恋する錬成師は世界最強   作:見た目は子供、素顔は厨二

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いきなりでごめんですが、この前私がダイレクトマーケティングしたハジカオあるじゃん?(本気で唐突)
あっちもこっちも(私の方は今ん所詐欺だけど)ハジカオじゃん?
で、どっちも魔王化回避じゃん?
タグだけで見れば似た要素で構成されてる筈じゃん?

………面白いぐらい逆だよねw(何がかはネタバレなので言わない)

そんな訳でふうすけ様のハジカオとこっちのハジカオ(詐欺紛い)をキメれば、メガンテを撃てるって寸法よ!(IQ2)
読もうぜ! 書こうぜ! 祈ろうぜ! ハジカオをよぉお!!(ハジカオ狂信者)(なお詐欺)(学会編終わったらハジカオ編みてぇなもんだからステイだ、君達)

…そんで私はいずれ、二次創作者ハジカオ四天王になりたい。
それではどうぞ!


19、本日尚も訓練日和

「………南雲」

「………うん、園部さん」

 

 まだ太陽も上がらない早朝。寝る者も少なくない時間帯でもなお、少年等は起き上がっていた。

 

 ただ少年等は静止していた。二人のみならず、同じく訓練に参加する龍太郎、デビッド、チェイスも同様にだ。ちなみに今日、メルドは業務上の関係でお休みだ。訓練相手が増えた以上、何の問題も無いが。

 

 何故静止しているのか。それは決して恐怖から来る硬直では無い。単純に驚き呆れているだけだ。更に言うならば、目の前の現実を容認しきれず、現実逃避を繰り返しているだけだ。

 

 ならば何故驚いているのか。何故現実逃避をせねばならないのか。

 

 それは幸利が連れて来た()()()()()使()()()にこそある。

 

「はぁ、寝みぃな。…ハジメも優花もお早い事で」

「うん、おはよう。ユッキー。ところで後ろのその子は何かな?」

「………ぁあ。まだ会わせてなかったっけ? コイツが『ポチ』だよ」

「その子が…ポチなのね…」

「………ポチ、かぁ」

「何だ? 何か文句あんのか?」

『ピッピ?』

 

 ポチと言う名前は以前聞いた事がある。愛子の雇われの身となる為、幸利が冒険者ギルドに通い詰めた時期にテイムした使い魔の名前の筈だ。採集系の依頼をピナ、そして討伐系の依頼をそのポチで無双したとの話だ。

 

 話だけ聞いており、その正体や姿は知らなかったハジメと優花。だが今ならば思う。コイツなら確かに無双も出来るだろう、と。

 

 ただ同時に、二人は凄まじい衝動に駆られていた。喉のスレスレまで、ある言葉が迫って来ていた。

 

 それをなるべく堪えて堪えて…やはり無理だと息ぴったりのタイミングで、二人は叫んだ。

 

 他ならない幸利と、すっっっっごく見覚えのある『ポチ』に向かって。

 

「「その見た目でポチはねぇだろ!!」」

はじめまして(グルゥアア)♪』

側室やで(ピッピピー)

 

 様々な肉食獣を強引にかき混ぜた様な醜悪な見た目をした魔物。かつての【ウル】での戦いに於いて、唯一捕縛しか出来なかった魔物『キメラ』は、幸利へと甘ったれた猫の様な声で鳴いていた。

 

 そしてネーミングが適当過ぎるだろ、と二人は叫ぶ。

 

 なお幸利のネーミングセンスはこれが限界である。彼なりにカッコいい名前を付けたつもりであった。

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどね…【ウル】で捕縛されてからはアンタの手に渡ってた訳ね」

「ちなみに教会と王国にはコイツは俺が冒険者やってた時にテイムした事にしてる。【ウル】での敵側の生き残りは居ないって事に先生が()()()()()()()()。お陰で俺の戦力がアップしたって話だ」

「ユキ。アンタ先生に無茶苦茶お世話になってるわね?」

「そろそろ菓子折持ってくわ」

「そうしなさい。尤も先生の事だから生徒のみんなに配りそうだけど」

「…もうそれしか想像できねぇ」

 

