スパイウィッチとウォーロックの遺児   作:haguruma03

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5話 ジェイミーとボンド

1.

 

「は?」

 

口から漏れ出た呆然とした声と共にジェイミーの動きは完全に止まった。

 

ありえない。あり得るはずがない

それが今、この地下駐車場で、従業員をS&W M10を使って撃ち殺した下手人の顔を見た時のジェイミーの最初の思考。

 

それは至極当然のことであった。何故ならばジェイミーは下手人の顔に見覚えがあったからだ。

その顔は今日も鏡の前で見たことがある。生まれた時から見たことがある顔。

 

『ジェイミー・ボンド』の顔がそこにいた。

 

 

驚き惚けた『ジェイミー・ボンド』の表情を見た『ジェイミー・ボンド』がニヒルに笑う

 

変装か?それにしては似すぎている。

姉妹か?ジェイミーには姉妹なんていない。

 

ならばこいつは、私と瓜二つのこいつは何者だ?

 

予想もしない存在の出現にジェイミーの脳は答えを出すことはできず混乱する。

だが、ジェイミーはそんな混乱しているジェイミーを待ってはくれなかった。

 

偽物のジェイミーが手に持ったS&W M10をこちらに向けようとするのがわかる。

 

偽物の持つS&W M10の総弾数は6発。今従業員を撃ち殺したから残り5発。

つまり今偽物は最大5発の.38スペシャル弾を撃つことができる。

だがその程度の攻撃はウィッチのシールドを破ることはできない。

 

偽物との距離は30mほど、銃弾をシールドで防ぎながら走れば容易に接近戦に持ち込むことができる距離。

 

だがそれでもジェイミーはその場から全力で飛び退き遮蔽物となり得る車の影に向かって走る。

 

その理由を説明するなら、全く顔が同じだから。

詳しく語るならば、全く同じ顔を作るのは今の医療技術では不可能であるからだ。

だが唯一それを行う方法がある。

それは固有魔法。

しかし魔法を使うには使い魔の耳が頭に現れるはずである。そんな耳は今目の前の偽物にはない。

だがジェイミーは目の前の私の偽物はウィッチであると、直勘が告げていた。

なら偽物から放たれる銃弾の威力はただの弾丸の威力ではない、ウィッチが放つ魔力を灯した銃弾

強固なネウロイの外皮すら削る驚異の弾丸。

 

「Damn it!!」

 

ジェイミーは罵倒と共に近くの車の裏に飛び込んだ。

車の影に隠れる直前、視界の端に偽物の『ジェイミー・ボンド』に狼の耳と尻尾が生えるのが見える。

 

『やはりウィッチ!』

 

 

BANG!!BANG!!

 

ジェイミーが確信すると共に駐車場の外壁がえぐれていく。

確かに拳銃でも穴は空くだろう。だがこんなマグナムをぶち込んだような大きさの穴は普通開かない。

この火力、そして頭に生えた狼の耳を見る限り、明らかに目の前の偽物はウィッチであった。

 

ジェイミーは思案する。

確かにウィッチのスパイは自分を含めて多くいる。人類を守るための崇高な力を国家利益のために使うウィッチは愚かだが各国家に複数人いる。だが数多の諜報員がひしめき各国の著名人が集まるこのモナコで気軽に銃撃戦を始めようとするウィッチがいるとは想像できようか

 

ここは明日には各国が注目する『浮遊脚』のデモンストレーションがなされる土地

何か事を起こしたら大事となり、下手をすれば明日の式典に参加している各国が敵に回ることになる。

 

そんな事は子供でもわかる事であり、それはこの偽物もわかるはず。

 

だが、ジェイミーは偽物が何故そんなリスクがある行動をしているかの理由が想像できていた。

だからこそ、奴はあの顔をしているのだ。

だからこそ、奴はブリタニアのMI6の諜報員の顔を借りて事を起こしたのだ。

 

その事実にジェイミーは怖気立つ。

つまりは、この偽物が起こす罪は全て、借りた顔の存在に擦りつけられることになる。

つまりは、この偽物が行なった罪のツケは全て私が払うことになるのだ。

最悪の場合、私だけではなくブリタニアがそのツケを払うことになるだろう。

 

