恋する錬成師は世界最強   作:見た目は子供、素顔は厨二

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6月12日日刊57位獲得です!
ありがとうございます!

ちなみに最近作者は何故かやった事も無いウマ娘の二次創作を漁ってます。
ナンデ…ナンデ?
ちなみに作者はゴルシ、タキオン、タマが好きです。
ゴルシは信頼関係、タキオンは共依存、タマは夫婦漫才のが好きです。(カップラー)
異論は認める! つーか、作者はカップリング雑食系統なのでリバも問題無い。

それは兎も角、ウマ娘のウの字も無いこの作品をどうぞ!


18、過去最大のピンチ(?)

 ──【錬成師】南雲ハジメ

 

 数ヶ月前、その名は絶対的な悪として名高かった。【無能】、【落ちこぼれ】、【裏切り者】。呼び名はどれをとっても酷く、民衆貴族関係なく矢面に彼を立てていた。

 

 それ故、少年は常日頃から疑念や義憤の籠った視線に突き刺される事となる。【聖女】や【豊穣の女神】等、庇う者も多かったが逆効果。それもまた虎の威を借る狐としてやっかみを受ける結果となった。

 

 事実、彼には実力が無かった。他の分野ならば目を引く点もあっただろうが、なんせ『神の使徒』に求められるのは戦闘力。だからこそ南雲ハジメはただただその悪評のままに、潰されるのを待つことしか出来ない…その筈だった。

 

 しかしこの数ヶ月で南雲ハジメへの評価は大きく変動する。

 

 王宮錬成師の工房の中でも異色にして実力派、『ウォルペン工房』への加入に始まり、

 王都で暴行未遂を犯した王国騎士の捕縛と、リリアーナ姫からの二つ名の献上を受け、

 錬成師の間でも達成困難とされる直接依頼、【ウル】での指導を十二分に果たしルーキーとして名を上げ、

 果てには【豊穣の女神】と共に、魔人族の打破に貢献した。

 

 また当初は少なかった支持者も着々と増えている。特に『神の使徒』である【愛ちゃん先生護衛隊】や神殿騎士たるデビッド等が支持者として加わった事は、民衆に小さく無い影響を与えた。

 

 加えて愛子、リリアーナ等がこれらの功績を受け、南雲ハジメに護衛を付けたのもプラスのイメージを与える一因となっている。

 

 当然貴族等や王国騎士、教会関係者には支持者は少ない。【教皇】イシュタル、国王エリヒドが南雲ハジメを罪人としている以上、その意向に反抗することが難しいためだ。しかし流れが来ている事は確かだ。

 

 こうした結果、当初とは別の意味合いで南雲ハジメという人物は注目を集めている。それは清濁どちらも含んでいるが、当初と比べ、兆しが見え始めているのは確か。

 

 ところで、噂される当の本人と言えば…

 

 

 

 

 

「…ねぇ、ユキ」

「…何だ、優花」

「一つ思う所があるんだけれど」

「奇遇だな。俺もだよ」

「へぇ、そう。もしかして目の前の()()の事?」

「ああ、その通りだ。もしかしてエスパーか?」

「いいえ。単純に私もそれが気になってただけよ」

「なるほど! それはそうだろうな。なんたって──」

「ええ。何て言っても──」

 

 王立図書館にて、パーティーメンバー二人は彼を見つめる。暇を持て余しているのか、二人は非常に退屈そうだ。…目の前の彼、南雲ハジメとは打って変わって。

 

「──詰まるところ連結プログラム形式の魔法陣の組み方はエラーの発生を促進し易い。このエラーのレベルは低く、数回程度の使用ならば問題無い。しかし積み重ねた使用により魔法陣のプログラミングが崩壊し始める。このエラー発生は現段階において取り除く事が出来ない問題となっている。段階ごとに魔力量を分断しやすいメリットは存在するが、アーティファクト及び準アーティファクトを故障を引き起こす可能性が高い。その為使用頻度が多い場合は連結プログラム形式の魔法陣は推奨しかねる。また二つの魔法を結び付ける技術である為、修復可能な人材が少ない事もデメリットである。これらの理由により、販売者側もそのデメリット等を上げる必要があると考えられる。これを行わない場合は──」

