いつも応援感謝です!
これからも宜しくお願いしますね!
そして今回はこの作品が『ハジカオメイン』である事を皆様に思い出して頂くため、番外編となっております。
つっても今までとこれからの間の話みたいなもんです。
さあ! 読め!
そしてハジカオ万歳と叫ぶのだ!
僅かに時は巻き戻る。
ハジメのウル出発前日、王宮の寝室。その一角にて雫が呆れたような、そんな目をしていた。
目の前にいる相手は親友である香織だ。香織は何やら落ち込んでいる様だ。ベッドに身を投げ出し、枕に埋めた口からは啜り泣きの音が聞こえて来る。
一見すれば落ち込んでいる様子。そんな相手に冷たい視線を浴びせる雫は酷い様にも思える。
ただ雫は思うのだ、勝手にしろと。と、言うのも──
「うう…南雲くんに会いたいよぉ〜」
「…香織、それ今日何回言ってるか自覚ある?」
「? 五回ぐらい、かな?」
「ええそう。その二十倍よ、おおよそ。何ならもうちょっと多いわ」
「………もしかして煩いかな?」
「漸く自覚してくれて、私は嬉しいわ」
──この調子である。
せいぜい十回程度ならば雫としても同情の余地はある。香織としてはハジメに迷惑を掛けたく無いという一心で接触を断っている訳だ。これまで突撃少女をして来た香織としては苦渋の決断そのもの。間違いなくストレスである。
その甲斐もあってか光輝や檜山を中心とするアンチハジメ系列の人間がハジメに害をなす事が減って来ている。光輝の場合また別口で絡んでいる様だが、以前よりはマシだ。
ただ本人等からすればストレスなのは違い無い。雫の視点での推測だが、二人は両想いだ。しかもかなり
まあ、そんな風に二人の関係性は非常に良い。それ故に周囲の目や噂により近付く事すら出来ないとなれば鬱憤も溜まるだろう。
多少ならば声に出してしまうのも仕方がないが…何度も聞いていれば気が滅入る。白い眼で見てしまうのも当然の結末と言えた。
ただ以前とは異なり、天性の突撃ぶりが悪い方向では改善されつつある香織。やはりハジメが己により被害を受けていたと言うのが大きかったのだろう。多少なり客観的視点を身につけ始めていた。
とは言え怪我をする人を見つければすぐ助けに行こうとするし、仲間のピンチにはその身を投げ出してまで動く。咄嗟の場面での突撃ぶりは未だ健在だ。
だからこそ今の雫の心境も察せたし、ハジメに近づく事もセーブしているのだ。…最ももっと早い段階で気づいて欲しかったが。
取り敢えずボヤく事は雫に迷惑になると察した様だ。口を紡ぎ、ベッドに無言で転がっている。しかしやはりと言うべきか、抱かれた枕に込められた力は凄まじい。枕が苦しそうという感想を雫は生きて来て初めて感じた。
そこで雫は思い出した様に香織へと話し掛ける。
「そうそう、香織。南雲君…元気そうだったわよ?」
「…え、本当!?」
「ええ。…まあ光輝が南雲君相手にやらかしてね…そのお詫びをしに行っていたのよ」
「…光輝くんかぁ」
ハジメのワードが出た途端香織のテンションが凄まじく急上昇。それに比例する様に上半身もベッドから起き上がった。
しかし光輝の話が出ると先程とは打って変わり、落ち込んだ顔を見せる香織。その上半身は徐々にベッドへと倒れていった。
光輝に関しては香織も雫も、ついでに言えば龍太郎も複雑な所だ。元々かなり親しい友人関係にあり、関わって来た日月も長い。
しかし迷宮でのハジメの決死行。それが三人と光輝の溝を作り出した。
「何で…光輝くん、嘘ついちゃったのかな? 他の皆もだけれど…南雲くん、あんなに頑張ってたのに…」
