書きたいことを書くだけの短編集   作:如月風牙

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入学編 二話 クラスメイト、疲労

 高校生活二日目の一年Eクラスはなかなかに騒がしかった。男子生徒と女子生徒が争っている……というと物騒だが戯れている。といったほうが正確だろうか。その様子を見ながら颯たちは止める気もなく眺めていた。

 

「そういえば達也は魔工技師を目指してるんだよな? レオとの会話で聞こえたけど」

「ん、颯か。おはよう。まぁな、知っての通り俺は実技が向いていないんでね」

 

 教室に入る前に達也たちの声が聞こえたので挨拶次いでにそう話しかける。司波だと深雪と被るため達也と深雪さんと呼ぶことになった。

 

 ちなみにさっき話題に出たレオというのは西城レオンハルトのことで、目の前で争っている男子生徒のことだ。颯は初日に話しかけられ、名前を知り合った程度だが。そして女子生徒はエリカであった。そして達也はお前はどうなんだ? と言わんばかりの目をしているため答える。

 

「俺はまだ決まってないな。魔法科高校に入ったのも理由はないからな」

「そうなのか?」

 

 達也が疑うようにこちらに言う。まぁ魔法科高校に入って目標が定まってないのは俺くらいなのかもしれないなと思う颯。

 

「あぁ、一応CADの調整もできるし魔法自体もできないわけではないからな。魔工技師も悪くないしなぁとは思ってる」

「……なんか適当だな」

 

 先ほどから話題になっている魔工技師というのはCADなどの魔法に関連するツールを作成&調整などを行う技術者のことだ。魔法師に次ぐ魔法業界では需要が高いと言われる。

 

 達也からすればなるべきものが決まっていないというのは想像のできない物だったのだろう。達也はかなし先のことを考えてそうな顔だからなと適当に解釈し達也と会話を続ける。

 

 二科生と一科生の授業には少しばかり差がある。教師の有無。簡単に言えばそれが大きい。ニ科生はあくまでもスペア。そのスペアにわざわざ貴重な人員を割く意味は無いということなのだろうか。

 教えられる人が居ないというだけで生徒のストレスは大きいのかもしれない。あいにくと颯はそんなことを感じなかったため、自己紹介をするカウンセラーの教師(画面上)の話を話半分に聞く。

 

***

 

 そうこうしているうちに放課後となり、少し予習を済ませた後に帰ろうとしたのだが、校門前に昼休みの時に深雪の意見どうのこうので言い争っていたメンツが見えてため息をつきながら近づく。

 

「どうしたんだ? なんかもめてるようだけど」

「颯さん。いえ、少し問題がありまして……」

 

 達也の服をつまんでいる深雪を見た後クラスメイト達……エリカ、美月、レオを見る。そしてもう片方は顔は知らなかったが、左胸にある八枚花弁のエンブレムから一科生ということがわかる。それだけで今の状況がありありと浮かぶ。

 

「なるほど、深雪さんを誘おうとした一科生と達也と帰りたい深雪さんを援護する美月達と……というか昼休みにも似たようなことなかったか?」

「そんなところだ。よくわかったな」

「会話がところどころ聞こえたからな。予測は簡単だったよ」

 

 呆れたようにつぶやく颯。颯からすれば個人の意見を尊重すべきでは? と思うのだが、向こうはそうはいかないようで。

 

「ウィードごときが僕たちに口出しするな!」

 

 なかなかに荒れてらっしゃる。これは今更自分が出たところで何にもならないだろうとため息をつく。なんでこうもトラブルが多いんだろうか。ちょっとムカついてきた颯であったがそこはぐっとこらえる。

 

「同じ新入生じゃないですか、私たちとあなたたちに一体なんの差があるっていうんですか!?」

 

 気性の荒い、といえば失礼だが、レオとエリカよりも爆発したのは意外にも美月の方であった。しかしそれは今の一年の一科生からすればぶち切れものだろう。

 

「なら見せてやるよ! 僕たちと君たちの差を!」

「面白れぇ、是非とも見せてもらいたいもんだな」

 

