回るウィッチ達を無視して航路も変える様子はない。

そしてすでに戦い始めて10分は経ってしまっている。

 

これほど長く戦っているのだ。近くに基地はないとはいえ、この戦闘による光や音は近くの町に聞こえているはずだ。

そこから情報は軍に伝わっているだろうに、一向に軍からの通信や動きが見えない。

可笑しい。異常である。ジェイミーの胸中に疑念が湧く。

 

「まぁ、こんな低温の地域にディオミディアが湧いて出てくるなんて、オラーシャも思わなかったのだろう。だから動きが遅れているのかもしれんな」

 

そんなアレンの返答がインカム越しにジェイミーの耳に聞こえた

 

ネウロイは水と低温を嫌う。そんなは当たり前のことであり、だからこそ人類はネウロイとまだ戦えているのだ。

 

だからこそ、こんな寒いオラーシャの土地にディオミディアが突然湧いて出てきたことが驚天動地の事態なのだ。

 

だからオラーシャ軍も先手を取られ混乱し、動きが置かれている

確かにその通りだろう。

 

だとしてもだ。

 

「そうだとしても、おかしいわよ!ここはネウロイの占領地の目の前じゃなくてオラーシャのど真ん中、ネウロイとの前線のはるか後方なのよ!」

 

 

そうここは、オラーシャのとある土地。前線のはるか後方。

こんな土地にディオミディアが現れたのだ。怪異が来るとするならば前線を突破した場合であり、それならば前線を守るオラーシャ軍が確認して、追って来るに違いない。

 

だが、その存在は見えず、見えるのは湧いて出てきた目の前の怪異のみ。

 

前線から来たのでは無いならばこの怪異は一体どこから湧いて出てきたのか?

 

ジェイミーの疑念は尽きない。

この状況には何かある。ジェイミーの胸中にはその確信があった。

 

だがしかし

 

「確かあやしいな。だがそれは今は後回しだろう相棒?」

アレンの冷静な声がジェイミーの耳に響く。

その声を聞きジェイミーは現状に対して混乱し、死に対して怒っていた思考を正した。

 

確かにアレンの言う通りである。

この疑念の答えを導く前にやらなければならないことがある。

 

オラーシャ軍は未だ来ず。このディオミディアがどこから湧いたのかはわからない。

これは確かに事実であり、疑問点だ。

だがそれは、この目の前の怪異を止めてから考えるべき事だ。 

 

この存在を通してしまえば地獄が広がってしまう。

それは絶対に止めなければならないことであった。

 

そしてこの存在を止めるためには全力で集中して戦わななければならない。

余計なことを考えている暇はない。

 

 

ジェイミーはそう答えを出し、深呼吸をして落ち着いて、ディオミディアを睨みつける。

 

未だ敵は健在。コアの場所はわからず悠々と飛行しておりその攻撃は衰えない。

状況はかなり悪い。だがやらねばならないのだ。

ウィッチだからやらなければならないのだ。

 

「アレン。今からまた突貫するわ。奴の外皮を私のトレンチガンでボロボロにするから援護して」

 

手当たり次第外皮を破壊してコアを探す。

その行動を行うことがジェイミーの意を決した声で紡がれた。

 

「コアの炙り出しってわけか。了解したが......この弾幕だ。かなりきついぞ?」

 

アレンがジェイミーを心配する。

今までは回避だけに集中していたからどうにかなったのだ、それを変えて突貫しディオミディアの機銃の針山に突撃するという無茶。

確かに外皮をボロボロにすればコアも見つかるかもしれないがリスキーであった。

 

そんな心配を聞超えてもジェイミーは考えを変えず答える。

「大丈夫よ。それにこのままじゃ埓があかない。仕様がないでしょ。このまま回避重視で戦っても足止めは無理、なら攻撃重視でいくしかないでしょ」

 

その答えを聞いてアレンは苦笑した。

意を決した勇敢なジェイミーの声。だがその声がかすかに震えていることをアレンは長年の付き合いから認識することができたのだ。

 

この震え声をアレンは指摘しなかった。

自分よりまだまだ年の若い彼女がここまでの勇気を出してやろうとしているのだ。これを指摘して彼女の勇気ある行動を止めると言うのは野暮というもの。

それに彼女の固有魔法とトレンチガンの組み合わせによる殲滅力ならば外皮を瞬く間に削り、うまくいけばそのままコアを見つけ破壊することも可能かもしれない。

 

ならば、相棒である自分がやるべきことは、今震える彼女の後押しして、震えを和らげるのみ。

 

「そういえばお前が前の作戦の時に食ったフォーチュンクッキーの内容覚えているか?」

 

アレンはディオミディアから一度離脱しながら、ジェイミーに質問した。

突然の話の切り替え。それにジェイミーは混乱する

 

「はぁ?いきなり何をいって......」

 

「いいからさ、どんな内容だったか覚えているか?」

 

ジェイミーの困惑を端に起き、アレンは話を続ける

それを聞き答えなければ話が進まないと認識したジェイミーは答えた。

 

「確か、あなたは良き運命に恵まれているとか書かれていた覚えが......」

 

その答えを聞きアレンは笑った

 

「なら、今から突貫しても大丈夫だな」

 

「はぁ?」

 

ジェイミーから呆れた声が聞こえる。それでもアレンは言葉を紡いだ

 

「私の信じている理論を教えておこう」

 

「何?」

 

