今回はかなり筆が乗ったけど、代わりに何回かリセットした。
でも個人的には「素晴らしい。これが天の祝福なのですね…」と何回か某卿になったぐらいにはいいアイディアが浮かびました。
ではどうぞ!
ハジメが目を醒ますと、ここ数週間で見慣れてしまった天井があった。城において自分に割り当てられた部屋だ。日頃は侍女達もあまり積極的に掃除をせずに放ったらかしとなっている為、そこらに埃が積もっていたりするのだが、今日は僅かに綺麗になっている。
ホルアドと王都の距離を考えるに大迷宮での戦いからはかなり時間が経っているらしい。みんなが脱出している間に呑気に寝ていたと思うと少し申し訳なく思えてくる。
(…喉渇いたな)
ふとそんな事に気づく。おまけに腹も減っている。いったいあれからどれだけ時間が経ったのかは分からないが、取り敢えず体の要求のまま、食欲を優先させる。兎も角動くために己の上体を上げた。
すると己の脇腹が急に悲鳴を上げた。いきなり現れたその痛みに思わず顔を顰めるハジメ。だがその場所にはちょうど心当たりがあった。
(あの時、僕にぶつかって来た“火球”。それが直撃した場所か…)
オルクス大迷宮でのベヒモスからの逃亡、その際に直撃したあの魔法だ。ハジメの錯覚でなければまるであの一撃は自分を狙っていた様に思えた。軌道が途中で曲がったのもハジメの疑心を増させた。
ただその考えにハジメは頭を横に振った。ハジメはクラスメイトから悪感情を抱かれてはいるが、殺される程恨みを買った覚えはない。そもそも『殺す』という行為そのものがハジメにとっては遠いものだ。そのためクラスメイトもそうに違いないとハジメは考えていた。
すると再び脇腹が痛み出したため服を捲り、傷を確認する。その箇所はかなりの火傷を患っており、変色している。ただ予想していたほどではなく、直撃当時のそれよりは確実に改善していた。
誰かの回復魔法による物だろうか、と考えてすぐ思い当たったのは一人の少女だ。
(いやいやまさか…ね?)
確かに彼女は自分を守ると言ってくれたし、実際にあの時奈落に落ち掛けた自分を助けてくれた。しかし彼女はそもそも多忙の身であり、寝ている自分の世話をする暇など無いだろう。
そんな風に自らの思考を否定していると、己の頭から何かが落ちた。それは良い塩梅に絞られた布だ。恐らくは寝ている間熱に魘されていたのだろう。ただそれにしてはハジメの人肌並みの温度になっていた。長い間、変えられていないのだろうか?
その上辺りを見渡すとコップ一杯の水と消化に良いであろう果物、そして一枚の手紙が椅子の上に置かれていた。有難いことにベッドの上からでも届く箇所だ。直ぐに手紙に手を伸ばし、内容を確認する。
『南雲くんへ
もし私が訓練に行ってる間に起きちゃったら、お腹減ってるだろうしこの果物食べてね。あと火傷はまだ回復し切れてないから、部屋の中に居なきゃだよ。本当に出ちゃ駄目だよ?
