アルゴから貰った情報を数分で頭に叩き込んで、俺は「始まりの街」を飛び出した。
北西ゲートから飛び出し、ただっ広い野原を駆け抜ける。数分も経っていれば俺と同じように戦うことを決めた一定数のプレイヤーがいたのだがやはりと言うか、沸き上限が有ったようで多くのプレイヤーが手持ち無沙汰となっていた。
「おい! それは俺の獲物だぞ!?」
「うるせぇ! 早いもん勝ちだこんなの!」
そんな各地から聞こえる罵声を聞き逃しながら足は野原を越え、深い森に入る。
「……えっと、ここは」
頭に叩き込んだ情報を元に道を走っていく。目指すは「ホルンカ」という村。アルゴ曰く、そこで強力な片手剣の入手クエストがあったのだと言う。ついでにと言うことでそのクエストの詳細も載っていた。ありがたい。
そうして深い森の獣道とも呼べる小径を進むこと数分。木造建築が並ぶいかにも村と言う感じの村が森にひっそりと佇むように存在していた。
そしてその中にはプレイヤーはまだ居なかったが、恐らくあの盗み聞きしたあのテスターはすでに来ているのだろう。それで同じクエストを受けているんだろうな。
「まずはアルゴに連絡を……っと」
メニューからフレンド欄を出して一人しかいない《Argo》の文字を押してフレンドチャットを呼び出す。
そこには先ほど教えてもらった情報が示されている。そしてそのチャットに打ち込む。
チャットは近未来的に空中に浮かぶ透明のキーボードを打ち込むことで操作できる。
して、チャットを打つ。内容に変化は無し、道順も教えてもらったものと同じだった、ありがとう。
そしてフレンドチャット限定でできるプレゼントにチマチマとモンスターを倒しながら溜まっていたコルの半分を受け渡す。
最速というには何回かエンカウントしたのだが、体が思った以上に軽く、剣道もやっていたこともあって剣の扱いに躊躇いはなかった。
でもまぁ重さ的に剣道の持ち方だと軽すぎるし実用性が低いと感じたため構えは半身で片手で構える形にしている。
『ちょっ……かなり高額だガ、いいのカ?」
『いいですよ。せめてものお礼です』
そんなやりとりをして早速装備の確認を行う。
スモールソードと初期防具だけだったため、素材アイテムを全部売り払い、残ったコルで防具を新調する。革のハーフコート。これが一番防御力が高く、軽かった。
そして、武器屋で売っていた片手剣は耐久度が低い代わりに攻撃力が高い《ブロンズソード》と攻撃力が低いが耐久度が高い初期装備の《スモールソード》どちらがいいのか、と言う問題なのだが……。
「いや、買わなくていいだろう」
耐久度というものは装備欄を見れば分かるのだが、何せレベリングの際にはどう考えても消費がでかいし、初期村の装備よりは第二拠点の村を探してその武器を買った方が効率がいいだろう。
それに初期でこそ装備によるゴリ押しができるが、後半になりに連れてプレイヤーのスキルも必要だろう。
それに、片手剣のソロでは一撃の攻撃力よりも速度が重要だとこの数回の戦闘で学んだ。ソロはいつどんな不慮の事故に遭うかわからない。そうなる前にすぐに離脱出来るスピード型がいいかなと考えた。
いやもちろん防御力も重要だが、それを上げるよりは攻撃をあげた方がいい。個人的ステ振りは速度>攻撃>防御だと感じている。
だがまぁ、レベルアップ時のステータスアップのポイントは俊敏性と筋力だけなのであまり考えなくていい。
やはり攻撃は最大の防御というので、攻撃される前に攻撃すればスタンも取れる。
「えぇっと、確か一番奥の民家だったよな……」
そうしてダッシュで民家に駆け込んだ。無断で入るのはなんか失礼な気もしたが、俺もゲーム内では家に入って勝手にタンスとかツボ割ってるから同じかと納得して入ることにした。
***
クエストの内容は、民家にいた女性の娘の病気を治すためにとあるモンスターから出る胚珠が必要だという。
しかしその胚珠を出すモンスターが中々に手強く、そして花付きという珍しい個体だからどうしようもない……といった感じの内容だった。
「……結構時間かかったな」
メニューを開いて時刻を見ると気がつけば午後七時半を過ぎていた。つまり地獄が始まって一時間足らず。しかし休んでいる暇はない。
これでも徹夜は慣れている。筋トレや勉強をしていたら時間がある二時を過ぎていたなんてよくあることだ。
「よし、行くか」
自分の頬をパチンと叩いて村の外に向かうことにした。
