いや、本当にすみません。
一週間、遅れました。
というのも…前回と次回の間で一話欲しかったんですが、そのアイディアを出すのに二週間掛かりました。
書き終わったのも4/8の23時ちょっとです。
計画性皆無の作者です。
取り敢えずワイの足に重荷乗せとくね…(セルフ罰ゲーム)
はいっ! 反省ここまで!
それじゃあちょっと短めだけどどうぞ!
──認められたい。
それだけの理由で俺は今、ここにいた。自分勝手な我儘だ。自己中心的な夢想だ。だが異世界という浮世染みた場所に来た時点で、そうなると決まっていたのだろう。何となく、そんな確信があった。
作戦開始まであと数日。それまで俺は洗脳する魔物をより増やすのみ。コツさえ掴めば簡単だ。詠唱して、魔力を滾らす。その繰り返し。
「おお…やはり君の力は素晴らしい。きっと君は【ガーランド】の英雄になるだろう」
そんな俺の姿を見て魔人の男は大袈裟に感嘆する。目を潤め、両手を天に仰ぐ。
そうだ。俺は上に行ける。【勇者】なんかよりももっと上手くやれる。俺こそが特別だ。
だから…俺がいるべきなのはあそこなんかじゃ無い。
あの…大馬鹿二人の間なんかじゃないんだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
清水幸利失踪から三日が経った。捜索は行われているものの、結果は芳しく無い。現状の所、足取りをも掴めていないのだ。
捜索は主に神殿騎士の面々が行なっている。理由としては【ウル】での護衛は然程必要ではないと判断されたためだ。
以前までなら兎も角、今の【ウル】には魔物がほぼ存在しない。特異な状況ではあれど、それはイコールで【ウル】の中では危険性が無いとも言えた。
ある程度
ただし清水の失踪は大々的に発表されていない。知っているのは愛子、『使徒』、そして神殿騎士の面々だけだ。
理由は余計な混乱を避ける為だ。『使徒』は現在、信頼を獲得している最中。神の寵愛を受けている、とされていても見た目は子供。そんな彼等への信用の度合いはまあ高く無い。
だと言うのに失踪したともなれば、「逃げた」という印象を受ける。つまりは信用が遠ざかる。
【錬成師】に抜群の信頼を得るハジメ、コミュニケーションが上手い優花、そして農業に於いては革新の一言である愛子。彼等はまだ良い。
だが他の面々は学校と言う閉鎖的環境にいた戦闘職。適したコミュニケーションも持たず、魔物がいない故にその実力も発揮出来ない。単純に言えばアピール不足だ。
だからこそ清水の一件は情報封鎖されている。愛子としてはその様な面子よりも、生徒の命第一。当然反対したが、神殿騎士の強い説得と他の『使徒』の信頼の維持という名目により、しぶしぶ認めた。
またハジメも捜索メンバーに加わりたかったが、そういう訳にも行かない。ハジメには直接依頼があったためだ。この役目は他の誰であろうと代用不能だ。
それ故にハジメは直接依頼の仕事を全うし続けていた。以前の様に反対する【錬成師】は居らず、全員素直である事から依頼自体はつつがなく進んだ。
準アーティファクト生成の手順をある程度教え、皆が実践しているのを遠巻きにハジメは見つめていた。彼等は全員、新たな技術に興奮を隠さない。目を爛々とさせ、浮き足立っている。
「皆さん、“錬成”の際は冷静に丁寧にです。どれだけ興奮してもそれだけはお忘れ無く!」
「「「「「Yes sir!!!! やったるぞぉおおおおお!!!」」」」」
「……はぁ」
喝を入れてもこの有様だ。【錬成師】という種族は本当に単純な事この上ない。それを改めて実感する。
だが、そんな彼等が羨ましい。ハジメは確かにそうも感じていた。少なくとも工房にいた時は破茶滅茶な先輩達とあんな風に盛り上がっていたなぁと懐かしむ。
だが今は違う。気が気でないと言うべきか。心が落ち着かないのだ。理由は、あまりにも明白。
「清水くん、だよなぁ」
たった一人欠けただけでこのザマだ。魔法講義をするだけの仲、数ヶ月仲良くしただけの男友達。その一人がハジメの素知らぬ場所へと行った、ただそれだけの話だ。
更に言えば今は優花もいない。明日にある【ウル】の収穫祭、通称『湖信祭』の運営の手伝いに向かった為だ。今のハジメならばまず【錬成師】との喧嘩は無いだろう、と護衛を外されたのだ。
