恋する錬成師は世界最強   作:見た目は子供、素顔は厨二

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次回で【ウル】での戦闘パートはラストになります。
どうぞお待ち下さい!

今回は割とサブキャラメインです。
原作ではまず見られない対戦カード!(キャストがしょぼいだけでは?)(気付いた奴は腹パン)(オラ、かかって来いや)
興味無い人も居るかと思われますが、私が脇役の戦い好きだから許してください。
それではどうぞ!

あとどうでも良い私事ですが、何故FGOのアイドル霊衣にエリちゃんのが無いんですか?
おかしく無いですか?
ふざけてやがりますね?
自害せよ、ランサー(八つ当たり)


14、『始まりの戦い』中

 畑山愛子は生徒を第一として重んじる。生徒を守り、寄り添う事を使命とする。それはある種、異世界に飛ばされるという摩訶不思議な現象に対して、正気を保つ術でもあった。

 

 愛子は決して強く無い。大人で強い意志を持つが、「生徒を守る」というアイデンティティが僅かにでも欠けたならば…その瞬間愛子は折れるだろう。

 

 だからこそ優花が愛子達に知らせた話は愛子を動かすには十分だった。

 

『清水が魔人族に襲われてます』

『同時に南雲も清水を助けに行って、ピンチなんです』

『愛子先生と【ウル】を潰す為に、魔物が何体かこっちに向かっています』

『理由はよく分かりませんが、被害が少しでも町に及べば…清水が死ぬらしいです』

 

 そこからは早かった。周囲の者達は動揺や疑惑を優花の言葉に抱いたが、愛子はすぐ様にそれに従った。元々の善性に加え、生徒らを守るというアイデンティティ。今更躊躇う訳が無い。【豊穣の女神】の名を利用し、すぐに人々の避難やバリケードの作成などを進めた。

 

 愛子は途中ハジメと清水を守る為、神殿騎士の一人を送ろうとした。が、それを否定したのは他でも無い優花だった。

 

『アイツらは弱いですけど、しぶといですから絶対帰って来ます。心配しなくても大丈夫です、愛ちゃん先生』

 

 根拠も無い言葉、しかし込められた絶対的な信頼に愛子は頷いた。己も信頼すべきだと、愛子は感じたのだ。

 

 そうして即席の砦を作り上げ、防衛を行なっている現在。愛子は見張り台から戦場を見下ろしていた。戦いは順調だ。未だ六匹の魔物は健在。しかしじわりじわりと追い詰めている。

 

「粉砕せよ! 破砕せよ! 爆砕せよ! ──“豪撃”!」

 

 神殿騎士のデビッド、その腕の筋肉が隆起する。そして放たれる一閃。『グロル』は紙一重で避けるものの、その頃には返す刃が迫る。あまりもの早業に『グロル』の前足が一本吹き飛んだ。

 

 強化(バフ)魔法に類する“豪撃”は魔力により一瞬の身体強化を行う魔法だ。少ない詠唱により得られる身体強化(ブースト)は神殿騎士ともなれば絶大な効果を発揮する。

 

「其は怒り。罰と名乗りて破壊を下す。生まれ落ちよ──“紫雷(しらい)”!」

 

 別の方角では神殿騎士のチェイスが腕を空に掲げた。そこに浮かぶはパチパチと弾ける稲光。それは徐々に光量を増し、やがて『グロル』を貫く槍と成る。

 

 凄まじい音を響かせ、落ちる落雷。敏捷ではかなりの数値を誇る『グロル』でさえも逃れる事ができない。鳩尾を焼き、骨を砕いた。

 

 加えてクリスやジェイドも続々と『グロル』に確かなダメージを与えていく。ハジメと清水が策を弄して戦ったソレに難なく正面から。

 

 このままでは勝てぬと判断したのだろう。残り二体の『グロル』がバリケードへと向かう。

 

 だが何も神殿騎士だけが相手では無い。バリケードの上から押し寄せる魔法やナイフ、鞭。己等を殺し得る攻撃の数々に『グロル』は回避を選択させられる。

 

「思ったより速いわね」

「ここからでも鞭って届くね…やはり鞭、鞭は全てを解決するっ!」

「やばいよ優花…妙子の化けの皮が…」

「ふふふ…もっといたぶらなきゃ…痛めつけなきゃ…」

「「「ヒエッ…」」」

「妙子ー、男子がビビってるよー」

 

