…さて、ちょいとばかり失礼します。
ぅわぁああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!
春風消えたぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!!???(この言葉の意味を理解出来る貴方は立派なハジカオニストです、胸を誇りなさい)
くそぅ! 最近オリ主物への苦手意識減って来たから三十数話まで読んだのに…畜生!
ぶっちゃけハジカオ目的で読んだけど、予想外にストーリー自体が面白かったのに!
まだハジカオシーンまで辿り着けて無かったのに!
何でだよぉ!? どうしてだよぉ!?
…とは言えモチベーションとは他人がどうこう言ったからで直るもんじゃ無いし、しゃあないね。(過去の自身の作品群を見ながら)
悪いのは今まで読むのを先延ばしにしていた自分です。
皆さんは好きな作品だと思った物は後回しにせず、速攻で行きましょう。
そんな感じで偉大なハジカオ作品が一つ減ったのは非常に悲しい事ですが、頑張ります。
俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!
だからよ、止まるんじゃねぇぞ…!
ありとあらゆる視線が、自身に向いている。
これまでに感じたことの無い、夥しいまでの目の筵。この光景が一世一代の大勝負であると言う事実を、ハジメにより実感させた。
だがハジメは踏み出す。臆する事など有りはしない。口を小さく開け、ゆっくりと気付かれない様に深呼吸する。手に持つ“風音”の準アーティファクトに魔力を込めた。
やがてステージの中央に辿り着く。スポットライトが己を照らし、視線はただ一点へと集う。
ここからどう動けば良いかは、体が知っている。全て見てきた。教わった。
自然と動く体。まるで今迄出会った人々全員から背を押されている様な感覚に、笑みがふと溢れる。
ハジメは己の胸に手を当て、頭を垂れる。
さあ、始めよう
「それでは私、南雲ハジメの研究発表を始めさせて頂きます」
──他でも無い、僕の戦いを
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「まず私が行った研究は現代魔法の一つである“錬成”、これに関する新たな説の提唱です」
『“錬成”の…』
『かなり研究が進んでいる分野ですが…はてさてどうなる事やら』
ガヤガヤと客席から声がする。トータスにおける『学会』では、観客同士が発表内容を語り合う事は何ら不思議な事では無い。準アーティファクトである“風音”が観客へと声を届ける以上、静かにする意味合いが薄いのだ。
そして観客が言った様に“錬成”は研究が特に進んでいるとされている分野である。その理由としては“錬成”という魔法を使用できる絶対数が、他の魔法に比べ断然多い為だ。
【錬成師】は、トータスに於いて十人に一人が持つ天職。対して他の魔法はポピュラーな属性魔法だとしても優に全人口の5%を切る。
更に言えば魔法学という分野が戦闘職に向かない学問である以上、わざわざその分野を好き好んで研究しようとする物好きが少ないのも理由に当たる。それ故、必然的に“錬成”は非常に研究題材にし易い魔法なのだ。
観客達は様子見と言った所だ。散々最適化されて来た魔法に、どの様な解釈を持ち込むのか、と。
「“錬成”は数多くある現代魔法の中でも特異な魔法です。攻撃性能を持たず、『変形』の属性を司る。しかもその対象は鉱物のみに適用されるとされています」
誤解されがちだが、“錬成”は何も土属性では無い。『変形』という一つの事象、それを魔法属性に落とし込めたのが“錬成”なのだ。
それを知らなかった興味本位の客は素直に驚き、知見のある者達は当然だと頷く。
「私は『“錬成”は鉱物にのみ干渉を可能とする』という点について疑問を感じました。というのも、本当にそれだけの魔法ならば“錬成”は“土属性魔法”の下位互換の存在となる為です。しかし【錬成師】が【土術師】により職を追わせたという事実はほぼ聞きません。この為、私は“錬成”が鉱物以外にも干渉し得るのでは無いかという仮説を立てました」