つまりはハジメは現在、孤独だった。かつての己にとってはそう珍しく無い話だ。そもそも地球にいた頃には友人など居なかったのだから。
ただその時とは違って、吹く風は何処か乾いている様に思えた。
「…地球にいた時は、平気だったのになぁ」
弱くなったな。頬杖を突きながら、ハジメはそんな事を嘯くのだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ハジメは町の離れへと移動していた。いつもの様にトレーニングを行う為である。
ティアと出会って以降の夜はアーティファクトの解析により、特訓の時間が取れていなかった。しかし前日、ついに魔法陣の把握…そして
(まあ、眠れないって言う理由が強いけれど)
胸騒ぎがするのだ。ベヒモスと対峙した時や冤罪を掛けられた時よりも遥かに凄まじく鼓動が鳴るのだ。
今の【ウル】には異常な点が多い。魔物は姿を現さず、清水も消えた。しかもその時期が『湖信祭』という特殊な時期。鈍くても何かがあるのでは、と疑わずにはいられない。
『湖信祭』は【ウル】の湖に宿る精霊に収穫の感謝を伝える独自の祭りだ。他にも【ウル】独自の祭りは幾つか存在するが、『湖信祭』の規模は段違い。
ハジメは兎も角、愛子や『使徒』が呼ばれた理由の一つには『湖信祭』における来賓という側面もある。【豊穣の女神】たる愛子や神エヒトが地上に齎した救世主はゲストとしても十分。特に愛子は神の化身とも言われている為、その名が霞む事は無いだろう。
そんな時期にトラブルが相次いでいるのだ。何らかの関連性があるのでは無いか、と疑うのは当然の話だった。
(『湖信祭』に何かがある? …いや、『湖信祭』そのものじゃ無いのか? 何だ。清水くんはどうして姿を…)
ハジメは思考の渦にいた。瞑目し、集中しながら今己の中にある情報を捌いていく。ただ今のままでは正直思考が落ち着かない。それも含めて特訓をしようと歩いて来たのだ。
そして先日に立った平野まで辿り着くと、岩にもたれ掛かる陰があった。金色の美しい髪を靡かせている。そして彼女はハジメに気がつくと、喜色を明らかにして微笑んで来た。
「──お久しぶりですね。フフッ、元気でしたか? ハーちゃん」
「………何でいるんでせう?」
ハジメの反応に彼女は舌を見せ、笑う。まるで悪戯の成功を喜ぶ少女の様だ。同時にやはり蠱惑的で、不思議と魅せられる。
「何でも質問しては駄目ですよ、ハーちゃん。レディには秘密が付き物なんですから」
「あ、そうですよね。すみま──」
「それで理由ですけれど──」
「何で一回断る素振り見せたんですか?」
「この前友達にそう言われまして。カッコ良かったので言ってみたかったんです」
「アッハイ」
やはり何というか独特だ。最初は裏があるのでは無いかと思っていたが…どうも彼女は会話自体を目的としている節が見られる。相手との会話そのものを純粋に楽しんでいるのだ。
ただ世間知らずなのか、その方向性はハジメの予想だにしない方向に向かうが。是非で言えば悪く無いのだが、会話でどっと疲れるのだ。
もう投げやりになりつつあるハジメ。それを全く意に返す事無く、ティアは話を続けた。
「単純に言えば確認、ですかね? ちょーっとだけ、気になった事があったんです」
「気になる事?」
ニコニコと笑顔を絶やさず話を続けるティア。しかしハジメの問い掛けの後、その笑みは嘘の様に消えた。
「最近、この辺りに魔物が見られない事はご存知ですか?」
「…はい」
「貴方と会った後、観光がてら【ウル】の町を見て回っていたんですが…どうも魔物の姿が見られない。それがとてもとても不思議でしてね。私なりに調査していたんです」
「…それで、如何なりましたか?」
嫌な予感がした。とてつも無く、頭の中が煩い。耳に入るであろう言の葉を拒絶しようとする。
だがいつの間にかティアはすぐ側に居た。自然とその唇をハジメの耳元に寄せる。逃げる事を許さない至近距離からの声は、これ以上無く明白に響いた。
彼女は囁く。
「魔法の痕跡が見られました。“闇魔法”の物ですね。恐らくは洗脳の類。魔物のコントロールを奪い、操っているのでしょう。この町から魔物が居なくなるレベルですから頭数は百を優に超えますね。相当の腕である事が窺えます」
「ッ…」
──清水幸利、その四文字が思考にて明らかに存在感を放った。
