感謝致しまぁーす!
それにしても『機動戦士ガンダムForce』とかみたいに、ハジカオ作品かなり増えましたけど(しれっといつもの無許可ダイレクトマーケティング)(何故さ?)(人だからさ)
同時に一つだけ思うんです。
ーー最近ハジ虐多くない?
※ハジ虐とはハジメ君を精神的、物理的なんであれ作者が虐める事です。今私が作った造語です。
割とガチめにありふれ界にハジ虐ブームが来つつある。
いや…原作がハジ虐の最大手だから言うまでも無いんだけど…。
全く…ハジメ君が可哀想ですよ。
もう少し皆さんハジメくんにヤサシクシマショウネー。
厨二野郎との約束ですよ?
──苦しい
まるで水の中、溺れているかの様な息苦しさだ。
水面から差す光に手を伸ばそうとするも、届かない。水流が、何度も何度もそれを阻む。そんな思いだ。
どうすれば僕は認められる?
どうすれば僕はこの苦しさから解放される?
どうすれば僕は、僕は…
どうすれば…僕は、君に届く?
分からなくて、暗くて…
此処は…どうしようも無く、暗いんだ。
「──ぁ」
そして今日も目を覚ます。
いつもの夢だ。水中で溺れて沈んで行く、そんな悪夢。
幾度見てもなお、目覚めは最悪だ。発汗が止まらないし、服を湿って気持ちが悪い。しかも寝ている間に無呼吸にでもなっていたのか、息苦しさが今も残っている。
【聖教教会】があの判決を残してからと言うものの、こんな夢ばかりを見る。
──勝てるのか?
不安が、絶え間なく押し寄せて来る。
負ければ死、後は無い。
それに
だからこそハジメは寝台から降りて、“錬成”の魔法陣が刻まれた手袋とナイフを手に外に出る。
「…行かなきゃ」
そしてそのまま、ハジメは【
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「まったく…教会め。やってくれる」
【ハイリヒ王国】騎士団長、メルド=ロギンス、彼は現在自身に割り当てられた部屋にて、頭を抱えていた。
と言うのも教会が発表した『神前決闘』の事だ。開催まで残り一週間と少しとなったが、正直に言って事態は全く芳しく無い。むしろ最悪と言えた。
ハジメの発表は見事の一言に尽きた。正しく世界を一変させ得る研究であり、功績とされるには十二分の内容だった。
しかしそれをひっくり返し得るほどに、神の意志という物は重い。当然それだけの理由で死刑に持ち込む事は不可能。しかし教会側の目的は『神前決闘』だったのだろう。そこに持ち込まれた時点で、教会側にとっては値千金だった。
メルドは改めて『神前決闘』のルールが書かれた紙を見返す。
==================================
【『神前決闘』の規則事項】
一つ、試合は三対三の団体戦で行われる。戦場には教会が保有する広大な跡地を用いる。
一つ、被疑者陣営は本人を含めた三人で構成される。この決定権は被疑者本人に存在する。また教会陣営の構成は【教皇】が決定権を持ち、三人のチームを構成する。
一つ、審判は教会の人員と王城の人員を用いる。審判は教会から与えられるアーティファクトを用いて、注意深く選手の行為を確認しなければならない。
一つ、武器や服装、魔法陣の持ち込みは自由とする。ただし予め申告が必要となる。申告外の武器を持ち込んだ場合、その選手に「注意判定」(敵陣営に一点)を与える。また選手は陣営ごとに統一された腕章を付けねばならない。これに違反した場合も、その選手に「注意判定」を与える。なお武器・装備・魔法陣の情報に関しては敵陣営へ予め公開される。
一つ、『神前決闘』は神聖な戦いである。故に妨害はあってはならない。これを防ぐ為、戦場は外部からの物理的な攻撃を防ぐ結界と結界内の魔力感知装置の二種のアーティファクトを設置している。魔力感知装置は選手の血を取り、選手登録を行う。そして魔力感知装置は登録外の魔力を感知した際に