 呑気な会話とは裏腹に、二人は瞬く間に打撃と斬撃、魔法の応酬を繰り広げていた。

 

 幸利はピナとポチの使い魔を主軸にした戦闘スタイルだ。タフなポチを前衛に置き、幸利自体を後衛に据えて戦闘を行う。ピナには直接的な戦闘能力は無いが、“共眼”により俯瞰的な視野を味方全員に共有する事が出来る。それにより幸利とポチの連携の練度を強めている訳だ。

 

 一方で優花は付かず離れずの距離を保ちながら、ナイフ等の投擲を行っている。単純にそれだけの、極めて単純なスタイル。だが特筆すべきは単純故に穴も多いこの戦闘スタイル。それを実質的な二対一であろうと、こなしていると言う点にこそある。

 

 ポチはタフで、前衛としてはかなり強い。しかし遅く、鈍重だ。ならば捉えさせぬと留めなく、優花は訓練場を駆ける。

 

 そして同時に四つのナイフが投擲される。ナイフは訓練故に刃を潰されているが、重量は本物。一撃でも喰らえば致命的な隙を晒す事になるだろう。

 

「──ちぃっ! あぶねぇなぁ! 夜の()、尽く暗幕に隠れ──ッ!?」

 

 それをしゃがむ事で回避。しかしあと十メートル程の距離まで優花は迫って来ている。

 

 ならばと黒の煙幕を作り出す闇属性初級魔法“暗煙(あんえん)”を唱える。これにより優花の視界を奪い、勝負を仕切り直しに持ち込もうと画策した。

 

 だが後頭部を確かに揺らす衝撃が、幸利の詠唱を許さなかった。

 

(しまっ──さっき投げたナイフか!?)

 

 天職【投擲師】が底上げするのは単に投擲の威力だけでは無い。届き得る距離、精密なコントロール、そしてそれによる物理法則を無視した様な軌道の投擲を、優花は行う事が出来る。

 

 魔法も中断され、幸利自身も瞬間的に身体のコントロールを失う。ポチも間に合わない。優花は風を切り、幸利へと飛び掛かる。

 

 空中で幸利の腕を捕まえ、肩を脚で絡め取る。そしてそのまま地面へと落とした。幸利が身体のコントロールを取り戻した頃にはもう遅い。プロレスで言う所の腕ひしぎ十字固めがものの見事に決まっていた。

 

「あ゛ぃだだだだだだだだだだた!!!!!」

「ほ〜ら、ユ〜キ〜? 降参は?」

「参りました参りました! だから手首は捻らないででででででででで!!!!!」

『ピェ──!!?』

『グォオ!?』

 

※腕ひしぎ十字固めは普通に関節外れる可能性のある技ですので、良い子は真似しないでね? 悪い子もやめようね?

 

 当然絞め技故にポチが攻撃する隙はある。だが優花の場合、わざわざ絞め技にせずとも、ナイフによる刺突で幸利を仕留められた。詰まる所、絞め技を決められた時点で幸利はこの試合に負けた形となっている訳だ。

 

「たくお前は加減を………」

「どうしたのよ、急に黙って?」

「いや、もしかしたら女子に関節技決められてたのって役得だったのかと──」

「もう一回いる?」

「勘弁して下さい」

 

 どうやら幸利に雄豚になる才能は無かったらしい。普通に拷問は拷問だと感じられる人間だったらしい。ほら見ろ、全身が震え上がってる。関節がガタガタだ。

 

「はい。私の勝ち〜。七戦七勝ね」

「お前…対人戦やたら強いよな」

「アンタが接近戦弱過ぎるのよ。もうちょい鍛えなさい」

「ぐっ、ぐぬぅ…」

 

 優花の物言いにぐぅの音も出ない幸利。優花の言う事も確かで、幸利は接近戦が非常に弱い。典型的な魔法使いのスタイルであり、己自身が前衛となる事を苦手とする。

 

 正確には魔法による攻撃は可能だ。幸利の適性は何も闇属性魔法だけでは無い。多少なら、他の属性の攻性魔法も使い熟せる。だから何も攻め手になれない訳では無い。ただ接近職に間合いに入られたならば、そんな詠唱の余裕などありはしないが。

 