 それもその筈。バリケードの上にいるのは『神の使徒』たる六人だ。非戦闘職であるハジメや後方支援職である清水と異なり、戦闘職の者達が多い。近接職の者達もいるが、攻性魔法はこの中の誰もが容易く使用可能だ。

 

『グロル』は強力な魔物だ。それでも『神の使徒(チート)』の攻撃は難なく回避、と言うわけには行かない。それが鯨波の如く押し寄せたともなれば…尚更だ。

 

 結果、『グロル』の肌に刻まれて行く傷の数々。反撃を試みるが何せ『グロル』は遠距離からの攻撃手段を持たない。故に近づく他には攻撃に繋がる道は存在し得ない。そして『神の使徒』の総攻撃を潜り抜けるのは困難を極める。

 

 正しく勝ち筋が出来ている。全ては順調、その筈だ。

 

(…ですが、何かが)

 

 しかし愛子は何かが引っかかっていた。それはもしやすれば全体を俯瞰で見られる見張り台だからこそ、分かる事だったのかもしれない。

 

 そう、違和感は『グロル』にある。その視線の先が…愛子に向けられていない。

 

 魔人族にとって【豊穣の女神】の名とその力は障害そのものだ。信仰の上昇と食糧不足の解消、それらだけでも戦争を有利に運べてしまうのだから。

 

 だからこそ当初、魔人族側の目的は愛子の殺害だと思っていた。事実神殿騎士や『神の使徒』はそれを疑わず、愛子をバリケードの中へと押し込んだ。見張り台に立っているのもその一環。

 

 しかし…それにしては魔物から愛子へ向けられる視線の数があまりにも()()()()()。時折魔物等が一瞥する程度で、それ以上に向けることは無かった。

 

(では…いったい何処に?)

 

 それを意識し出すと、見つけるのは早かった。『グロル』達の向ける視線はほぼただ一人に向けられている。

 

「…園部さん?」

 

 今もバリケードで投擲を行う園部優花、彼女へと注がれている。その事実は魔人族側の目的を探り出すには十分だった。

 

 清水と同様、愛子も優花が狙われている事実を理解し、“風音”により声を飛ばそうとした。しかしもう一つ、愛子は気が付いた。

 

 それは陽炎。揺らめく何か。

 

 それが優花の足元の壁にまで、辿り着いていた。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「──やれ」

 

 静かに、森の奥で。厳かに彼は命令した。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 戦いは順調だ。少なくともその瞬間まで優花はこの状況をそう把握していた。優花の投げるナイフは『グロル』に少なくないダメージを与えている。即時とは言わないが、後々倒れる事は予測できた。

 

 すると戦場に鳴り響く口笛の音。それと共に森の奥から、()()()の『グロル』が姿を現した。

 

 だが『グロル』の個体数は既に把握済み。優花は焦ることもなく、言葉にするだけだ。

 

「清水の話通りね…あれが最後の一体よ!」

「えーっとつまり…七体?」

「あと南雲と清水の方に三体いるから合計十体ね!」

「何つーか、終わりが見えてきた──」

 

 相川昇がそう言った途端の事だ。

 

『園部さん! ──逃げて!!』

 

 “風音”に声を乗せ、あらん限り叫ぶ愛子。周囲の『神の使徒』、そして優花がそれに何事かと驚いたが──

 

『グォルルルル…』

 

 突然()()から響いた鳴き声に、全員がしめし合わせたかのように焦燥を抱いた。

 

 そして()()を覆っていた隠れ蓑(ベール)は晴れる。そして現れる()()()()()()()。正真正銘、清水にさえ存在を秘匿したレイスの隠し札(ジョーカー)

 

()()は『グロル』とは異なる獣だった。見た目は虎に近く、しかし数多くの生物を混ぜたかのような外見は正しく異形其の物。その上数百キロはあるだろうと思わせる巨体。

 

 ──何故これ程まで近づくまで気が付かなかったのか?