「…そうね。私も今、正直光輝は冷静じゃない様に感じるわ。昔からそう言う傾向はあったけれど…ここ最近は特に顕著ね」
天之河光輝は自身にとって都合の良い様に物事を解釈する事が多い。自己中心的とも呼べるそれは、本来ならば年齢を積むに連れて
しかし香織、雫、龍太郎が一般よりも善性で義理を尊重した事。光輝自体にカリスマがあった事。何よりも光輝自身がその事実から目を背け続けた事。それらが組み合わさった事により、光輝がそれを認識する事は無かった。
結果、迷宮でのベヒモスからの逃亡戦後に光輝は暴走した。イシュタルの言葉を切っ掛けにして、迷宮でのハジメの行動を己にとって良い方向に解釈していったのだ。
当然ながらハジメの意思をすぐ側で聞いていた、香織や雫、龍太郎は光輝の解釈を否定した。そして今までに無い程壮絶な口喧嘩をする事となった。
だが結論として、その口論は噛み合う事すら無かった。
理由としては光輝と三人とでは思考の差異。三人がハジメのあの場での行動を『正しい行為』としているのに対し、光輝はそれを『傲慢な行為』として捉えていた。
光輝にとって南雲ハジメは
光輝はそんな思考であり、三人がそんな光輝の歪んだ思考を察せる筈もない。そして数時間通しても尚、決着がつく事は無かった。
現在この話は四人の間ではタブーとして扱われている。四人は所詮子供。恐れたのだ、これをきっかけとして完全に仲が破綻してしまう事を。
出会って数ヶ月程度ならば絶交も視野に入っただろう。しかしそれを選択肢に入れるには一緒に過ごした時間が長過ぎた。それだけの時間があれば親しみも慈悲も湧いて出てくる。それに香織や雫、龍太郎は人との友好関係を中途半端に投げ出す事が出来るほど、利己的で無かった。
だからこそ香織も雫も、そんな風になって
また光輝の言動もあり、今のハジメの状況は正しく絶体絶命という奴だ。
何せ教会、王国、そして勇者がハジメを罪人として扱っているのだ。あまり光輝との関わりを持たず、【王女の騎士】としてハジメを見ている城下町の人間を除いては、芳しく無い印象を持つ者が多い。
またハジメが無罪を獲得するには並では無い功績が必要だ。しかも残り四ヶ月程度という僅かな期間で、だ。
ハジメは『使徒』達と異なり、
それに近い物としては異世界の考えや“言語理解”が挙げられるだろう。学問ではそれなりの功績を打ち出せるかもしれない。
だが『それなり』では駄目なのだ。それこそそれまでの常識を覆す様なレベルの発見で無ければ、無罪は認められない。
そもそも『使徒』は戦う為に呼ばれた存在。戦え無い存在と言うのは本来、『使徒』としては不出来。ましてや【裏切り者】とされたとなれば、学問で求められるレベルと言うのは自然と上がる。
更に言えばトータスには魔法学問は幾つもあるが、重要視はされていない。魔法において重要なのは理論よりもイメージや修練。それこそが現魔法界における常識である。魔法学問というのは本来ならば功績とはされ辛い分野である。
現在、知識だけでは無く武術も身に付けているハジメ。実際雫もついこの前ハジメを見た時、変わったと思わされた。重心の運び、位置取り、気配の感知能力、どれを取っても地球にいた頃のハジメとは別人。
だが所詮は凡夫の域を出ない。数多くいる王国騎士や神殿騎士、更に言えば『使徒』と比較すれば埋もれる、その程度の力だ。求められる様な突出した功績を得られる様な物では無い。
この様に雫が知る情報を並べて見てもハジメの逆転の兆しはほぼ見える事が無い。