 だからこそ幸利自身も「そろそろ体を鍛えた方が良いか…流石に女子に負けるのも嫌だし…」と心中ぼやいているのだ。流石に幸利にだって男子としてのプライドぐらいあるのだ。

 

 そうして言い返さずに幸利が顔を顰めていると、横で断続的な鉄のぶつかり合う音が響く。

 

 其方を向くと吹き飛んでいるハジメと、それを追撃しようとするデビッドの姿が見えた。

 

 

 

 

 

 デビッドは叫ぶ。

 

「どうしたァ、南雲ハジメェエエエ!! 実戦のつもりで戦え! 気を抜くな!!」

「ッ──! “錬成”ぇ!!」

「温いッッ!!」

 

 迫るデビッドを、“錬成”により創り出した壁が阻む。だが土属性魔法による補正も掛かっていない土壁などデビッドには無意味。瞬く間にデビッドはその壁を拳で砕いた。

 

 だがその砕いた先に、ハジメは居なかった。

 

(────ッッ!?)

 

 一瞬で消えた様にも錯覚出来る光景に、デビッドは混乱する。ハジメが何処に行ったのか、それを導き出そうとしている。

 

 創り上げられた土壁は単なる防御の一手では無い。それは一瞬でもハジメを見失わせる障害であり、デビッドへの攻撃を繰り出す為の()()だ。

 

 即ち──上だ。

 

「フッ!!」

「ッッ──!!」

 

 裂帛の呼吸と共に放たれる回転蹴り。反応が僅かに遅れたデビッドに避ける余裕は無い。

 

 そのままデビッドの後頭部へと一撃が──

 

「ぬんっ!!」

「──って、ぇええ!?」

 

 ──着弾する前に、デビッドはその蹴りを己の頭蓋で受け止めた。

 

 自ら攻撃を喰らいに行くと言う、恐怖をかなぐり捨てた所業。しかしその一手は、ハジメの蹴りの加速を食い止めた。

 

 とは言えノーダメージでは無い。仮にも頭で受け止めたのだ。それならば脳を揺らす程度の事は出来ている筈。そう断じてハジメは体を捻り、拳を握り締める。

 

 だが神殿騎士と言うものは頑丈で、そして規格外なのだ。

 

 瞬間、ハジメの目には空が映った。

 

 急変する光景に動揺するハジメ。しかし背から響く衝撃が、何が起きたのかを彼にありありと知らせた。

 

「──────ガッッッ!!!?」

 

 肺から酸素が吐き出される。視界が点滅し、火花が散る。

 

 投げの起点は脚だった。デビッドは額で受け止めた脚を直ぐ様捕まえ、そのまま叩き付けたのだ。

 

 ハジメが理解出来なかったのは何もステータス差による問題では無い。魔力循環により強化を行なっているハジメのステータスは精々、デビッドに一歩及ばぬ程度。決して見失う程の実力差では無い。

 

 だからこそ分かる純粋な技術の差。重点の移動、動きの緩急、自然な誘導(フェイント)。そう言ったある種答えの無い、故に対応し続けねばならない分野。それ故に経験と思考こそが物を言う部分だ。

 

「この程度で伏している場合か! 次だ、南雲ハジメ!」

「ッ! はい!」

 

 一朝一夕ではまず不可能。だからこそデビッドはハジメを叱咤する。ハジメにより経験を積ませようとする。

 

 そしてまたハジメも応える。『学会』の件もある。だがあの日の約束を、「追いつく」事を止めるつもりは毛頭ない。二兎追うものは一兎も得ずと言うが、何せ時間が無い。

 

 一秒たりとも無駄に出来ない。再び南雲ハジメは構える。

 

「よろしくお願いします!」

 

 それに対しほんの僅か、デビッドは口端を上げた。

 

「ふん…ならば行くぞ!」

 

 幾回にも及ぶ剣戟が、懲りる暇も無く繰り広げられた。

 

 

 

 

 

「…アイツ、やっぱヤベェな」

「というかデビッドさんの叩き付け、マジだったわね…」

「本気で殺そうとしてんじゃねーかな、デビッドさん」

 

 そして戦いを遠巻きに見つめる優花と幸利が若干引いていた。

 