「その者に心当たりは…聞くまでもありませんね」
清水の天職は闇術師、“闇魔法”に適性を持つ後衛職だ。その腕は並大抵の物では無く、洗脳によるコントロールを可能としている。
ティアから齎された情報とハジメの知る清水。脳裏下で結び付くのはいとも容易い。ハジメはその正体を実質的に看破した。
ハジメの動揺が伝わったのだろう。ティアはハジメと目を合わせる。つい今迄の様な無邪気な笑みはそこに無い。真摯にハジメを見つめている。
「お応えくださいますか? その者が誰か」
「それは…」
「その者は貴方の大切な方かも知れませんが…何せしでかしている事があまりにも大きい。百を優に超える魔物の群れを率いるのです。放っていれば…最悪人死が出ます。そんな事態を望んでいる訳では無いでしょう?」
「……」
「私
「…でもっ!」
続きの言葉を言おうとした。例え我儘だったとしても、それはハジメにとって譲れない物。だからこそ啖呵を切ろうとした。
だがその前に、視界を染め上げる黄金の光。その輝きと共に厳かにも、女王の命令が放たれた。
「──我が名、ティアの名において
「──ッ!!? ぁ…」
ズクンッ、と心臓が鳴った。そして次にはその舌が動き始めた。
何らかの魔法か。しかしその魔法が一体何なのか、まるで分からない。確かに分かる事は一つ。己の舌のコントロールはもう、彼女の掌にある事のみだ。
「し…」
「良いですよ、その調子です」
彼の一文字目を口が紡ぐ。抗おうとしても逆らえない。凄まじい強制力。身体を強張らせ、汗が噴き出すが変わらず口は動こうとする。
そしてその名を言ってしまえば、彼は終わるだろう。目の前にいる彼女はそれこそ『使徒』など相手にならない様な、絶対強者。無詠唱による魔法の行使、従来の魔法体系とはかけ離れた強力な魔法。それだけで分かる圧倒的な実力差が彼女にはある。
清水とは短い付き合いだ。異世界に来てから関わり始めた。何処かへ遊びにいく様な仲でも無い。四六時中ずっといる様な関係性など無い。
だが、深く無くとも関わりはあった。数ヶ月であろうが共にいた。
そして──絆が、確かにそこにはあった。
「………」
「如何されました。さあ、早く…」
「ぃ…」
「?」
俯き、口を抑えるハジメにティアが囁く。だが促そうとハジメは何かを小さく呟くのみ。それを違和感に感じつつも、ハジメの口に耳を添えて…。
「い…や、だ」
ティアは確かに拒絶の声を聞いた。小さくて、か細くて。それでもなお、確かな拒絶。
ティアは僅かにその真紅の瞳を揺らした。
「………何故?」
しかしその動揺を持ち直してすぐ、ティアは尋ねる。
「とも、だちなんだ。初めてできた…バカをやれるような。失いたく、ないんだよ。彼がなにをするのかは…わからない。けど、けれど…」
──死んで欲しく無いんだ。
それはあまりにも単純な理由だった。正義感も、打算も、なんなら同情でもない。単純な我儘。
だがそれではティアは納得しない。剣吞に瞳を細め、瞳の真紅に眼光を齎した。口にする言葉は静かであるものの、威圧的ですらあった。
「であれば如何すると? 起きるであろう事件をみすみす見逃せとでも言うつもりですか?」
ティアの言う事はもっともだ。清水が何をしようとしているか分からない。もしかすれば【ウル】を襲うつもりは無く、深い事情があるのかもしれない。しかしそれは良くて、の話だ。最悪の場合は魔物のスタンピードが町を覆うだろう。町には『使徒』や神殿騎士がいるが、それも構わず群れは尽くを喰らうだろう。
先程も言ったがハジメのそれは単なる我儘だ。そしてティアからしてみればそれに己を合わせる道理は無い。
「僕が、止める」
「…貴方が?」
「誰かが傷つく前に、僕がぜったいに止める。もしもの時は…この命だって、賭けてやる!」
もうティアの魔法による舌の不自由など無い。堂々とハジメは言ってのける。己が意をありったけ叫ぶ。
変わる事なくハジメは自身の意思を貫く。それは愚かで、阿呆で。しかし他に無い程
ティアはそんなハジメを見ると、剣吞だった表情に温かみをこさえて呟いた。
「英雄に苦難は付き物、ですか」
「………?」
「御安心を。なんて事は無い、ただの独り言ですよ」
風に搔き消えるティアの声。ハジメは首を傾けるものの、その言葉を繰り返す事はなかった。ふふっといつも通りの笑い声で誤魔化した。