ぶっきらぼうなジェイミーの声がアレンの耳に聞こえる

それが震えを隠すためのものと分かっているアレンは、その仕草に愛らしさを覚えると共に自らの無茶苦茶な理論を教えた。

 

「物事の半分は幸運によって決まる」

 

「なら残りの半分は?」

 

「運命さ」

 

「なによそれ」

ジェイミーから再び聞こえる呆れた声。

だがまだ話は終わらずアレンは言葉を続ける。

 

「つまりは、この世の全てはコントロールできない幸運と運命でできている。だから、私と組む幸運を得ているお前が、占いでいい運命に恵まれていると言われたお前が今日ここで死ぬことはないさ」

 

アレンが無茶苦茶な理論が語られると、先ほどまで言葉の応酬が続いていたインカムごしの会話に一拍の空白が訪れた。

その空白が終わるとともに、小さな笑い声が聞こえる。

ジェイミーの笑い声だ。

 

「なによそれ。無茶苦茶じゃない」

「そうだ。無茶苦茶な理論さ」

 

二人のクスクスとした笑いがインカムにこだまする。

そして二人は笑い終わると、一体の怪異を睨め付ける。

 

 

「じゃあ、アレン行くわよ」

「ああ、行こう相棒」

 

アレンの無茶苦茶な励ましで意を決したジェイミーはアレンの援護と共にディオミディアに突貫する。

 

吹雪のように吹き荒れる、ディオミディアの大型機銃。

それを針の穴を通り抜けるが如く飛び回り、トレンチガンの射的距離まで近づく。

近くのも難しい機銃による防衛網。

だがアレンが的確に機銃に攻撃し、その防衛網に綻びを作り出す。

そしてついにジェイミーは防衛網を抜け、トレンチガンを構えた

 

ジェイミーの表情は口角を上げ、ニヒルに笑っていた。

そして彼女は口を開く。

 

「BANG!」

 

 

2.

 

ガタンゴトンと列車が揺れている。

そんな列車の車内では客たちが思い思いに移動時間の暇を潰していた。

 

そんな乗客の一人、10代後半の少女が座席に座り眠っている

だがガタンと列車が大きく揺れ頭を座席に強くぶつけた。

 

すると彼女は頭を押さえ呻きながら目を覚ます。

手痛い起床。だが、昔の辛い過去を夢で追体験していた彼女にとってはある意味不幸中の幸いであった。

 

彼女は、ハァとため息をつき、ふと気がついた。

いつのまにか自分の膝の上に新聞紙が乗っけられている。

 

彼女はそれが偶然ではないと確信し、新聞紙を広げる。

 

内容はいたって普通のブリタニアの新聞。

だが見るものが見れば、いくつかの英単語に小さなマークが付けられているのがわかる。

 

見覚えしかない暗号。自らの仕事場で常日頃から使われている暗号であった。

それが、膝下に置かれた新聞に付けられている。

 

つまりは、仕事の指令である。

 

彼女はそう認識し内容を確認していく。

マークがつけられた単語を頭のなかで並べ、その暗号を解いていき、一つの文章となった。

 

『モナコにて怪しい動きあり、至急合流されたし』

 

その文章を見て彼女は思考した。

 

『モナコ』

ガリアの地中海沿岸地方コート・ダジュールのロマーニャとの国境近くに位置する都市国家であり、世界で2番目に小さいミニ国家

その歴史はガリアやロマーニャ、ヴェネティアと深く結びついている。

 

昨今、501の活躍によってガリアが解放された後、ガリアやロマーニャ、カールスラント、果てはリベリオンによる政治的いざこざがモナコで起こっているとは同僚から聞いてはいた。

それだけではなく、欧州の技術が集められて作られた新たなユニットのデモンストレーションが近頃行われると聞いている。

 

まさかというか、やはりというか、三枚舌と揶揄される我が国は、このいざこざに首を突っ込むらしい。

 

下手をしたら、いや下手をしなくても、政治的いざこざが行われている都市国家では各国の同職が集まる地獄のパーティーが開かれることになるだろう。

 

しかも最新のユニットのデモンストレーションときた。

 

厄ネタが満載だ。

 

その事実に再び彼女はため息をつく。

だが、いくらため息をつこうが、仕事が逃げていくわけでもない。

そう彼女は考え、落ち込む自信の心をなだめながら新聞を折りたたもうとした。

 

だがその手が止まった。

よく見ると暗号の続きが書かれていたのだ。

 

彼女はそちらに視線を戻し、暗号を読み解き、そして驚いた。

 

その暗号は今回の自らのコードネームについてであった。

作戦ごとに変わる自らのコードネーム。それにはもう慣れているし別にどんな名前でも彼女には構わなく、驚きもしない。

だが、今回のコードネームには見覚えがあった。

 

このコードネームを使ったのは六年ほど前の1939年のオラーシャでの作戦。

自らの相棒であり、先輩であるウィッチを亡くしてしまったあの作戦でのコードネームであった。

彼女は先ほど見た夢を思い出しながらも思う。

 

『ああ、だからあんな昔の夢を見たのか』

 

 

懐かしく苦く辛い思い出に、列車の窓から見える景色、そのはるか先のオラーシャに向けて思いを馳せながらタバコを取り出した。

 

五年ぶりのコードネームを得た少女

『ジェイミー・ボンド』の名を得た彼女は、カスタムメイドのタバコをふかしながらその行き先をモナコに向けるのであった。

 

 

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