 側から見ればデビッドのそれは、本気の殺し合いに見える。彼の一撃一撃は敢えて痛め付ける様な攻撃のオンパレード。

 

 一応デビッドが敢えて痛みがある様に攻撃するのは、本気で戦わせる為の処置だ。ハジメにはかなりの反骨精神がある分、下手に甘やかすよりもスパルタで訓練を行う方が早い。その辺りはメルドも概ね同意している。そして日頃の訓練でハジメは多少の頭ならばオールグリーンだ。

 

 …まあ、ハジメの思考もイカレてきているのは確かだ。

 

 そんな訳で客観的に見ればヤベー奴とヤベー奴。二人は引く程度で済んでいるが、下手すれば通報レベルのやり取りだ。正直理解したく無い。

 

「お──、やっぱ南雲の奴根性あんなー」

「デビッドの方も…どうやら気合が入っている様ですね」

「チェイスさんに坂上。そっちも休憩?」

「おう! 五戦二勝だ! やっぱつえーな、チェイスさん!」

「私としては子供に二回負けたのはショックだったのですがね…」

 

 そうやって脳が理解を拒んでいる内に、残る二人の戦闘訓練も一旦終わりを迎えたらしい。

 

『神の使徒』きっての武闘派である龍太郎はやはり強かったらしい。勝ち越しているとは言え、ギリギリまで拮抗している辺りが流石だ。チェイスはやはり悔しいのか、目を伏している。恐らく頭の中で先程までの戦いをシュミレートしているのだろう。やはり色々真面目である。

 

「それにしても…デビッドさん、怖いぐらいに気合入ってるんですけど…」

「御三方相手ならばもう少し加減や思いやりもあったでしょうが…南雲殿相手だからでしょうね、あそこまで厳しいのは」

「…やっぱりデビッドさん、南雲を認め切れてないんですかね?」

「いえ…むしろ逆でしょうね。期待しているから、でしょう。これはデビッドに限った話ではありませんが、神殿騎士は教会の言葉を絶対としています。『神の使徒』とあらばどんな者でも敬い、神の敵とあらば隣人であろうとも憎む。今は愛子の言葉によりその考えを改めましたが、以前の私もそう言った考えでした」

 

 宗教という物は人の思考を染め上げる手段の一つ。偶像を崇めさせ、人の行動原理を定める。人の拠り所としての機能は確か。だが同時にその信仰の度合いが強ければ、その人間の思考を狭めてしまう事も確かな事実だ。

 

 この世界における聖教教会は特に、その後者の傾向が強い。神を盲目的に信じる人間が多い。そしてその神に仕える者ならば尚更。何と言っても神の言葉に従い、その為に命さえも差し出すのだ。その信仰は最早狂気とも言い換えられるだろう。

 

 だが【豊穣の女神】畑山愛子の言葉は、彼等のその様な認識を改めさせた。他者を思い遣り、寄り添う事を真に出来る彼女だからこそ、神殿騎士四人は彼女に剣を委ねているのだ。

 

 それは間違い無く、彼等自身の意思による物。決して教会の決定に従っているだけでは無い。

 

「ただ考えを改めようと、これまでの認識が完全に裏返る訳では無い。だからこそ我々は当初南雲殿を目の敵にしてしまっていましたからね。今でこそ認められていますが、やはり難しい物です。デビッドは我々の中でも特に信仰深い人間でしたから尚更です。その為か愛子に従ってからも、「神の言葉は絶対」という認識を切り離せておりませんでした」

 

 認識の改めには時間が掛かる。一朝一夕で自然の理が覆らぬ様に、人生を歩んだ上で人は学んで行く。そして成長して行くのだ。

 

 だがデビッドは良くも悪くも意固地であった。教会へ陰りの無い信仰を捧げ続けていた彼は、愛子の言葉を受けてからも教会の理念以外の視点で物を見る事が出来なかった。

 

 チェイス等にも名残はあったが、他の視点の理解は時間を掛けて行っていた。デビッドだけが、取り残されていた。デビッドだけは、神の下僕のままでいた。

 

 それを──たった一人の矮小な少年が破ったと言うのだから噴飯物だ。

 