白崎香織より』
どうやら香織は本当にハジメの容態を見てくれていたらしい。余計な面倒を掛けてしまった事を申し訳なく思う一方で口の端が僅かに釣り上がった。無意識的なもので、ハジメの意思では止められそうに無い。取り敢えず口を手で覆って隠す。誰が部屋にいるわけでも無いが、何となく情けない顔になっている己が気恥ずかしいのだ。
やがて表情筋の操作権を理性が取り戻すと、やはりお腹が減っているのが気になる。自然と目が椅子の上のコップと果物に行き着いた。
ハジメはこの場にはいない少女に手を合わせ、「頂きます」とだけ告げると直ぐ様に果物に手を付けた。気絶していた期間が長かったのか、口の中で砕ける果肉が何とも瑞々しい。日頃は健啖家とはとても言えないハジメだが、バスケットの中の果物はすぐに掻き消えた。
最後に口の中にある甘ったるい風味を水で胃に流し込むと、満ち足りた為か一つ大きな呼吸を吐いた。
「…平和だなぁ」
凄まじくハジメはリラックスしていた。とはいえ気絶する前までは極限状態にあった為、仕方がない話でもある。この時ばかりは異世界によるストレスも脇腹の痛みも完全に忘れられた。
すると落ち着いた為だろうか。ハジメはふとその気配を感じた。それはじわじわと、されど確実に迫って来るのが感じられた。
そう──
手紙にはあまり動くなと言った内容が書かれていたが、流石に
そうと決まれば話は早い。痛みはまだまだ健在だが、壁伝いに歩く事にした。すると思いの外楽で予想に反し、すいすいと進む事が出来た。
そうしてハジメは目覚めてから初めて外へ出ることとなる。しかしハジメは気づくべきだった。手紙から、違和感を抱くべきだった。
怪我が開くことを心配するならば普通、「安静」、「休む」などと言ったワードがメインとして使われることが多いだろう。あくまでも咎めるべきは「動く」ことであり、範囲では無い。しかし香織の手紙は見方によっては「部屋で休む」という風に解釈も出来るが、主に「外に出る」という行為を禁じていた。
それが一体何を示しているか、そして外では何が起きているのか。ハジメは察することが出来なかったのだ。
「ねぇ…あの【無能】、まだ呑気に寝てるらしいわよ…」
だからこそ、扉を僅かに開けたハジメはその言葉を聞いてしまったのだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「撤回してください、イシュタルさん」
その一方で白崎香織は登り始めた朝日を脇目に、城の廊下で【聖教教会】の教祖、イシュタルと対面する形となっていた。手紙に書かれた「訓練」は嘘の用事だ。内容が内容だ。ハジメには真実を知ってほしく無かった。それ故の配慮だ。
白崎香織はブチギレていた。普段の温厚さが嘘の様に。声に圧があるのがその証左に他ならない。
「おやおや、【神の使徒】の…それも【聖女】様ではありませんか? 如何なされたのです? それ程息を上げられて…もしや体調が悪いのでは無いですかな?」
一方でその威圧を柳に風と受け流し、穏やかな笑みを見せるイシュタル。彼の周囲には神殿騎士が何人も並んでおり、イシュタルと同じように朗らかな表情を香織に向けている。
だがそんな彼等の明るい雰囲気が、今の香織には怒りを煽るものとなった。どの口でそんな事を抜かすか、と。
「昨日のスピーチの内容、あんなの全部嘘です! 南雲くんは…絶対にあんな事をやってません!」
そう聖教教会が香織の逆鱗に触れた理由。それは昨日の深夜、大迷宮からの脱出からおおよそ二日程経った頃に行われた、教皇イシュタルによるスピーチの内容そのものだ。
その直前まで香織はハジメの額に掛けていた水に浸した布切れを変えていた。そして布を変え終ったらすぐに火傷の治療の最終行程に取り掛かろうと考えたり、それは兎も角迷宮でのハジメの勇姿を思い出して惚けたりと、内心面が主に忙しなかった。
(でも南雲くんってば一人で無理しちゃうんだよ…ちょっとは私の事も頼ってくれないかな…)
ただハジメが流れ弾の“火球”で吹き飛ばされた時や奈落に落ち掛けた時は本当に生きた心地がしなかった。何とか“縛煌鎖”が間に合い、助け出す事が出来たが二度とあんな思いはしたくない。
だが自分はそう言ったハジメの強さに憧れ、気づけば夢中になっていたのは間違い様もない事実。きっと次があっても止められっこない。これが惚れたが故の弱味かと少し項垂れた。
そんな時だ。王城のバルコニーの方から声が聞こえてきたのは。
『【ハイリヒ王国】の皆様、お久しゅう御座います。私は【聖教教会】の教皇、イシュタル・ランゴバルドにて御座います』
聞こえてきた声には聞き覚えがあった。それは異世界召喚の直後に現れた好々爺。見た目は豪奢で話し方も丁寧であったが、声に含まれていた狂気の丈が異様であったのが非常に印象的だった。
ただイシュタルは高位な者であり、暫くはこちらに出向く予定が無かったほどに多忙だった筈。ならばここに何故いるのか。
香織のそんな疑問を湧かせていたが、次の途端にそれらは燃え滾る激情に呑まれる事となった。
『此度はエヒト様が召喚なされた【神の使徒】、その中の一人と思われていた【
──────ーは?