 

 皆が抱く疑問を他所に、『()()()』は鈍い眼光を優花へと放つ。優花も身を捻り避けようと試みるが、あまりにも遅い。

 

『グォオオオオオオオオオ!!!!』

「────ーッッッ!!?」

 

 優花の目の前に躍り出る『キメラ』。そして振り下ろすは、丸太を彷彿とさせる剛腕。凄まじい轟音を響かせ、バリケードごと破壊する。

 

 優花は直撃こそは避けたが、何せ風圧が凄まじい。その為、その身を地面に叩きつけられる結果となる。

 

 人々はバリケードが破壊された事により、絶叫を上げて逃げ惑う。『キメラ』の様相が非常に醜悪である事もこの混乱に発破を掛けている。

 

 ズシンッ、ズシンッと地面が揺れる。恐らくは『キメラ』の歩みによるものだろう。その重量に耐え切れぬのか、歩みに乗じて地面が凹んだ。

 

「優花から、離れろっ!」

「乱れ咲け! 白く眩く! “氷華(ひょうか)”!」

「クソッ! 硬ぇ!」

 

 その進行を止めようと背後から『神の使徒』達が総攻撃を『キメラ』に放つ。それは『情』がある人間故の判断。見捨てられぬ人の性。むしろ圧倒的な破壊を見せた『キメラ』に対し、攻撃を放てる度胸は賞賛にすら値する。

 

 されど──この場では明らかな失敗だ。

 

『『グヲォオオオオ!!!!』』

「しまっ!?」

 

 遠距離攻撃により行われた移動の阻害。それらが無くなった事により二体の『グロル』がバリケードを飛び越え、現れる。その二体の目標も同じく優花だ。

 

 正しく先程までの優勢から一転。優花は絶命の危機に瀕している。

 

 先程の衝撃によるものか、額から流れる血が優花の右目を赤く汚す。平衡感覚も曖昧なまま、何とか『グロル』の突撃を避ける。

 

 しかし先程も言ったが『グロル』の敏捷は並大抵では無い。優花が地面に倒れる頃には『グロル』は既に着地を終え、次の跳躍へと備えていた。

 

 次の攻撃は間違い無く当たるだろう。クラスメイト等も対応しようとしているが、『キメラ』への対処に追われてしまっている。神殿騎士達もまず間に合わないだろう。地面に倒れ込んでしまっている己ではまず、回避も何も出来ない。

 

 園部優花は言うならば巻き込まれただけだ。責任感があるだけで、命を賭ける理由などありはしない。そもそも村人一人に被害が出たら清水が死ぬ、というのも訳が分からない。根拠も理由もないのに優花はこうして死地に放り込まれた。

 

 阿呆らしいものだ。こうして死ぬ気で戦っているのもあの馬鹿男子二人の為。何とも阿呆らしい。実際に死にかけているのだから、本当に優花は阿呆なのだろう。

 

 だが優花はきっとこの決断を後悔していない。何故ならこれは()()()()だ。二人の話を聞いて逃げようとするなど…そんな者は『園部優花』では無いをだからこそこれで良い。

 

 そして毛頭死ぬ気だって無い。だから──

 

「死ねっっっ、るかぁあああああああああ!!!!」

 

 ──懐のナイフの刃をその手で握り締めた。

 

 血に塗れた優花の顔。されどそこから覗く眼光には明確な殺意が潜む。差し違えてでも殺す、と言う明確な意志が『グロル』等に確かな間を作り出した。

 

 その時間はたかが一瞬だ。己と相手の戦力差をよく理解している『グロル』はすぐに脚を屈め、突進を繰り出そうとする。

 

 しかしその一瞬は、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 レイスに油断は無かった。

 

 何せ神殿騎士等と優花の距離の確保。『神の使徒』に『キメラ』の存在を気取らせ無い為の囮の準備。更には魔物の洗脳を得意とする清水、型に嵌まらない戦闘を行うハジメを【ウル】から引き離す事にも成功していた。

 

 正直ハジメと清水に対し三体も送ったのは過剰だったとも思ったが、それでも敗れた事を考えるとそれも悪く無い判断であった。実際、それよりも少なければもっと早い段階で『グロル』は殺され、ハジメと清水は【ウル】に今にも帰れていたかもしれない。

 

 だからこそ今レイスの心中を驚愕が満たしているのは、決して慢心によるものではない。

 

 それもそうだ。目の前の()()が可笑しいのだ。

 

 ──【()()()()()()()()()()()()()()()()()など、予想が出来てたまるものか。

 

 そう、レイスは心の中で愚痴を呟いた。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 ──怖い怖い怖い恐ろしい恐ろしい嫌だ怖い無理だ死ぬ逃げたい泣く震える何でこんな目に死嫌怖無理

 