一つ、『神前決闘』では陣営ごとに【将】一名を決めねばならない。ただし被疑者陣営は被疑者本人を【将】とする義務が存在する。なお教会陣営はこの選択は自由とする。
一つ、『神前決闘』では『撃破』と言う判定が存在する。『撃破』は「地面に十秒間腹もしくは背をつく」、「結界外への逃走」、「降参行為」の三種の内一つを相手選手が行った場合に判定される。『撃破』では一つごとに味方陣営へ二点が与えられる。
一つ、『神前決闘』の勝利条件は「【将】の『撃破』」、「反則負け」、「判定勝ち」の三種に分類される。
・【将】の『撃破』…これが達成された時点で『神前決闘』は終了する。そして【将】が残った側の陣営が勝利となる。
・反則負け…この判定が行われた時点で『神前決闘』は終了する。そして判定を受けた陣営の敗北となる。
・判定勝ち…各陣営に与えられた点数によって判定を行い、点数が高い陣営が勝利となる。
この三種のどれにも当てはまらない場合、【教皇】の判定により勝敗は決定される。
一つ、被疑者は必ず一度戦闘行為を行い、『撃破』を為さねばならない。これに違反した場合、被疑者陣営に「反則負け」の判定を与える。
一つ、被疑者以外への殺害行為は禁止されている。これに違反した場合、「反則負け」の判定を与える。ただし被疑者の死亡に関しては『撃破』として判定される。
一つ、勝利判定後、教皇が試合結果に難有りと判断した場合、三日間期間を置き、再度『神前決闘』を行う。この際のチームの再編成は許可される。
一つ、『神前決闘』の勝者は敗者、および教会に強制命令権を持つ。これは神の名の下、必ず執行されなければならない。
一つ、『神前決闘』は神エヒトの名の下に平等である。
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「…最悪だな」
かなり不平等なルールにメルドは表情を顰めた。ここ数十年執行されて来なかったが、改めて確認するとまあ酷い物だ。
ルールは小難しい供述があるものの、かなり単純だ。…そしてハジメ達が明らかに不利であるという理由もすぐにわかる。
一つとして審判が教会や王国陣営の人間であり、どちらにせよ教会陣営であるという事。そうなれば当然、教会陣営に甘く、被疑者陣営に厳しくなるだろう。
また被疑者が必ず一度、戦闘を行い勝たねばならないと言うのも問題だ。殆どの被疑者は地球での魔女狩りの様に、殆どが戦闘能力を持たない人間だ。ハジメはある程度は戦えるが、相手が相手。かなり難しい戦いになるだろう。しかもハジメが倒された時点で、陣営の敗北が決定する。
その上唯一、ハジメの命は保証されていない。他の人間は「反則負け」となるにも関わらず、ハジメだけは『撃破』とされるのだ。つまりハジメに対しては躊躇いなく攻撃が可能となる。そうなれば上級魔法なども相手には手段として可能となる。
極め付けはハジメ達が勝利したとしても、【教皇】が否を唱えれば再び試合を行わねばならなくなる事が最悪だ。流石にぐぅの音も出ない程の結果を出せば【教皇】も口出し出来ないだろうが…果たして出来る物か。
もし再度試合を行う事になれば、ハジメ側に勝ち目は無い。何せ相手は教会。人脈ならば幾らでもある。個人程度の人脈とはまるで範囲も質も異なるのだ。
ただこれだけ教会にとって有利なルール。見れば見るほど頭が痛くなる様な内容だが、これには一応理由がある。
──教会の決定は神の決定。それに異を唱えるならば、それ相応の証を示せ
そうして作られたのが『神前決闘』だ。その様なルーツである為『神前決闘』は被疑者に対し、不利になる様に作られている。これは『神前決闘』が一般的な決闘としてでは無く、被疑者への『試練』だとされているのだ。
だからこその理不尽。だからこその絶対有利。それこそが教会の言い分だ。
