書きたいことを書くだけの短編集   作:如月風牙

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SAO 2022,11,30→2020,12,2 状況把握と攻略会議。

 SAOサービス開始からおよそ一ヶ月。死者はおよそ二千人にも及んだ。

 その間俺はアルゴと情報通達の共有……主にベータ版と製品版の情報の差異を調べることにした。

 とは言え、情報を俺が一方的に送り付けているだけであって、アルゴが持っている情報を俺が二度送っている可能性もあるのだが、やはり恩は報いなければ。と言うのが俺の信念の一つでもある。

 

 

 

 ーー結論を言えば、第一層時点でのベータ版からの差異は細かなモンスターの生態変化だけで、クエスト内容とその報酬。マップ等の大きな変更は見られなかった。

 

「(……ベータ版では二ヶ月で六層まで登れていた。だがそれはあくまでゲームオーバーありきでの話)」

 

 幾らリアルの事情でログインしていた時間が少ないからって、ネット廃人とも呼べる千人が集まってこの結果。

 

「(そして一ヶ月で第一層は攻略できていない)」

 

 これは明後日に第一層攻略会議が行われるのだと言う。その会議に一応様子だけでも見に行こうと考えている。現に迷宮区のマッピングは済ませてあるし、レベルもある程度は上がっている。

 

 

 

 というわけで現在の確認。

 

 レベルはマージンを取りつつ10ないし11になりかけているところだろうか。流石に低レベルの敵を狩るのでは経験値のうま味が少ない。

 仕方ないのでトラウマ(?)のリトルペネントの実付きをわざと割って効率良く倒すという作業をしたり、クエストを回ってその際に得られる経験点でどうにかここまできた。

 

 そして武器。これはアニールブレードを使っている。あのクエスト……名前を《森の秘薬》クエストというらしい……は何度でもできるいわゆる周回クエだったが、その際にアニールブレードを所持していないとアニールブレードが報酬としてもらえるようで、アニールブレードの強化を失敗する度に武器をインゴットにして新しいのを取るというのを繰り返しているうちにようやく+5。3S2D(鋭さプラス3と丈夫さプラス2の略称)にまで到達した。

 

 今現在ではカーディナル(AI型の運営のようなもの)から修正を受けており、一回クリアすればあとは固定報酬になるようになってしまった。

 

 防具はトールバーナで買える軽くて丈夫な鉄の胸当てと革のコート、革のズボンを身にをつけている。

 

 スキルは片手剣スキル、隠蔽スキル、索敵スキル。

 そしてレベル10になってもらったスロットには疾走スキルを取った。

 これは文字の通り、走る速度が熟練度によって相対的に増えていき、ダッシュ時のスタミナ消費も抑えれるというせっかちさんにはおあつらえ向きのスキルだ。それ以外にも普通に速度が上がるため狩りの効率も上がる。

 他にも投擲スキルもいいと思ったがピックを買うコルが勿体ないとの判断である。

 

 

 

 そしてこの一ヶ月での生活習慣は大きく変化を迎えた。

 

 早朝四時起床。この際に目覚ましシステムというものがあって強制的にその時間に起こしてくれるため、不自由はない。まぁここまでは剣道とかで似たような時間に起きているため問題はない。

 

 四時半から十時ほどまでがフリーなためレベリングや強化のための素材集めを行なっている。だが大抵の時間は第一層を駆け巡り、ピンチになったプレイヤーに手を差し伸べたりしているのだが。

 

 十時から十二時の間に昼食。狩りが長引くから昼食の時間は前後する。食事はしなくていいのだが、やはり人間。偽物であっても空腹感はあるため食事はしておく。一回2日抜いたこともあるが気にしなければ一週間は行けそうな感じだった。

 

 そして昼からは情報収集とレベリング。この世界観なためレベリンングがほとんどを占めているのは仕方ないだろう。もちろん迷宮区でコボルドを狩っている。

 

 

 

 現在状況はそんな感じだ。

 

 

 

***

 

 

 

 狩りの時、俺は基本的に一人で作業的にこなしている。他人と関われないほどコミュニケーションがないとは思っているのだが。

 

 やはり知らない人間に自身の命を賭けれるか、と問われれば俺は首を横に振るだろう。

 

 いきなり命を奪おうとするプレイヤーがそう多くいるとは思えない。だが、どうしてもそう言ったリスクを考えてしまうのだ。

 

 そんな俺だが、今日は珍しく二人のプレイヤーと共に行動をしていた。

 

 一組の男女。それぞれ装備は同じものだが男女の差もあり若干のデザインの差がある。手にしている武器は男が片手剣。女が槍を手にしている。

 そんな二人と俺は迷宮区ではなくフィールドでモンスターと相対していた。

 

「はあっ!」

「……せりゃ」

 

 気迫の籠った一撃を喰らい、コボルドがポリゴンと化す。結果を示すウィンドウを結果を見ずに消し、賞賛を上げる。

 

「うん。二人とも連携はバッチリだね。後は個々の力の強化をしていればある程度はいけると思うよ」

「「は、はい! ありがとうございます!」

 

 そうやって喜びをあらわにする二人。この二人は丁度フィールド移動中に見つけた二人組で、見ていて危なっかしかった。

 

 ポーションの飲むタイミングは教えずに自分のことで頭いっぱいになったり、構えをせずにしているからかソードスキルが発動しなかったりと。

 ただ連携はピカイチだったし、本人らも仲は良さそうで時折笑い声の聞こえていた。今の状況では珍しい二人だった。

 

 そんな二人組だったが、狼のハウリングで仲間に囲まれたのを見て助太刀したところ……

 

