攻略会議も終わり、グループでのこれからも決まった後は何事もなく一日が終わり迷宮区でいつものようにレベリングを行なっていた俺の元に一件の着信が届いた。
「キリトか?」
どうやらメールを送ってきたようで、一言だけ『至急俺のいる宿に来い』とのことだ。なんとな〜く察しがついていた俺は観念して向かうことにした。
***
さて、キリトの住んでいる宿……というよりは民家というべきか、に到着した。
民家の周辺は農村マップらしく、そこらじゅうに藁束が置かれてあったり畑があったりする。なんだか懐かしい気分だ。
何ということでしょうか、そこには二人の男女が立っていました。まぁ勿論キリトとアスナなんだが。“何故か”キリトがこちらを見てムッとした表情になった気がした。
「おい」
「……どした」
俺の姿を見るや否やすぐさま俺の元に駆け寄り声をかけてくるキリト。
「アスナに情報をリークしたってのは本当か?」
「因みにどこ情報?」
「アルゴ」
あーはいはい完全に理解した。アルゴは俺からキリトの居住区の情報を売る。そして俺がそれを何らかのことに使った場合はキリトから情報を売ったのはだれかという情報を売る。
しかもそれに対してのアルゴのデメリットは全くないと。
「うん、それで。その情報を知って君はどうするつもりかな?」
「……別に、何もしないさ」
助けてもらった恩もあるしな。と小さくつぶやく。それはベータテスターを庇ったことなのかは判別つかなかった。ただわかるのは俺を見逃してくれるということだ。やったぜ。
「ただまぁ……俺にはなくとも」
「私にはあるけど」
「……何故に」
何故。これに至っては全く持って見当がつかない。俺は情報を渡しただけで、何故かこうして危機に陥っている。
……分かるのはアスナの表情はガチだということだ。問答無用な感じがする。嫌だなぁ、これだから女性ってのは元より苦手なんだけど……
その後、(意味も分からないまま)説教されましたとさ。
***
「……ふぅ。ようやく終わった」
もうじき日が暗くなる。空に登っている茜色の夕日は本当に現実で見ているものとそう大差なかった。
「……今回は素で運が悪かったな」
おのれドロップ運。何百匹の蜂を斬殺したのか分からない。ここだけ聞くとまるでサイコパスみたいだな。
まぁ、その後アスナのレイピアの強化素材である蜂の針を集めており、目標の五十に到達した時には既に八時間はかかっていたのではないだろうか?
「ま、お陰でレベルは上がったけども……割りに合わねぇ」
ここで八時間も繰り返し戦闘するくらいだったら、迷宮区に篭った方がよっぽど経験値は美味しい。しかしながら契約書的なものまで出されたらどうしようも無い。いやまぁ元より逃げるつもりもなかったが。
「これでキリトの元に帰って……っと、装備も変更しておこう」
システム面だけではなく、肉体面……まぁ精神面かな? とでも呼べるこのゲームにおけるテクニックの上達のために、わざと攻撃力の低いスモールソード十本程で戦っていたのも長時間の原因かもしれない。
それにしてもちょこまかと動く巨大蜂は命中精度を高める上ではかなり役立った。
「ソードスキルがかなりのキーマンだなこりゃ」
このゲームにおいて魔法などのファンタジー要素は存在しない。まぁポーションや浮遊しているアインクラッドはあるが、少なくとも火の玉を飛ばすような魔法をプレイヤーは使えないのだ。これはバーチャル世界をリアルに感じてほしいという茅場の意向だろうか? 今となっては分からないが。
慣れた手つきでシステムウィンドウを開き、装備変更を行う。アニールブレードが背中に現れたのを感じ、ため息を吐く。
「じゃあ、帰るか」
……なんだか知らんが最近独り言が多くなってきた気がする。俺も人ということで、一人が寂しいとでも思ってるんだろうか? そうだったら思い切り笑うしか無いが。
「はぁ」
笑うどころか、ため息をぐらいしかすることがないな、最近。
相も変わらず、空は俺らを見下ろしている。空が人工的に作られたのだとしても、俺らを見下すのは空で、届くことのないんだろうけども。
「なーんであの時、俺を殺してくれなかったんだ?」
と、そんなふうにも思う。もしもあの時、あの森の中で俺が死ねたら。どんなに嬉しかったか。
「(そんな、ことを考えても、意味はない)」
分かっている。そんな当たり前の事ぐらい。
でも、ふと思ってしまう。あの時死ねていれば、今のように悩むことも無かったのだろうと。
「……」
ゆっくりとした足取りで、その足はキリト宅へと向かっていた。その表情は、自分でも分かるほどに暗かったのだと思う。
ーー我ながら、情けないな。