ここでハジメは敢えて
理由はあまりにも単純。その動機がこの世界の人間にとっては突拍子も無く、受け入れ難い物であると感じているからだ。だからこそここは恥を偲び、偽りのストーリーを騙る。
当然これを不思議に感じる者はいない。ただVIP席で首を傾げた女性等が三人居たが、誤差なので問題ない。ハジメは研究に集中する。
「その為、まず鉱物に近い固形の物質を対象に“錬成”を行いました。例えば今日、この場に持ってきた氷。これに対して“錬成”を行いました」
ステージの端の方、台車の上に置かれていたのは二メートル大はある長方形の氷塊だ。ちなみにこの氷塊は『学会』側の協力により、つい先程作られた代物だ。お陰で溶ける気配は無い。
『学会』のスタッフに心の中で感謝を送りつつ、ハジメは掌を氷塊に付ける。
するとどうか。何ら変哲の無かった氷塊が、瞬く間に人の形へと姿を変えて行くでは無いか。ピキピキと音を立てて、ハジメの意思に従う。“錬成”が、働いていた。
魔法学や“錬成”に学の無い人間は、変化した事に驚く。だがその場にいる一流の【錬成師】は
ついでに客席のとある【錬成師】軍団は「さすがは南雲の旦那! われわれにできない事を平然とやってのけるッ。そこにシビれる! あこがれるゥ!」「あ〜、心がぴょんぴょんするんじゃ〜」「恐ろしく速い“錬成”、俺でも見逃しちゃうね」などと言っている。ハジメは内心苦笑いした。
取り敢えず十秒も置かず人間大のエヴ○初号機を作り上げたハジメ。唐突に出て来たエ○ァに『神の使徒』の一部が噴く中、ハジメは平然と説明を発表を続ける。
「結果はこの通り、滞り無く“錬成”を行うことが出来ます。この様に生物以外の固体に対し、“錬成”での干渉が可能である事はチガスナ=アートンにより証明されています。その為、ここまでは従来の“錬成”の解釈の範疇にあると言えるでしょう」
チガスナ=アートンのこの発表は案外、学者間では有名だ。雪など降らない【ハイリヒ王国】では関係ない話だが、地域によっては“錬成”により氷の煉瓦を作る地域もある。
その過去の研究について供述しなかった為、学者の一部はてっきりハジメがそれを知らず発表をしていたと思っていたらしい。ほぅ、と感心した声がちらほらと観客席から聞こえて来る。
「ですがチガスナ=アートンは固体以外の物質に対し、“錬成”での干渉は不可能としています。実際に彼が行った研究の一つに『“錬成”による液体への干渉について』と言う物があり、チガスナ=アートンはこの実験結果を失敗と判断しました」
チガスナ=アートンが行った研究は水槽中に入れた水に対し、“錬成”を行うと言う物だ。そしてチガスナ=アートンは水槽中の水を
まだ少しの変動も有ればチガスナ=アートンは「見込みあり」と判断しただろう。しかし存命の助手でさえも「1mたりとも動いていない」としている以上、“錬成”は液体に干渉不可能と『学会』において判断された。
「そこでチガスナ=アートンの判断は正しかったのか。その検証の為、彼の研究方法に則り実験を行い…そして実験は
──だがハジメはその結果を否定する。
騒めき始める客席。チガスナ=アートンは著名な研究者だ。既に他界しているが、それでも彼の弟子は今現在観客席にもいる。
詰まる所、ハジメはその弟子等に対し、思いっきり喧嘩を売りに行った形となる。
『アートン博士に指図するなど恥を知れ! 貴様ァ!』
『黙って聞いていれば偉そうに!』
『待て、お前達! 静かにしろ!』
『ですが兄弟子!?』
『奴がどの様な発表をするのか、今は黙って聞くぞ。間違っているならば叩けば良い。だが発表を最後まで聞かず激昂するのは学者の恥だ』
『『『ハッ!』』』
観客席にはチガスナ=アートンを信奉する者が多数いたらしい。乱闘上等と言わんばかりに立ち上がり、拳を振り上げようとしていた。一番の兄弟子たる人物が静止の声を掛け、止めてくれた。が、その兄弟子からもハジメに対する苛立ちが確かに見えた。
