書きたいことを書くだけの短編集   作:如月風牙

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入学編 七話 討論会、襲撃

 その後の顛末を話すとしよう。放送室にいた生徒は確保され、達也の言った通り壬生の身柄だけが保証された。その後の話し合いで生徒の平等を訴える有志団体と生徒会長七草真由美の異例の討論会が急遽開催されることになった。

 

「達也は討論会内部の監視で、俺は外の巡回と……」

 

 単独行動を行うことになっている颯は時計を見る。もう討論会は始まっている。

 

「巡回とは言ったが、ここには不審者も不審物もないしなぁ......」

 

 巡回を初めてから結構経つが、それらしき物は全く見つけれてない。何もないなら別区域に行った方が良いのかもしれないが、そもそもここを離れている間に何かあったら目を当てられない。

 

「さてさて……」

 

 そろそろ休憩を取ろうとした瞬間。爆音が響き渡った。

 

「なんだ!?」

 

 驚き、そのまま講堂へ向かおうとしたのだが、その前に少し考える。

 

(奴等の目的はなんだ? ブランシュたちは何を求めている......?)

 

 そうして考えていると、視界の端にとある集団がどこかに向かっているのを目撃する。

 

「あれは……もしかして特別観覧室か」

 

 あの方向には一般閲覧禁止の書類にアクセスできる設備のある部屋がある。

 

「ちっ、行くしかないか」

 

 とりあえず現行犯を捕えるために特別閲覧室に向かっているであろう集団を尾行することにした。

 

***

 

 そのまま追尾を続けると、案の定特別閲覧室に到着した。颯は隠れながら胸ポケットにあるレコーダーの撮影を開始した。

 

「よし、ここで機密文書をハッキングすれば……」

「それをどうするつもりですか? ブランシュの方々」

 

 ゆっくりと姿を表した颯の声に反応したブランシュのメンバーたち。その中には壬生の姿も。

 

「ちっ、魔法師か! キャストジャミングの準備をしろ!」

 

 その声にメンバーが指輪をこちらに向ける。あれはサイオンの波動を出すことで魔法の発動自体を制限することができるアンティナイトという鉱石を用いた対魔法師最強装備といえる物。

 しかしその値段は高く、貴重品といわれている。それをこんなに用意している。つまり、機密文書……魔法高校の非公開技術を盗み出すためにブランシュ本部から駆り出されたものだろう。

 

「これで魔法は使えないはずだ!」

「……」

「魔法が使えなくなったらだんまりか? やっちまえ!!」

 

 颯が下を向いて黙ってしまったのをいいことに銃を構えるブランシュのメンバーであったが、

 

「魔法師は魔法以外もできることがあるんですよ?」

「がはっ!」

 

 それは颯が相手を油断させるものでしかなく、即座に数メートルの距離を一気に接近したことに驚くがそんな暇を与えないとばかりにみぞおちに肘を入れる。

 

「な……化け物め……」

「あなたたちからすれば俺たちは化け物といえるでしょうけど。犯罪者にそんなこと言われる筋合いがありませんよ」

 

 颯が倒れているブランシュのメンバーを確保していると足音が聞こえた。恐らく壬生のものだろう。

 

「あとは任せるよ。達也」

 

 ここで颯が壬生を捕えたところで彼女の疑問が晴れるわけではないだろうと考えた颯はちょうど足音や声で近くした達也に任せようと決めたのだ。俺が捕まえるよりも達也たちに任せた方がいいと考えたからだ。

 

「ブランシュ……たしか基地はこの近くにあったよな」

 

 そうつぶやく颯は今までにない怒りを表現しいた。

 

***

 

 その後は無事に壬生を確保したエリカと達也は真由美や摩利、十文字たちと一緒に情報交換をしていたが、ふと疑問が達也の口から飛び出した。

 

「それで……颯の奴はどうしたんですか?」

「ん? 君たちの方にいると思ったんだが……違うのか?」

 

 颯の行方が分からなくなったことに疑問を感じた達也は、一つの予想にたどり着いた。

 

「小野先生、ブランシュの基地を知っていますか?」

「……あはは、さすがに九重先生の弟子にはかなわないかぁ」

「遥ちゃんが知ってるのか?」

 

 レオが言った遥ちゃんに疑問を感じ、クラスの一部の男子がそういっているということをエリカから聞く。

 

「そんなことよりも、小野先生」

「遥ちゃんでいいのよ?」

 

 すこしごまかそうとする態度を見せる遥に達也は少し威圧的に、

 

「小野先生、ここに至って知らんふりとはいきませんよ」

「……かわいくない子ね」

 

 そういって地図を取り出して遥が指さした場所は、

 

「おいおい、目と鼻の先じゃねぇか」

「ずいぶんなめられたものね」

 

 レオとエリカの通り、第一高校付近の廃工場にあるとのことだ。

 

「しかし、この距離だと……」

「まさか、柊が乗り込んだとでもいうのか」

「……その可能性もなくはないでしょう」

「な……!」

「それを知っていながらなんで颯にその情報をあたえたのですか!?」

 

 達也は信じられない風に遥に詰め寄るが当の遥自信も驚いた顔をする。

 

「……この情報は誰にも言っていないわ。私が頭で記憶していた情報だから誰かに漏れる筈もない。それは保証するわ」

 

 そのあとの対応は早かった。颯がいるかもしれないとなれば動かないわけにはいかなくなり、克人と達也、深雪、エリカ、レオ。そして剣術部で新入生勧誘期間の際に壬生と争った桐原が参加することになった。

 

***

 