***
『リトルペネントの主な攻撃方法は先端の尖った茎での切り払いと突きダ。そして厄介なのハ口から出す腐食液ダ。これを食らうと耐久も削られて防具や武器が壊れる可能性があル。リトルペネントには実付きと花付きがいてナ。花付きがそのクエストでの条件なんダガ……実付きが厄介でナ。実が割れてしまうと周囲にリトルペネントを呼び出してしまウ。気をつけナ』
今回狩る対象のリトルペネントというモンスターの詳細まで載っけてくれていた。まじでありがとうアルゴ。
そして花付きの可能性は通常種を狩る毎に上がっていくそうだ。
「(茎での切り払いは思ったよりも範囲が広いから後ろに下がるか背後を取る……突きは目で見て弾けれるから問題なしで……腐食液は発動前に溜め込む動作があるから、サイドに避けるかスタンで回避できる。そして防御力が低くて、弱点はウツボ部分と太い茎に接合部……っと)」
数体倒し、範囲や溜め動作を頭に入れながら戦う。先ずは拠点にすぐに戻れる場所で狩り、慣れてくれば数の多い奥地へと足を運ぶ。
その際にしっかりと特性を頭に叩き込んで戦う。この並列思考も慣れてきた。やっぱり剣道やサッカーとかの運動でも頭を使いながら動くからそれがいい経験になってるかもしれない。
「スキルも決まったことだし、これで行こうか」
スキルスロット二つのうち一つは「片手剣スキル」もう一つは「索敵」にした。隠蔽でも良かったのだが、リトルペネントには隠蔽は効きにくいとのこと。その理由は視覚でプレイヤーを感知しないからだという。
「……ふぅ」
数十分かけて二十匹目を狩り終わった瞬間、けたたましいファンファーレが響き渡った。
「レベルアップか……無駄に音量大きいからビックリした」
というわけでレベルアップによるステータスアップポイントを即座に筋力1俊敏2を振り分ける。
そうして少し時間を置いた後に、再び狩りに身を投じることにした。
***
その後三十匹ほど倒し、ようやく花付きを討伐することが出来た。
そして一応ポーションを飲み干し、ホルンカの村への道を戻り始めようとした瞬間。
「ーーっ!?」
索敵スキルがモンスターの登場を感知した。
しかしその数がおかしい。まるで実付きを攻撃してしまったかのような……
「しかもこっちに近づいてくる!?」
どんどんと反応が大きくなってくる。《スモールソード》を鞘から引き抜き、構える。今はまだ見えないが、あの草むらから……
「っ!」
しかも先頭にいたのはプレイヤー。しかし表情に焦りはなく、むしろ余裕に満ちていた。そうしてモンスターを引き連れたまま俺の隣を駆け抜けて行き、そのまま姿を消した。
「……」
残されたのは二十匹を超えるリトルペネント、二十どころじゃない……! 実付きを二体割ったのか!?
「後ろに行っても行き止まりだったし……前に行くしかないのか」
目につく限り植物の壁、壁、壁。しかもその中に実付きも数体いる。密集し過ぎて剣を振れば当たってしまうだろう。
「しかし……あいつ、知らなかったんだな」
後ろにいる男性プレイヤーの悲鳴が聞こえる。一応身構えていたため、少しだけ避けるように動けばリトルペネントのタゲの半分はあの男に行ってくれた。
「……」
助けに行きたいのは山々なのだが、目の前の奴を無視するわけには行かない。
それに、自分を殺そうとした奴を助けるなんてしない。幾ら死ぬなら誰かを庇っての俺でもあんな性根の腐った奴の身代わりにはなりたくない。
「……っ!」
まずは付近にいる一体を目掛けて右上から左下へソードスキル《スラント》を正確に弱点向けて振り下ろす。
「(数が多い以上、一点突破を仕掛けるしかない)」
しかし、それで逃げたとしてもアイツと同じようなことになってしまう。ならば下がりながら一体一体チマチマ倒していこう。
***
「ぐぅーーっ!」
薙ぎ払いを避けきれず、もろに受けてしまう。痛覚は実際よりはないがそれでも無いわけではない。鈍い痛みが体を襲う。
微かにレモン風味のするポーションを飲み干し、HPバーが徐々に増えていくのを確認しながら向き合う。
まだ経験が浅いため、弱点を一発でつける訳じゃないため思ったよりも耐久値が下がってきている。防具は避けれているから問題はないが、腐食液をまだ受けてない以上どれほど減るのかが不明瞭なのも緊張感を増させている。
「(残りーー七匹っ!)」
気がつけばもう見えるほどしか残っていない。希望の光が見えてきた。もう一匹を切り倒して、残り六匹。
もう既にモンスターを呼ばれたところとは離れており、あの男がどうなったかは分からないが。悲鳴とモンスターの破裂音とは別の、もっと重い音が聞こえたことからも結果はお察しだろう。
「ーーっ……」