それを見てハジメは心の中で上等だ、と笑う。
「今日、この場にチガスナ=アートンが用いた実験の道具を揃えています。水槽と容器を満たす常温の水。これに“錬成”を掛け、変形するか否かを、チガスナ=アートンは調べました」
ステージに予め用意されていた水槽を、台車により中央に運ぶ。それは『学会』側には既に提出されており、何の変哲も無い水槽と水である事は証明されている。
さあ、“錬成”結果は如何に? と観客達は一同に結果を見守ろうとする。
しかしハジメが“錬成”を行うより前に、『学会』側のスタッフが容器をハジメに手渡した。「ありがとうございます」と簡潔に礼をする。観客の目は当然ながらその容器に集まった。
容器の中に入っているのは赤い何かだ。辛うじて液体である事は分かるが、実際それが何かなのかまでは観客達には分からない。
「ですが私はここに別の液体を投入します。こちらは視覚的に実験結果を確認できる様に着色した油です。質量は水よりも一層軽く、水の上に層を作ります。なおこの油は予め『学会』側の検査により、金属粒子が含まれていない事は証明しています。此方を水槽の中に入れ、実験を開始します。なお周囲の風等の影響を受けない様、蓋を閉じます。それから“錬成”を中の液体へと発動します」
テキパキと作業を行なって行くハジメ。恐らくは何度も何度もこの実験を繰り返し行なって来たのだろう。確かな慣れがハジメにある。
そうして作られたのは油と水の二層に分かれる液体だ。上層が赤く、その色が下層へと拡散される事は無い。この構造が見えた瞬間、一部の者がハジメの狙いに気がつく。
そして本日二度目の“錬成”、魔力光を纏った掌が水槽中の液体に干渉を開始する。
水槽中の液体は先程の氷の様に輪郭を変える事は無い。だが代わりに上層にのみ蓄積していた赤い油、それが水の中へと混ぜ込まれて行く。
疎水性を持つ油は水に溶ける事は無い。水より軽い質量を持つが故に再び上層へと戻ろうとする。しかし生み出された水流の循環が再び下層へと油を押し出した。
観客はこれを一度“水属性魔法”かと錯覚した。しかし最前線の学者等はそうでは無いと確信する。ハジメの手の甲に描かれている魔法陣は、“錬成”の物で間違い無かったからだ。
水流を数回転させてから徐々にハジメはその勢いを弱め、やがて静止させた。アッサリと師チガスナ=アートンの立証した説が覆された事に唖然とする弟子一同。
念の為ハジメは手の甲の魔法陣を見せる様に“風音”の準アーティファクトを持つ。そして声を風に乗せた。
「結果はこの様に、油が水と混ざり合っている事が分かるかと思われます。これは私が液体を循環させる様に、コントロールした為です。なお私が現在持つ準アーティファクトが“錬成”の刻まれたこの手袋と“風音”の刻まれたこの円盤のみである事から、私が“水属性魔法”を用いていない事は証明できます」
ちなみに『学会』では発表前にボディチェックが入念に行われる。研究内容による観客への被害が出ないか。発表内容を偽装する様な動画を持っていないか。不要な物を持ち込んでいないか。それ等の確認がしっかりと為される。
これにより発表において偽装はまず不可能。だが逆に言えばそれは壇上で語る内容の信憑性を高める助力でもある。
故にこの結果を観客は黙認する他ない。この場で発表を行なっている。それこそが何よりの真実味を持たせてしまうからだ。
「一つ、君に質問」
だがここでちょこんと腕が上がる。王宮魔法師レミィ=ランテッドだ。審査員の内の一人が、ハジメの発表に反応を見せた。
「はい。何でしょうか」
「先程、君は言った。チガスナ=アートンがこの実験に失敗したと判断したと。でも君は成功している。なら何故彼はこの実験を失敗したと判断した?」
「お応えします。それはチガスナ=アートンと私の変形への解釈が異なっている為です」
「…つまり?」
これに関してはチガスナ=アートンのレポートを読み込んだ時点で想定していた質問だ。脳内でしっかりと反芻した答えをハジメは口にする。