そして期間内に功績が得られなかった場合、ハジメは真に人権を失う。何せ【ハイリヒ王国】という宗教国家の中で、神を裏切る行為をしたと断定されるのだ。そんな人間に慈悲は与えられないだろう。
(やっぱりそうと考えると南雲君の味方を増やす事を先決にした方が良いわね。特に『使徒』のみんな。今は私と香織、龍太郎に園部さん、先生ぐらいしか居ないけれど…人数を増やして抗議すれば懲罰の減刑ぐらいは出来るかしら)
雫は最悪のケースを想定し、最善策を思考した。何せ相手が巨大。ある程度の譲歩は考えるべきだろう。
そう雫が考えた矢先だ。雫のそんな内心を見透かした様に言う。
「でもね、南雲くんだったら大丈夫だよ。きっとね、凄い事やってくれるから」
香織は先程までとは打って変わり、にっこりと笑う。その笑顔は例えるならば満開の花。香織を見慣れている筈の雫も、思わず見惚れる程に香織の笑顔は眩しく、明るい。誰もが焦がれて止まない太陽の様だ。
そして雫は気がつく。香織はハジメをただ信じているのでは無いと。そんな物よりももっと強く、重い。ただハジメならばやってのけると当然の様に思っているのだ。
香織のそれは見方を変えれば何とも身勝手で我儘だ。逃げる事も、逸れる事も許さない楔となるだろう。される側としては酷く残酷な
内心、雫はその相手であるハジメに同情して──
(でもきっと…彼はやってのけるのでしょうね)
南雲ハジメと言う人間は不思議だ。彼には才能も、力も、何ならカリスマも足りない。ただの凡人だ。
持つ物は度胸と野望。一見すれば身の程知らずか愚者。業火に挑み、焼かれる鼠の様だ。
だが、それでもハジメの一挙一動は人々の脳裏に焼き付く。本来ならば不可能である
それは香織や雫だけでは無いのだろう。メルドや優花、龍太郎にリリアーナ。彼に協力する者達全員の総意に違いない。だからこそハジメへと手を貸そうとするのだ。
そして香織はハジメの輝きを初めて目に焼き付けた人間だ。誰よりも深く、鮮烈に。
今の香織はハジメに手を貸せない。何故ならば彼女の肩書きは【勇者】である光輝にも比肩する。
天職【聖女】は【神子】や【勇者】に並ぶ伝説級の代物だ。【神子】が『神の身体』、【勇者】が『神の矛』とされるのに対し、【聖女】は『神の錫杖』とされている。即ちそれは聖教教会における絶対的な価値を示している訳だ。
それ故に香織は光輝同様、『使徒』の中でも特に丁重に扱われている。何せ神に近い存在とされているのだ。どの様な事があろうと
そしてそれこそがハジメは冤罪を押し付けられた理由と言っても良いだろう。『使徒』の最底辺が【聖女】と親しいなどあってはならないから。だからこそ香織はハジメに近づく事すら出来ない。
「でもちょっと、南雲くんって無茶しちゃう所あるから…雫ちゃんも南雲くんのこと見てあげてくれないかな? 南雲くん、よくトラブルに巻き込まれるのに、自分の事軽視しがちだから」
先程と変わらぬ笑顔。しかし長年付き合ってきた雫だからこそ分かる。香織の笑顔の奥には寂しさが垣間見えた。
誰よりもハジメを信じていて、誰よりもハジメを想っている。だと言うのに手を貸す事も、応援する事も、傍にいる事さえ出来はしない。そんな無力感が香織にはあるのだろう。眉が八の字を描いていた。
その香織に雫は同情して、
そして雫はその口を香織の耳へと近づけた。
雫が話し終わると、そこには先程以上に満面の笑みとなった香織がいたのだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「──だからね、魔力収束って言うのは魔法陣とか