ベチャッ、と床に何かが落ちた。ふと見るとそれは香織が持っていたはずの濡れタオルだった。どうやら無意識に手放してしまっていたらしい。
それを拾おうとすると窓の方から更に続きが流れて来た。
『先日、エヒト様がこの地に召喚した“神の使徒”。我々は勇者様方を邪なる魔王を退ける存在へとすべく、かの【オルクス大迷宮】へと導きました。最初からロックマウントを楽に退けると、順調ではありましたが…彼らは迷宮で悪意ある罠にかかり、かの伝説の魔物、ベヒモスと遭遇。危うく帰らぬ人と成りかけたのです』
そうだ。あの時、クラスメイトの一人が大迷宮の罠に引っ掛かった。故に一行はピンチに陥り、そして彼が前に出たのだ。それは間違いない。間違いであってはならない。
『我々は最初こそは迷宮に仕組まれた罠かと思っておりました。…しかし、そうでは無かったのです。これは全て! “神の使徒”に紛れていた邪なる“錬成師”が原因だったのです!』
──チガウ、違う違うちがう!
香織の中で否定の言葉が幾重にも重ねられる。それほどに香織にとってそれは認められない事だった。紛う事なき『嘘』でしか無かった。
しかしイシュタルの光悦とした声の後に轟くは、色めき立つ街の人々の声だ。慌てて香織が窓から見下ろせど、もう既に遅い。狂信に塗れた興奮が香織の目に映った。
『『『『『エヒト様、万歳! エヒト様、万歳! エヒト様、万歳ィイイイ!!!』』』』』
万感の意を込めて、人々は揃えて口にする。『嘘』に塗れた教皇の言葉はされど『真実』として王国に伝播した。
だから香織は今、ここに立っている。ハジメはあの時、弱者の身であるにも関わらず誰よりも前で闘った。背水の崖っぷちの中、一筋に光る希望を掴みに行った。それは今もなお鮮烈に目に写る『真実』だ。
そんなハジメをどういう訳かは知らないが目の前のイシュタルは『嘘』により汚した。黙って看過出来ることではなかった。
「昨日のあの言葉…撤回して下さい」
「ふむ昨日の、昨日の…ああ、もしやあの裏切り者のことですかな? あの様な者にも温情を与えるとは流石は【聖女】様ですなぁ」
「違います! 南雲くんは、裏切り者なんかじゃありません! そんなの嘘です!」
「嘘、と言われましても我々が公正に話を伺った結果にて御座います。それを覆す様な証拠は、おありですかな?」
「クラスメイトの皆んなが見ていました! 南雲くんは一人でベヒモスの足止めをしてました! だから──」
そう、あの時六十五階層にいた者全員が証人だ。ベヒモスを足止めしようと“錬成”を繰り返していた彼を誰一人残らず見ていた。彼らが『真実』を話せば、イシュタルの『嘘』を覆せる。
そう、香織は思っていた。
しかしイシュタルは、笑った。しわくちゃな顔を更に破顔させて、どこか不気味な笑みを浮かべた。
「ですが…使徒の皆様の殆どは我々に『南雲ハジメが裏切った』とそう仰せられましたが?」
「────へ?」
香織は知らなかった。今日、この日まで直視する事が出来なかったのだ。
地球に居た頃ならばそれは単純な嫉妬や恨みで収まっていた。故に多少のイジメ程度で済み、ハジメには対して実害が及んでいなかった。またそれらの虐めは香織からは巧妙に隠されていた。
しかしこの世界で蝕まれ、削られ、そして
見下していた者が、自分にとって面白くない者が、【無能】ごときが。そんな幼稚な感情を利用され、彼等は口裏を合わせて告げたのだ。『真実』を食い破る程の『嘘』を。冤罪を。
思わず呆気に取られた香織を他所に、イシュタルは横の窓を眺めて…そして面白そうに目を細めた。
「おやおや…【聖女】様。面白いモノが見れそうですぞ? ほら、そちらの窓からならば見れるでしょう?」
「────────ぇ」
言われた様に香織は窓から下を見下ろして…今度こそ香織は言葉を失った。怒りの炎が瞬く間に止み、底冷える。
