書きたいことを書くだけの短編集   作:如月風牙

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SAO 2022,12,2 攻略会議と望まれない再開

「……」

 

 和人がここにいるとは思わなかった。いやまぁガチ廃人ゲーマー(褒め言葉)の和人がこのゲームに興味を抱かないはずもなかった為、覚悟はしていた。

 ベータテスターである和人はβテスト期間中は学校から帰ってくると即部屋に篭って晩飯が始まるまでずっと潜っていた。そして深夜帯にも潜っていたのは確認済み。やり込んでいるのは妥当とも呼べるのかもしれない。

 

「……?」

 

 しかしながら、彼が俺に気づくことはない。いや、気づかない方が彼的には良いのだろう。もう何年も彼とは話していない。顔も、声も覚えられてはいないだろう。

 それほどまでに仲が悪かったのか、と言われるとそれは違う。と断言できる。だが、お互いに気まずかったんだろう。

 

 だから、身内がこのゲームにいて、仲間意識だとかは思わなかった。ただのプレイヤーとしてでしか、俺は彼を見ないだろう。

 

「(……さっさと座るか。バレないうちに)」

 

 そう思った頃には既に縁の方に座っており、頭装備であるフードを被って顔を隠すように押し付けた。万が一にも顔を見られた時に備えておく。

 

 

 

 ーー何やってんだか。俺は。

 

 

 

 スグとは上手くやれていたと思う。彼女自身、仲良くしたいという意識があったのだから、剣道も互いにやっていたため特に不自由はなかった。

 だが、和人からはどうにも避けられていた。彼は剣道を続けることが嫌になって、投げ出した。それにキレた爺さんを宥めるために色々やっていたのだが、そのことで彼に罪悪感というものが残っているだろう。その幼い日以来、ほぼ話すことはなかった。

 

 和人が俺の方向を見る。視界はフードで隠れているがこの目には和人の顔がしっかりと見えた。やはり、そうなのだろう。隣には細剣を腰に刺しているフードを被ったプレイヤーが、恐らく俺と似たような状態だったので視界に入ったのだろう。

 

「……」

 

 黙って前を見続ける。見られているのには気づいているが、露骨な反応をしても返って怪しいだけ。

 

 ーーまるでストーカーのような思想で、俺は和人から逃げている。やっぱり、気まずい。

 俺たちの関係はとても歪で、俺と彼はどう見ても“他人”で、家族もみんな他人だ。血の繋がりなんてない。血を超えた関係なんてない。ただの他人。

 

「(それに、六年も会ってないんじゃ。覚えているはずもない、か)」

 

 俺は全寮制の高校で通っており、家に帰ってくるのは週に一回の日曜日だけ、しかも大抵は電話で済ませるから家に来ても安否を確認したら帰る位の。

 

 

 

 ーーだから、今更どの面下げて話せば良いのだろうか。気楽に話して、それで? 今更何のようだと。

 

「(いや、これで良いんだ。俺は和人には関わらない。そうする)」

 

 彼のことを見捨てる訳ではない。そのような状況になったら俺は我が身を捨ててでも助けるだろう。でもそれは誰が相手だろうが変わらない。

 

 

 

 ふと、俺は義弟が、和人が、この世界で生き残り、英雄と呼ばれる姿を幻視した。一瞬の出来事だったが、その背は、かつて救えなかった者と………………

 

「(死ねよ。僕)」

 

 邪魔だ。消えろ。姿を表すな。能無しが。

 

 

 

***

 

 

 

 第一層攻略会議は途中までは何事もなく進んだ。チーム分けではソロで活動している俺は勿論、キリト達も二人であぶれていたようで、仕方なく俺はそのグループに入ることになった。

 

 危惧していた俺の正体がバレる、ということはおきなかったが少し訝しげな表情をされたような気がする。気のせいだと良いのだが。

 

 このまま何事もなく進むと思われたが、途中でトゲトゲ頭のプレイヤーがベータテスターの所為でこの二千人が死んだのだ、という話をしていたため。

 

「発言よろしいでしょうか。ディアベルさん」

「ああ、構わないよ」

「トウガ……?」

 

 自称“ナイト”と自身を名乗っている今回の攻略会議の頭であるディアベルに許可を取り、発言する。キリトが呟いていたがとりあえずは発言を行う。

 キリト、まぁ和人の事だが。やはり俺の正体には気づかなかった。それもそのはず、と言った話なのだが。俺の顔は覚えてすらなかった。やっぱり顔を六年ほど見なければ気づかれるはずもないか。

 

「……なんや」

 

 どうやらこのトゲトゲ頭は関西出身らしくニュアンスというか発音がそのように感じる。

 

「いやまぁ、確かにベータテスターの多くは初見プレイヤーを見捨てるような真似をしたさ。だが、情報はなかった。っていうのはちと解釈違いってやつじゃないか?」

「なんやと! お前、あいつらの肩持つんか!?」

 

 さてはお前もベータテスターやな!? という言葉を無視する。正直俺がベータテスターに間違われようがそれで迫害されようが関係ないため、勘違いするならば勘違いしてもらったほうが早い。

 

 そしてそれを肯定するかのような情報を開示する。

 

「それに、その二千人の中に何人のベータテスターがいたか、知っているか?」

「それはどういう意味や!?」

「二百人。俺がデータを元に黒鉄宮で数えた結果、βテスト時と同ネームのプレイヤーがそれほどいた。勿論、それが本当の数字なわけがないのは分かっているが、ベータテスターも確かにゲームオーバーしているんだ」