「「────煩いからなぁ(からね)」」

「………ぁあ゛あ゛あ゛あ゛!!!! やっぱり駄目だぁ!!!」

うっせぇ(ピッピ)うっせぇ(ピッピ)うっせぇわ(ピェッピィ)!!』

 

 ──そう。噂の張本人、南雲ハジメは打ちのめされていた。他でも無い、レポート提出に。

 

 判決まで残り二ヶ月。南雲ハジメに立ち塞がるはある意味【錬成師】としての一番の試練、『魔法学理論発展論会』。

 

 単純に言って仕舞えば…研究発表会が迫っていた。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

『魔法理論学発展論会』は【ハイリヒ王国】にて年に一度行われる学者の祭典だ。祭典とは言っても煌びやかな物では無い。あくまでもその本質は研究の発表にこそある。

 

 魔法学の研究者は非常に少ない。またそれによる発展の度合いも低い。

 

 魔法学はあくまでも理論だ。魔法がどの様に成り立つか、魔法の分別はどの様に行われるべきか…そう言った事を研究する。地球での科学と似て()()()分野だ。

 

 魔法学は科学と比べて、()()()()()()()()()という欠点が存在する。

 

 魔法は最終的に言って仕舞えば想像・演算の力だ。大元となる魔力そのもの、詠唱による魔力操作、魔法陣や想像による魔法の構成。これら三つにより成り立つ。

 

 そして魔法学は時に、魔法の構成の邪魔(ノイズ)になり得る。その理由が『魔法構成の一部を人間の脳が行なっている』という点にある。

 

 人間はコンピュータの様に何度も何度も正確な演算を行う事は出来ない。ましてや一瞬の思考ならば尚更だ。詰まるところ重要なのはその思考を乱さない事だ。

 

 だがもし魔法学で既存の魔法解釈が間違っていたとされた場合、思考に迷いが生じる。既存の解釈と新しい解釈、()()()()()()()()()()()と。そして…失敗する。

 

 魔法は理論が間違っていたとしても発動可能。何故ならば魔力と魔力操作、そして構成さえ合っていれば解釈やメカニズムなどどうでも良い。

 

 だからこそ魔法学は人々からあまり求められない。ただ数十年に一度、編み出された理論が実を結ぶ事もごく稀にある。だからこそ『魔法理論学発展論会』がある訳だが、廃れているのは確かだ。

 

 だが逆に言えば魔法学の論者が成り上がれるのはそこにしか無い、とも言える。彼等にとってこの発表会は己の功績を訴える特別な場だ。この為に心血を捧げ、研究を行うという者も少なく無い。

 

 それ故に『魔法理論学発展論会』は盛り上がりを見せる。他ならざる論者達によって。

 

 そしてこの発表会は王城の全ての研究者や発明家が参加を強制される。

 

 当然ながら、【錬成師】もその例外では無いのだ。

 

「…もう僕は、ダメだ。立ち直れない」

「スゲェ。大迷宮でも魔人族でも折れなかったハジメの心が、遂に折れたぞ」

「折った相手がレポート提出って…ベヒモスと魔人族全員に謝りなさいよ」

 

 結果、王立図書館にて一つの屍が出来上がっていた。

 

 ハジメは机に頬をベターッと貼り付け、呻き声を上げている。顔を見ればまあ、酷い。目の下にはくっきりとした隈があり、何処か痩せ細っている。睡眠も食事もかなり削っている様だ。

 

 優花も幸利もそんなハジメを心配しなくも無いが、現在のハジメの侍女は()()ヘリーナだ。仕事バカ(ワーカーホリック)の扱いを心得ている彼女ならば、ハジメのギリギリを見積もってくれていることだろう。その為、心配は二人ともあまりしていなかった。

 

 そうして思う事を口々に発した二人だが、優花の発言に思う所があったのか、ハジメは続けて言葉を発する。

 