そこにあったのは大庭園の名所、薔薇園。その中央に立つのは嗜虐的な笑みを浮かべる檜山達一同。そして地べたに力無く横たわっているハジメの姿。
外に出てしまったのかと僅かに慌てた後、ようやく香織の目はその姿をはっきりと理解した。這い蹲るハジメの姿が最後にベッドで見た時の物よりも明らかに酷く怪我を負っていたことを。
白崎香織は今まで気付かなかった。己の立場が認識していたよりも目立つ物であった事を。それ故に接触する人間には数多くの負の感情が向かうことも。にも関わらず己はそれを気づかなかった事さえも。
気付くにはあまりにも遅く、取り返しのつかない所まで彼女は気付けなかった。故に現実が白崎香織に容赦無く牙を立てた。
──世界は白崎香織の無知を、思慮の浅さを責め立て始める。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
時はハジメが扉を開けた瞬間に巻き戻る。
『あの【無能】、まだ呑気に寝てるらしいわよぉ…』
『良い御身分ね。こっちは汗水垂らして仕事してるっていうのに。迷宮で好き勝手やって【勇者】様に迷惑を掛けた様な奴の世話をしろだなんて…やってらんないわ』
扉から僅かに離れた距離。扉が閉じていたならば聞こえなかっただろう小さな陰口。このまま閉じて逃げれば、後回しにも出来ただろう。しかしこの時ハジメは扉を閉めるのを躊躇ってしまった。身に覚えのない話、何が起こっているか分からずノブを持つ手が止まってしまった。
『しかも迷宮に行く前、使徒様方とは別行動をしていたらしいわぁ。その間に何かしらの罠を…』
『私も聞いた話なんだけど実はその時に魔族と接触したって噂よ。最初から裏切るつもりだったって──ー」
すると病み上がりが故か、ハジメの体が前へとバランスを崩す。幸いな事にドアにもたれ掛かる形となり倒れることは無かった。代わりに急に力を加えられたドアは派手に音を立てて開く。
陰口をしていただろう二人の侍女と目が合う。彼女等はハジメが聞いていたであろうことを察し、罰が悪そうな顔をした。しかしそれは一瞬だ。開き直るかの様に彼女等は顔を豹変させ、にったりと口を開いた。
「あらぁ、どうされたんですかぁ? あー、もしかして
「えっ、あの──」
「何ですか? 人の言葉で喋って下さいよ? 小さくて聞こえないじゃないですか。…ああ、魔族の言葉ってもしかしてこんな感じなんですか? だとしたら本当に…聞くに耐えないですね。同じ生命とは思えません」
今まで散々悪意の篭った目を向けられてきたハジメだが、ここまで露悪的なものは滅多にない。せいぜい檜山達、小悪党組ぐらいしかいなかった。それを滅多に顔も見ない様な人から向けられると、ハジメも舌を満足に回さない。
そして反論をしてこないと見たのか侍女二人の舌はハジメとは対照的にヒートアップする。
「意見があるならせめてぇ、大きな声で反論して見てくださいねぇ? じゃないとぉ、私達が悪者みたいじゃないですかぁ」
「反論すら無いということは裏切り者と見てよろしいですよね? ね? なら早く城から出て行って下さい、この裏切り者!」
侍女の一人が遂に我慢の限界に達したのか、廊下に置かれていたバケツの水をハジメにぶっ掛けた。怪我人であるハジメは抵抗する間もなく、全身をその水で濡らす。何度か雑巾などを洗った物なのか虫の死骸やホコリが混じっている。
更に濡れた床がハジメの脚を滑らせる。体も儘ならず、そのまま無様にも床に倒れた。
ハジメの予想を遥かに超える悪意。このまま立ち止まっていては更にヒートアップする。そう感じたハジメは水の中、四つん這いになって二人から逃げる。
背中を向けた二人は悪者退治をした気なのか、気持ち良さそうにハジメを見つめていた。その視線が、顔が、発する言葉があまりにも気持ち悪くて、嫌で、ハジメは脇腹の痛みを無視して廊下の先へ逃げる。
──だが、
『おい、アレ確かイシュタル教皇が仰られていた…』