「はー、なるほどな。あんなクソ地味な技術に何の意味があると思ってたが…魔法陣とセットの技術って訳か。そりゃ魔法メインで調べてる俺じゃ分からんわ」
『ピィ! ピピィ!!』
「…アンタら、私を置いてけぼりにするのやめない?」
「ウッ! …ごめんね、園部さん」
「いや、別に俺ら悪くねぇだろ。園部のおつむが悪ぃのが悪い」
「…(シュッ)」
「──あぶなぁ!?」
「次バカにして来たら殴るわよ、清水」
「石ころ投げて来んのはアウトじゃねぇかなぁ!!?」
『ピィ───!!!』
「手首のスナップだけだからセーフよ」
「【投擲師】のそれはアウトだろ!!」
『ピィ──!!』
「まあまあ、二人とも落ち着いて」
そして現在、ハジメ達一行はウルの町へと馬車に乗って向かっている。馬車は三つ。そして組分けであぶれたハジメと清水、あと志願してやって来た優花が備品を乗せた馬車に乗っている形だ。
ハジメにとってはこの二人のみがまともに話せる相手だ。取り敢えず行きの旅には不自由が無さそうだ、とホッとしている。
まあ、こうして仲良く話している訳だが、ハジメには一つ気になっている物がある。
ハジメは片手で鞄を漁り、そして一冊の本を取り出した。タイトルは『ゴブリンでも分かる“錬成”のやり方』だ。色々突っ込みたくなるタイトルであるが、重要なのはそこでは無い。と言うのも、これは出発の直前に雫から渡された物なのだ。
『南雲君の旅が安全である事を願って…これを贈るわ』
とにこやかに渡されたのがこれである。本気で待ったを言い渡したかったが、雫は有無を言わさずハジメに渡しその場を去って行った。
だがハジメは昔、本の虫ならざる図書館の虫だった男。こんな物迷宮に行く前に読んでいる。案外わかりやすく、子供でも理解できそうな内容であった事を覚えている。
まあ、つまり雫にしてはあまりにミスチョイスな本である訳だ。これにはハジメも頭を捻った。取り敢えず鞄に一度入れたが、改めて取り出しても意味が分からない。
そうして手に取っていると喧嘩していた優花と清水が反応する。
「だからな──ん? 南雲それどうしたんだ? …ってか“錬成”の指南書か? お前、仮にもプロだろ。そんなの未だに読んでんのか?」
「ご、ゴブリンにでも分かるって…何でこんなタイトルにしたのよ、作者?」
『ピィ?』
「僕も一回読んだ事あるんだけど…八重樫さんから貰ってね」
「八重樫…お前、変に美人と知り合いだよな?」
「清水、変態」
「何でそれだけで罵倒されなきゃなんねぇんだよ!!?」
『ピピィ──!!』
またもや喧嘩に行き着く二人。果たして仲良いのか悪いのか。
それは兎も角ハジメとしても気になるのでその本を開け、ページを捲る。すると途中、何かが挟まっていたのか馬車の床に何かが落ちる。
それは丁度三人の真ん中に落ち、全員がその正体を看破する。それは丁寧に封をされた便箋。即ち──
「「「…手紙?」」」
『ピィ?』
同時に三人と一匹、全員が同じ答えに行き着く。そしてそれにいの一番に反応したのは、清水だった。
「まさか南雲…八重樫とフラグ立ててやがったのか!?」
「何の話ぃい!!?」
「また阿呆が思考を拗らせてる…とは言え南雲、内容は何なのよ。見せてよ」
「えっ? いや、もしかしたら八重樫さん的に秘密にしたい話かもしれないし…取り敢えず一回読んでみるね」
「ラブレターじゃありませんようにラブレターじゃありませんようにラブレターじゃありませんようにラブレターじゃありませんようにラブレターじゃ…」
「今度はエラーが起きたの、清水?」
『…ピィ』