「だからこそ南雲殿はデビッドにとって、初めて認めた『神敵』。あの男はそれだけに南雲殿に期待しているのです。ですからああして熱心に入り込んでいるのでしょうね。尤も言葉にするのは恥ずかしい様なので、罵倒混じりですが」

「「「ツンデレだぁ」」」

「ええ、正しく」

せやな(ピピィ)!』

ごしゅじん(グォウ)! ただしい(グルゥ)!』

 

 ハジメはデビッドの常識をあっさりと破壊した。デビッドからして見れば、天地がひっくり返る様な思いだっただろう。神の敵として見ていた少年が、友を助ける為邁進する姿は痛快に違い無い。

 

 だからこそデビッドは内心、叫ぶのだ。お前はその程度では無い、と。常識を吹き飛ばす男なのだ、と。

 

 まあ、何とも不器用な尊敬の念が、デビッドには確かにあった。それを戦友であるチェイスは嬉しそうに語る。聞いている三人も、それにまた微笑んだ。

 

「ちなみにチェイスさんは南雲の事、どう思ってるんですか?」

「そうですね…私も期待しておりますよ? 彼には【勇者】殿とはまた違うカリスマがある。誰も彼もを率いる将のそれでは無い。されど何かと手を貸そうと思わせる引力。滅多に無い才能に違いありません」

 

 御三方もそうでしょう、とチェイスが視線で尋ねた。龍太郎は直ぐ様頷き、優花と幸利は居心地悪そうに目を向こうにやった。何も答えないが、否定はしない辺りおおよそ同意なのだろう。何とも正直である。

 

 二人が照れ臭さやらで沈黙を貫き始める。チェイスも空気を読んで黙るが、二人を優しく見ている。

 

 ただ此処には一人、空気など知った事が無い人間(脳筋)がいる訳で…

 

「ハハッ、やっぱ南雲周りはおもしれぇなぁ」

「ちょっと待って、坂上。私の事イロモノ扱いしてない?」

「そうだぞ。イロモノはハジメと優花だけで十分だ」

「……もう一回、ボコして欲しいの? ユキ?」

「上等だ、オラァ! 下剋上覚悟しやがれ!」

下剋上取ったらァ(ピィピーピピピィ)!!』

とったらー(グォォン)!!』

 

 やはり喧嘩がコミュニケーションの主軸たる優花と幸利は照れ隠しも兼ねて、再び訓練へと戻る。

 

 後はハジメとデビッドの白熱ぶりに感化された、と言うのもあるだろう。強くならねばならないという意志に、薪が焚べられた。冗談紛れではあるが、確かに二人の瞳には鋭い眼光が宿っている。

 

 それを見て、龍太郎もチェイスも笑った。

 

「いい奴らだなぁ、二人とも」

「ええ。南雲殿は良き隣人に恵まれたかと」

「そんじゃ、チェイスさん!」

「ええ。もう一度訓練と行きましょうか。今度こそ全勝させて頂きますよ?」

「俺こそ勝ち越してやりますよ!」

「良いでしょう。覚悟なさい、坂上殿」

 

 そうしてまだ朝日も見えない内に、全員が全員全力を出し尽くす結果となる。常連組は慣れっこだが…初参加の優花と幸利に関しては、食堂で昼寝をしているのが見られたと言う。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「南雲様、研究の程は如何でしょうか? あと何もお飲みになっていないかと思いましたので、紅茶を用意致しました。是非お飲み下さい。あと小腹も空いているでしょうから、つい先程焼いたスコーンをどうぞ」

「あ、ありがとうございます、ヘリーナさん。あと…研究は…」

「どうやら進捗は宜しくない様で」

「うぐぅ…」

 

 午後、先日と同様にハジメは『学会』用のレポートをまとめている。場所を変えればリラックスして、斬新なアイディアが出てる来るのではないかと自身の部屋に篭っているが…結果はご覧の通り。これまた先日の再現の様に机に伏している。

 

 やはり書けはするのだが…どうも目新しさが無い。一目は置かれるかもしれないが、功績と言うには及ばない物ばかり。

 

 認めよう。完全にどん詰まり状態だ。取り敢えずヘリーナから紅茶を受け取り、口に傾ける。上品な香りが口一杯に広がる。…果たしてお値段はお幾らだろうか?