地球視点で見れば理不尽以外の何者でも無いが、此処はトータス。そして神エヒトの影響はそれ程に大きい。ハジメが負けたならば、その結果にトータスの住民は渋々でも全員納得してしまうだろう。
加えて協会側は万全だ。選手も決まり、各々がその日に備えている。士気も上々。今こそ神敵を打ち滅ぼすのだと、血気盛んだ。正直に言って、【錬成師】相手には過剰とも言うべき戦力だ。
負ければハジメに明日は無い。
全く厄介な事になったものだとメルドは思う。そう思うのも仕方がないほど、ハジメの現状は詰んでいた。
だがそれ以上に最悪なのは、現在のハジメの状態だ。
今のハジメは冷静を失っている。完全に精神が追い詰められてしまっている。
最初はいつもの様に努力癖なのだと思っていた。実際ハジメはそうして研鑽を重ねる事で、幾度成長し続けて来た。だから初期の方は何も言わず、見守っていた。
しかし二日三日も経てば分かった。それは最早訓練などでは無く、自暴自棄なのだと。
食事は最低限で済ませ、怪我をしようとお構い無し。休息も頑なに取ろうとせず、終いには睡眠時間をほぼほぼ零にしてしまう始末だ。
『勝たなきゃ…絶対に、勝たないと…』
そう言って闇雲にナイフを振り回す姿はとてもだが、見ていられなかった。
当然周囲は止めようとした。優花や幸利、メルド、リリアーナ、ヘリーナ、愛子、チェイス、雫…その他にも多くの者が、ハジメを止めようとして──その前に消えてしまった。
住んでいた者が居なくなり、すっかり生活感が無くなってしまったハジメの部屋。その中央に置かれていた手紙を、メルドは改めて思い返す。
その内容は普段の礼儀正しいハジメにしては、あまりに短い物だった。
『必ず強くなって帰ってきます。待っていてください』
恐らくメルドは、ハジメに期待し過ぎていたのだろう。
ハジメは今迄、幾つもの困難を切り抜けて来た。並外れた精神力と人々を惹きつけて止まない在り方で、今後も進み続けるのだと。
だが違った。此処まで来て、漸く気付かされた。
ハジメはまだ高校生だ。どれほど精神力が並外れて居ようと、凄まじい覚悟が有ろうとも。ただの、一人の少年だ。
ハジメはこの半年間努力し続けた。嵐の砂漠を歩むかの様な、そんな先の見えない時間だった筈だ。努力の先に本当に奇跡があるのかも分からない道を、それでも尚ハジメは歩み続けた。
そうして勝ち取った栄光を、教会は文字通り一言で掻き消した。
やるせなかった筈だ。地道に努力を続けた末の結晶、それでさえも不意にされたのだから。
そしてこの様な事がまだ続く可能性もある。『神前決闘』に再戦の前提がある以上、また努力が水の泡になり得るのだ。ハジメが自棄になってしまうのも無理は無かった。
同時に『神前決闘』はハジメのみが罰の対象では無い。協力した二人、彼等にも負ければ罰が下される事となる。
『一つ、『神前決闘』の勝者は敗者、および教会に強制命令権を持つ。これは神の名の下、必ず執行されなければならない。』
恐らくはこれが、ハジメにとって一番の
ハジメはかなり自己中心的な人間だ。そして自己中心的に大切な人を命懸けで守る、そう言った人間だ。【オルクス大迷宮】や【ウル】での一幕こそが、その代表的な例だ。そう言った際のハジメはとことん自身に無頓着となる。
だが今回は、ハジメ自身が仲間の二人を危険に晒さねばならない。しかも負けたならば、その時点で仲間二人の人権は失われる。強制命令権とは、トータスにおいてそれ程の効力を発揮するのだ。
そしてそうした失意や責任感、そして産まれた焦燥がハジメの背中を押してしまった。
ハジメは真面目過ぎたのだ。積もり積もった不安や苛立ちを、他者にぶつける事が出来なかった。友人や知人のみならず、彼にとって諸悪の権化である教会にさえも殆ど。それ等を自身を進む為の着火剤として用いてしまった。
結果、ハジメが
「…小僧が来てからと言うものの、俺自身がどんどん情けなく思えてくるな」