 ブランシュ日本支部の基地である一校外れの廃工場では、数十人の大人が気絶していた。その人の波に立っているのは颯で、その視界は一点に後ずさっている一に向けられている。

 

「ぐわぁ!!」

 

 俺の前で司一が倒れこむ。それを俺は大層冷ややかな瞳で見ていることだろう。

 

「殺しはしない。せめてその罪を償っておけ」

 

 自分でもキレているのがわかる。そりゃそうだ。司一の魔法。邪眼は光波振動系の魔法で、催眠効果を持つ光信号を明滅させて催眠状態にさせる魔法だ。それを用いて壬生先輩やほかのメンバーを操っていた。まさかそれをテロ行為に使い自分は高みの見物といているとは……

 

「……」

 

 そして俺は得意な重力加重系魔法を用いて強引に司一の意識を消し飛ばす。加重と減速を交互に行い脳を揺さぶる方法だ。

 案外あっけなかったな。キャストジャミング用のアンティナイトを大量に準備していたことは確かに驚いたが、それだけだ。

 

 魔法師が魔法しか使えないと思い込んでいる奴が多すぎる。たしかにそうなんだが、師匠に体術や銃に対する防衛術も習っている自分がその程度で止められると思ったら大間違いだ。

 

「精々数十人程度で俺を止めれると思うなよ」

 

 口調が変化しているのを感じ取りながらも後ろから聞きなれた足音が聞こえた。恐らく達也たちが到着したのだろう。

 

「颯!」

「やっぱり来たか、達也。司一は確保した。ほかのブランシュメンバーも気絶しているだけだ。安心してくれ」

「柊! これはどういうことだ!」

 

 十文字会頭が俺の方に詰め寄り、どなる。

 

「危険は承知です。反省もしています。ですが、自分には他人を操って非道に行うという司一の行為がどうにも許せそうにありませんでした」

 

 そういってはじめて気づく、そこにいたのは達也と十文字会頭。そして深雪さんの三人だけだった。

 

「エリカさんとレオはどこに行ったんです? もう一人俺の知らない人もいたと思うんですが」

「千葉と西条と桐原は周囲の確認に行っている。本当に反省しているんだな?」

「はい。今回は申し訳ありませんでした」

 

 そういって深く頭を下げる。いくら何でも今回はやりすぎてしまったと後悔している部分もある。しかし誰かの意思を捻じ曲げるという行為だけは到底許せるはずがない。そうなって最終的に苦しいのは本人なのだから……

 

「……わかった、今回は不問とする。この件は十文字家にもっていくが、構わないな?」

「はい。すいませんでした」

 

 十文字家の力をもってすれば事件を変えて報告することも可能だろう。それほどまでに十師族の権力というのはすさまじいのだ。

 

 そういって十文字会頭は報告のためか俺たちから離れていった。残ったのは俺と達也と深雪だった。

 

「……達也は九重先生の弟子だったよな」

「あぁ」

「九重先生も一目おいてる弟子だし、お前はできる限り相手にはしたくないなぁ……めんどくさいし」

「おい、なんだその適当な理由は」

「では颯くん、こうなった経緯を教えてくれるんですか?」

「経緯も何も、殴り込みして全員気絶させただけですよ」

 

 事実そうなのだから仕方ない。殴り込んで一人ひとり重力系加重魔法でどうのこうのしていっただけだからな。

 

「「……」」

「……紅葉家の消えた天才。聞いたことあります?」

「……ああ、七年前に唐突に表舞台から姿を消したっていう紅葉奏のことだろう?」

 

 いきなりの質問に疑問を感じたが即座に聞きたかった答えを出す達也。さすがだな。

 

「紅葉奏。七年前に消えた紅葉家の長男だ。理由は病死ってことになっているがそうじゃない」

「まさか……」

 

 深雪さんが声を上げる。恐らく俺の正体に気づいたのだろう。

 

「まぁ、俺がその紅葉奏だ。まぁもうすでに家を追い出されてこうして名前も変えてここに放り出されているんだがな」

 

 自嘲気味に笑う。紅葉奏のことを話すのは柊颯になってから初めてだが、二人の表情を見る限り悪意のようなものはないようだ。

 

「颯、お前の目的は何なんだ?」

 

 警戒心をあらわにして深雪を体で守るように割り込ませながら問いかける達也。その動きは決して三日三晩でどうこうできる動きではなく、洗練された動きであった。

 

「目的なんかないさ。ただ単に俺は柊颯として普通の高校生活を送りたいだけだ。その平穏を脅かすものは駆逐する。それだけだよ。だから君たちのことを嗅ぎまわることも深雪さんに危害を加える気もない。これだけは保証する。友人に手を出すようなことはしたくない」

「……そうか、ならいい。しかしそれが嘘だった場合は」

「その時は殺すなりなんなりすればいい。俺はそれぐらいの覚悟がある。もちろん、柊颯として」

「……分かった。じゃあ友人として、改めてよろしく頼む」

 

 そういって握手する俺と達也。俺が嘘をついていたとしても達也ならそれを判断できる力があるだろう。俺の本心が本当だということは伝わったようだ。

 

 深雪さんが置いてけぼりな気もするが、あとで達也が補足情報を入れるだろう。どのみち、達也たちがあの家に関係しているって事だけはわかっているのだから。

 

「じゃあ、行こうか。達也、深雪さん」

 

 そういって俺たちは建物から出ることにした。

個人的に好みな作品(安寧の天使制作に付き、二回目)

  • SAO 仮題:其の者、ただの愚者につき。
  • 魔法科 仮題:魔法科高校のニ科生
  • 殺戮の天使 仮題:安寧の天使
  • なし
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