「と言っても…これで作ったレポート六つ目だし。それ全部アウトはちょっと…へこむ」

「多いわね? それ全部理論破綻してんの?」

「いや…全部理論とかは成り立ってるよ」

「? 成り立ってんなら何で全部アウトなのよ? そのまま提出すれば良いじゃない」

「違うんだ。もっと…もっとすごい発見じゃ無いと…」

「あー…そっか。何か手伝える事ある?」

「いや、今は良いよ。心配ありがとう」

 

 ハジメがこれまで書いて来たレポートは決して杜撰な物では無い。その道の人間が見れば分かることだが、十分に目新しい内容だ。ハジメの年齢でこれだけの物が描けるとあれば、中々だと【錬成師】達も評価するだろう。

 

 だがハジメは全く満足しない。むしろ焦っている。その様相で優花はハジメが焦っている理由を察した。

 

「…行き詰まってるから、ちょっと新しい本出して来る。何かのヒントになるかも…」

 

 そんな優花を他所に、ハジメは忘我の様なふらついた足取りで本棚へと向かっていった。

 

 残されたのはハジメが消えた曲がり角をぼうっと眺め続ける幸利と優花の二人だけ。数秒間眺めて、やがて互いの心境を共有し始める。

 

「…やっぱ、アイツ。かなり追い込まれてるわね」

「そりゃな。何たって…冤罪回避のほぼラストチャンスみたいなもんだからな。メンタル鋼のアイツでも、キツいもんはキツいだろうな」

「そりゃそうよね」

 

 先程も言ったが『魔法理論学発展論会』は学者系統の人間にとっては、滅多に無い躍進のチャンスだ。ましてや…非戦闘職にとっては生命線とも言える程に。

 

 そして判決まで残された猶予は二ヶ月間。この間に『魔法理論学発展論会』以外の大きなイベントは存在しない。

 

 もしくは【ウル】の一件の様な異常事態(イレギュラー)がまた起きたならば可能性はあるかも知れないが…そもそも願う物では無いし、そう起きる物では無い。

 

 迷宮攻略を行うという路線もあるが、あそこでは何せ光輝達の様な反対派が多くいる。雫からの情報提供によると、ここ最近光輝は機嫌が悪そうなので会わない方が良いとのこと。これらの情報から妨害行為が何かしらあるだろう事から、現実的なプランとは言えない代物だ。

 

 だからこそハジメにとって『魔法理論学発展論会』は文字通りラストチャンスだ。そしてそこで功績を挙げるには…並外れた視点からの、そして革新的な発表でなければならない。

 

 例えば地球の様な電化製品の知識…などでは意味が無い。確かにその知識はトータスの人間にとっては並外れた理外の知識。しかしそもそも電気というエネルギーを理解する事に時間が掛かる上、魔法で事足りる部分も多い。それ故革新的とは言えないのだ。

 

 ハジメが頭を悩ませるのは正しくソレだ。それまでの固定概念を覆し、人々が求めて止まない様なそんなアイディア、それを出力させようとしている。

 

 そんなハジメの心労を心中底から想いつつも、ふと優花はある事が気になった。

 

「そう言えば…今更だけど一つ言っていい?」

「おん? どした?」

 

 それは優花の頭に長い間引っ掛かっていた疑問だ。今更といえば本当に今更なのだが…頭の中で燻らせておくよりは、恥をかく方が幾分かマシだ。

 

 そう判断し、優花は意を決して幸利へと疑問をぶつけた。

 

「何で南雲って冤罪掛けられてるんでしょうね?」

 

 瞬間、幸利は机に勢い良く頭をぶつけた。付いていた頬杖から頬が滑り落ちたのだ。

 

 優花が尋ねるそれはもう既に四ヶ月も経った本筋の話、その原因への疑念であった。濃密な月日を過ごした幸利にとってはあまりにも昔の話。

 

 故に幸利は優花に聞こえる様に、わざとらしく深く溜息を吐いた。ピクッと優花が眉を顰める。

 

 そして「やれやれだぜ」とでも言いたげに目を閉じ、俯く。そして数秒後目を優花に合わせて、一言。

 