『なんで見も知らないテロリストの尻拭いを私がしないといけないのよ!』

ジェイミーはあまりの怒りに歯ぎしりをした。

 

「あれ?ドブネズミのように素早いんだねジョンブル。MI6のウィッチは皆そうなのかナ?」

 

ジェイミーの瞬時の判断を褒め称えるかの様な上から目線の声が駐車場に響く。

その声はとっさに車の陰に隠れたジェイミーを馬鹿にする様な声色でもあった。

 

そんな声を聞きながら、ジェイミーは現在の状況を確認する。

奴が何者なのか、どこの組織のものなのか、なぜ私の顔を知っており私の所属を知っているのか。

様々な疑問や憶測がジェイミーの頭に浮かび上がっては消えていく。

だが、ジェイミーにとってそれらの疑問は後で考えればいい事柄であった。

ジェイミーが今考えるべき大事な事は、この場で顔を借りられた私が偽物を捕まえないと後々にマズイことになるという事実と、その偽物がおしゃべりである事。

 

ジェイミーは、否応がなく厄介なことに巻き込まれてしまった自らの不運に悪態しながら、懐からワルサーPPKを取り出し魔力を解放する。すると同時に体に猫耳と尻尾が生える感触があった。

 

『本当はウィッチの力を人に向けたくは無いし無傷で捕らえたかったけれど、こうなっては仕方ないわね……』

ジェイミーは心の中で歯噛みして銃弾に魔力を込めながら、偽物の質問に答えることにした。

 

「さぁ? 人の顔を勝手に借りる泥棒に答える必要はありませんね。そんな卑しい盗人で仲間殺しのあなたはどこのどなたですか?」

ジェイミーはワルサーの残弾を確認しながら遮蔽物越しに偽物に対して返答する。

おしゃべりな偽者から一つでもいいから情報を引き出そうとするジェイミーの行為。

ジェイミーもさすがに相手が馬鹿正直に答えてくれるとは思っていない。

だが言葉とは普通は気がつかないが多くの情報を示す媒体なのである。

語る内容、喋る言語、言語の訛り、声の音程、声色、単語の呼び方

情報を得たい対象が語れば語るほど、情報が湯水のように落ちてくることになる。

 

だからこそ、ジェイミーは軽く挑発を含む言葉をおしゃべりな偽物に向けて放ったのだ。

そんな行為に対して、クスクスと人を馬鹿にした様な偽物の発する笑い声がジェイミーの耳に聞こえた。

 

「仲間殺シ?彼らがどう思っていたかは知らないけド、此方は彼らを利用していただけで仲間じゃあないヨ。それに顔を借りル?お笑い種ダ。此方が態々使ってあげているのだから逆に感謝してほしいネ」

 

「…はぁ!?」

 

あまりに図々しい物言いに思わずジェイミーの口から怒りの声が漏れる。

そしてそんな怒声が聞こえているのにもかかわらず、偽物の嘲笑は続く。

 

「君のことは話には聞いているヨ?潜入捜査や諜報活動、数多の仕事を確実に遂行するくせに、必要以上に人を助けようとする諜報員らしく無い甘すぎるその精神。君はまるで、見てくれだけはいいけど味がブリタニア料理レベルのディナーのようダ」

 

止まらない偽物の正論と事実に、ヒクヒクとコメカミを引きつらせる。

確かにその通り、だがそれを他人に指摘されるのはムカつくし、しかもそれが同じ顔の人間なら余計にイラつく。

ついでにその言葉の節々に見られる特徴的な訛りがさらに頭に来る。

だがその訛りはあまりにワザとらしく、逆に言葉遣いによる情報の特定を混乱させている。

 

伊達におしゃべりではないということね

ジェイミーは、うちに湧き上がり始めた怒りを宥めながら偽物に返答する。

 

「……それはどうもありがとうございます。ですがその話どこで聞いたのですか? それほど有名になった自覚は私にはありませんので」

 

しっかりと怒りを隠した先ほどと同じ声色のジェイミーの返答。だがその返答もまた先ほどと同じ嘲笑にまみれた言葉であった。

 