メルドは頬杖に体重を任せて項垂れる。そして誰も居ない部屋で一人つぶやく。
すると廊下からドタドタと、凄まじい足音が聞こえて来た。真剣に悩んでいたメルドだが、人が来たとなればその様な無様を見せる訳には行かない。日頃はそんな風に気を配る真似はしないのだが、ハジメへの罪悪感による物か。この時ばかりは豪放磊落な自分を見失っていた。
頬杖を解いて、開くであろう扉を見詰める。そして間も無くその扉は開かれ──
「メルド団長!!」
「………雫?」
──現れたのが想定外の人間で、思わず目を丸くした。
雫はいつも冷静だ。たとえそれが
「何があった? お前がそれほど慌てるとは余程なのだろう?」
「はい! じ、実は──」
そして雫が告げた爆弾発言に、メルドは目を丸くし…ますます頭を抱える結果となる。面目無く雫が見つめる前で、「何故、何故こんな事に!?」とつい叫んでしまう程だ。
しかしメルドの口元、それは確かに
窓の外、空を覆う曇天から一筋の光が差し込んでいた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ぁあああああああああ!!!!」
『グギィッ!?』
魔物の喉に刺突したナイフを捻る。ブチブチと血管を切る音が、耳のみならずナイフからも伝わって来た。
苦し紛れか、魔物は爪を大振りで振るう。それを避ける余裕はない。魔物の鋭い切先が腕に赤い線を刻みつけた。
だがそれが限界だったのだろう。生命活動を維持できなくなった魔物は、すぐに崩れ落ちる。血の海を作り、素材となる身体を大迷宮の床に投げ捨てた。
「…」
何時間、いや何日この様な事を続けたのか、もう憶えていない。そもそも最後の休憩も覚えていない。懐に詰められた魔力回復のポーションを一口飲み、虚にハジメは前へ前へと進んでいた。
血塗れの外見に反し、自然魔力の幻想的な輝きが彼を包む。それはハジメの手の甲、“錬成”の魔法陣の円環に従って流れを作っている。
──“魔錬・武装”
【錬成師】という天職の適性により、体内魔力の操作を今まで行っていたハジメ。ただそれでは循環を促す事は出来ても、加速はあまり出来なかった。
しかし“魔錬・武装”は、その循環を加速させて身体能力の更なる強化を行う。それに加えて体外から自然魔力を取り入れ、擬似的にステータスを高めるのだ。これによる恩恵は破格で、苦戦する筈の迷宮の魔物も瞬殺して見せるほどだ。
当然デメリットはある。本来ならば時間を掛けて体内魔力へと変換する自然魔力、それを体内に取り込んでいるのだ。身体に掛かる負荷は尋常では無い。
加えて“魔錬・武装”は魔力の流れを強引に速め、操作している。その循環を誤れば、身体に軽く無い傷を負う。実際、ハジメの左腕や右目周辺、脇腹は火傷したかの様に爛れている。操作を誤った事による魔力暴走が原因だ。
他にも魔力暴走により、鈍痛が全身を蝕んでいる。視界は色弱によりモノクロで、獲物を持たない左腕は痺れた様に感覚が無い。呼吸をすると空気が熱く、煮湯を飲まされた気分だった。平衡感覚など最早無く、揺れる世界を慎重に歩く。
たかが数回の失敗、それだけでこの有様だ。単なる“身体強化”では有り得ない自傷が幾重にも、様々な形で刻まれて行く。
これだけの傷を負いながら、ハジメは止まらない。むしろ──
「シッ! フッ! ラアァッ!!」
──ハジメは加速していた。
数々の傷、狭まれていく感覚、凶暴さを増す魔物の群れ。時間が経つ程にあの世へと近付いて行く。
だがハジメはその度に打開策を生み出そうとする。動きが鈍いならば、より最低限の動きへと。平衡感覚が意味を持たないならば、本能を頼りにして。魔物が増えたならば、より強力な一撃を。
ハジメは己を洗練化し続けた。何かが欠ける度、ハジメは進化した。
──止まるな、進め
ひび割れた銀閃が加速する。
──逃げるな
蒼の輝きが激しさを増す。
──前へ!