「………今更が過ぎませんかねぇ? 優花さん? 脳味噌バッ○トゥーザ・フューチャーでもしました?」

「いや! でもだって改めて考えたらおかしくない!? だって私達…65階層で南雲が必死に食い止めてたの見てたじゃない! あの場にいた全員がそれ見てた筈だし…普通だったら恩義の一つや二つぐらい感じてもおかしくないでしょ? 当時は疑問に思うよりも不気味さが勝ってたから考え付かなかったけど…改めて考えたら滅茶苦茶おかしいじゃない!? だからよ、だから!」

「早口過ぎて草」

芝生える(ピッピ)

「アンタ等の舌、木串で貫いてやろうか?」

「図星だからって暴力に訴えるのやめて貰えますぅ?」

ラブ&ピースじゃよ(ピッピーピピェ)…』

「宥めつつ煽んな! バカ主従!」

「はーん!? 俺は兎も角ピナは馬鹿じゃないですがぁ!?」

「アンタのバカ思考に汚染されてるのよ、可哀想に…」

「よーし買った! その喧嘩ダース単位で買ってやる!」

「かかって来なさいよ、闇術師(ペットショップ店員)!」

「上等じゃあ──!!!」

「泣き晒しなさいッ!!」

 

 友人故に発生する言葉のボクシング、その1R目が幕を開け──

 

「図書館ではお静かに、御二方。ピナちゃんも、ね?」

『「「アッハイ(ピッピイ)」」』

 

 いつの間にかゼロ距離縮地していた司書さんがニッコリ。優花と幸利は思考のクールダウンを強制させられる。表面上は素晴らしい司書さんスマイルだが…目の奥が笑っていない。「テメェら黙れ」と威嚇しているのが非常に良く分かる。

 

 ペタッと己の席に再度浮いていた尻を乗せ、双方共に暫く静まる。この年にもなって騒いで注意を受けるのは恥ずかしい物だ。ピナも翼で己の頭を覆っている。どうやら顔が見せられないらしい。反省が見られる。

 

「…やっぱピナちゃん賢いわ。アンタと違って」

「ああ、賢いな。お前の単細胞脳味噌と違って」

「「………」」

喧嘩辞めなさいよ(ピェッピッピ)子供じゃ無いんだから(ピピィピ)

 

 レスバは怒られるので、二人は黙って睨み合う。本気で怒り合っている訳ではない。これは彼等なりのコミュニケーションだ。そして同時に心がキレろと叫びたがっているのだ。

 

 ちなみに本来はここでハジメが宥めに掛かる事で、案外話がスムーズに進む。ハジメも悪ノリで喧嘩腰になってくる場合もあるが、根本的にはお人好し。仲裁役を買って出る事が必然的に多くなるのだ。そして彼がいない弊害が、今ここになって現れた。

 

 一応、ピナが宥めに回った事により喧嘩のノリが収まる二人。そして話は優花が切り出した冤罪の話に戻る。

 

「そんでハジメのアレか…まあ、ぶっちゃけ人の心の理解なんぞ俺は苦手だが…おおよそ嫉妬と劣等感、そっからこじつけた疑心。これが主な理由だろうな」

「いやそこまでは分かるわよ、私も。白崎さんと仲良くしてるからっていう嫉妬でしょ? めんどっちいわね」

「そっちもあるんだろうが…それに加えてベヒモスを一人で足止めしたってのも不満を買ったんだろ」

「………は? どう言う事?」

「ハジメはクラスの奴らにとって見下される事が前提の人間だ。それに恋愛絡みの嫉妬があるとは言え、学校でのアイツは真面目さも無く、協調性も無い。しかも与えられた才能も遥か真下。そんな奴が上に行くなんて腹が立つ。だから言い訳する事にしたんだろ。『【裏切り者】だから、罠とか下拵えでベヒモスを倒した』ってな?」

 

 それは男女問わずの話だ。男ならば己等の憧れが【無能】に好意を向けている事に対する苛立ちが、女ならば香織に向けられている好意に反応を示さなかった事から生じた不満が大なり小なり生じている。

 

 そんな男がシンデレラストーリーを描く? 『神の使徒』の多くはそれに反発した。恐らくは無意識下で、己の行動を正当化した上で。

 

 言い訳は人が持つ武器の一つだ。それがあるだけで人は簡単に正義にも大悪にも化ける事が出来る。

 