「“錬成”は鉱石、正しくは固体の輪郭を変形する事が可能です。最初に“錬成”した氷も長方形から人型へと変形しています。チガスナ=アートンは、液体もこの例に漏れないと判断したのです」
「…なる程、理解」
レミィはこれを聞き、頷いた。恐らくは元々推測は付いていたのだろう。専門分野で無いとは言え、流石は魔法学の第一線に立つ人物だと感心してしまう。
だが観客のおおよそはクエスチョンマークを浮かべるばかりだ。その為、ハジメは補足の説明を執り行った。
「固体と液体の違いには形を維持する能力、これの大小が存在します。言うまでも無く固体が大であり、液体が小です。また“錬成”は干渉能力が他の現代魔法よりも低く、物理的に不可能な形に変形させると言った事は基本不可能となっています。固体の場合は多少形を変えても、重力にその変形を妨げられる事はありません。しかし形の維持能力を持たない液体の場合は、上ベクトルへの変化に対しては、“錬成”による干渉以上に重力が強く働いてしまいます。その意識に至らなかったチガスナ=アートンは“錬成”により、液体が
「おお、なる程! そしてチガスナ=アートン氏のミスに気付いた君は、着色した油を入れる事で“錬成”による干渉、液体
「ありがとうございます」
そう、ハジメとチガスナ博士は観察項目が違う。水は凍らせない限り、握る事や砕く事、ましてや加工する事など不可能。人間が水の形を意のままにする事など出来ないのだ。そう言った様な『変形』は“錬成”には出来ない。水其の物の操作を行う“水属性魔法”の分野だ。
だが液体中の水粒子を入れ替える…つまりは構造の“変形”ならば重力による干渉も薄い。干渉能力の低い“錬成”でも十分に可能となる。
「念の為、水・疎水性の液体・着色料をそれぞれの働きに合う物質に変え、試しました。詳しくは『学会』側から配布された資料を参考にしてください。時間が無いのでそれぞれの実験の実演は省きますが、いずれも問題なく干渉を可能としました」
ついでに地球の実験における対照実験も行った。ついでに言えば水槽の材質なども変えている。いずれにせよ特に問題なく作用した。なお封印石による水槽の場合だけは普通に失敗した。これにより水流の発生が魔法以外の要因によるものでは無いと証明されたので、むしろプラスだが。
「また同様の方法により、気体への“錬成”による干渉実験も行いました。結果としてはやはり成功。“錬成”は気体への干渉も行う事が出来る事を証明しました」
気体であろうと“錬成”による干渉に陰りは無かった。むしろ流れを作る事に関しては質量の軽さ故に、一層容易でさえもあった。粒子一つ一つに制限がない為、コントロール自体はしっかりと行わねばならなかった事がただ唯一の難点と言えるだろう。
「逆に固体で合っても魔石、動物、植物、人間、あとは対魔性を持つアーティファクトには効果を示しませんでした。顕微鏡を見ながら実験を行った為、この結果は確かかと思われます」
トータスの顕微鏡は、時代レベルの割にかなり優秀だ。恐らくは機械が無くとも、細かな加工が行える“錬成”があるからこそだろう。だがそのレベルであろうと、“錬成”による変形は見られなかった。
この対象の是非についてはハジメ自身、
「これまでの結果からまず“錬成”の対象が鉱物以外である事は示せたかと思われます。そして──」
ここまで説明を受け、“錬成”の対象が鉱物のみと意見できる者はいないだろう。事実誰もが反論を行う事はなかった。
「ちょっと待て、南雲ハジメ。一つ質問だ」
──だが、それはあくまでもその事実への反論が無い、と言うだけだ。
手を挙げたのは観客席にいる、【錬成師】貴族だ。粘着質な笑みを漏らしつつ、彼はハジメを見下している。
この『学会』では審査員以外も質問は可能だ。ただ基本的に発表者が発表を終え、審査員達も質問を終えてからと言うのがマナーだ。わざわざ大声でハジメの発表を遮り、質問を行うのは非常識と言える。
だからこそ一同は彼の行動に顔を顰める。だが止める程の無礼でも無い。あくまでも暗黙のルールと言うだけで、不正では無い。男は続ける。