 

 その発言にざわめきが広間を襲う。この時点で俺がベータテスター、あるいはベータテスターから情報を貰っているプレイヤーという立場であることが白日の元に晒された。

 

「そして情報がない、と言ったがたしかに情報はあったぞ」

「なんやと?」

「各街の道具屋にあった無料で設置されてあったこの攻略本。勿論皆も持っているだろう?」

「そしてこの情報量。どう考えてもベータテスターの手が入っているとしか思えない」

 

 というか、実際に《鼠のアルゴ》と制作元が書かれている。分かる人には彼女がベータテスターから活躍している情報だということは分かるだろう。

 

「そ、そんなんガセネタに決まっとるやろ!?」

「いや、それは違うんじゃないか?」

 

 そう言って立ち上がったのは男性プレイヤーだ。体格も良く肌も黒いからか謎の威圧を感じる。

 

「その本の情報は確かだった。モンスターの情報や地形データは全てあっていたし、各村に来たときには既に本が売られていた。そんな情報を持っているのはベータテスター以外にあり得ないだろう。情報はあったんじゃないだろうか」

「キバオウさん。今はみんなで協力して第一層を攻略しよう。勿論、ベータテスターには背を向けられないっていう人は抜けてくれて構わない。チームワークが一番重要だからね」

 

 男性プレイヤーとディアベルのあくまでも現実的な視点からの意見にキバオウも納得はしてはいないが理解はできたようだ。

 

「……今回はディアベルはんに免じて従うたる。だが第一層を攻略したらきっちり落とし前付けてもらうからな」

「……」

 

 その言葉を無視しして席に着く。キリトが心配そうにこちらを見ているが心配ないと伝える。

 たしかにこれで俺の立ち位置は結構グレーな状況になったのだが、いざとなればベータテスターを救う方法も一応考えついてはいる。これをすれば俺は孤立するだろうが他プレイヤー達は救える。

 

「じゃあ、これで攻略会議を終了する! みんな、お疲れ様」

 

 その言葉を最後に、結局余り進展はないまま第一回攻略会議は終了した。

 

「(確かに合理的な判断だ。人数が少ない所謂あぶれ者の俺たちはその人数での力を発揮することができない。だからこその雑魚敵処理なのだろうが……)」

 

 何か、腑に落ちない。何か裏があるように感じてしまうのは、俺がこの世界に対して過敏になってしまっているだけなのだろうか。

 

 

***

 

 

 

「えっと、俺らの仕事は周囲の雑魚敵の掃討でいいんですね」

「ああ、君たちが積極的に動いてくれれば本隊のメンバーも楽に立ち回れるだろう。頼んだよ」

 

 みんなの協力が必要だからね。とディアベルはにこやかに笑みを浮かべながら俺たちの元を去っていった。

 

「(確かに合理的な判断だ。人数が少ない所謂あぶれ者の俺たちは、八人グループと違い三人だ。そうなれば雑魚敵の処理に俺たちを回すのは妥当なんだろうが……)」

 

 ーー何か裏があるように感じて仕方がない。勿論ディアベルの考えがそうなのは理解できているのだが。これはこの世界に来てから俺がそう言ったものに過敏になってしまっているだけなのだろうか。

 

「よし、んじゃまぁフレンド登録でもしておこうか」

「……そうだな」

「……そうね」

 

 ディアベルの元から離れ、チームメンバーの二人に話しかけるがあまり反応が芳しく無い。ったく、気まずいのは分かるがアスナまでそんな感じで果たして大丈夫なのだろうか……

 

 大丈夫かで言えば、俺の正体は全くバレていないようだ。なんかそれはそれで悲しい。そして、アスナがポロッとこぼしたが、やっぱりキリトはベータテスターだったようだ。

 

「ほらほらキリト。情報量ならばお前の方が持ってんだから、これからの方針とかを決めてくれよ」

「あ、あぁ、そうだな。じゃあまずは……」

 

 

 

 その後は三人でこれからの方針を進めた。主にキリトが率先して情報や立ち回りについて。俺はβ版と今の情報で擦り合わせを。アスナは時折鋭い観点からの意見を出してくれるため中々充実した時間ができたと思う。

 

「……よし、今日はここまでだな」

「おう。んじゃ俺は先にフィールド回ってくるから、ここで解散としよう。……あ、そうだ。アスナ、ちょっとカモン」

「……何ですか?」

 

 そう言ってアスナを手招きしてから、とっておきの情報を先程会議中に見つけたためそれを話す。

 

「……それ、本当?」

「ああ、情報源は確かだ。それにその宿を取っていることは確認済み。まぁその情報をどうするかは俺の知らん所だから」

 

 取り敢えずやるべきことは終わったので、そそくさと退散する。後ろから騒がしいが、しかし和やか? な会話を聞きながら。

 

「まさかトー坊とキー坊がリアルで知り合いだったとハ。オネーさん知らなかったヨ」

「……いつの間に」

「キー坊の情報を買った時点で何となく察していたサ」

「知り合い、ねぇ。そんなんじゃないんだけどな」

「?」

 

 疑問を浮かべるアルゴは無視して、相変わらずそう言ったネタには目敏いな。と思いながら始まりの街に向けて足を向けることにした。

 

 

個人的に好みな作品(安寧の天使制作に付き、二回目)

  • SAO 仮題:其の者、ただの愚者につき。
  • 魔法科 仮題:魔法科高校のニ科生
  • 殺戮の天使 仮題:安寧の天使
  • なし
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