 だからこそ教会の放った言葉は好都合だった。証拠は無い、根拠は無い。だが権力者が放ったその一言は──確かに『神の使徒』を暴走させた。

 

 アーティファクト『ヴィーケン・リート』の効果もあった。あのアーティファクトこそが人々の中のハジメへの疑心を増幅させ、ハジメの敵へと落とし込んだ。

 

 だが落ちる事を選んだのは…悲しい事に彼等彼女等本人だ。

 

「勿論俺達はハジメと何度も関わってるから、アイツがアホみてぇなお人好しだって事をこれでもかってレベルで理解してる。だが生憎ながらハジメは基本コミュニケーションは受け身だ。知り合いなら兎も角、単なるクラスメイトって程度で自分から話し掛けには行かない。掛けられる悪態にも無言で返すのがアイツだ。だからアイツの善性からクラスの奴らは目を背けられる」

「…助けられたのに?」

「そもそもの事故自体をアイツの所為にしてるからな。感謝する理由も無い程度に思ってるんじゃ無いか? まっ、正直だいたい推測で話してるから、もしかしたらちゃんとした理由もあるかも知れんが…どっちにしろアイツに対してはやり過ぎだ」

「ええ。間違い無いわ」

 

 人は見たいものを見る。もしかすれば精神が成熟して来たならば、見たく無いものから目を背けずに済むのかもしれない。だが一介の高校生にそれは無理な注文だ。

 

 だからこそ増長した。香織の涙も、雫の叱咤も、愛子の言葉も尽くを無視した。

 

 更に言えば彼等側には光輝が居た。カリスマや才能を持ち、己等と同じくハジメを『悪』とする人間が…居てしまった。そして彼が率先してハジメを責める。

 

 その後に続くのはあまりにも簡単で、そして甘美であった。

 

 結局、幸利の推測は殆ど当たっていた。『ヴィーケン・リート』の存在に気づいていないが、現状を説明するには十分過ぎた。

 

 改めてクラスメイトからハジメに向けられる、容赦無い悪意に目を細める優花。改めて集団での思い込みは厄介だ、と思わされる。

 

「…ちなみにアンタも南雲と仲良くなる前はそう思ってたの?」

「そもそも俺はその頃、他人に然程興味が無かったからな。無視してハーレム目指す為に“闇魔法”の改良を──オイコラ。今は改心してるから、汚物見るような目すんな、優花」

「あ、うん。分かってる、分かってるわよ、清水…」

「呼び方から距離出来てるのは明白なんだよなぁー」

 

 それまで怒りやら悲しみやらで混雑していた優花の心が、たった一つに纏められる。即ち「キモい」のただ一言だ。

 

 一応友人の情けはある。直接は言わない。ただちょっと接し方を改めようかと思考しただけだ。

 

 …ただ、面倒なので直ぐに呼び方は戻す事にした。

 

「…あれ? でも中立派ってまだ居たわよね。ユキも護衛隊のみんなもこっちに引き込めたけど…」

「確か永山班だな。ただ…ぶっちゃけアイツらは今、どっち側にも引き込めないのが現状だ」

「何でよ? 中立派って事は少なくとも単純に南雲を嫌ってる訳では無いんでしょ? 護衛隊のみんなも同調圧力にやられてただけだし、誘えばこっちに来てくれる可能性だって──」

「忘れたか? ()()()()()()()()()()?」

「…………………ぁあ、そうね」

「安心しろ、俺も偶に忘れる」

「あっ、やっぱり?」

 

 遠藤浩介、元々永山班に居た天職【暗殺者】を持つ『神の使徒』の一人だ。そして彼は地球にいた頃から、【暗殺者】の如く存在感が無かった。…ただし本人の意図に関係無く。

 

 失踪とはかなり大事の筈なのだが、優花も幸利もちょいちょい忘れる。何故か。何故なんだろうか。二人は首を傾げるしか無い。

 

 ただまあ、今遠藤の存在感の話をする気は無い。問題は彼の失踪による副次効果だ。

 

