恋する錬成師は世界最強   作:見た目は子供、素顔は厨二

33 / 40
アンケート協力感謝やで!
…ちょーっと、上位三つが強いなぁ。
つーか圧倒的ハジカオ過ぎる。
何や二位と三位合わせても勝てへん順位って。
ま、全体がハジカオの二次創作だから仕方がないネ!
計222票のアンケート感謝!
ゾロ目で非常に縁起がいい感じやね!

ちなみにハジカオがランキング1位やったから、そのついでにまたやるハジカオ系作品無許可ダイマ。
今回はYunice さんの『幸せにありふれた世界を築くために』です。
解放者系オリ主というまあ見ない種類ですね。
加えてタグのカオ×ハジが新しい。
これから増えても良いのではないか、そう思わされるタグですね。
ちなみにYuniceさんは今作が初ですので、その辺りも考慮頂ければと思います。
…私はどのポジから言ってるんや?(正気)

さて、皆さんご存知でしょうが…祝ありふれ日常復活!!!!
学園の「原作および零メンバー全員仲良いワールド」も好きですが、やはり日常の面白さはスゲェわ。
ただし香織をただのヤンデレにしたのは一生許さんからな、森みさき神…。

あ、あと私九月七日誕生日だったんで、誰か祝って(適当)

そんじゃ遂に『神前決闘』開始!
是非ともどうぞ!


27、開戦の銅鑼は鳴り響く

「予め言っとく。『神前決闘』に出るのは、俺と優花がベストだ」

 

 プルプルと震えるハジメを眼下に、幸利はそう言い放った。

 

【オルクス大迷宮】での大激戦から一日後のハジメの自室。そこで寝起き早々知り合い全員からブチギレられ、黄金比土下座を四時間決行する結果となった…という経緯が存在するが、今は別の話。

 

 もう開催まで間も無い『神前決闘』について、ハジメ派一同は話し合いを始めているのだ。

 

 メンバーはハジメ、優花、幸利、メルド、雫、龍太郎、リリアーナ、ヘリーナ、愛子、愛子ちゃん先生護衛隊、お馴染み神殿騎士四人、【ウォルペン工房】幹部…とかなり豪華な顔ぶれである。改めてハジメの人脈の可笑しさが分かる絵面であった。

 

 だが開始数秒にして、幸利は大胆にもそう宣言したのだ。

 

「失礼かもしれないけれど清水君。少なくとも戦闘力に関しては私達の方が上だと思うのだけれど…」

「清水…俺は鈴を止めなきゃ──」

「訳はちゃんと話す。一旦話を聞いてくれ」

 

 これに待ったを掛けるのは雫と龍太郎だ。二人は勇者パーティーとして最前線を立っている。優花や幸利が修羅場を潜って来ているのは確かだが、実戦の数はまるで違う。

 

 だが幸利は二人の言葉を遮り、加えて説明を行う。

 

「確かに八重樫さんや坂上を編成する事によるメリットは大きい。単純な戦闘力強化・経験した場数の多さに加えて、親友という立場上天之河に対しての脅しの材料にもなる。普通の戦いなら俺もそっちを採用した」

「雫はそんなつもりで言っていないと思いますわ、ユッキー様」

 

 鬼畜である。

 

 漏れなくリリアーナがツッコミを入れた。引きはしない。そう言う手口は王族たる者仕方が無いと思っているから。愛子ちゃん先生護衛隊は若干二人に引いた。

 

「つーかそれ以外にも色々候補は考えた。例えば白崎さんとか。ま、白崎さんはこの前の件もあって、現在教会側が厳重監視中だ。後から言う理由含めてまず無理って考えて良いだろ」

 

 香織は【オルクス大迷宮】での戦いの後、即時教会により連行された。教会側の貴重な人員である【聖女】を失う訳には行かない。そう言った面もあるのだろう。『神前決闘』でもゲストとして扱われる事となっており、まず参加は不可能だ。

 

 もっとも幸利からすれば、そうでなくとも()()()()()()()()()()が。

 

 話を戻し、幸利は人差し指を立てた。

 

「まず理由の一つとして…勇者パーティー組は手口がバレてる。選手自身に、或いは教会に。相手に手札をフルオープンした状態でポーカーする様なもんだ。敵側も同じだが、俺と優花が出るならそのアドバンテージをこっちだけの物に出来る。それなら後者の方が美味しい」