清水が呪詛を唱え、そんな彼に優花が白い目を向けている。その間にハジメはなるべく丁寧に便箋を閉じている蝋を剥がした。
清水にそんな事を言われた手前、ちょっとだけそう言った事をイメージするハジメ。ただすぐに「そんなフラグある訳ねぇだろ」とセルフフラグクラッシュを行った。
そして無の境地で中の手紙の
『──白崎香織より』
可愛らしい丸文字でそう書かれていた。
「くぁwせdrftgyふじこlp?」
「「どうした、南雲!!?」」
『ピッピィ!!?』
(何でもありません)
「何か脳内に響いて来たんだけど!? 南雲本気で大丈夫!?」
「この焦り様…ガチでラブレターだろ!!? おいこら渡せ、この
「ちょっ、清水が! 清水が血の涙流してるんだけど!? アンタこんなバイタリティ何処にあったのよ!?」
「憎しみで人が殺せたら……!」
「と、兎に角一旦止まりなさい、清水!」
「アガァアアアア!!!!」
『ピ──!!』
ハジメの動揺を元に嫉妬の化身と化した清水と、それを食い止めんとする優花。何だか悲しい怪物の様な断末魔が響くが、ハジメはそれを無視して備品の山へと駆け込んだ。そして二人が未だ取っ組み合いをしている事を確認するとその手紙を改めて確認する。
差出人にはやはり香織の名前が記されている。そして一番最初にはハジメの名前が記されていた。少なくともこれで渡し間違いの線は消えた。
同時に雫がハジメに本を渡して来たのも、これを渡す為のカモフラージュであると察した。周りにはあまり違和感に思われない程度に、そしてハジメには違和感を与える様、このプレゼントにしたのだろう。清水や優花は違和感を持ったが、ハジメと親しく無い人間ならば【無能】で通っている為、勝手に納得するだろう。その塩梅は流石だ。
そして出発前に渡して来たのは城よりも監視の目が少ないからだろう。つまり香織との繋がりを周囲から隠す為の配慮だ。今の馬車の様に教会による監視に穴が生じやすい。万が一手紙が見つかったとしても、本を渡した雫からの物と勘違いするだろう。
そこまで考えて香織からの手紙を自分に渡してくれた雫にハジメは心の中で土下座した。南雲家直伝の黄金率の土下座である。ハジメ的にこれが最大級の感謝である。
そして慎重に折られている手紙の一枚目を開ける。久方ぶりの香織からのメッセージに心躍らせているハジメがいる。少し深呼吸をしてから内容に目を通した。
『南雲くんへ
この手紙を読んでるって事は雫ちゃんが本当に届けてくれたんだね。南雲くんの方は依頼の途中なのかな? 本当におめでとう。南雲くんを指名して依頼が来てくれた事、自分の事みたいに嬉しいよ』
最初の方にはそんな事が書かれていた。恐らく雫がちょくちょくハジメの話を香織に伝えていたのだろうか。己には関係無いと言うのに純粋に喜んでくれる彼女を思い浮かべ、ハジメの顔から笑みが溢れた。
『やっぱり南雲くんはすごいよ。色んな事いっぱい努力して、全部出来る様になるなんて普通の人には出来ないよ。色んな人が嫌な事言って来るのにね? やっぱり南雲くんは心が強い人だと私は思うよ。そんな南雲くんだからみんな手を貸してくれるんじゃないかな? 私がそうだったんだから間違いないよ。それに城下町の人達とも仲良くなってるみたいだからね。もっともっと南雲くんはいろーんな人に良く思って貰える様になるんだよ、きっと。…でも一番南雲くんを良く思ってるのは私だよ? それだけは絶対だからね!』
…というか割と褒めすぎである。嬉しくはあるが、同時に恥ずかしくて死にそうである。手紙を読んでいるだけだと言うのに顔が熱い。『普通の人には出来ない』とか『一番』とかフレーズが仰々しくて照れ臭いのだ。