そして再びハジメを見詰めると、こめかみを抑えて溜息を吐く。一拍を開けてから、恨みがましそうにジト目をぶつけた。
「仕方がありません。条件を付けます。
「──っ!」
「私に無理を通すのです。この程度の条件は呑んでいただきます」
もう疾うに太陽は落ちている。月の位置からして精々五時間程か。清水の居場所も分かっていない条件でのその短さだ。ハジメが【錬成師】という非戦闘職という前提も考えると、難易度は並大抵では無い。
もしかしたら目の前の少女は自分を騙し、清水を殺めるつもりかもしれない。ティアが約束を守るという保証は無い以上、最悪もあり得る。
だが、それでもハジメは口端を上げて、言って見せる。
「…やってやりますよ」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
そして数分後。月夜の下でティアは空にて浮かんでいた。
ハジメに出した条件である【ウル】の町への被害、それを見逃さぬ様にするには上から見るのが彼女にとっては一番融通が効き、楽だった。
まあ、そもそも彼女自身が神殿騎士達に姿を見られるわけにも行かないため、目に映りづらくするという意味合いもあるのだが。
空に舞う様にして浮かぶティア。きっと誰かがその姿を見たとしたら、月の精霊か女神かと思うのだろう。それ程の神秘的な美しさが彼女にはある。
しかし今の彼女は無邪気で楽しげだ。近づけば分かるが鼻歌を歌う程に。
不安はある。かの少年と交わした約束で誰かが死ぬのでは無いか、と。
後悔はある。もしやすればもっと良い選択があったのでは無いか、と。
されどそれ以上の期待が、彼女にはあった。愉快さがあった。信頼も、愛情も。そして何よりも確信が、その胸に秘められている。
だからこそ彼女は少年の目の前でも魅せなかった、妖しく火照った笑顔を浮かべる。そして手を翳すと、延長線にいる少年を愛おしげに指でなぞった。
まだ矮小な身。我らに、
ならば魅せよ。魅せてみせろ。この私に。
「さあ。
──月の玉座にて彼女は全てを睥睨していた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
そんな視線などついぞ知らず。ハジメは月下、森の中を駆け回る。
あれから一度己の宿屋に戻り、ナイフや念話石と最低限の物だけを回収した。
(まあ、後で怒られるだろうけど)
ハジメが今している事は危険行為に他ならない。非戦闘職が【ウル】という安全区域をたった一人で抜け出したのだ。本来ならば護衛の一人は付けていくのが普通だろう。
ただティアとの約束上、時間が惜しい。しかも最悪清水と敵対する事となるのだ。話は複雑で不明瞭。他人に訳を話し、納得を得ている間に夜など開けてしまう。
取り敢えず帰ったら優花と愛子からのお叱りはあるだろう。ハジメもそれを自覚しつつも森を駆け抜ける。
ちなみに無意識であるがハジメの動きは地球で言うパルクールに近い。木の幹の反動を用いて跳び、崖を全身で衝撃を流して飛び降りる。メルドとの訓練で鍛えられた「考えて動く」事を実践出来ているのだ。
(【ウル】で潜伏、しかも大量の魔物を連れているとなれば…まず森しかない。他なら人目に着く。そうなれば今まで情報が無いのが可笑しい)
神殿騎士は清水の捜索中、ギルドでの捜索願いを見る機会があったらしい。その依頼は何なら従来よりも少ないほど。清水、もしくはその魔物と遭遇すれば十中八九殺されるだろう。そのため、清水の操る魔物による殺害はほぼ起きていないと考えていいだろう。
そのため、清水とその魔物の群れは上手く隠れられている。だが平地などならばまず人目に着く。それが騒ぎにならないなどあり得ない。故に、森が候補として考えられる。
【ウル】近くにある森はあまり整備がなされて居ない。魔物が多い為、あまり山道を開き難いのだ。また地形は凹凸が多く、【ウル】から見て低い箇所も多く存在する。そこならば魔物も隠れられるだろう。
そうやってハジメは予測し、走っている。体内魔力を循環させた身体能力は決して低く無い。そして動かし方ならば並以上。木々の合間合間を駆け抜けて行く。
順調に進んでいる、そこまではそうだった。
しかし次の途端だった。目の端に、木々の奥に何かが映った。赤い、何かだ。
(──魔物ッ!?)