 レオがさらに発破をかける。おいおい、やりすぎだと颯は思ったがすでに遅く、それにキレた一科生たちはCADを取り出す。

 確かにCADの携帯が常時許可されているのは生徒会役員共と一部の委員会だ。しかしCADの所持が校内で制限されているわけではない。あくまでも「常時」ということは一般生徒にもCADを持ち込むことはできる。

 

「っ……だったら教えてやるよ!!」

 

そういって取り出したのは特化型のCAD。これは拳銃型のCADで多くは攻撃型の魔法が搭載されているものが多い。

 

 しかし先に動いたのは一科生ではなかった。

 

「この距離なら動いたほうが早いのよね」

 

 エリカが警棒を手に一科生のCADを叩く。あれはエリカが持っている警棒型CADだろうと目星をつける。千葉家は武道の家のため、これぐらいはなんともないのだろう。そんな一触即発の空気で動く生徒がいた。一科生の生徒がCADに手を当て、魔法式を構築しているのが見える。

 

「ちっ!」

 

 それを止める為に動いたのは達也ではなかった。達也は「視て」その魔法式が問題ない魔法だということを理解したためだ。しかし動いたのは颯であった。女子生徒の魔法式は突如霧散し、何が起こったのかわからないままきょろきょろとあたりを見渡す女子生徒。

 

「颯……」

「あっぶねぇな……」

 

 小さくつぶやく颯に達也が話しかけようとした瞬間。

 

「止めなさい! 魔法を用いた戦闘は校則違反ならず犯罪行為ですよ!」

 

 その場にいた全員がその声の方を向く。そこには真由美がいた。そしてそのそばには風紀委員が。

 

「一年Eクラスと一年Aクラスの生徒ですね。事情を聴きますのでついてきてください」

 

 その声に委縮したのか多くの生徒が動かない中、

 

「すみません、悪ふざけが過ぎました。後学のために森崎家のクイックドロウを見せてもらうだけでしたが、あまりに真に迫っていたためつい手が出てしまいました」

 

 その達也の言い訳に眉を顰める風紀委員。彼女は確か風紀委員長の渡辺摩利だったなと情報を参照する颯。

 

「それに彼女が出そうとした魔法はほんの目くらまし程度のものでした。彼の魔法も単純なサイオンの塊でした。それも魔法式を弾き飛ばしただけでした」

「ほう……? 君は魔法式を読み取ることができるらしいな。その話だと、いまこやつが出した魔法は術式解体ということか?」

「そうでしょうね、驚きはしましたが……自分はあいにくと、実技は苦手ですが分析は得意でしたので」

 

 なるほどと考える颯。深雪のような優れた魔法師の兄が二科生ある理由は少しだけ分かったような気がする。頭の回転に魔法式を読み取る非常識さ。なるほど、二人は兄妹だと思わざるを得なかった。

 

 しかし多くの生徒は術式解体という言葉に反応を示していた。術式解体は圧縮されたサイオンの塊を対象物に直接ぶつけて爆発させ、そこに付け加えられた起動式や魔法式と言ったサイオン情報体を吹き飛ばすと言うもの。

 つまり力業で魔法を封じる魔法だ。それを易々と使った颯に驚いているものも多い。

 

「兄の言う通り、悪ふざけが過ぎてしまっただけなんです。この件は本当に申し訳ございませんでした」

 

 生徒会候補の深雪のあまりにも真摯な対応に毒気を抜かれたのかそのまま厳重注意ということでその場は済んだ。

 

「君、名前は?」

「一年E組、司波達也です」

「そうか。で、君は?」

 

 どうやら達也に名前を聞いたのち、誰かに名前を聞いているようだ。おそらくは森埼の名前を聞くのだろうと颯は考えていたのだが……

 

「あの、颯さん?」

「はい?」

「呼ばれていますよ?」

「……あ、俺でしたか。はい、同じく一年E組、柊颯です」

「はぁ……今年の一年は厄介なやつが多いな……」

 

 いやはや申し訳ないことをした。現に摩利はこちらをみてため息をついているようだしと、こちらが申し訳なく思う颯であったが今更である。

 

(柊颯……警戒が必要かもしれないな)

 

 そんなことを考えながら、達也は密かに颯をマークすることにした。術式解体を使えるということはかなりのサイオンを持っているはずだ。

 