『ああ、【無能】だな。やっぱ仮病ってのはマジみてぇだな』
『そもそも何故あんな見窄らしい格好になっているのでしょうか。…外道の考えていることはやはり分からない』
──どこに行こうとそれらはハジメの姿を捉え、絡み付く。
『次は何するつもりだ! この…裏切り者ォ!』
『今回の失敗、貴様のせいだろう! 神に裁かれろ!』
──石が投げられる。かなりのステータスを持つ者だったようで、その衝撃に思わずよろける。だが立ち止まれば更に責められるのは分かっていた。だから走った。
『お父様、あの人はなんで泣いて──』
『見てはならんぞ。【無能】が感染る。…お前はあの様になってはならんぞ。そんな者になって仕舞えば貴族の…いや
『は、はい! 分かりました!』
──あんまりな言われ様だ。身の覚えのない罪だ。思わず泣きたくなる。だがそれもきっと責められる。だから今まで通り、学校の時と同じように我慢すればいい。そして逃れる様に走る。
『きゃっ、汚らしい。…本当に同じ人間なのですか』
──我慢する。走る。
『貴様ぁ、待てぇ!! 神の意志に逆らいし報いを受けよ!!』
──堪える、疾る。
『こっちに来ないで!!』
──下唇を噛んで、
『うわっ…』
──我慢して、
『待て、南雲! 謝らなきゃ何も始まらないぞ!』
──耐えて、
──…無理だ
「ぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」
王城の大庭園、呼吸が整う暇も無くハジメは叫んだ。いつの間にか雨が降っていたようで、ハジメをより一層濡らす。バケツの汚水と血と雨粒が混じり、顔に流れるものの正体すら分かりやしない。
沢山いた追手はいつの間にかいない。そこだけは救いだ。こんなみっともない子供のような姿、誰にも見られたく無い。
脇腹が無理をした為かズキズキと痛みを鳴らす。だが知った事ではない。痛みなどあってない様なものになる程、ハジメは心に傷を刻まれた。
大迷宮の時、別にハジメは名誉や誇りの為に闘った訳ではない。ハジメの意志が、彼女の言葉が背中を押した。それだけのこと。
だがハジメは決して聖人君主では無い。多少は認められる事を期待していたし、覚えの無い事で責められては傷を負う。我慢は出来るが、人並みに限界はある。なんの変哲も無い、たった一人の人間だ。
掌に力が篭り、庭の土を思わず握る。小石が手の皮を裂けど、意に介さない。そのまま腕を掲げ、地面にこれでもかと何度も、何度も振り下ろす。
「何で! 何でだよ!? 僕が何をやった!? ちくしょう!」
視界が滲み、手が様々な物で汚れ、声が掠れる。
耐えきれぬほどの理不尽。脆弱、悪意、冤罪、誹謗中傷。たった一人の少年が背負うにはあまりにも重すぎた。外聞もひったくれもなく、ただただ慟哭する。
「みーっけたぁ。な・ぐ・も・くーん?」
やがて叫ぶ気力をも失った時の事だ。庭園の奥からニタニタと嗤う四人の陰が現れる。
既に失意の底に沈んでいたハジメは蹲ったまま、彼等を見上げる。それは今の状況の優位性を顕著に表していた。
「南雲ぉ…部屋から出れるぐらいにゃ元気になって何よりだよ? しかも聞いた話じゃ城の中を走り回れるぐらい元気なんだろ? いやー、俺は嬉しいぜ? これでも俺は気遣ってんだ。優しいだろ?」
檜山は己を見上げる事しかできないハジメを見て、一層その笑みを深めた。これから起きることをハジメは予想できた。しかしもう逆らう気力が一ミリたりも湧かない。
檜山がまるでサッカーのPKの様に脚を掲げる。そして耐え切れるまで高く脚を上げると、ハジメの腹目掛けて己の脚をめり込ませた。
「サンドバックとして、なぁ!!!」
ただでさえステータスが一般人程度しか無いハジメは為されるがままに吹き飛ばされる。体が錐揉み、雨に濡れた土が弾ける。ハジメはそのまま大庭園の薔薇園に突っ込む。薔薇の茎がハジメの柔な肌に赤い線をいくつも付けていく。
