書きたいことを書くだけの短編集   作:如月風牙

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SAO 2022,12,4 第一層攻略と別れ(1)

「さて、やってまいりました第一層攻略の日」

「……どうしたんだいきなり?」

 

 変人を見られるような目でキリト達から睨まれながらも、無事に第一層攻略の日となった。

 本来ならばもう少しかかる予定だった。とのことだが、攻略ペースが一気に上がったこともあって今日になったのだという。

 

 まぁ、そんなことはどうでもよくてだな。問題は今俺たちを睨んでくるあのトゲトゲ頭ことキバオウのことだ。

 俺が目の敵にされることはまだわかる。だが、何故キリトを親の仇のように睨んでいるのか、これが不明だ。

 

 しかもキリトはそのことに何か心当たりがあるかのように黙り込んでいる。さっきの問答以外ほとんど会話が無い。

 

「……」

 

 ほら、またこちらを見ている。そんな目を向けられてもこちらとしても頭に疑問符を浮かべることしかできない。

 迷宮区の薄暗い洞窟のような代わり映えしない光景に少し面倒げにため息を吐きながら……勿論、敵対的に見つめてくる視線に対しての意味も込め。

 

「それでだ、キリト。俺たちの仕事は分かっているよな」

「……あぁ」

 

 いつになくキレのない返答を聞きながら先頭のプレイヤーがモンスターを薙ぎ倒していく様子を何をするでもなく眺める。

 

「取り巻きモンスターがボスに寄らないようにする。だったわね」

「そういうこと」

 

 生粋のゲーマーとしてはやはり最前線でボスを倒したいんだろうか。アスナもしっかりと分かっている様子だった。

 

 とそんなことを考えているうちに、攻略組一同は早々に迷宮区最深部に到着した。途中でアスナがスイッチとポットの意味を分からなかったと言う珍事件があったが、特に何事もなかった。

 

「さて、ようやくついたな」

「……あぁ」

 

 攻略組の損害は全くない。さすがは武器防具も現段階で最高峰のものにしているだけはある。

 迷宮区特有であろうか。ボス部屋手前には大きな鉄の扉があり、来るもの拒まず去るもの許さずと言った雰囲気が感じ取られる。

 

「……」

 

 知らずのうちに緊張するのを肌で感じる。明確な敵、明確な死が目の前に、この扉の先にあると言うだけで、緊張感はマッハで進んでいく。

 

 

 

***

 

 

 

「みんな! ここまで来てくれてありがとう!」

 

 ディアベルの通る声が響く。ここまで先頭で進んできたリーダーの元気な声に、他プレイヤーたちの表情も緩む。

 

「俺達の力と攻略本が教えてくれた情報があれば、俺たちは勝てる!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 雄叫びが響き渡る。ディアベルのその勝利宣言とも取れる発言には確固たる自信が見受けられる。

 

「(……危ういな)」

 

 そう思わずにはいられない。ディアベルのカリスマ性は確かに目に余るものがある。

 だが、もしも彼が居なくなってしまったら? そうなった時に、果たしてこの攻略組はどうなってしまうのだろうか。

 

「(……考えすぎ、なのかもしれないな)」

 

 嫌な考えを振り払うように頭を振る。今は先のことよりも今のことだ。今、ボスをどうにかしなければならないのだから。

 

「……最後に一つだけ。……勝ちに行くぞ!」

「おおおおおおおおおぉぉ!!」

 

 雄叫びと共に扉を開け放ち、ディアベル達を筆頭に走り出す。俺たちは後ろからの援護が主な役割だ。

 

 中には大きなコボルトが仁王立ちしていた。

 

 身長は三メートルはゆうに超えているだろう。その体格に見合った防具と赤い肌。そして手には大きな斧。その威圧感につい足を止めてしまう。

 

「……っ!」

 

 アスナとキリトが先んじて湧いていたルインコボルドセンチネルの鎧の隙間に切り込む。

 その勇猛果敢な姿を見て、ようやく体が動いてくれた。

 

 そして初めてボス部屋の中をしっかりと見渡すことができた。長方形型の部屋で奥が遠く見える。薄暗かった迷宮区とは違い中は煌びやかなスタンドガラスがきらめていており、眩しいほどに明るかった。

 

 アスナは繊細な剣使いで、細剣を正確に喉元に突き刺している。キリトは安定した戦いぶりで、相手の隙を狙って的確に切り込んでいる。

 

 湧いたのは三体。残っている一体に向けて盾を構えながら駆け出す。

 盾は弾きやダメージ軽減に大きく影響を与えてくれる。ただ、盾が邪魔になってしまう恐れがある。それをあってあまりあるほどのメリットがあるのだが。

 

「キリトっ!」

「わかってる!」

 

 再びポップしたセンチネルを視認して、キリトを呼びかけるとすぐさま返答が返ってきた。

 

 まずはキリトが突進ソードスキル《レイジスパイク》を正確に鎧の間に差し込む。その間に俺はキリトの合図を待つ。

 

「……スイッチ!」

「了解っ!」

 

 キリトが大きくセンチネルの体制を崩したのと同時にセンチネルに切り込む。センチネルは大きく吹き飛んでその姿をポリゴンへと変形させる。

 

「……やべぇな。これ」

 

 モンスターを倒して次に備える二人を横目に一人聞こえないように呟く。

 

 命のやり取り、今まで対峙してきたどのモンスターよりも威圧感を感じる中央で斧を持っているボス。名前はイルファング・ザ・コボルトロード。

 あの斧に切り裂かれたらどうなるか。想像に難くないだろう、文字通りバラバラ……この場合は先程のルインコボルト・センチネルのようになるだろう。

 

 緊張感、とは違うのだろう。ただ、心臓が自分のものとは思えないほど痛く、苦しく感じるだけ。

 

「……これが、命を賭けるってことなのかも知れないな」

 

 悟ったように、これがその気持ちだったのかもしれない。俺が、出来なかった事への……

 

「トウガ!」

「っ!」

 

 キリトの怒声にも似た声で意識が叩き起こされる。そうだ、今はウジウジしている場合じゃない。今は集中して目の前の奴らに取り組まなければならない。

 キリトに謝罪の意味合いで返事を返して、再びポップしたやつに目を向ける。

 

「……セアァァ!」

 

 体で溜めを作り、右手にある片手剣を肩に担ぐようにして持ち……腰の捻りとともに放つ!

