書きたいことを書くだけの短編集   作:如月風牙

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入学編 三話 生徒会、風紀委員会

「はぁ……」

 

 早々にため息をついているのは颯ではなく達也の方であった。それに疑問を感じたのか颯は達也に尋ねた。

 

「おはよう、どうしたんだよいきなりため息なんかついて」

「あぁ、颯か。おはよう。それが……」

「どうやら生徒会長さんに呼ばれたみたいよ、達也君。まぁ颯くんもだけど」

「……は?」

 

 いきなりすぎて頭が混乱していた颯に達也がご丁寧に解説をしてくれた。

 

「どうやら七草生徒会長が俺たちに用があるようだ。昼休みに生徒会室に来るように言われた。昼食は持参しなくていいようだが……」

「俺は自作の弁当があるから大丈夫だ……」

 

 もうなんと言うか、思いっきり疲れた表情をする二人は、高校生とは思えなかった。

 

「「はぁ……」」

「おぉ、ため息がシンクロした。どうしたんだよ二人とも」

 

 そこにレオが教室に入ってきて、エリカが絡むといういつもの流れを見ながら、颯と達也はいずれ来るであろう災難に頭を悩ませた。

 

「だからあんたはバカなのよ」

「んだと!……というか本当にどうしたんだよ二人とも」

 

 エリカに突っかかろうとしたレオだったが、あまりの異様さに理由を訪ねる。それほどまでに二人は疲れていた(精神面で)。

 

「……どうやら生徒会長に呼ばれたようで、俺たちが出る羽目になったんだとさ。お兄様曰く」

「お兄様はやめろ」

「うす、すいません」

 

 謎の圧力を体中に浴び、つい謝ってしまう颯。颯の脳内には「達也 怒らせると危険」の文字が刻まれたのだった。

 

***

 

 そしてきたる昼休み、達也と深雪と颯は生徒会室に向けて足を運んでいたのだが、その表情は対照的だった。方や疲労困憊、方や喜々とした表情であった。言わずもがな、前者が達也と颯で後者が深雪であった。

 

(足取りが重い……気持ちで参ってる証拠だな……はぁ)

 

 達也と颯はこれから来るであろう厄介ごとへの疲労、深雪は親愛する兄の活躍ぶりが見れることへのうれしさだろうか。

 

「つきましたよ、颯さん。いつまでも暗い顔しないでください」

「……はい、もう決心はつきました。深雪さん。お願いします」

 

 そういって顔を上げた颯の表情はさながらこれから戦に出向く武士のようであった。

 

「「「失礼します」」」

「はい、ようこそいらっしゃいました。さぁ入って」

 

 どうやら今この段階で何かを起こすつもりはないことに安堵した二人は深雪の後をついていった。そこで行われたのは生徒会役員の自己紹介。

 

 顔がきりっとしていて美人と形容すべき人が会計の市原鈴音。真由美は「リンちゃん」と呼んでいるがどう見ても「鈴音さん」の方があっていると思った颯であった。

 

 幼い顔でまるで子供が迷い込んだのかと錯覚しそうな人が書記の中条あずき。真由美は「あーちゃん」と呼んでいるようだ。このネーミングはばっちりはまっているようだ。本人は嫌がっていた用だが。

 

 そしてもう一人、風紀委員長の渡辺摩利。キリッとしているので風紀委員長にふさわしいと思ってしまう。昨日の時にお世話になった方で、つい頭を下げてしまう。

 

「私は何もしていないぞ!?」

「いえ、その節は誠に申し訳なく思い……」

「ええい! 堅苦しいのは苦手なんだ! やめてくれ!」

「そうですか」

 

 その颯と摩利の漫才? に笑いが生まれたのち、今はいない副会長の「はんぞーくん」という人で全員とのこと。入学式当日に達也をにらみつけたのがその「はんぞーくん」ということを思い出し、理解する。あの人「はんぞーくん」って感じじゃないだろう......