「単純に言えば永山班の奴らは警戒してる。遠藤が失踪してから四ヶ月近く。だってのにまだ痕跡さえも掴めていない。遠藤は存在感こそ薄いが『神の使徒』。それを見つけられてないってのは余程犯人の手際が良かったか…それとも国絡みか…。どちらにせよ警鐘を鳴らすには十分だ。疑心暗鬼になるのも、必然の話だろ?」

「つまり、南雲は警戒されてるって事?」

「ハジメもそうだが王国も教会も、だろうな。悪魔の証明とはよく言ったもんだよ。ハジメが攫った可能性をアイツらの視点からゼロにするのは、現状まず無理だ。そして恐らく教会側もその疑惑は晴らせない。だからこそ、永山班は完全な中立派なんだ」

 

 愛ちゃん先生護衛隊の場合は同調圧力に負けた事で、沈黙を貫くという結果になった。精神的にはハジメ達寄りで有った為、協力を得られる様になったのだ。

 

 一方で永山班はどちらもを疑っているが為の、結果的な中立派だ。故にどちら側にも組する事は無い。恐らくは遠藤が発見されるその日までは、彼等は全員を疑う事だろう。

 

「なるほどね…まあ、敵にならないだけまだマシか」

「だな。出来ればこっち側に引き摺り込みたかったが…事情が事情だ。無理に引き込めば、不満も募る。見えた地雷は避けるのがセオリーだ。無視して行けば良い」

 

 そう引き摺り込めない事は残念だが、逆に敵にならない事もほぼ確定している。ならば現状、考慮する必要も無い。

 

「…ま、今でも勢力は割と増えてる。ハジメが功績さえ立てれば、何とか無罪放免されるぐらいには出来るんじゃ無いか?」

「この前の【ウル】も功績あった様な気がするけど…」

「あれは先生がメインの功績だからな。世間様にハジメがメインの功績だってアピールしねーと、無罪放免は難いんだよ」

「そうなって来ると…本気で南雲が頑張らないとダメなのね、改めて」

「そうなんだよなぁ…」

 

 この話が終わって丁度、本棚の向こう側から見覚えのある人物が現れる。ただし見事なまでにゴミの様だが。

 

「タスケテ…タスケテ…」

 

 ヨタヨタと雑魚ゾンビの様に歩いて来るハジメを見つめつつ。

 

「…行けると思う、ユキ?」

「無理じゃねぇかなぁ?」

南無()

 

 不安を覚えるのは仕方がない話なのではないだろうか。少なくともこの場において自信満々で居られる者は居なかった。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「あっ、そう言えば南雲。朝メルドさん達と戦闘訓練してるのよね?」

「あーうん。偶に坂上くんとかも参加してくれるよ? 最近はデビッドさんとチェイスさんも来てくれるから充実してる」

「あの二人トコトンお前を気に入ってるよな、ハジメ」

「デビッドさんは未だに言葉は厳しいけどね」

「ツンデレね」

「ツンデレだな」

「ツンデレかぁ」

ツンデレ乙(ピピピィ)

 

 さて『魔法理論学発展論界』が迫っている現在だが、戦闘訓練は未だに行なっている。というか神殿騎士の助力もあって、むしろ充実して来ている。

 

 ちなみにこれはデビッドが「愛子に恥はかかせられん。鍛えてやるから、覚悟しろ」と、チェイスが「興味がありますので。宜しいですか?」と、自ら申し出てくれたのだ。ハジメとしても有難い申し出であった為、間髪無しで頭を下げた。

 

 言わずもがな。デビッドはツンデレ。間違いない。

 

 この話になってから少し元気になりつつあるハジメ。紛う事なく訓練馬鹿である。二人は多少呆れている。

 

「まあ、アンタが楽しそうで何よりだけど…その訓練私も参加させて貰えない?」

「有難いけど…朝早いよ?」

「そこは全然大丈夫よ。割と早起きだから、私」

「それが良いなら、是非お願いするよ。また明日朝訓練場で」

「ええ。宜しく」

 

 天職【投擲師】は戦闘職の中でも珍しい『中距離戦闘職』に類する。武器の扱いに長けた近接職や高い魔法適性を持つ魔法職とは異なる。良く言えばオールラウンダー、悪く言えば器用貧乏なのが【投擲師】だ。