 

 情報は武器だ。そして情報を知らないという事は余分に敵を警戒する必要性が発生する。勇者パーティーはそれぞれのメンバーが互いに手を晒している。それ故に戦いの駆け引きが純粋な戦闘技術でしか行えなくなる。

 

 しかしそれは情報がイーブンの場合での話。此方だけに情報が入っているならば、まるで違う。多少誤差が出るかもしれないが、おおよそ敵のスタイルは理解できる。

 

 だが敵からすれば戦闘中に手探りで情報を集めて戦う必要性が発生する。つまり敵にだけ余計な負担が掛かるわけだ。これは十分にアドバンテージたり得るだろう。

 

 そして幸利は続いて中指を立てた。

 

「次に全員接近戦で編成を固めるってのが怖い。言ってしまえば戦略性に欠ける。ハジメは魔法を使えるが多用出来ない以上、無い物として扱った方が良い。そうなって来るとオールラウンダーの天之河や【結界師】の谷口がいる敵側の方が明らかに()が多い。これは何としても避けたい」

 

 ゲームでは無いが手段の多さは武器だ。遠中近全ての手段があるだけで敵の留意すべき範囲は格段に増す。特に魔法職は一発一発に準備が必要だが、放たれれば遠距離で威力のある一撃を放てる。敵からすれば視界に居らずとも警戒するしか無い。

 

 だからこそバトルスタイルを近接戦で統一してしまうのは避けたい。また近接のバトルスタイルはモンスター戦ならば兎も角、対人戦での連携は難しい。雫・龍太郎とハジメが息を合わせて、というのは無理があるだろう。

 

「そんで…これが一番重要な理由だ。単純に言うなら名前が売れすぎてるって点だ」

「…有名って事?」

「そうだ。今回の『神前決闘』のルールには教皇が試合を何度でも巻き戻せるって物がある。正直に言ってクソルールだ」

「確かにクソね。認めなきゃ負けないんでしょ? 勝ち目無いじゃない」

 

 不条理なルールが多い『神前決闘』、その中でも特に一番の難題。このルールが『神前決闘』で適用された回数は歴史を見てもまず少ない。

 

 だが適用されたならばその先は地獄。ただ被疑者が落ちるまで延々と試練が行われる、それだけだ。

 

 だからこそ幸利はそのルールを重要視しているのだ。

 

「そうだな、()()()()()()()()()。一見すりゃ完全無欠のヤバルールだ。歴史上、教会の勝ちが十割なのも頷ける…が、()()()()

「…何処によ?」

「安心してくれ、優花。それに関しては幸利と共に、我々の方で対策を進めている」

「「「「「???」」」」」

 

 訳が分からない優花は幸利の言葉に首を傾げた。しかしメルドもそれに賛同した事で訳が分からないとその場のほぼ全員が優花同様、首を傾げた。

 

「ただそれも小僧が勝つ事がまず前提条件だ」

「それに加えて教皇から出来る限り『言い訳』を奪っておく必要がある」

「二人の意見を聞くに…雫殿と龍太郎殿の御二方は猊下の『言い訳』に使い易いという事ですか」

「ビンゴです、チェイスさん。何たってかの有名な勇者パーティー。メンバー各々に実績だってある。その力をハジメが借りたとなりゃあ…虎の威を借る狐扱いもあり得るってもんだ」

 

 やり直しを行う上で教皇が必要とするのは、『言い訳』だ。

 

 如何に教皇がその権利を持っていようと、周囲の納得が全く得られなければ意味が無い。どのようにして納得を得るのか、それを試合をみて教皇は考えねばならない。

 

 だからこそハジメ側からそのエサを出す事は避けたい。その為にも知名度のある勇者パーティーのメンバーは抜擢し難いのだ。

 

「対して優花も俺も手柄はほぼ無い。【ウル】の件もあるが、そっちは【豊穣の女神】の先生がメインだ。俺たちはあくまでモブ…ここに来て先生に手柄を集めた事が役に立ったな!」

「ぅう〜先生としては非常に複雑です…」

「でもお陰で清水は罰軽くなったし、こうして助力に繋がるなら万々歳だよ、愛ちゃん先生!」

「結果論こそ全てだぜ、先生!」

「ありがとうございます、皆さん…」

 