 片手直剣ソードスキル《スラント》初期から使えるスキルであり、なおかつ右上から左下、左下から右上に切り上げや切り下ろしも出来る万能なスキル。そのスキルがセンチネルの胴当てごと斬り伏せた。

 

 沸いたモブをポリゴンに変えていく作業にも近しい行為を続ける。

 

「……ふぅ。かなり順調だな」

「あぁ、始まったばかりとはいえ現時点での最高戦力だ。そうそうやられることはないだろうな」

 

 ボスのHPバーが半分になりかける時点ではまだこれといった危機は無い。あまりに順調。

 

「確か情報だと……」

「大斧から曲刀に持ち替える、だったわね」

「あぁ、そこからはソードスキルをブンブン回すだけになるから、脅威は少ないだろうな」

 

 次に備えながらも、何かあった際にはボスに飛び込むことも念頭に入れながら会話を続ける。さて、そろそろ半分を切るだろうな。

 

「……何かがおかしい」

「……キリト?」

 

 そんな声が聞こえて俺がキリトに視線を向けたが彼はその視線をコボルドロードに向けたまま何かを考えている。そうこうしているうちに半分を切り、コボルトロードが背中から曲刀を……?

 

「みんなッ! 今すぐ下がれ! カタナのソードスキルが飛んでくるぞォォォォ!!!」

「っ!?」

 

 柄にもなく、いきなりキリトが叫んだが、ソードスキルの発動SEでかき消された。

 血のように赤いエフェクトを発しながらコボルトロードが取り出したカタナは周りを囲んでいた前線メンバーのHPをごっそりと持っていった。そして頭には黄色いエフェクトがクルクルと回っている。

 

「あれは……スタンか!?」

 

 悲鳴のような声が後衛のメンバーから響く。スタン、確かそうなったら体が動かないだけでなく視界も見えなくなってしまうのだという。しかし時間が短く、致命的になり得ることは少ない。ただ問題点は……

 

「回復手段がない……!」

 

 全線メンバーの中にはリーダーのディアベルもおり、メンバーのメンタル面にもダメージを与えた。

 

「……くっ」

 

 すぐさま駆け出そうとしたが、距離が空き過ぎている。長方形型のステージの関係上や速度ステータスも相まって絶対に届く距離じゃない。前線のエギルたちも駆けつけようとしたが、間に合わなかった。

 

「ぐあァァァァ!」

「ディアベルはーーんッ!!!」

 

 キバオウの悲痛な叫びが耳に入る。コボルトロードが地面スレスレの位置から再びソードスキルを放った。しかも相手はディアベル。よりにもよって、というのは不謹慎だが、それでも一番やられたくない人材がその標的にあってしまった。

 

「……っ!」

 

 ……しかし、まだコボルトロードの追撃は終わっていなかった。

 

 先程のソードスキルで大きく飛ばされたディアベルに向けて、空中で三連撃のスキルを放ったのだけは辛うじて見えた。それほどまでに奴のスキルの挙動は見えなかった。

 

「……!」

 

 喉奥からの悲鳴を噛み締めながらも、再びリポップしたセンチネルをキリトたちに押し付ける形でコボルトロードに向けて足を向けた。

 

「セアァァァァ!!」

 

  ソードスキルを打った直後で硬直のある背中に向けて片手直剣下段突進技《レイジスパイク》を当てる。

 

「グルァァ……」

 

 多少なりともダメージを与えられた事に対して僅かに安堵しながらもディアベルの方向に視線を向ける。そこにはキリトがディアベルを抱えている状態だった。

 

「……。…………」

「……ッ!」

 

 その時のキリトの表情は苦痛に満ちたもので、対してディアベルの表情は穏やかなものだった。

 

 

 

***

 

 

 

 ーー悲鳴が聞こえる。

 

 それは、リーダーが倒れてしまったことへの恐怖か、あるいは絶望か。どちらにせよ、ここで多くのプレイヤーの心が折れてしまったのだ。それがありありとわかる。

 

「アンタがここでへこたれてちゃ、仲間が死ぬぞっ! センチネルはまだ湧く、それの処理はアンタらがするだ!」

「……っ、ならジブンはどうすんねん。一人で逃げ出すっちゅうんか!?」

「そんな訳ないだろ……決まってるさ」

 

 耳に嫌でも聞こえて来る聞き慣れた聞き慣れない声。その源であるキリトは宣言するかのように……

 

「ボスのLAを取りに行くんだよ」

 

 その姿は、まるでどこかで見た英雄譚のようで。

 

 ーー胸が、苦しくなった。

個人的に好みな作品(安寧の天使制作に付き、二回目)

  • SAO 仮題:其の者、ただの愚者につき。
  • 魔法科 仮題:魔法科高校のニ科生
  • 殺戮の天使 仮題:安寧の天使
  • なし
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