「確かに貴様の語る実験結果は正しいのかも知れない。どの様な手を使ってここにこじ付けたのかは知らんが、まあ見事だ。
ふとハジメは思い出す。そう言えば他の工房にあんな人が居たかもな、と。
ハジメは他工房とはあまり関係を持たない。それ故仕方が無い話ではあるが、彼はハジメと同期の王宮【錬成師】だ。【錬成師】貴族故、期待され王宮工房入りし、ものの見事にハジメに話題を持っていかれた男だ。
だからこそ今、彼の心中にあるのは身勝手な逆上だ。ハジメがこれ以上上に行くのは見過ごせないと、わざわざ声を張り上げる。
「だが、だがしかし! 貴様の研究、水や空気への“錬成”での干渉は所詮他の現代魔法の
「………」
そう、偉業とは従来では有り得なかった事象を為してこそ。ハジメの研究は確かな新規性がある。しかし言ってしまえばそれだけ。常識を覆す何かでは無いのだ。
ハジメからの反論は無い。無言を貫いている。それに気づいた【錬成師】貴族はハジメを引き摺り下ろそうと、ヒートアップする。
「第一何だ、貴様は!? 【
「黙れ、
だがその熱は直ぐに冷えた。彼の首筋を通り過ぎたナイフ。それが死を、肌から脳に伝えたが故に。
投げた犯人は審査員席、そこに座る褐色の女傑だ。
「そこの童。私が機嫌良く人の研究を聞いているのを邪魔するとは良い度胸だ。どうやらそれ程に『首』を飛ばされたいらしい。工房の名を言ってみろ」
王宮棟梁シャクナ=アルソンス。彼女は【錬成師】だが、同時に『冒険者』でもあるという異例の王宮棟梁だ。
その真実は「ただ自分の武器を振るってみたい」という阿呆極まり無い答えなのだが、実力は本物。何せランクは『緑』。非戦闘職でありながらその領域に辿り着くのは十分に変態である。有りとあらゆる武器を一定以上に使い熟すが故、ついた二つ名は【千之武具】。
そして彼女は【錬成師】。実力主義こそ彼女の心情。だからこそ有象無象如きが、見所のあるハジメの研究発表を妨害するなど許せよう筈が無い。
遂に立ち上がり、男の席へと迫ろうとするシャクナ。予想外の出来事に震え上がる貴族の男。周囲も如何様にすれば良いか慌てに慌てる。
「おい。そこでストップだ。シャクナ」
「おっっふ」
むんずっ、と掴まれるシャクナの両肩。彼女の肩を掴むのは、紛れも無いウォルペンの腕だ。キッチリとシャクナの肩を固定し、逃さぬ様にしている。
シャクナが捕まり数秒。彼女は寸分たりとも動かない。が、やがて頭だけはグリンっとウォルペンの方に向く。
「…これは『もう逃がさないぞ。オマエはオレの物だ』的な感じと解釈して良いかい? 彼ピッピ」
「誰が彼ピッピだ、誰が。殺生沙汰起こすなってだけだろ。そこのお前も言うなら最後まで聞いてからにしろ。途中で口を挟むのは普通にアウトだ。次やったら権限使って追い出すからな? やめろよ?」
「…はぃ」
「よしっ。じゃ、小僧。発表の続きとっとと始めろ」
「はい。棟梁」
腰砕けになり座り込むシャクナ。腰を抜かし座り込む男。二人が黙り込み、頷くウォルペンはすぐ様ハジメへと続きを促す。
普通ならば劇的な状況に唖然とするのだろうが、残念かなハジメはハプニングには慣れに慣れている。観客が唖然としていると言うのに、普通に話し始めた。
「はい。只今の意見、確かにその通りです。“錬成”が液体や気体を操作出来たとしても、既存の魔法の効果に勝る事はあまり無いかと思われます。そう言った面で、これまで私が行って来た研究はあくまでも“錬成”の可能性を提示する物にしか過ぎません」
男が言っていた事は正しい。それを恥ずかしげも無く、落ち着いたまま肯定するハジメ。
このままではハジメは終わり。そう思った観客席の面々はハジメの肯定に動揺をより一層高めてしまう。
「ですがその可能性を提示出来たならば、この
「………前置き?」
ざわりと、観客席が震撼する。動じなかったのはハジメの本題を知るウォルペン。一般用観客席に座るとある男。そして彼を信じ抜く少女だけ。他の面々はどの様な形であれ、確かな動揺を孕んでいた。
今迄のハジメの研究には十分な新規性があった。あくまでも利用法が無いだけであり、半年も現場を経験していない【錬成師】がここまでやると言うのも前代未聞だ。