 結果的に見ればメリットの方が大きいし、仕方が無かったのだが、やはり愛子的には生徒の活躍を我が物としてしまった事が辛いらしい。ちょっと涙目の愛ちゃん先生を護衛隊が即時カバーしに行った。

 

「とは言えさっき言ったように教皇に『言い訳』を作らせる訳には行かない。だから俺に関しては魔人族が作ったポチを使う訳には行かねーし、ハジメが何でか持ってるアーティファクト()()もロクに使え無い。ピナぐらいだったら許されるだろうが…つまり俺達は外付けの強化をほぼ行えない」

「対してあちらは試練を行う側。教会の全面的なバックアップによって、万全の状態で戦えますわね」

「改めて畜生ルールね」

 

 字面を見ただけでも制限は多いが、その上で『神前決闘』を完璧にクリアする為には必然的に過剰な制限を自ら設ける必要がある。

 

 流石に天職や固有魔法などの()()()までは『言い訳』にはしないだろう。その為、ハジメの“魔錬”などは大丈夫の筈だ。もしそれまで『言い訳』に利用するならば、その時は()()()するだけだ。

 

 とまあ、ここまで話して場はほぼ満場一致の空気となっている。幸利の言葉に反論する者は居ない。

 

「ま、そんな訳だ。俺達二人が出る事に異論は…無いな」

「そうね。久々に暴れてやるわ」

 

 ホッと一息付く幸利に対し、拳を鳴らす優花。やはり彼女には漢気と呼べる物がある。正しく姉御、下町でいつの間にかファンクラブが出来ているのも頷ける話だ。なお本人は知らない。

 

 兎も角二人は上等だと言わんばかりに立つ。戦闘に参戦しない面子も、心は共にあるかの様だ。

 

 これまで築き上げて来た絆が、此処に集結していた。

 

「…ねぇ、二人とも」

「おん?」

「何よ?」

「ありがとう」

 

 ごめんとは言わない。きっと皆んな、望んでここにいるのだから。信頼を否定する様な真似を、今更しようとは思わない。

 

 だが代わりに感謝する事は許される筈だ。だからこそハジメは心の底からこの言葉を吐き出した。

 

 二人はポカンと暫く口を開けたが、やがてハジメへと軽く腹パンやらチョップやらをかました。同時に口を尖らせて言う。

 

「何処ぞの誰かさん曰く、私はチートらしいからね。この程度チョチョイのチョイよ。感謝されるまでも無いわ」

「も一つ言っとくと、別にお前の為なんかじゃねーからな。俺がお前に生きて欲しいって気紛れに思っただけだ。その辺り誤解すんなよ?」

 

 ──早く前へ。大丈夫、冷静になればあんな骨どうってことないよ。うちのクラスは僕を除いて全員チートなんだから!

 

 ──僕は──君に生きて欲しいからここに来たんだよ!

 

 ハジメの内で、かつて放った言葉が喚起する。自身があの時、心の底から思っていた言葉がまさか今になって返ってくる事になるとは思ってもみなかった。

 

「──ハハハッ、そっかぁ。そうだよね」

「そうだぞ」

「そうよ」

「「「「「???」」」」」

 

 それがあまりに可笑しくて。ハジメはついつい笑い出してしまう。

 

 幸利と優花もこれに、悪戯が成功した子供の様にニヤリと笑う。他の者達は言葉の真意がまるで分からず、ただ笑う三人を見つめるだけであった。

 

 だがもう迷いは無い。ハジメは二人に拳を突きつける。二人も応じる様に、拳をハジメの物に合わせた。所謂、円陣という奴だ。

 

「それじゃ、二人とも…いや、()()()で勝とう」

「おう」

「とーぜん」

『ピッピピィ!』

「そうだね。ピーちゃんも手伝いよろしくね」

『ピッ!』

 

 作った拳の円陣の上にピナが乗り、元気良く鳴いた。

 

 それがあまりに可笑しくて。ハジメの部屋からは笑い声が木霊する事となった。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 ──パァンッ、パァンッ!!