 弱音ばかりを吐く心中。されど愛子はそんな警鐘全てを無視して、その足を手すりに掛けた。何故ならこれが一番皆の場所に、そして()の元に行くのが速いから。

 

 だから躊躇いは無い。民衆も、騎士も、魔物も、魔人も、白鳩も。全てを仰天とさせつつ、彼女はその身を空中に投げ出した。

 

 見張り台はこの町で最も高い建物だ。その高さはおおよそ六階建てと言った所か。マンションがありふれている地球ではそれ程高くない方ではあるが、決して飛び降りて無事に済む高さでは無い。

 

 しかし愛子は()()()()。生徒を守る。その為に死ぬ気で己が信念を遂行する。

 

 愛子は攻撃魔法に適正を持たない。それは彼女の天職【農作師】に定められた縛り。規格外の魔力量と引き換えに戦闘能力を持たない様になっているのだ。

 

 この縛りを愛子はどれだけ呪ったことか。自分に戦う力があれば生徒等を戦場に出す事など無かっただろう。危険に晒させる事など無かったと、愛子は自身を何度責め立てた事か。

 

 しかし彼女には“風魔法”と“土魔法”の幾つかに適性が存在した。当然何方とも攻撃魔法は使えない。しかし補助魔法ならば彼女でも小さな魔法陣で発動する事が出来た。

 

 いつか、目の前で生徒が命の危機に晒された時。後悔しない為にも。愛子は陰ながらにしてそれらの補助魔法全てを記憶し、習得した。

 

 思っていた活用法とはまるで異なるが──その成果がここに来て開花する!

 

「神よ、無形の翼を私に与えたもう──“来翔”!」

 

 瞬間、地面に叩きつけられそうになっていた所を、上昇気流がふわりと持ち上げる。僅かに落下の勢いは残るが、それでも大事には至らない。たかが片腕を奇妙な方向に曲げた程度。これならばまだ立てる。命を賭けられる。

 

 痛みに脂汗を流しつつも、愛子は息を吸い込み、そして“風音”と共に叫ぶ。

 

「私が──【豊穣の女神】! 畑山愛子です!」

 

 ただそれだけの簡潔な言葉。愛子の存在に気が付いた『神の使徒』は例外無く驚くが…それ以上の驚愕を見せる者達がそこにはいる。

 

 そもそも第一目標として優花の確保が優先されたのは愛子に対するガードが厳重である為だ。優先度としては愛子の方が勿論高い。優花はあくまでも清水への人質、それを考えれば優先度の優劣は明らか。

 

 しかし愛子が狙われるなど神殿騎士や『神の使徒』は百も承知。つまりは難易度が恐ろしく高い。だからこそ容易く、かつメリットが大きい優花の確保を先としたのだ。

 

 だがもし無防備な状態で【豊穣の女神】が現れたとするならば? それら話が異なる。

 

 魔物にとって生け捕りよりも殺害の方が容易い。そして小さな手柄よりも大きな手柄の方が絶対的に良い。あまりにも単純な話だ。

 

 故にすぐ側に現れた大将首に魔物等は思考を奪われる。作戦を、崩される。

 

 故に──生じる隙。

 

「シィッ!!」

 

 舌舐めずりをする『グロル』の内一匹の目にナイフが突き刺さる。

 

「えいっ!」

「オラァッ!!」

 

 また別の『グロル』の眼前に迫るは鞭と曲刀。直撃とまでは言わないが、微かに血の色が見えた。

 

「眼前の尽く。邪悪なる眼よ。私はその全てを白き(ひつぎ)に運ぶ。──“凍柩”!」

 

『キメラ』は非常に強力な敵だ。しかし行動の阻害に特化した上級魔法の前には、その動きを止めざるを得ない。ピキピキと音を立て、凝固する足を切っ掛けに氷が『キメラ』を封じていく。

 

 僅かな間に突かれた攻撃の数々。だが彼等はただの魔物では無い。『神の使徒』の攻撃を直で受けてもなお、『グロル』は倒れる気配が無い。『キメラ』もその巨体で氷を無理やり引き剥がそうとしている。

 

 宿る殺意は尚も高まる。

 

 だがそれも…バリケードの向こうから光が現れるまでだった。

 

「「万翔羽ばたき、天へと至れ──“天翔閃”!」」

 

 光魔法上級魔法、“天翔閃”。地面を抉り、迫る極光の刃が二つ。それはそれぞれの『グロル』へと放たれた。外にいた『グロル』を文字通り()()へと化した力が猛威を振るった。