まあその後も暫く怒涛の賞賛が書かれていたが、後々に他愛のない話へとシフトして行った。何気ない話だ。迷宮でベヒモスを倒したやら、最近はホルアドの冒険者とも仲良くしてるだとか、何か拝まれてるなどという特に意味も無い、そんな香織自身の最近の話。
それでもその一つ一つが香織らしい。かつての彼女と何ら変わらないそれらは懐かしさやら微笑ましさやらをハジメへと運ぶ。
『そう言えば最近城下町の方で園部ちゃんとかリリィが南雲くんと仲良くしてるって聞いたけど本当かな? かな?』
…ただしここの部分だけ短いというのに、恐ろしさが滲んでいる。果たしてそれは書いた本人の気迫が乗っているのだろうか。ハジメはそこだけは見ないふりをした。
だがそんな風に綴られている香織の手紙はかなりの量があったと言うのに、もう最後の一枚となった。気が付かなかったがいつもよりも読む速度が速かったようだ。その一枚に名残惜しさを感じつつも読む。
最後の手紙に書かれた文字数は意外にも少なかった。それに余計、名残惜しさが膨らんだ。
『最後に、あの日の…南雲くんがもう一度約束してくれた日の事を書きます』
目を通すと、今までとは一転。丁寧な言葉で書かれていた。香織にとってここが一番ハジメに伝えたい事なのかも知れない。そう思いハジメは意味も無いのに背筋を正し読む。
『まず、ありがとう。南雲くんがああやって言ってくれた事、本当に嬉しかった。あの時は自分の事が本当に嫌いになってたけど…南雲くんのお陰でちょっと許せたよ。本当にありがとうね』
それを読んでハジメは安堵した。あの時の香織は本当に、生気が無かった。己を責め続けて…そして本当に折れてしまいそうな、壁越しから聴こえたのはそんな声だった。
一度外に出て元気になったところを見たは良いが、その後もそうだとは限らない。だからこそハジメはその想定が杞憂になりそうで安堵した。
『それで南雲くんはいつか私と同じ所まで来てくれるって言ってくれたね。待ってるよ、絶対に。いつまでも何処までも』
そして再び香織は誓ってくれた。待っていると。
己の中の炎が勢いを増した事が分かった。あまりにも単純だ。だがやはり自身にとっての風は彼女なのだ。そよ風が火が燃え上がる事を促す様に、彼女の一挙一動に自分は決意をより強固にされる。
『だからね、私も今ここで誓うよ。南雲くんが私の所に来てくれるまでに…私も南雲くんを今度こそ守れるぐらい強くなるって』
そして香織は他ならぬハジメに宣誓する。あの日為せなかった誓いを再び。
備品の隙間からは午後故に太陽と共に月が薄らと見える。太陽の光によってその輝きは夜ほどでは無い。しかしそこに確かにある。
香織は一度決めれば強かだ。ならばもう折れる事は無いだろう。…とは言えハジメは一応男。今度は守られてばかりはごめんと僅かな矜持でそう思う。
するとその後に一文、何かが書かれている。それに目を通す。
『だって私は
「───────!!!?!??」
ハジメの脳がバグった。先程の様に言葉にすらならない。声にならぬ絶叫が辺りに響く。
『大好き』と言うのはまだいい。まあ良くも無いが香織のあの性格だ。気軽にそう言う可能性が無くもない。…いやあるか? まあ取り敢えずそれも考え出したら脳みそが本気で使い物にならなくなるので思考から除外する。
問題は『ハジメくん』の方である。ぶっちゃけ
(ぁ あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!)