「それを敵の此方に聞くかイ?愚かだネェ。君、絶対にその愚かさが原因で君の惨めな人生に終止符を打つことになるヨ。だから逆にありがたく思ってほしいものだヨ? わざわざ此方達が君の貧相でゴミのような人生を有効活用してあげるのだからネ」

 

プツンとジェイミーの頭の中で何かが切れた

 

よくもいけしゃあしゃあとそんな言葉を吐ける。

『もう怒った。湯水のようにナメくさった言葉を垂れ流すその口を永久に閉ざしてやるわ』

ジェイミーは猫耳と尻尾を怒りで毛立たせながら、殺意と怒りを胸中に満たす。

だがそれでも彼女の頭は冷静に思考していた。

 

 

今私は車の影に隠れており、おそらく偽物は未だにこちらにS&W M10を向けたままだろう。

偽物が移動したような足音は聞こえない。そして奴がその場から動いていないということは、奴の周りにあるのは、浮遊脚が乗った手押し車と従業員の死体だけのはず、だから偽物が隠れることが可能な遮蔽物は近くには無い。

 

それにさきほど、偽物が私に撃った弾丸は2発。従業員を殺した時使用したのは1発。S&W M10の装弾数は6発。つまり敵の残り残弾数は最大3発。

私の持つワルサーPPKの現在の装弾数は6発もある。たとえ相手がリロードしようにも相手が持っているのはリボルバーであるS&W M10だ。リロードするには時間がかかり、こうやって呑気に私と会話してくれている偽物からはリロード音もまだ聞こえていない。

つまり打ち合いになれば遮蔽物があり、銃の残弾数が多い私の方が断然有利。

 

リロードに時間がかかるリボルバーなんて銃を諜報員が持っている方が悪い。ジェイミーは自身がどんな戦場に出る時もトレンチガンを担ぐ事実を棚に上げて偽物の不手際を笑う。

 

そうなると、勝負は相手にリロードさせる暇を与えないため今すぐにでも攻撃を仕掛けなければならない。

人の顔を勝手に使い調子に乗った言葉を吐く嘘つき狼には手痛い銃弾を食らってもらおう。

 

そうジェイミーは思い。遮蔽物からワルサーPPKを構えながら顔を出した。

 

「あれぇ? ずいぶん顔を出すのが早かったネェ」

 

顔を出したジェイミーを偽物が出迎える。

確かにそこにはジェイミーの予想通り、偽物が隠れずにそこにいた。

だが、偽物はS&W M10を構えてはいなかった

偽物は式典で公表されるはずの浮遊脚を履いてそこにいたのだ。

 

「は?」

 

今日二度目のジェイミーの呆然とした声。

浮遊脚は明日の式典までロックされており足を入れることもできないと双子からもらった資料に書いていた。だが目の前で偽物が浮遊脚を履いている。

 

ありえないその光景。

だが無情にも、偽物の履く浮遊脚が起動してペラを回し始める。そしてゆっくりとその場で浮遊を始めた。

 

その様子を目にしながらジェイミーは浮遊脚の資料書いてあった利点についてを思い出していた

①飛行脚に適性がないものでも空に浮かぶことができる

②歩行脚には劣るものの飛行脚よりも多くの魔力をシールドや身体強化に使うことができるため飛行脚で持つこともできない大型の火器も持つことができる。

 

言うならば、浮遊脚は空に浮く歩行脚。

それが目の前で偽物に装着されている。

 

「Holy shit!」

ジェイミーは躊躇せず魔力を込めた弾丸を立て続けに発射する。

的確に頭を狙った3発の弾丸。

「かわいい攻撃だネェ……!!」

 

だが、そんな3発の弾丸は嘲る偽物の声と共に展開されたシールドによってたやすく弾かれた。

 

浮遊脚のシールド強度が歩行脚には劣るとはいえでも、そもそもストライカーユニットを履いたウィッチのシールドをワルサーPPKの銃弾で破る事は魔力を伴っていても難しい。そのため、こうなる事は自明の理であった。

 