***
「……ほんとに持ってきたのかよ」
「そりゃそうだろ? 頼まれたんなら持ってくるのが道理ってやつだ」
持ってきて、ウィンドウからキリトのトレードの提示画面を見せると、何故かキリトは固まり、ゆっくりとアスナの方を向いた。
「……キリトくん。確か、このアイテムって」
「あぁ、今解放されているエリアでこのアイテムを入手する方法はドロップしかない。そしてそのドロップ率は……脅威の1%だ」
「…………え?」
それって、あれじゃん。
「某重課金ゲームの星五鯖の確率じゃん」
「すぐにその例えが出る時点でトウガもやってたんだな……あのゲーム」
「?」
頭に疑問を浮かべるアスナを横目に、キリトと人理を修復する某人気ソシャゲの話をしていた。
「やっぱおかしいよな。さすが公式が病気という名を冠しただけはなある」
「……まぁ、某実況者はガチャが出るたびに220蓮引くとかいう暴挙を今もやってるし?」
「あれは病気だ。周回情報もカレスコ凸前提とか頭おかしい」
「よなぁ……っていうかキリトもやってたんだな」
「……ねぇ、話について行けないんだけども」
そうして会話を続ける中でアスナが置いてけぼりになってしまったため、早々に話を切り上げる。
「っといけない。話はそこまでにして……本当にこれだけの量持ってくるとは思わなかった」
呆れたように苦笑しながらそう言うキリト。なんかバカにされたような気がしてならなかったが、グッと堪える。
「持ってきたんだから、これで許してくれる。って事で良いのかアスナ?」
「……まぁ、いいわ」
何が彼女をそこまで怒らせたのか、寧ろ八つ当たりとでも言われた方が納得がいくのだが。
まさかとは思うが、風呂を覗かれたのが元を辿れば俺が情報を教えたから。だなんていうあたおか理論な訳じゃないよな……?
そんないやーな気配を感じ取りながらも、するべきことが終わったため、帰ることにする。
「んじゃ、俺はこれで」
「じゃあな」
「……おやすみなさい」
こいつら興味二人で同じ宿で寝るのか? という、割とどうでも良いことを考えながら、帰路についた。
***
思った以上に話し込んだのか、空はとっくに黒に染まり、時刻も十時をまわろうという頃合いだ。しかし残念ながらプレイヤーがだれもいないと言う訳ではなく、深夜帯のレベリングに精を出すプレイヤーが少数見受けられる。
「ご苦労なことで」
既に真っ暗で仄かに見える月光でなんとか視野が確保されている状態。確か暗視スキルが索敵スキルの中にあったようななかったような……
そんなことはどうでも良いんだ。取り敢えず、今日“も”何をするでもなくフィールドを散策しよう。
……気がつけば、この世界においての睡眠というものを、俺はしなくなっていた。それは恐怖からか、慣れなのかは定かではないが、ただ。俺は睡眠を必要としない体となった。
ーーなんかめっちゃかっこいいな。言葉にすると。
っとと、まぁそれは良いとして、その暇な時間を俺は何もせずにフィールドを散歩している。気分はお爺ちゃんだが、まぁこれもする意味がある。
「あーんな感じで、深夜に何かをしようとする輩がいるからな」
そう言ってみたのは森の中に連れ込まれる少女と連れ込む男達。もう完全にダウト。アヤシイことをする手前、というか完全にアウト。
それよりも気になるのがなぜあの女性プレイヤーはこんな夜更けにフィールドに出たのか、だ。
確かにアスナのように上位プレイヤーにも女性はいる。だが、もしも彼女がその一人だったとしても今は深夜一時ほどだ。明らかに遅すぎる。
というわけで、俺にとっては馴染み深い。そして最初に人を見捨てた地でもあるホルンカの村付近の森に足を踏み入れることになった。
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参考文献
・ホルンカ村付近のマップデータ(キリトの第一層時点での拠点とその情報。プログレッシブ第一巻)
個人的に好みな作品(安寧の天使制作に付き、二回目)
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SAO 仮題:其の者、ただの愚者につき。
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魔法科 仮題:魔法科高校のニ科生
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殺戮の天使 仮題:安寧の天使
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なし