取り敢えず落ち着く為心の中で大絶叫する。何だこれ、可愛すぎる。頭がもう馬鹿になりそうだ。
ゴロゴロと転げ回る事三分間。何とか興奮やら顔の熱やらを抑えつけ、
「うっわ、何だこれ何だこれ。実質ラブレターだろ、これ。つーか、南雲と白崎ってこんなに仲良かったのかよ畜生」
「へー、ふーん。へー、なるほどねー。そっかそっかぁ」
『ピィピィピィピィ…』
そこには手紙の束を漁り、ガン見している者達がいた。言わずもがな清水と優花である。
清水の方は香織に告白紛いの事をされている事に嫉妬を滾らせている。口早に嫉妬の言葉のマシンガンを放っている。そして枯れた筈の血の涙が再発していた。
一方の優花は何だか手紙を読み進めていく程に目が細められていく。しかも口にする言葉に感情が篭っていない。ただその顔は能面の様に無表情だ。
「…すみません、返してもらえますか?」
後悔先に立たず。己の先を考えない行動を反省しつつも、ハジメは敬語でそう言う。香織からの手紙はただ自分で読むだけでも恥ずかしいのだ。他人に見られたならば…恥ずかしいなんて物じゃない。
わなわな震えつつも、二人が持つ手紙に手を伸ばそうとして…瞬間、清水と優花はハジメから距離を取った。
「「「……………」」」
三者の間に静寂が流れる。二人はハジメに視線をやりつつも、手紙を読むという中々器用な事をやっている。というか他人の手紙を勝手に読むなや。
そしてジリジリと機を窺う三人。馬車の中でやる事では無いが…物が物だ。年齢的には学生、重大案件である。
全員の額に冷や汗が流れる。他でも無い緊張故の物。それが段々と流れ、やがて顎まで伝い滴ろうと膨らもうとして──
『ピィ!』
「どらっしゃああ!!! 手紙を返せぇえええええ!!!」
「誰が寄越すか
「オッケー、清水! オーライ、オーライ!!」
「投げるな! キャッチするな! 読もうとするな! 返せ!」
「「だが断る!!」」
『ピピッ!!』
「誤用だろ! それ!」
清水のペットである白鳩の鳴き声がゴングとなった。ハジメが体内魔力を循環させ、床を蹴る。接近職である優花は後回しにし、後衛タイプである清水を一先ず捕まえようとする。
しかし相手は『使徒』、そんなに甘くは無い。清水はこのままでは
こうして開幕した鬼ごっこ。最終的には全員が全員息を切らし、床に倒れていた所を様子を見に来た愛子が発見した。
その風景は馬鹿らしいが仲良さげで…まるで気の知れた友人の様であった、と愛子は後にそう評した。
…なお手紙は最終的にはハジメの手元へと戻ったとの事である。めでたしめでたし。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「今頃南雲くん、読んでくれてるかな? 思った事全部書いちゃったけど、何て思ってくれるかな?」
「…香織。次書くときはちゃんと推敲した方が良いと思うわよ?」
「へ? スイコウ? 何で?」
「………まあ、貴女が気にして無いなら別に良いけれど」
「???」
なお香織はうっかり心の声が漏れて「ハジメくん」って書いちゃっただけです。
まだ通常状態は「南雲くん」です。
はよ、一章終われや(誰や書いてるやつ、遅筆やなぁ)
功績において「地球の発明品を再現すれば大革命じゃん!」って思った方がいると思いますので、ここで説明しようと思います。
と言うのもしない理由は主に二つ。
一つはまあ地球の機械などはあまりにも精密である事。
原作ハジメ君はしれっとやってますが、銃を作れる【錬成師】なんてほぼ居ません。
精々何年も掛けてやっと一つ出来るかどうか、そんな精密さが求められます。
半年、と言う時間を考えればまず無理と考えて良いでしょう。
もう一つはまず機械の構造の知識を知ってるか?っていう前提のお話です。
まあ、工学系の方なら別でしょうが、機械の構造を説明書読まずとも完全に説明できる人間は少数派です。
ハジメはオタク知識でちょっとは知っていますが、あくまでもちょっと。
それを特殊な鉱石やらでカバーしているのが原作です。
そして真オルクス大迷宮の鉱石は地上では中々貴重品です。
そんなトライアンドエラーができる程安い物じゃない。
これらの理由の為、ハジメくん的にそっち方向の功績は現実的では無い、と言った感じです。
長々と説明しましたが理解が面倒と言う方にはメタ的な理由で納得していただきましょう。
武器作って無罪とか話的に面白くねぇだろ!!
以上!
追記
兵庫の水様
杉ケーキ様
寝る練る練るね様
MASSA様
評価感謝いたします。
更に感想を下さる皆様、誤字報告して下さる方にも感謝を。
それらは全て私の力となる…(ラスボス風)
この作品、アナタは何メイン目的で読んでる?
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ハジカオ!
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オリジナル展開!
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成り上がり要素!
-
考察要素!
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曇らせ!
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感想返し!
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ダイレクトマーケティング!