 

 通常の状態ならば或いは避けられたのかも知れない。しかし少なくないダメージを負い、しかも相手は神殿騎士。手負いの魔物相手に逃れられる筈がなかった。

 

 結果は直撃。つい先、外で繰り広げられた一撃と同様に二体の『グロル』は吹き飛んでしまった。

 

 そして二人の神殿騎士がそのまま着地。そしてすぐ様に愛子の方へ向きやると、必死の形相で叫んだ。

 

「愛子! 無事ですか!?」

「一体何を為されているのですか!?」

「すみません。クリスさん、ジェイドさん。ですがこうするのが一番速いかと…」

 

 確かに愛子の判断は神殿騎士をバリケードの中へと()()()()()()()()としてはかなりの最善手だ。単に言葉で言うよりも、駆け付けねばならない理由を作る方が手っ取り早い。魔物に隙を作り出す事も兼ねると悪い手では無い。無いのだが…。

 

「愛ちゃん先生腕折れてるよ!?」

「そんな事よりも園部さんの治療を!」

「骨折はそんな事じゃ無く無い!? 私よりも愛子ちゃん先生を早く!」

「どっちも大人しく治療受けてくれないかなー!?」

「ははーん。もしや愛ちゃん先生って見た目の割にヤベーな?」

「「異議無ぇわ…」」

 

 あまりにも愛子が自分に無頓着過ぎた。今も片腕がぷらぷらとしているにも関わらず、素知らぬ顔で優花に駆け寄っている。

 

 一方で優花も優花で流血沙汰になっているにも関わらず愛子を優先しようとしている。先程まで死の縁にいたと言うのにこれである。

 

 女子二名のそのメンタルの硬さに戦慄するのは『神の使徒』男子組だ。これに関しては男子が意固地なしと言う訳ではない。単に二人が度の過ぎたお人好しなだけである。

 

「それにしてもデビッドさんやチェイスさん達は…?」

「彼等は十体目の魔物仕留めに行っています。二人掛かりですから直ぐに終わるでしょう。強くはありましたが…アレは群れてこそ強さを発揮する類ですね。単独撃破ならば何の問題も無い」

「あとは魔人族の同行も調べて来る模様です。ですが恐らく芳しい結果とはなるでしょう。今の所姿すら晒して居ませんからね。…ああ、奈々殿。私も手伝いましょう」

 

 だが神殿騎士の助力もあり、『キメラ』も完全に凍った。攻撃には凄まじい耐久性を誇ったが、対束縛系魔法に対しては耐性があまり無かったらしい。まだ意識はあるのか、時折氷塊は動く。だがそれも間も無くの話だろう。

 

 魔人族は見つかっていないが、それでもほぼ全ての戦力を削いだ。敵もまだ隠し手札が無い限りは何もして来ないだろう。

 

 何処か勝利のムードが漂い、気が緩み出す一行。

 

 その雰囲気を断絶する様に、バリケードの遥か向こう…空から()()()()は降り掛かる。

 

 ──ドドドドドドドドドドドドドドドッッッ!!!!

 

「「──散らせっ! “風壁”!!」」

 

 優れた勘により、ジェイドとクリスは荒ぶる乱気流を生み出し、“水弾”の一部を弾く。しかし何せ弾丸数が多い。愛子や『神の使徒』達に被弾せぬ様、その一部を己等の鎧で庇った。

 

 神殿騎士の鎧は準アーティファクト。魔力さえ滾らせれば優秀な魔力耐性を発揮する。しかしそれでも尚鎧は剥落し…彼等の体からは血が噴き出していた。

 

「ジェイドさん!? クリスさん!?」

「我々は良い! それよりも一体何処から──!?」

 

 射撃はバリケードの向こうから放たれた。バリケードは一部『キメラ』により破壊されているものの、未だ尚健在。外部からの視界をシャットダウンしている。

 

 適当に放っている? しかしそれにしては射撃は精密だ。ほぼ全弾愛子らへと狙撃されていた。神殿騎士等が居なければ全滅していただろう。

 

 しかも“水弾”は一つ一つカーブを描き、射撃者の位置を特定しない様に放たれている。更にはバリケードの向こうよりも遥か遠くから放って尚、確かな威力が込められていた。

 

(そもそもそんな腕があるなら──何故これまで使わなかった!?)