 

 自己紹介が済んだところで、ダイニングサーバーの準備ができたようだ。これは自動販売機の弁当版と考えてもらえればいい。

 

「どうぞ、お兄様」

「あぁ、ありがとう深雪」

 

 どうやらここでもこの二人の雰囲気は変わらないようで、兄の分の弁当を持ってにこやかにほほ笑む妹。これは本当に兄妹なのだろうか?

 

「颯くんは弁当を作っているのね?」

「はい、小さい頃から料理は好きでしたので、よく作ってました」

「私も明日からお兄様の弁当をお作りしましょうか?」

「それは大変魅力的なんだが……何せ食べる場所がね」

「君たちは目立つからね、いい意味でも悪い意味でも」

 

 そんなこんなで会話を続けていると真由美が切り出した。

 

「さて、そろそろ本題に入りましょうか」

 

 その声で、一斉に真剣、あるいはついに来たかと表情をする男子生徒二名。

 

「とはいえ一つ目は深雪さん、あなたに生徒会に入っていただきたいのです」

「えぇ、わたしでよければ謹んでお受けいたします」

 

 まるで前もって決められたかのように淡々と決まる。一つ目ということは二つ目があるのだろう。頭痛がひどくなってきた颯だったが、時間は止まらずに続いての話に入る。

 

「そして二つ目は……」

「ですが、その一席にお兄様を加えることはできないでしょうか?」

 

 ここで深雪が仕掛けた。達也が驚いた顔をしているがなんとなく予想はできた。あのブラコン妹が兄と離れることを良しとするわけがないからだ。

 もしかすると二件目がそうなのかもしれないが、一応早めに確認したかったのだろう。

 

「ご存じの通り、兄は筆記は全国トップクラスです。ですのでデスクワークなどならば問題ないと考えます」

「すみません、生徒会には二科生から選出できないのです。これは私がとかの問題ではなく校則で決められています」

 

 流石に校則を理由に出されれば深雪といえども引き下がらざるを得なかった。真由美の表情も申し訳なさそうに見えたからだ。

 

「......そうですか、分を弁えぬ差し出口、お許しください」

 

 そうなればいくら深雪でも食い下がることはできないだろう。深く頭を下げる深雪を咎めるような生徒はここにはいない。

 

「……そして二つ目、これが本題ね」

 

 その言葉に再び頭が痛くなるのを感じる颯。

 

「司波達也、橘颯の二人に風紀委員に入ってほしいのよ」

「「待ってください」」

 

 当然のように異議を申し立てる。なんかこんなことが増えてきたなと感じる颯であった。

 

「……風紀委員は聞いたところによると武力行使が多いらしいですね。そんな委員会に自分たちを放り込む意味が分かりません」

「颯の言う通りです。二科生というのも問題です。そうなれば一科生の生徒はいい顔しないでしょう?」

 

 マシンガンのように異議を言う二人。しかし摩利はそれを分かっていたのだろう。しっかりと二人の目を見据えて、

 

「実力ならばすでに見ているさ。司波の観察眼に柊の術式解体。それに前例は覆すためにあるものだ」

「ですが……」

 

 というところで昼休終了10分前を告げるチャイムが鳴る。このままだと圧倒的に不利なまま放課後に持ち込みになる。

 

「……どうやら話は放課後まで持ち込みのようですね。三人とも、また放課後に生徒会室に来てくださいね」

 

 周りを見ても深雪は兄が風紀委員になることにためらいなどないだろうし、言い逃れできない状況にまで来てしまった。達也と大きなため息をこらえながら、

 

「「……わかりました」」

 

 そう言うしかないのであった。

 

***

 

「副会長の服部刑部です。深雪さん、生徒会へようこそ」

 

 放課後になり、生徒会室に入るや否や最後の一人である「はんぞーくん」こと服部が颯と達也を無視して話しかけてくることに深雪は苛立ちを見せていた。

 

「いらっしゃい、深雪さん、達也くん、颯くん」

「よっ、来たな」

 

 我が生徒会長を風紀委員長は差別的ではなかったため、気軽に話しかけてきたので、今度は服部が苛立つ番であった。

 

「じゃあ、行こうか」

「? どちらに行かれるんですか?」

「風紀委員会本部だ。本部の方がいろいろ話しやすいだろうしな」

 