 

 火の華が青空を彩る。

 

 色鮮やかな“火属性魔法”は次々と駆け昇る。『神の使徒』の記憶を元とし、作られた中級魔法“華火(はなび)”は観客等の心を空と同様、煌めかせた。

 

 今日は『使徒』が異世界(トータス)に来てから半年、即ち今日がハジメの処刑日、『神前決闘』の日である。

 

『神前決闘』の会場は【神山】と【ハイリヒ王国】の中腹辺りの、東京ドームを優に超える広大なコロッセオ。多くの来賓客が客席に座って行く。

 

 このコロッセオの戦場には結界が張り巡らされている。この結界は外部からの干渉と妨害を防ぐ為の物となっている。

 

 効果は二つ。一つは物理的な結界としての効果。これにより『神前決闘』中の外部からの侵入、及び攻撃を防ぐ役割だ。もし砕けたとしても、その際に派手な音を鳴らす為セキュリティー面ではかなりの活躍を見せる事となる。

 

 もう一つは魔力感知の結界だ。これは予め選手から摂取しておいた血をアーティファクト内に取り入れる事で発動する。これにより選手の体内魔力()()が結界内に入った場合、ブザーを鳴らす事となる。この存在に気付いた途端に試合終了、犯人を突き止めそちらのチームを失格とする。

 

「はぁ…()に招待されたから来たが、()()あの【勇者】か。全くもって下らんな」

()()()、お静かに。今日はあくまでも一般客、お忍びですわよ?」

「そうだがなぁ…」

 

 当然ながら客席には一般客も多く入り込んでいる。当然入場料は取られるが、熱狂的な信者や被疑者の関係者達には関係無い。雪崩れ込む様にして人々は入って行った。

 

 なおコロッセオに入れずとも何ら問題は無い。教会が保有する映像転写型アーティファクト:シュタイガーンが、国土全体に渡り見える様、大空に転写している。ただ音に関しては精度が低く、微かにしか聞こえない。それでも観戦するだけならば何ら問題は無いので、作業を止めて空を見つめる者も多いが。

 

 映像により映るコロッセオの景色は敢えて言うならば、廃れた古代都市…とでも言うべきか。もはや風化により一部しか残されていない建物の残骸と生い茂る森のみが映り込んでいる。

 

「はてさて…南雲ハジメ。恨めしいまでに生き延びましたが、此処に来てはもう終い。楽しませて頂くとしますかのう」

「…本日はわざわざ御足労頂き感謝致します、猊下」

「今日はそこまで畏まらずとも良いですぞ、エリヒド殿。ごもっとも…王女の方は少し()()()()()()()()御様子ですが」

「ええ、私の方からも後々…」

「そうするのが宜しいかと存じますぞ。まあ、これまでの苦労が今日報われると思うと、甲斐甲斐しい気分になりますがな」

「そう言って頂けるとありがたいです」

 

 またVIP席には教皇イシュタルや国父エリヒドなど、錚々たる面々が勢揃いしている。かつての『学会』と比べてもまるで規模が違う。正しく国全体が、その試合に注目を集めている。

 

 もはや勝敗に関係なく、今日この日『彼』は世界にとっての『主要人物(メインキャラ)』である事は疑いようも無い。相対する【勇者】と比べても、彼の知名度は劣る事は無いだろう。

 

「「「「「がーんばれ! がーんばれ! な・ぐ・も──!!!」」」」」

「清水──!! ぶちかませー!!!」

「優花──!! ファイトだよー!!!」

「愛子ちゃん先生護衛隊もとい南雲支援隊! 三人を全力で応援するぞぉ!!」

「「「「「ぅおおおおおおおおおお!!! 頑張ってくだせぇ! 南雲の旦那ぁああああああ!!!!」」」」」

「…いつの間に【ウル】の【錬成師】の皆様は来られたのでしょうか? デビッド、貴方は分かりますか?」

「…いや、何かいつの間にか居たとしか」

「皆さーん、もっと声出して! 南雲君を応援しましょう!」

 

 この応援(エール)が果てまで届けと、コロッセオに響き渡る。VIP席から降りて来た愛子先生を中心に、護衛隊に神殿騎士四人、更に【ウル】の【錬成師】等も集まり声を一つにする。

 

 コロッセオの面積はあまりに広い。この声はきっと彼等に届かない。

 

 しかし彼等の思いは届くだろう。勝利を望むこの思いは強く、褪せる事など無いのだから。

 