『私たちに戦いを教えてください!』

 

 と何故か教官役に抜擢され、今に至るということだ。

 

「後は……ジュンが如何にヒカリを守れるかってところだね。片手剣で盾を持っている君が恐れずにいればヒカリも気を楽に槍を振るえるだろうし」

「はい! 精一杯護ります!」

「よし、じゃあここまでにして後は休んできな。休息も大事なことだしね」

 

 そう言って二人はトールバーナに駆け込んでいった。

 

 あの二人は多分いろんな人を明るくさせてくれるだろう。こんな暗い話が多い世界だ。少しぐらいはあのような人たちがいてもいいんじゃいかと思いました。まる。

 

 

 

***

 

 

 

 というわけで十一月も最終日となった今日。明後日、つまり十二月二日の夕方ごろに迷宮区の最短距離に位置している街であるトールバーナにて第一回第一層攻略会議が行われる。

 

 SAOは現実の四季とリンクしている。夏ならば暑く、冬ならば本気で寒かったりするのだという。

 茅場のゲームではなくこれはあくまでも第二の世界だと言っていてならないようなこの設定は、もちろん製品版でも適応されていたようで……

 

「……さむ」

 

 始まりの街某所。プレイヤーネーム《Touga》こと俺は始まりの街で少しだけ用事があったためその帰りでそんなことを呟いた。

 

 用事といってもさして重要ではない……訳ではないが、黒鉄宮の様子を確認しにきていた。

 黒鉄宮というのは上に行くに連れエリアが狭まっていく風潮にあるこのSAOの舞台である《浮遊城アインクラッド》において第一層の二割を占める大きさの始まりの街中央に存在している黒い王宮のような建造物だ。

 

 ただの建造物ではなく、その中の中央部がβテスト時ではプレイヤーの復活場所だったという。しかしこのデスゲームにおいてその機能は停止しており、その代わりに全プレイヤーネームの書かれた石板がそびえ立っている。

 そしてプレイヤーネームに横線の引かれたプレイヤーがゲームオーバーしたという事だ。だからこそ内側からもプレイヤーの死亡数が分かったということだ。

 

 今日はその人数を数えに行っていたのだ。そして一ヶ月経ち、現実世界からのアクションが何も無かったためか、面白半分で飛び降りていったプレイヤーも少なくなった。

 

「……暗いな」

 

 時刻は昼間にも関わらず、始まりの街内は暗く澱んだ空気が充満していた。一人で街道を歩きながら路面に座り込んでいるプレイヤーを見ると、小さい子供の姿もちらほら見受けられた。

 

「……」

 

 何も出来ないのがむず痒くて仕方ない。そんな子達を見てもどうしても考えてしまう。今話しかけたところで俺にはその問題を解消できるほどの力がないことを。

 

「……彼女なら」

 

 彼女なら、どうしただろうかと、思わず弱音が出てしまう。俺が憧れ、この世界にはいない彼女ならば、後先考えずに話しかけたのかもしれない。

 

 ーーだが、俺にはそれが出来ない。

 

 結局のところ。俺は“あの時”から成長できていないのだろう。自分では干渉せず、ただ流れに身を任せるような。

 それが悪いとは言わない。多くの人々はそうして生きているのだということは百も承知だ。

 

 でも、それでも。俺はそうして彼女のような無鉄砲で考えずに決めたことには一直線な彼女のように生きれたら良かったと、何度も思い続ける。

 

 それは俺がどんなになっても変われないのだろうと、心底からそう思える。

 

 

 

***

 

 

 

 来たる第一層攻略会議。トールバーナの街には現時点での上位プレイヤーが多く会議が行われる場所に集結していた。そこにはアルゴの姿もあった。

 

「ヨウ。トー坊。何時も情報ありがとうナ」

「まぁ、いいよそれは。俺が勝手にしていることだし」

「大抵既存のものが多いケド、擦り合わせには助かってるよ」

「そう言ってもらえると助かる」

 

 軽くだけ会話を終わらせ、会議が行われる場所である噴水広場に入る。そこにはフチに座って寛いでいるプレイヤーの姿が多く見られた。

 アルゴは参加しないようで、少し離れた場所で隠れるように様子を伺っていた。

 

「(それにしても、圧巻だな)」

 

 プレイヤーの総数は数えた限りだと四〇人余り。これだけ集まっただけでもまずはいいと考えるべきだろう。

 

 周りを見ながら顔を覚えていく。やはり多くは男性プレイヤーだ。やっぱり女性プレイヤーはすくな……い。

 

「(………………)」

 

 思わず、思考が止まってしまった。いや、たしかにお前がいる可能性は否定できなかった。コイツはそういうのにハマっているのは何となくだが分かっていたが、なんでよりにもよってこのゲームを……

 

「(和人……)」

 

 そこには、血のつながっていない。いわゆる複雑な関係である戸籍上では弟である桐ヶ谷和人の顔をしたプレイヤーが、フードを被ったプレイヤーと会話をしていた。

 

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参考文献

・サービス開始から一ヶ月後の死者《第一巻66p》

・βテスト時の最高到達層《第一巻52p》

・武器強化の概要《プログレッシブ第一巻34・35p》

・第一層攻略会議の日程《プログレッシブ第一巻28p・公式サイト年表》

・SAOの気象設定《第八巻12p》

・黒鉄宮の情報《第一巻73p》

 

個人的に好みな作品(安寧の天使制作に付き、二回目)

  • SAO 仮題:其の者、ただの愚者につき。
  • 魔法科 仮題:魔法科高校のニ科生
  • 殺戮の天使 仮題:安寧の天使
  • なし
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