偽物はポロポロと地面に落下するシールドによって弾かれた.32ACP弾を嘲笑い、傍にある手押し車に顔を向けて手を伸ばす。

 

その動きに連れられてジェイミーも手押し車を見る

その手押し車の上には何か巨大なものが未だ乗っており布がかけられている。

あの手押し車は、先ほど撃ち殺された従業員が『浮遊脚』を乗せて運んでいたものだ。

 

ならば、浮遊脚と共にあの手押し車で運ばれていたあの布に隠された物は浮遊脚に関わる物の可能性が高い。

そして手押し車とは、手で持てないような重い物を運ぶための物

 

浮遊脚に関わる重い物?

 

浮遊脚を履いたウィッチが持つものとはなんだ?

それは武器だ。

そして目の前の浮遊脚は歩行脚と飛行脚の中間に存在するものだと言う。

それは、普通の飛行脚では持つことのできない武器を持てるということだ

 

そこまでジェイミーは考え背筋を凍らせる。信じたくない答えが頭に浮かび上がる。

 

「君は、ハンバーグステーキとただのステーキどっちが好きかイ?此方はハンバーグステーキだネ」

 

偽物は楽しそうにジェイミーに話しかけ、手押し車に乗せられた荷物を隠す白い布をつかむ。

その動きはプレゼントを開けようとする子供の様であり、表情は無邪気そのもの。

だがその捲られる布の下はジェイミーが背筋を凍らせる答えがある。

そんな偽物の動きを止めようと、ジェイミーは再びワルサーPPKを発砲するが、発射された1発の銃弾は先ほどと同じ無為な結果に終わる。

そんな無駄な抵抗を見ながら偽物は嗤った。

 

「なぜかって?それは此方が挽肉が大好きだからサ!」

 

捲られた布の下にあったのは巨大な銃器、いや砲。

MK108 2連装30mm機関砲がそこに存在した。

 

全長1.057m、重量58kg、毎分650発の30x90RBmm弾を撃つと言う銃ではなく砲。

昨今ではジェットストライカーの標準装備とされている機関砲がそこに横たわっている。

 

もはや、勝てる勝てないの話ではない。

ジェイミーは偽物が悠々とその機関砲に手を伸ばすのを見ながら声にならない悲鳴をあげた。

 

拳銃で機関砲に立ち向かうなんて馬鹿げている。

毎分650発の口径30mmの弾丸なんて受けた時には挽肉になってしまうだろう。しかもそれを撃つのはウィッチなのだ。魔力と篭った砲弾が直撃したら挽肉どころか血煙となる。

 

だが今さら、車の影に隠れてもその砲弾によって容易く車の装甲は食い破られる。今から逃げてもその砲弾の速さから逃げる事は叶わない。

絶体絶命。

ジェイミーの耳に死神の足音が聞こえて始める。

 

しかしそんな状況下で、ジェイミーの脳裏に一つだけ生き残る方法が浮かび上がった。

今の自分の持ち物

急がずゆっくりとMK108 2連装30mm機関砲を拾おうとする偽物。

勝ち誇った表情をしていた偽物

『浮遊脚』の機体性能

そして偽物との距離は約30m

それらが合わさり導き出された生き残るための賭け。

決して生存率の高くない賭け、だが悪くない賭けであった。

 

こんなところで死ぬわけにはいかないのよ。

ジェイミーはそう決心し、彼女は即座にその賭けを実行し始める。

 

ジェイミーは走った。人生でこれほど早く走ったことがないと自認するほどに早く走った。

逃げるためではない、ジェイミーは今まさにMK108 2連装30mm機関砲を手に取った偽物に向けて走ったのだ。

 

その様子に偽物は目を見開く。

それはそうだ、ストライカーユニットを履き容易に人を殺しうる機関砲を手にいれた自分に向かって、豆鉄砲しか持たない敵が全力で突っ込んできたのだから。

 

自暴自棄の行動か、それとも違うのか。

偽物にとってどちらにせよ行うことは変わらなかった。

 

偽物は自分に向かって突進して来るジェイミーを粉微塵にするために、MK108 2連装30mm機関砲を彼女向かって構える。

 