 どうやら拒否権など内容だ。いや、逃れられないように外堀と内堀両方埋められた形だろうか。

 

「渡辺先輩、少しお待ちください」

 

 しかしそれでは納得がいかない男がいたようだ。摩利はその声に、

 

「なんだ、服部刑部小丞範蔵副会長」

 

 何やら長い文章で答えた。どうやらこれが服部のフルネームのようだ。長いな、と人並みなことを考える颯。

 

「フルネームで呼ばないでください!?学校には服部刑部で届が出ています!……いえ、今はそんなことが言いたいのではなく!」

 

 そうツッコんだ服部刑部小丞範蔵副会長殿はこほんと咳ばらいをしたのち、

 

「その一年生たちを風紀委員に加えるのは反対です。過去ウィードを風紀委員にした記録はありません」

「仮にも生徒会役員がそれを言うのはどうなんだ? しかも私の前で。それは私に対する宣戦布告と取っていいのか?」

「今更取り繕っても仕方ないでしょう。多くの生徒がその事実を受け入れている。それが紛れもない事実であることは渡辺先輩も承知でしょう?」

 

 確かに今の第一高校のブルームウィードの問題を摘発しようとすればそれこそ三分の一は摘発されてしまうだろう。それをわかっている摩利は言い返せなかった。

 

「だが、実力ならば私が知っている。達也くんには展開中の起動式を読み取り、颯くんにはその起動式を無力化する術式解体を使うことができる」

「……何ですって?」

 

 信じられない表情で疑問を呈す副会長。聞こえた言葉が予想外だったことも相まっているのだろう。

 

「……ですが、私は二人の風紀委員任命に反対します。もちろん渡辺委員長の言い分も分かりますが、あくまで風紀委員の仕事は生徒の鎮圧と抑制です。いくらそのような力があったとしても魔法力の乏しい二科生にそれは務まりません」

 

 感情は混じっているだろうがあくまでも理性的に、一生徒会役員として苦言を呈す服部。しかしそれを許さない人物がいた。

 

「お言葉ですが副会長。兄は確かに魔法実技成績は芳しくありませんが、それは実技テストの科目に兄の能力が当てはまっていないからです! 実践であれば兄は誰にも負けません!」

 

 おお、と颯は思う。だがそうなれば自分の立ち位置はどうなるのだろうかとも思う。まぁこのまま自分だけがはずされた方がよいのだが。

 

「司波さん、魔法師とは冷静にかつ論理的に物事を見なくてはいけません。身内に対する贔屓は仕方ありませんが、あくまでもあなたは魔法師です。身内贔屓でその眼を曇らせるべきではない」

「私の目は曇ってなどいません! お言葉ですが、お兄様の本当の力をもってすれば」

「深雪」

 

 圧倒的に疎外感を感じた颯はあずさの方を向き、うちの知り合いが申し訳ないです。と視線で訴えた。あずさはふるふると首を振って大丈夫ですよと言ってくれた。(視線で)

 

「服部副会長、自分と模擬戦をしませんか?」

「……なんだと?」

「自分とて、妹の目が曇っていると言われて引き下がるわけにはいきません」

 

 どうやら大変なことになったようだ。颯は本格的に疎外感を感じ始めたが、二人に口を出せるほど胆力は無かった。

 

「じゃあ、決まりね。この件は生徒会長権限で受け持つわ。そして模擬戦を行うのは颯くんも同じよ」

「……マジですか? 自分は別に風紀委員にならなくても構わないのですが……」

「……」

 

 視線が痛い。生徒会長と風紀委員長。そしてなぜか司波兄妹もこちらを見ている。

 

「……わかりました」

 

 どうやら俺は巻き込まれたようだ。と颯は考えながらどうにでもなれと思考放棄した。

個人的に好みな作品(安寧の天使制作に付き、二回目)

  • SAO 仮題:其の者、ただの愚者につき。
  • 魔法科 仮題:魔法科高校のニ科生
  • 殺戮の天使 仮題:安寧の天使
  • なし
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