ティアから齎された情報により、ハジメはソレを魔物と判断した。ソレから離れる様地面を蹴り、腰からナイフを抜き逆手で握る。
刃をソレへと向け、構えた所で漸くハジメはそれを注視した。そして、目を疑った。
「…何だよ、これ」
ソレは、肉塊だった。
鳥か、虎か、狼か、魔物か。原型も分からぬ程砕かれ、潰れた魔物達が山の様に重なっている。一部にはまだ脈打っているモノも有り、それが無情にもより地面に赤い水溜まりを作っていた。
むせかえる程に重厚な鉄錆の匂い。思わず口を抑え、喉から逆流し掛けたそれを呑み込む。冷静に見ると、一応人の腕らしいモノは無い。それに少し安堵する。
その肉塊があった方向に音を立てぬ様気をつけて進むと、その様な肉塊が幾つも転がっていた。見ていても相当な個体数が死んでいる事が分かる。
──この町から魔物が居なくなるレベルですから頭数は百を優に超えますね
ふとこの言葉を思い出す。流石にそれだけの数には満たないものの、その過半数の死体はここにあるだろう。完全にミンチになっているモノもある事から、ほぼ数が合うだろうと予想される。
(何で死んでるんだ? これも清水くんが? でも、こんな奥で…しかもこれだけの個体数を倒すことに何の意味が…)
先程までは清水はテロか何かでも起こすつもりでいるのかと思っていた。しかしこんな光景をみて、その考えを改める。清水の意図が、状況が、まるで読めない。
赤黒く染まった周囲とその匂いが気持ち悪さを促進する。だがこの様なモノを見ている間にも時間は過ぎて行く。
もう一度走り出そう。そうしようとした時だ。
『ピィ────!!!』
「──ッ! この声は!?」
空から聴き慣れた鳴き声が響いた。そしてその方向を向くと、その声の主は小さな両翼を羽ばたかせていた。
「ピーちゃん!」
『ピピィッ! ピピッ!! ピィ!』
「清水くんは──」
清水の使い魔であるピナはハジメの肩に乗って早々、翼をバタバタと忙しなく動かしている。それに比例する様に鳴き声もまあ、多い。
ハジメはそれを不審に感じたが、不意に脚に括られている物に気がつく。それは魔法紙と呼ばれる特殊なインクを用いる事で魔法陣の製作を可能とする準アーティファクトだ。後衛職が己の武器が無くなった際に用いる事が多いそれが、ピナの脚に結び付けられていた。
何かの手掛かりになるかも知れないと、ハジメはそれをほどき中を覗く。そして、ものの見事に固まった。
手紙の内容は何ともシンプル。しかし引っ掛かりを覚える物だった。
──逃げろ
たったそれ三文字だ。どう言う意味なのか、ハジメには理解が出来ない。
しかしハジメを硬直させたのはそのメッセージその物では無い。そのメッセージを記している、文字の色と質感だ。
その色は、質感は、つい先程嫌と言うほどに見たソレに似ている。
赤くて。
それでいて黒も混じっていて。
触れればヌチャと嫌な感触を肌に伝え。
鉄錆の、匂いがした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「あー、こんちくしょうめ…」
暗くて狭い洞窟の中。一人の男が独り言を呟く。
何て事はない。ただの弱音だ。心の弱い彼は、そうでもしなければ心の平常を保てない。
今だって心の中で言い訳と問い掛けを繰り返している。くだらない自問自答だ。呆れて、笑えもしない。
いや、やはり笑える。というかこれは笑わなきゃやってられない。くくっ、と小さく微かに笑う。
何度も、繰り返し何度も短く微かに笑い声を上げる。下手な笑い声しか上がらない。
汗が頬を伝う。それに気付くと深呼吸をした。己の行動の支離滅裂ぶりを自覚し、取り敢えず落ち着こうとしたのだ。
めいいっぱい肺に空気を送り込む。そうした後、洞窟の壁にもたれ掛かって、彼は…清水幸利は独り言を続きを口にする。
自重気味にただ一言。
「…俺って、超馬鹿だったんだな」
その右脇腹からは赤い液体が一滴一滴と溢れ、流れていた。
ちなみにティアさんがガチで参加したら一分以内で解決します。
一体ダレナンダロナー!
さてさて、割と気になりそうな所でぶつ切りしましたが、次回からが【ウル】編の本番です!
恐らく清水視点のお話です。
どうぞお楽しみを!
…へ? 前回も「次回から佳境」とか言ってた?
聞き間違いだろ(真顔)
追記
かたやぶり様
カロンガンダム様
路徳様
評価感謝致します。
並びに誤字修正をしてくださる私にとってのヒーローの皆様、感想を送ってくださる我がソウルメイトにも感謝を!
これらは全て私のエネルギーです!
ドンドンください!(懇願)
あとありふれ零5巻とダンまち17巻とだんじょる2巻が発売予定です。
ここが…天国ですか?(なお古戦場からは目を背ける物とする)
この作品、アナタは何メイン目的で読んでる?
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ハジカオ!
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オリジナル展開!
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成り上がり要素!
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考察要素!
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曇らせ!
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感想返し!
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ダイレクトマーケティング!