掠れた咆哮が上がった。
命の灯火が揺らぎ、細くなりながらもハジメは止まらない。
強くならねばならないという意志が、踵を返す事をハジメに許さなかった。前進のみを肯定させた。
だから何度も繰り返した様に、ハジメは次の階層に進む階段を降りて──
「………此処は」
──気が付けばハジメは其処にいた。
その場所を、ハジメは知っている。
忘れない、忘れる筈がない。
始まりの場所を。此処を。
石橋にて輝く円環を。
「──ッ!」
円環は二つ。ハジメの手前、そして奥に一つずつ。
手前の魔法陣からは溢れ出さんばかりの骸骨兵、トラウムソルジャーが出現する。瀕死の挑戦者に対する嘲笑だろうか。カタカタとその頭蓋を揺らしている。
そして…奥。魔法陣の輝きがその巨体を照らす。大木の様に頑丈な四肢。鎧の様に黒光りする堅牢な体皮。そして灼熱を孕む雄大な角。
あらゆる物を射殺す眼光を、忘れはしない。
「………ベヒモスッ」
『…グルォ』
堂々と魔法陣から姿を現したベヒモスは、挑戦者たるハジメを睥睨する。ハジメは視線を合わせる様、睨み返す。
正直に言ってこの戦いは無謀だ。顔に死相が映る程の傷、決定力の圧倒的不足、そして
勝てるはずが無い。それが分からないハジメでは無い。状況は絶望的。死が前提となるこの場所で、ハジメは冷静になる筈だった。
──勝て
しかし…ハジメは止まれなかった。
果たしてそれは使命感故か矜持故か。はたまた単純な思考放棄か。いずれであるかは誰にも分からない。
ただ事実は一つ。ハジメは死闘を選んだ。
呪われたかの様に歩みを止めないハジメに、トラウムソルジャー達が蠢く。内一体がガチャガチャと腕を掲げ、獲物を振り下ろした。
ハジメは最早視界がかなり不自由な状態となっている。モノクロの景色は人と背景すらも曖昧にし、己を斬ろうとする剣でさえもまともに視認出来ない。
「──ッ!」
にも関わらず、ハジメは紙一重で避けて見せた。
“魔錬・
半径1メートル、それが現在ハジメが遠近感覚まで把握出来る領域。その外まで行けば、単純に「遠い」という事しか判断出来なくなる。
だが十分。ハジメはそう断じる。その証明に、一体目のトラウムソルジャーの魔石をナイフで砕き、仕留めてみせた。
半年前からの成長を僅かに感じつつも、己に放たれた横薙ぎを知覚。それをしゃがむ事で回避。
そして再びナイフを振おうとして──
「……ぇ?」
──ハジメの脚は、そこで止まった。
ガクリッと脳の命令に反し、膝をつく己の体。
限界が、訪れていた。
無理は無い。何せ寝ず食わずの上に精神的な安らぎも無く、己の体を酷使し続けたのだ。「戦わねばならない」という使命感はハジメに一種の興奮作用を及ぼし、精神に疲労を感じさせる事は無かった。
だが当然、体はそうも行かない。戦闘職であるならばまだしも、特殊な固有技能を持たない単なる非戦闘職では、この帰結は当然だった。
隙ありとばかりに押し寄せるトラウムソルジャー。剣が、斧が、戦鎚が迫る。
「ッ──!!」
折り曲げた右腕で自身を弾き、それ等の攻撃を何とか避ける。後方に下がり、ナイフを構えようとする、が…
(右腕が!?)
その代償はあまりにも重く、唯一まともに動いていた腕がだらりと垂れ下がった。その手からヒビの入ったナイフがこぼれた。“錬成”による形状維持により、ここまで壊れずに済んだナイフは…今になって非情にも砕けた。
ハジメの基本的な攻撃手段は物理だ。それが一番コストパフォーマンスが良く、かつ“錬成”や“魔錬”との連結がスピーディーに行えるからだ。
だが現状、四肢が動かず、武器さえも砕けた状態では物理攻撃などまず不可能。
トラウムソルジャー達は今のハジメが正に格好の餌に見えたのだろう。余裕を持たせて歩きながら、ハジメの元へと迫ってくる。
そして遂に獲物が届く距離にまで近づいた時、トラウムソルジャーの内一体はそれを聞いた。
「──来たれ、風よ」
瞬間ハジメの、トラウムソルジャー達の足元が蒼く光り輝いた。
そしてトラウムソルジャー達の思考を置き去りにして、ハジメは魔法の名を告げる。
「──“風爆”」