 

 主武器たる投擲に加え、近接戦や初級魔法による戦闘で組み立て行く事を得意とする。その為決定打は足りないが、対人戦では有利性を持つというのが【投擲師】の評価だ。

 

 訓練に加わってくれるメンバーとは別のタイプであろう戦闘スタイルは、ハジメとしては非常に有難い。是非是非と優花の参戦を歓迎する。

 

「………コホンッ」

『…ピェッ』

「「?」」

 

 するとわざとらしく幸利が咳き込む。何だろうか、と振り向くが幸利は何も言う気配が無い。改めて明日の訓練に関して話を進め──

 

「コホンッ、コホンッ…」

「…ユッキー、風邪引いてる?」

「………引いてねぇわ」

 

 何度も何度も咳き込む幸利。てっきり風邪でも引いたのかと思ったが、どうやら違うらしい。ハジメは首を捻った。

 

「あ──…南雲、察してやりなさいよ」

「うん? 察する? …ああ、そう言う事かぁ」

 

 すると察した御様子の優花がハジメに目を向ける。暫く唸っていたハジメだったが、どうやら察する事が出来たらしい。二人揃ってニッコリする。

 

 そして二人揃って幸利の肩をポンポンと叩き、言う。

 

「寂しかったんだね、ユッキー。一緒に訓練しよ?」

「悪かったわね。案外アンタ私達の事大好きよね?」

「はぁ!? 違いますぅ──!! そう言うんじゃ無いですぅ──!! 誤解しないで貰えますぅ!?」

『「「ツンデレ乙(ピピピィ)」」』

「黙れ馬鹿ども!」

「お客様?」

 

 なおこの後再び司書さんが来襲し、菩薩スマイルを三人と一匹にかました。何とも素晴らしい笑顔で…思わず震え上がったと三人は後に供述した。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「最近南雲様の調子は如何ですか、ヘリーナ」

「そうですね…レポートに関しては詰まっている様ですが、他は万全かと。あと少し寝不足などでは有りますね」

「それは頂けませんわ。寝不足は健康最大の敵ですのに…」

「お嬢様がそれを言いますか…」

「何か言いました? ヘリーナ」

「いえ、何も」

「? まあ、良いですわ。それで…近づいて来ようとしている相手は?」

「少しずつですが確実に」

「全く…(わたくし)は兎も角、【豊穣の女神】の庇護下にいる相手に手を出そうとするのは浅慮が過ぎません事?」

「では如何致しましょうか?」

「そうですわね…そう言えば南雲様はそろそろ学会に出られますわね?」

「ええ。功績を上げる為、勤しんで居られます」

「…所で南雲様ってマナーレッスン受けておられましたか?」

「始まる前に実質的な『神の使徒』追放処分を受けておられますから、受けておられません」

「それならば…どうせです。()()()()()

「お嬢様自身が、ですか?」

「ええ。そろそろ【王女の騎士】の二つ名を疑われ始めていますしね。その補強の為にも、直接会いますわ」

「かしこまりました。すぐに南雲様のスケジュールを確認致します」

「頼みましたわ、ヘリーナ」

「ええ、お嬢様も」




と言うわけで新節『学会』編の開幕です。
要はながーい説明編です。
とはいえそこまで重要な節では無いので5、6話で終わらせたい所存。
…え? 長い?
そんな馬鹿な!?

あとそろそろリリアーナ様のフラグを立て始めます。
準備は宜しいか? 私は出来てる。
そんじゃイクゾー!!

ーー追記
チーフなっちゃん様
ZERO-14様
蒼三日月様
ふうすけ様
星村 零様
評価ありがとうございます!
また国語雑魚の作者に代わって誤字修正をして下さる皆様!
元気玉みたいな感じで感想をくれる皆様!
いつもありがとうございます!
それらは全て後にくるハジカオへ注力されています。
…そこそこレベルの期待でよろしくね?(チキッた)

取り敢えず『学会』編も頑張っていきます!
応援よろしく!

この作品、アナタは何メイン目的で読んでる?

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