 

 続いて齧ったスコーンも非常に美味しい。紅茶との味合わせは見事と言う他無く、舌に残る余韻が心地よい。…ハジメは頭の中で算盤を弾き始めた。

 

 当初の頃は緊張やらもあったが、最近のハジメとヘリーナは上手くやっている。掃除や身支度は他人に任せるのが申し訳ないのか、ハジメが自身で出来る限りはしている。

 

 ただやはり侍女のプロたるヘリーナは違う。掃除の範囲は同じだろうに、部屋は眩く見える。またハジメが支度し忘れていた物も、いつの間にか鞄に入っていたりする。

 

 そして特にハジメが有り難いと思っているのは、食事面だ。【錬成師】という半ば研究職に近いハジメは度々夜更かしする。そうすると今の様に飲み物や間食、夜食等を小腹が空いた時を見計らって作ってくれるのだ。優花が作る昼飯と言い、ヘリーナの間食と言い、どれも美味しいので舌が肥えそうなのが目下の悩みだ。

 

 なお、世間一般ではこれを『餌付け』と呼ぶ。優花は兎も角、ヘリーナに関しては内心ペットに餌を食べさせる気分にかなり近い。今もハジメの後ろに立ちながら、ジィッと頬張るハジメを見つめている。

 

 どうやらヘリーナさんはハジメが可愛くて仕方がないらしい。断じて恋愛感情では無いが…こう、湧き上がってくる物があるらしい。

 

「ご馳走様でした。これでまた集中出来そうです!」

「恐悦至極に御座います。…ところで一つ尋ねたい事があるのですがよろしいでしょうか?」

「? 何でしょう?」

「それでは失礼ながら…南雲様は『神の使徒』の皆様用に開かれたマナー講座を受けておられませんね?」

「……………何て(ぱーどぅん)?」

「此方の世界のマナーを知っておられますか?」

「……………」

 

 ハジメは栄養をとった事で加速した思考により、記憶を急速に遡る。いやいや、幾らなんでも四ヶ月近くこっちで暮らしてる訳だし、マナーは知ってる筈……………。

 

「………………僕こっちのマナー、知らないですね?」

「せめて言い切って下さいませんか?」

「そもそも僕、クラスメイト全員見たのが遠い昔にしか思えないんですよね…」

「古傷を抉ってしまいましたか? 申し訳ありません」

「いえ、友達はいるので大丈夫です」

「追加のスコーンは如何ですか?」

「戴きます」

 

 ──もぐもぐもぐもぐ、ごっくん

 

「『魔法理論学発展論会』は何もレポートだけではありません。それを元に第一線の学者の皆様を前に、発表を行う必要があります。一番重要な物は研究内容に違いありませんが、マナーが悪いと判断された場合聞かない人間も出て来るでしょう。特に南雲様は悪い噂が多いのも確かですので、第一印象は必ず好印象で無ければいけません。更に言うならば、南雲様の目標はずっと遠いと認識しております。ならばマナーはその際に必ず武器となり得ます」

「それは…そうですね」

「柑橘系の果物でジャムを作りましたので、付け合わせとして是非」

「あ、はい。ありがとうございます」

 

 ──もっもっもっもっ、ごっくん

 

「そう言った理由もあり、南雲様には個別でマナーレッスンを受けてもらう必要があります。幸い教育係に適任者が居られますので、時間さえ宜しければ晩食後に会って頂きたいのですが宜しいでしょうか? ──後、此方のブドウモドキ(グレィナップル)のジャムは中々面白い味わいとなるかと」

「食べ物の話を真面目な話の間に混ぜて来るのやめてくれませんかねぇ!? 集中出来ない!!」

「如何ですか?」

「会いますし、戴きます!」

「教育係の方を?」

「ド下ネタァ!!?」

 

 真面目な話と食事の話が交互に飛び交う故にハジメは混乱する。これはヘリーナなりのジョークなのか? 否、単に『餌付け』へのリビドーが迸っただけである。

 

 なお【傍付き】ヘリーナさんは、普通ならば仕事で物を語る侍女オブ侍女だ。みんな憧れるThe.メイドさんだ。決して主に次々と飯を食べさせようとする困ったさんじゃ無い。