気を抜いている暇はない。そんなことに思考を割いている余裕はない。今は目の前に集中しろと、スモールソードの柄を握る。
「……はぁーーっ!!」
気を抜くことなくもう一匹に目をつける。残っている六匹のうち実付きが一匹それにはタゲを取って引きつけてから通常種を叩く。
「(やべぇ、頭が痛い……身体がだるい)」
長時間による新環境での集中。脳への負担がマッハだ。徐々にだが、集中力が下がってきており、実付きを間違えて攻撃してしまいそうだ。
「これでーーっ!」
最後だ! 残った一体を切り倒す。しかし、後ろから現れた実付きに気が付かなかった。
「ーーっ!」
しかし実付きは攻撃はしてこなかった。いや、むしろ攻撃してくれた方が嬉しかったまである。
「……マジか」
そうして実付きは、自らの身を破裂させた。
まさかの、ここにきてβテストとは違った要素に、絶望を抱くが、そんな暇はない。直ぐに構える。逃げれるのなら逃げたい。
しかしリトルペネントはその体格とは思えないほど最高速度が速い。レベル2の速度ではどうやっても追いつかれ、別のMobに襲われるとは、アルゴの言葉である。
「ーーふぅ……」
息を吐いて、落ち着く。リトルペネントの実の効果は周囲にいる仲間を集めるというもの、ワンチャン。ワンチャン周りに仲間があまりいなければ……
「なーんて、都合が良過ぎたな」
実付きの破裂時の仲間を呼び出す範囲はそのエリアだという。それならば二十匹ほどいてもおかしくないよな。
「……」
剣を構える。未だ耐久値には余裕がある。だがそれはあくまでも弱点を突いていった場合の話。スラントで二発。最低基準はそれだ。
しかし、踏み込んで、体を捻じ込むように打ち込めばダメージが上がるのも知っている。しかしまだソードスキルによって身体が引っ張られる感覚に慣れてない。
「(でも、やらなきゃ死ぬ)」
ならばするしかない。軸足と腕を鞭のようにしねらせて、放つ!
「ーーおぉぉぉぉ!」
自分でも珍しく雄叫びが喉から出たものだと感じる。そのままスラントが弱点にぶつかり、直ぐに通常攻撃で倒す。
「……」
頭痛を無視して、目の前にある敵だけに集中する。痛みは忘れろ。今は目の前の敵を刈り取れ。
***
ーー気がつけば、十分ほどが経っていた。ただひたすらに剣を振るい、躱して切るを繰り返した。
「……帰るか」
気がつけばレベルは3になっていたが、それに気付いたのはホルンカの村に無事着いた後だった。
「初日からこれかぁ……」
少しうんざりしながら帰路を辿り、ようやくホルンカの村に到着。そして民家に入り、胚珠を渡す。そうしてようやくアニールブレードを手にする。
アニールブレードはスモールソードより少し重く、重心も少し違うようだ。ここまで細かいのかよと少し呆れながら数回素振りする。
時刻は八時半。総合討伐数は約六十匹程だろうか。もう疲れたのでとりあえず今日のまとめをアルゴに送り、宿を借りて眠りにつくことにした。
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参考文献
・ホルンカの村への行き筋《第八巻366p》
・ホルンカの村の内装《作者の脳内補完》
・スモールソードとブロンズソードの使用《第八巻371p》
・アニールブレード獲得クエストの発生場所《第八巻371p》
・アニールブレード獲得クエストの内容《第八巻373p》
・アニールブレード獲得クエスト受注後の時刻《第八巻373p:キリトは七時》
・リトルペネントの特徴《第八巻378・379p》
・何故隠蔽スキルを取らなかったのか《第八巻401p》
・リトルペネントの最高速度《第八巻398p》
・ソードスキルのブースト(体の捻り等で威力を上げる方法)《第八巻379p》
・ホルンカ到着の時刻(キリトは九時。リトルペネント約百二十匹ほど狩っていたため少し主人公:Tougaが早く着いた)《第八巻408p》
個人的に好みな作品(安寧の天使制作に付き、二回目)
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SAO 仮題:其の者、ただの愚者につき。
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魔法科 仮題:魔法科高校のニ科生
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殺戮の天使 仮題:安寧の天使
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なし