そして爆発的な風が、トラウムソルジャー達とハジメの間で吹き荒れた。トラウムソルジャーはそれなりに強い個体とは言え、骨のみで構成された魔物だ。膂力は確かとは言え、体の軽さはステータスで補完される事は無い。
結果、ハジメよりも明らかに大きくトラウムソルジャー。中には橋から吹き飛び、奈落の底へと落ちる個体も少なくは無かった。
ハジメ自身も風により吹き飛び、地面に引き摺られる事となったが一時危機は脱した。そして先ほどと同様、地面に魔法陣を刻み込んで行く。
魔力暴走や疲労により、ハジメの手は動かない。しかし地面に接触している。故に“錬成”が橋に魔法陣を創り出していく。魔力量の節約の為、詠唱を告げて魔法の発動を準備する。
トラウムソルジャーは愚鈍ではあるが、馬鹿では無い。“風爆”を再度行ったとしても、剣を橋に突き刺すなりして距離を離そうとするのを防いでくるだろう。
ならばと、ハジメの頭にある現代魔法の中から最適な物を選び出す。
「──速き水流よ、数多を切り裂け! “破断”!」
かつての【ウル】での戦い。そこで魔人族が使っていた魔法、それを今ここに再現する。
そして地面から放たれたウォーターカッターは、トラウムソルジャーの第一陣の魔石を砕いてみせた。
“破断”は初級魔法でありながら、コストパフォーマンスと殺傷性、更には捕捉人数の多さも尋常では無く強い。理由としては魔法発動地点から水を圧力で押し出すだけで、それ以外の干渉がほぼほぼ無い為だ。その為、他の魔法と比べて効果的な距離が短くなる。
逆に言えば、中距離戦ではかなり重宝出来る技となる訳だ。魔法陣を足元に刻んだ事で、魔法の連発は魔力の限り可能。ハジメは“魔錬”により練った自然魔力を魔法陣に注ぎ、発動を繰り返す。
だが…
(数が、一向に減らない!)
トラウムソルジャーの脅威が、時間が経つに連れて明白となった。今も黒く蠢く魔法陣。そこからは新たな骸骨兵が這い出ている。
そしてつい先程も言ったが、トラウムソルジャーは馬鹿では無い。ハジメが繰り返す“破断”も、第一陣までしか殺せない事は把握したらしい。地球で言う所のファランクスの様に歩を揃え、ハジメに迫り始める。
トラウムソルジャーの際立つ特徴は、群れが勝利の為に犠牲を許容すると言う点だ。迷宮の『挑戦者を排除する』という使命に従い、多を捨てて一を潰す事が常套手段として用いられる。生存本能を完全に無視した魔物、それがトラウムソルジャーだ。
このままの状況を続けて行けば負けるのはハジメだ。魔力はかなり少ない。持久戦はまず不可能。
ジリジリと、死が背中に迫っている。それが魂で感じられる。
此処を切り抜ける手段は一つ、中級魔法による範囲攻撃だ。トラウムソルジャーは一体一体の耐久はあまり無い。
だが問題は二つ。一つは魔法陣の大規模な書き換えが必要である事。もう一つは初級魔法に比べ、多量の自然魔力が必要となる点だ。どちらもこの極限状態ではまず難しいだろう。
ベヒモスは未だに動かない。トラウムソルジャーを切り抜けれない者には、自身に挑む資格など無いと言わんばかりに不動を貫いている。
それは今は好都合。兎に角目の前のトラウムソルジャーの全滅を第一目標とする。選択する魔法は火属性中級魔法“螺炎”。渦巻く高火力の炎を放つ魔法だ。
そしてハジメはすぐに魔法陣の書き換えを開始する。
「暗き炎渦巻いて」
ハジメの魔力に合わせ、“破断”の魔法陣が形をみるみると変化させて行く。
「敵の尽く焼き払わん」
トラウムソルジャーに最早油断は無い。ハジメに隙があると見るやトドメを刺す為に、走り始める。
そしてその内の一体が、その剣を破竹の勢いで振り下ろした。
「──ッ!」
身じろぎにより、頭への一撃を躱すハジメ。代わりに右肩へとその一撃は落ちた。
深々とした傷が作られる。剣は右胸にまで達し、正しく致命の一撃。肺に血が混じったのか、吐き出す息に血が混じる。
「──灰となりてッ!! 大地へ帰れェッ!」
だがハジメはその口を止めない。“錬成”によりトラウムソルジャーの剣を根元でおり、連撃を許さない。
同時に他のトラウムソルジャーも追い付き始める。数秒もすれば物言わぬ肉塊になるであろう、圧倒的な物量。それを前にハジメは──
「“螺炎”ッ!!」
──魔法陣を、完成させた。