 

 “水弾”の雨は一度止まる。恐らくは場所を特定されない為の移動だろう。その間に建物の壁へと隠れるが…先程の精密さを見るに大した意味は無いだろう。

 

 そうして間も無く…二回目の掃射が行われた。

 

 その“水弾”は攻撃では無かった。だが──この状況では最悪の一手だった。

 

 空より振り捧ぐ“水弾”は、『キメラ』の氷の柩を尽く砕く。全身が凍って間も無くの為、『キメラ』は僅かな身震いをすると、再び進撃を始めた。

 

 誰かの──息を呑む声が聞こえた。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「──ふむ。忌々しき神殿騎士め。まさかこの私が出る事となるとはな…」

 

 暗い暗い森の中。片方の目を閉じながら、レイスは掌の魔法陣を輝かせる。

 

 レイスが手袋に仕込んでいる魔法陣は二つ。一つ目は“破断”、防御の貫通に置いては数多い中級魔法の中でも最上位クラス。逃げるハジメに用いた魔法だ。

 

 そして今回使った魔法はあまりにもシンプルな初級魔法、“水弾”。レイス程の実力者でもなおたかが初級魔法。しかし連射性とコストの低さに於いては…ご覧の通りだ。

 

 同時にレイスはもう一つ魔法を使っている。闇属性初級()()魔法“共眼”。その性能は『使い魔との視界共有』だ。そしてその使い魔とは唯一の生存個体、『キメラ』に他ならない。

 

『キメラ』はタフだ。先程の氷の中でも悠々として生存していた。だからこそバリケードに覆われる砦に、レイスは“水弾”を正確に放つ事が出来た。

 

 “共眼”は対象との距離が離れている程魔力を消費するが、それに関してはレイスは割り切っている。もう使い魔のほぼ全てが死んでいるのだ。躊躇う必要が、もう彼には無かった。

 

 神殿騎士二名が此方に向かっているが…意味は無い。レイスの魔法はあまりにも小規模。しかも発射地点をカーブにより誤魔化している。つまりは特定があまりにも困難だ。

 

 一箇所に留まっていたならば話は別だろうが、生憎レイスは度々移動を繰り返している。射撃者の基本ではあるが、これだけで居場所の特定はずっと難しくなるものだ。

 

『キメラ』も解放した。そしてレイスも畳み掛けるように“水弾”を放ち続けるのみだ。

 

「さあ、長かったが…終わらせよう」

 

 そして──掌の魔法陣に魔力を循環させた。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「清水くん!? それ正気!? 出来る気しないんだけど!」

「分かってらぁ! だけどこれしかもう方法はねぇんだよ!」

 

 深い深い森の奥。【ウル】からは残り1キロ程。走れば着くが、今起こっている事態を考えると、着く頃には終わってしまっている可能性が高い。

 

 彼等は今、周囲の中でも一番高い木の上にいる。高さは【ウル】の見張り台程か。川の周囲にあるこの木は他よりも一段と高い。

 

 ではここから何をする気か。それは清水が語る。

 

 だがそれはあまりにも…現実味の無い、言ってしまえば子供の狂言にも聞こえた。

 

 だが清水はそれを、言ってのける。

 

「ここから…レイスの野郎に一発かますぞ!!」

 

 ──夜明けまで残り二十分。

 

 ──『始まりの戦い』は、今正しく終点へと向かっていた。




私が思うに愛子先生ってかなり狂ってるんですよね。
ぶっちゃけ異世界来た瞬間にSANチェック失敗して、生徒に固執してる人だと思ってる。
でもその情熱は本物だし、思い遣ってるのは本当だと思ってる。
ただ原作だと人を思い遣る聖人の方を押し過ぎて、狂人の部分が出せなかった感じに見える。
だから今回飛び降りさせました。
多分愛子先生はやる。
絶対やる。(断言)
これぞーー自己解釈!(違う解釈の人メンゴ)

次回でマジで【ウル】編戦闘終わらす!
早く勇者戦描きてぇんだよ!(飽き性)

追記
白雪霙様
山羊のミルク様
評価ありがとうございます!
並びに感想くださる皆様、そして何かすんげぇ量の誤字修正をくれた皆様にも感謝を!
それ等は全て私の活力です。
というかぶっちゃけそれが無かったらここまで書けてないね、うん。
マジで感謝!
次も…書き切ります!

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