避けることも受けることもできない機関砲。

その砲身が自らに向けられようともジェイミーは目を離さない。

 

そしてその砲身の先、偽物である『ジェイミー・ボンド』の顔がニヒルに笑うのが見える。

あざ笑っているのだ『ジェイミー・ボンド』がジェイミー・ボンドのことを。

今まさに偽物によって挽肉にされる彼女のことを。

 

そんな憎い偽物の自身に対して、ジェイミーはポケットに入れていたある物を投げた。

それは細長い物体。どこからどう見ようが投げられたものはただのペンであった。

偽物はその攻撃を見てさらに可笑しそうに表情を歪める。

死が確定した人間の、しょうもない最後の一撃。それが彼女にとてもおかしく滑稽であった。

 

ただのペンの投擲、シールドを張るまでもない。最後の一撃ぐらい受けてやろうと。偽物はその攻撃を体で受けた。

 

 

だが偽物は姿を騙っているのならば知っているべきであったのだ。

『ジェイミー・ボンド』の固有魔法の恐ろしさを

ジェイミーの固有魔法『起爆』

それは球状に近い物体に魔力を含ませた時、それに規定以上の衝撃が加わった時に爆発すること。

そしてその規定の衝撃の大きさは任意に変えることができ、爆発の威力は含ませる魔力量と物体が球体に近いほど上がる。

 

偽物は知っているべきであった。

その投げられたペンが近年流行り始めたペンであり。

その名を『ボールペン』言う名であることを。

そして『ボールペン』はその名の通り、ペン先に球体の金属が付いていることを。

 

 

つまり、投げられたのはただのペンでは無い。魔力が篭った『ペン型爆弾』となったボールペンだ。

 

 

パンッという軽い音がなる。

右肩に突如起こった突然の衝撃と巻き散らかされるインク。偽物の右肩に当たったボールペンが爆発したのだ。

その爆発はあまりに小さな爆発。そんな小さな爆発による、怪我は偽物にはない。だがその攻撃は意表をついたものであり、その認識外の攻撃による痛みと爆発の衝撃は容易に偽物の体勢を崩す。

そして、空中での体勢が崩れるとどうなるか。その実演が目の前に繰り広げられた。

 

「———ッッッ!!」

 

空中に浮遊している偽物の体が大きくふらつき、偽物は本物を嘲る表情をついに崩す。

そりゃそうだ。MK108 2連装30mm機関砲なんて重い物を持ちながら体勢を崩したらこうもなる。それに加えて浮遊脚はまだ、『かなり扱いが難しく不安定なユニット』。そんな新型のユニットに初めて乗った偽物が、浮遊脚を履いているということは陸戦ウィッチである偽物が、熟練の空戦ウィッチ達のようにすぐに空中で体勢を立て直せるわけがない。

 

だが、偽物もただのウィッチではなかった。初めて装備した新型ユニットの特性を瞬時に理解し、数秒のうちに体勢を立て直す。

ただのウィッチならばその場で地面とキスするであったはずの、この窮地を脱するその動きは、数々の修羅場をくぐってきたのだと思わせる動きであった。

 

しかしそれでも数秒間そちらに意識を集中することになる。

 

体勢を瞬時に立て直した偽物は前を向く。

するとそこには自らと同じウィッチの顔がすぐ近くにあった。

そう、体を空中に浮かせ、胴体と地面を水平にし、胴体を中心に体をねじり、足を振り下ろさんとする『ジェイミー・ボンド』の姿がそこにはあった。

 

ты шутишь?(冗談だろ?)

 

偽物の口から溢れる綺麗なオラーシャ語。

 

ジェイミーによる空中での胴回し回転蹴り。まさかの白兵攻撃。

偽物にとって予想外なその攻撃はシールドを張るにはすでに近すぎる距離であった。

 

曲芸じみたジェイミーの蹴り技は風切り音と共に振り下ろされる。

とっさに偽物が腕でガードしようとするがもう遅い。

 

「Good nigh!! クソ野郎!!」

ジェイミー・ボンドの叫びと共に、偽物の脳天に渾身の蹴りが直撃した

 

 

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