だというのにハジメにとってはまだ本題が存在する。あまりにも信じ難い。それ故か、今まで無言を貫いていたゴッドワイドが、初めて反応を見せた。
「大袈裟ですが、これから話す内容はこれまでの魔法学の常識をひっくり返す物となっています。その為、まず『“錬成”が鉱物以外に作用する』という点を噛み砕いて説明する必要があったのです」
「ふむ? つまりまだ“錬成”が対象と出来る物質がある。そう言う事で良いのかね?」
「はい。むしろそれの為にこれまでの研究は行って来ましたから」
ゴッドワイドが端的に尋ねる。ハジメもそれを是とし、あくまでも今までの話が前座であると改めて告げる。
改めて観客席から騒めきが聞こえる。また何かをやらかすのかと見つめる者。流石に冗談だと嗤う者。平静を装いつつも食い入る様見る【錬成師】達。いずれも最早ハジメから目を逸らす事は無い。
そんな数多くの視線がある中、一際目立つモノがあった。
それは視界の端から、じとりと見下す視線。【教皇】イシュタルの物だ。隙あらば、仕留めようとする狩人の眼光。ゾッとするまでの威圧感がハジメに押し寄せる。ハジメ最大の敵の一人が、目を離す事なく見つめている。
これでも通じなければハジメは終わりだ。冤罪をその身に背負い、夢に手を伸ばす事を許されない様になってしまう。
緊張が無いと言えば嘘になる。表面上は冷静だが、その実心臓の音がやけに大きく聞こえる。踏み締める脚がまともに地面の感覚を教えてくれない。今に倒れてしまうのでは無いかと思う程だ。
だが、今のハジメは満ち満ちている。
それは己の冤罪を回避する未来の確信では無い。ましてや今後地獄に陥る等という馬鹿げた恐怖でも無い。
それは良い物を見つけたという、ただの学者としての達成感にだ。
だからこそ、視線は揺れない。確かな気品を保ちながら、ハジメは告げる。
「それでは続いて──“錬成”による
──その言葉は観客の楽観も、審査員の沈黙も、そして教皇の余裕をも。等しく薙ぎ払った。
それでは『学会編』特別コーナー!
単純に本編の説明をまとめるYO!のコーナーです!
今回の内容をまとめますと…
・“錬成”≠“土属性魔法”
・“錬成”の対象…鉱物、固体、液体、気体
・非対象…生き物、植物、魔石…他にも幾つかあるけど取り敢えずこれだけピックアップ。何でこれらは無理なのって疑問は次回に。
・液体、気体の“錬成”に関しては普通に属性魔法使う方が効率的。
・なら何でそれらを説明した? 理由は単純。「魔力を“錬成”で操作できるぜ」っていきなり言ってどうやって納得得られるよ? 馬鹿なの?
大体こんな感じです。
次回からは魔力と“錬成”の関係性の説明を行います。
あとシャクナさんのキャラが盛られていく。
何で?(オリキャラなのに…)
ちなみに何故作者がこんな事を思い付いたのかは次回から説明します。
その方が多分楽。
ちなみに来週は多分内容盛りだくさんだから、覚悟した方が良いよ!
そんで最悪テストとかもあるから来週中に書けない可能性すらあるよ!
アハハ!(クソッタレがぁあ!!!)
まあ、次回で『学会編』はラスト!
頑張るよ!
ーー追記
古代の呪い様
評価感謝感激! 梨汁ブシャッとくね!
加えて誤字報告をくれる親切丁寧な読者様!
及び感想をドカドカ送ってくれる親愛なる諸君!
いつもありがとーーー!!!
これらは全て作者のエナジーなのです!
レポートを思ったより早く仕上げられて、こっち書けたのも皆様のお陰やで。
更に! この前ちょっと確認したんですが、ありふれ二次創作の中で総評価一ページ目に辿り着いていました!
びっくらぽんだぜ…(汗)
ちなみに他の評価項目も大体ありふれ分野四ページ以内には居ました。
…マジガチで?
ここまで来れたのも皆様のお陰です。
これからもどうぞ宜しくお願いします!
この作品、アナタは何メイン目的で読んでる?
-
ハジカオ!
-
オリジナル展開!
-
成り上がり要素!
-
考察要素!
-
曇らせ!
-
感想返し!
-
ダイレクトマーケティング!