***

 

 その後は二科生のみんなで帰ろうとしたのだが、一科生の光井ほのかと北山雫という生徒が同行を求めてきた。ほのかの方は魔法式を展開しようとしてきた生徒だったようで……

 

「すいません!」

「いや、大丈夫ですよ。そちらも止めようとしていたのですからお互い様ですよ」

「ん、ありがとう。颯さん」

 

 というわけで仲直りをした。ほのかはエレメンツの一族らしく、光を用いる魔法が得意なようだ。エレメンツは簡単に言うと日本で最も古い作られた魔法師だ。そのころには魔法に対して忌避感があったため遺伝子的に主に逆らえないように依存欲が強く設定されている。本人はそれを自覚している。

 

「じゃあ、深雪さんのCADを調整しているのは……」

「ええ、お兄様よ」

 

 どこか自信満々に言う深雪、どうやら深雪も達也もお互いのことをかなり信頼しているのだろう。それも兄妹の枠を超えそうなほどに。ちょっと怖いと感じた颯であった。

 

「深雪は優秀だからね、調整も楽でいいよ」

「そんな、お兄様の腕がいいから私も安心して預けれるのです!」

「そうか、ありがとう。深雪」

「……いつもこんな感じなのか? この二人は」

 

 颯はあまり達也たちと行動を共にしない為、この桃色の空気についていけないがどうやらクラスメイト達はお決まりだと言わんばかりの顔をしている。改めてこの兄妹の将来が不安になった颯であった。

 ほのかは達也のことをお兄さんと呼びたがっていたが、本人から拒否された。それも「俺の妹は深雪だけだ」という強い意志があったのだろうかと勘繰ってしまう。

 

「ねぇ颯さん」

「はい、どうしましたか? 雫さん」

「颯さんもCAD調整するんだよね?」

 

 雫が話しかけてきたため返す。どうやら雫は颯のことが気になっているようで、結構な頻度で話しかけてくる。それに対して嫌な顔せずに返事を続ける颯。ここはここで独特な雰囲気が形成されている。

 はたから見れば颯はミステリアスな雰囲気が強く、雫もその色が強い。だから、だろうか。ほかのメンバーはその独特な雰囲気に入ることにためらいを持っていた。

 

「なんか……あの二人の間、入りずらいな」

「あんたと意見が合うのは気に食わないけど確かにね。なんか独特よねあの二人」

「だからいちいち一言多いんだよお前は!」

 

 そんな感じでピンクと独特な雰囲気に挟まれるエリカ、美月、レオ、ほのかだったがエリカの警棒型のCADの会話で一旦はまとまりを見せた。

 

***

 

「……これでよしっと」

 

 自室にこもり、自身のCADの調整を行う颯。颯の使っているCADは特化型と腕輪型の汎用型だ。

 特化型は速度重視の代わりに入る起動式が系統の組合せが同じで九つ。

 汎用型は多様性を重視したCADで系統の組合せを問わず一度に最大九十九種類の起動式をインストールできる。

 基本的に颯が使うのは汎用型になっている。

 

 特化型は緊急事態の際にのみ使うようにしている。分けているのは少し整理をつけるためでもあるし、特化型を使うときは気が引き締まるのだとか。

 

「……」

 

 颯は考える。風紀委員長と生徒会長に目をつけられた以上、何が起こるのか全く分からない状況になってしまった。

 何かが起きてからでは遅いと考えた颯は、とりあえず今までは汎用型しか使っていなかったが特化型も使うかもしれない。とのことで特化型の調整と汎用型のバグ取りも行った。

 

「……はぁ。これから面倒なことになりそうだ」

 

 七草家に風紀委員長。そして……

 

「司波、ねぇ……」

 

 どこか、と言うより颯にとって思い出深い家を彷彿とさせる名字だと颯は思案する。

 

「まぁ、警戒するに越したことはないか」

個人的に好みな作品(安寧の天使制作に付き、二回目)

  • SAO 仮題:其の者、ただの愚者につき。
  • 魔法科 仮題:魔法科高校のニ科生
  • 殺戮の天使 仮題:安寧の天使
  • なし
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