そして地面から放たれるは炎の柱。今にも迫ろうとしていたトラウムソルジャー達を呑み、天井に至った。
ガガガッと天井を螺旋と爆炎が削り取って行く。それにより天井にヒビが入り、やがて崩壊する。
ガラガラと降り掛かる天井の残骸。
炎と瓦礫が視界を埋め尽くす中、ハジメは逃げる事も出来ず崩壊に巻き込まれようとした。
だがその螺旋の焔を、一体の骸骨兵が切り抜ける。確実にトドメを刺さんとひび割れた体を伸ばし、ハジメに刃を放った。ハジメにそれを避けるだけの余力は無い。中級魔法を放った事で、ハジメの体内魔力は零も同然だった。
(くそっ…)
心の中でボソリと悪態をついて、そして──
「“
──眩い光の弾丸が、トラウムソルジャーを消滅させた。
「────ッ」
それはあの時と同じ光。
奈落に落ち掛けた己を救った、純白の光。
足掻いて、もがき続けて…それでもまだ見え無い彼女。
「ごめんね。遅くなっちゃったね、南雲くん」
彼女の周囲に漂う光の輪、それがハジメの真上で弾けると彼の傷の数々を癒して見せた。
瞬く間に魔力以外は全開に至ったハジメ。息苦しかった喉も、最早問題無い。
だからこそ、ハジメは彼女の名を口に出した。
「…白崎さん?」
「──うん! 久しぶりだね、南雲くん!」
──叩き落とされた絶望の淵で、高嶺の花は再び咲き誇る
最近ハジ虐ブームが来つつあるので、乗っかりました。(凄まじい掌返し)
ふいー(満たされた)
『神前決闘』について簡易的な説明
・三対三の熱いチーム戦だぜ!
・審判は教会か王国の人間だよ! 神の名に誓って平等だね!
・選手を選ぶのは当事者が選ぼうね! でも本人も出なきゃダメだよ!
・チームのリーダーを倒すか、得点を稼ぐか、敵チームがヤベー反則するかで勝敗が決まるよ! 同得点の場合、教会がどっちが勝者か判定するよ!
・チームリーダーは強制的に被疑者本人だよ! あと被疑者本人は絶対一回敵チームの誰かと戦って、勝たないと反則負けになるよ! 罪人だからしゃあないね!
・教皇が試合結果に満足しなかったら試合はやり直しだよ! その際のチーム再編成はありだよ!
・勝ったチームは敵チームに絶対に言う事聞かせられるよ! 教会に対してもお願いしていいよ!
・このルールは神の名において平等だよ!
以上!
ちなみに原作で“破断”がかなり遠距離で放たれ、清水と愛子先生を致命に追い込んでいますが、アレは高所から放たれたので勢いが弱まらなかった事が理由となります。
分散は魔法の制御により防がれているので、問題無いです。
あと単純にレイスが凄かった。
…という事にしときましょう。(適当)
次回、
ーー追記
SWINK様
あぴおー様
猫少年様
ファンキー様
家系ラーメン様
蛍尾様
睦月透火様
北原楓希様
評価・再評価ガチで感謝致します!
うひゃぁ…やっべっぞ…
及び日本語IQ1の作者に代わり、文章を作り直してくれる誤字報告の皆様!
加えて喋りたがり語りたがりの作者の為(?)感想くれる皆様…ガチでサンキュー申し上げます!
コレ等は全て私の元○玉!
いずれ身勝○の極意を使える様に私はなりたい。
そんでぇ!
いつもは此処で終わりなんですけど、今回は加えてもう一つ!
推薦が、あったんです(汗)
「なんとなく推薦の所見とくかー。ま、無いだろ」ぐらいでクリックしたらそこに…。
何かもう色々実を結んできて感謝しかねぇ…。
改めて、卯月 緋色様に全力全霊の感謝を!
…ぶっちゃけ凄く、凄い。
追記のクセにエグいぐらい長くなりましたが…本当に感謝します!
『神前決闘』編、全力で頑張ります!
この作品、アナタは何メイン目的で読んでる?
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ハジカオ!
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オリジナル展開!
-
成り上がり要素!
-
考察要素!
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曇らせ!
-
感想返し!
-
ダイレクトマーケティング!