「おいおい檜山、あんまり派手にやるなよ〜」
「そうだな人が来られても困る…まあ今は別にいいか。よし囲むぞ?」
「とーぜんだろ。俺たちにも楽しませろよぉ、南雲ぉ?」
仰向けになりながら咳き込むハジメ。その視界に映るのは己を見下す八つの目、四つの口。三日月の様に開かれた口からは酷い笑い声が聞こえて来る。
しかしそれらもすぐに見れなくなった。ハジメの視界は靴底により遮られることとなったから。
「──ぐもくん! 南雲くん!? いや、いやだよ…お願い、返事をして!?」
気を失っていた。
声により目を覚ましたハジメはその事実を自覚した。
しかし脇腹どころか全身が軋み、痛む。もはや痛覚が麻痺し、何処か夢うつつを打っているかの様だ。目の開閉さえもろくにコントロール出来ず、視界がぼやけている事が余計にそう思わせる。
見えないが己を抱き抱え、呼びかけているのは彼女だ。必死な声で自分を呼びかけている。ふと手紙で部屋を出るなと書かれていたのを思い出した。まあ、もう手遅れの話であるが。
彼女に言いたいことが沢山あった。あの日の、月下にて誓った約束を守ってくれて、有難うと。気絶している間看病してくれて、嬉しかったと。こんな無様な所を見せて、ゴメンと。他にも山程言いたいことがあった。
だが僅かな気絶ではこの傷だらけの身体と削れ切った心は回復しきれなかったらしい。覚めてすぐにまたハジメの意識は沈みかける。
そして眠りに再び落ちる一瞬、ハジメの視界は僅かに開けた。
「ごめんね…ごめんね。ハジメ…くん」
彼女の顔が今にも泣きそうな程に歪んでいたのが、やけにハジメの記憶に残った。
はい。(真顔)
一つだけ言っておきたいですが、私は悪くありません。
最初は改訂前のコピペをちょっと加工して投稿しようかなと思っていたのですが、書き進めて行く内に素晴らしいアイディアが出るの何の。
ハジメくんの精神をボッコボコに殴った上で肉体的にボコり、更には間接的に香織の精神もボコるという三連打だドン!
ただ私はアイディアを授けてきた天に従っただけだから悪くねぇ!!
そもそも片腕を欠損させて肉体的にボコった上で、孤独暗闇激痛のハッピーセットで精神的にボコってハジメくんを覚醒させ、約束通り助けられなかった香織を精神的に追い詰めた原作と!
謂れのない誹謗中傷で精神的にボコった上で、檜山達にボコらせることで肉体的に追い詰め、知らない間に自分がハジメを間接的にとはいえ傷つけていたことに気付きお辛くなる香織を書いたこの二次創作!
そこに何の違いもありゃしねぇだろうが!
つまりこれぐらい曇らせる方が原作遵守よ!
まあ、御安心を。流石にこれ以上は暫くは落としません。
え? じゃあこれが一番アンダーラインかって?
…さあ?(純粋な瞳)
この作品、アナタは何メイン目的で読んでる?
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ハジカオ!
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オリジナル展開!
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成り上がり要素!
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考察要素!
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曇らせ!
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感想返し!
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ダイレクトマーケティング!