 

 正確にはリリアーナ相手ならばこう言った一面も出て来るのだろうが、それ以外ならばハジメ以外にはいない。つまりは化けの皮(メイドフェイス)が剥がれる程度には、近しくなったという話である。

 

 ただまあ、そんな事実を知らないハジメは取り敢えず新しく貰ったジャムをスコーンに乗せて、もぐもぐごっくん。

 

 そんなハジメにヘリーナさんは満足気に頷かれたそうな。

 

 そして今度こそスコーンを完食し、少し膨れた腹を撫でるハジメ。その興味は再びマナーレッスンの方へと向く。

 

「ちなみにその教育係の方ってどんな人なんですか?」

「優しく、一生懸命な御方です。気軽に接してくだされば、宜しいかと思われます」

「へー、ちょっと楽しみです」

「それはそれは」

 

 これまでも様々な技術を学び、習得して来たハジメ。そしてここに来て新たにマナーが加わる。

 

 履く草鞋の数も増えて来て大変だが、同時にハジメは好奇心と言う物が非常に強い。教育係の相手も含めて、ハジメは期待に胸を膨らませて────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お久しぶりですわ、南雲様。此度教育係を承りました、リリアーナ=S=B=ハイリヒですわ。どうぞ良しなに…如何されました? 私の騎士様?」

 

 ────とんでもねぇ相手がそこには居た。

 

 確かにヘリーナの言う通り優しい人だ。それに努力家であろう事も、接点が少ないハジメでも理解出来た。

 

 ただ…ただだ。

 

「ちょっとヘリーナさん? こっち来て貰えます?」

「申し訳ありません、南雲様。このヘリーナ、持病の難聴が…」

 

 ──取り敢えずハジメは激怒したのだ。必ず、かの愉悦部たる侍女を叱らねばならぬと決意したのだ。




そういえば書いたか覚えてないので、ここで清水の使い魔のデータ小出し。

・ピナ
白鳩の魔物(詳細不明)(特殊個体の可能性アリ)
176歳
メス
固有魔法は“千里眼”。直接戦闘能力は無いけど、魔物の中では賢い種族。ピナはそん中でもかなり賢い方。幸利の影響か、それとも謎の電波を感知したのか、顔の無い例のあの御方から教えて貰ったのか…理由は定かでは無いが、サブカルチャーに詳しい。SANチェックポイント持ち。一応幸利は闇魔法で洗脳した筈なのだが、そんな形跡がミリ単位も感じられ無い。幸利が大好き。えっ、どっちの意味で? その答えを知ってるのはピナだけです。どっちかと言えばラナ気質。

・ポチ
『キメラ』
1ちゃい
メス
めっちゃタフネス。めっちゃパワフル。体長は三メートル超え。魔人族側が作り出したヤベー魔物の一体…の筈。だけれど幸利さんが“闇魔法”で使い魔にしちゃったんですね、はい。前の『ごしゅじん』たるレイスにも懐いていたが、今の『ごしゅじん』はもっとすき。毎日毛繕いしてくれる、優しい。お風呂は嫌い。基本的にでっかい猫。『ごしゅじん』を背中に乗せて走るのが一番すき。“闇魔法”で洗脳した筈だが、何故か自我がある。『ごしゅじん』だいすき。

そして次回からはマナーレッスン回となります!
正直半分は今回で終わらせるつもりでしたが、予想外にヘリーナさんがおちゃらけました!
アンタ原作じゃそんなキャラやなかったやろがい!(←犯人)

ーー追記
カニチェ様
Laupe様
首狩りクリオネ様
評価ありがとうございます!
何だかんだと評価頂けて嬉しいです!
またドジっ子たる作者を支えてくださる誤字報告の投稿者様!
寂しがり屋の作者に構ってくれる感想投げつけ隊の皆様!
誠に感謝致します!
ここまでやれてるのは皆様のお陰です。
ちょいちょい感想やら評価やら見てニヤニヤしてます。
本気で感謝です!

この作品、アナタは何メイン目的で読んでる?

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  • 曇らせ!
  • 感想返し!
  • ダイレクトマーケティング!
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