「やれる事は…全部やった。後は小僧次第だ」

「たく…【錬成師】であそこまでやるたぁなぁ…。地に伏した御感想はどうだい? メルド団長殿」

「…ステータスならば兎も角、技術は既に光輝よりも上だな」

「マジかよ。…師匠どっちも半年で素人に抜かされるとは、面目がねぇなぁ」

「ああ、全くだ」

 

 戦闘の師であるメルドと“錬成”の師であるウォルペン、二人はVIP席にて戦場を見守る。

 

 最初の頃の様な単純な恩義や利得、もはや彼等にとってはハジメを応援する理由では無い。

 

 ただ興味を惹かれた者(ファン)の一人として、此処から先をただ見る。

 

「父よ…貴方が私のした事をどう思っているかは分かりません。私自身、本当に正しい事をしたのかも。ですが…全てこの戦いで決定しますわ」

「大丈夫よ、リリィ。きっと…大丈夫」

「坂上様、気分が優れない様でしたら別室で横になられては如何でしょうか?」

「…いや、見ます。見なきゃ、俺は…アイツ等からもう逃げたくねぇから」

「そうですか。それでは此方の紅茶をお飲み下さい。ストレスの緩和作用があります」

「余的にはどっちもライバルなのだが? 余ってばどっちを応援すれば良いの?」

 

 王族の子孫等は見守る義務がある。

 

 国父であり、実の父であるエリヒド=S=B=ハイリヒ。教皇イシュタルとの共謀であるとは言え、彼の企みにより少年は此処に立たねばならない。

 

【勇者】の輩達は願う。半年間戦い続けた少年の勝利を、そして戦友等が正気に戻ってくれる事を。

 

 戦場に己が立てぬ事を悔やみながら、せめて目を背けてはならないと、ありったけの精神力を注ぎ込んだ。

 

「さてさてさーて。この試合、どう転ぶかなぁ? 光輝くんは勝つかな、それとも負けちゃうかなぁ? ()()()()()()()楽しみだなぁ」

 

 コロッセオの近隣にある高い塔。風に煽られながら、『使徒』は嗤う。風向きなど関係無い。全ては、掌の上だと信じて止まない。

 

「フフフッ、ハーちゃんの晴れ舞台! 前回も素晴らしかった分、今回も期待が膨らみます。…貴方もそう思いますよね、『三代目』」

「…君はとても楽しそうだね、『四代目』」

「ええ、とても。というかこの前、ハーちゃんを見に行ってたじゃないですか。クールに振る舞って実は貴方も楽しみにしているんでしょう? それに、()()()()()も気になっている様子ですし」

「………」

『………』

 

 コロッセオの遥か上空。そこに在るのは一風変わった三人組だ。彼等は青い龍の上に乗り、会話している。

 

 月を彷彿とさせる吸血鬼、黒鉄の鎧を纏ったナニカ、希少な龍に、そして凡百の()()()

 

 統一感の無いチグハグな者達。されど吸血鬼と黒鉄の見下ろす目は何処までも達観した者。隔絶した実力差…否、次元の差がそこには在る。

 

 一つ上の次元(ステージ)で、彼等は次世代の英雄を見つめていた。

 

「【聖女】白崎香織。貴女はこの試合、どう見ますか?」

「…決まってますよ、ノイントさん。勝ちますよ」

「…どちらが?」

 

 そして、彼女は見つめる。

 

 VIP席の一画。聖教教会の騎士団長が護衛として座る横で、愛おしげに彼に視線を送る。

 

 もうあの日の様な憑き物は無い。ならば大丈夫だ、と彼女は微笑む。そして尋ねられた問いに、さも当然の如く答えを返した。

 

「当然、南雲くんが」

 

 あらゆる者達の敵意、期待、そして信頼を乗せて、その視線は『彼』に注がれた。

 

『それでは、『神前決闘』の開始を宣誓する!』

 

 ────ゴォオオオオオオオオオンッッ!!!!

 

 イシュタルの宣言と共に、凄まじい音量のゴングが鳴り響いた。

 

 それと共に選手達は各々動き始める。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

『神前決闘』において参加者の初期位置はランダムとなる。選手各々が別々の入り口から結界内に入り、バラバラになった状態で試合は開始される。

 

 この入り口から出口の道はかなり複雑で、会場の所有者以外はどの入り口に入れば何処に出るかなど分かる筈も無い。

 

 そう、()()()()()は。

 

『南雲ハジメの位置はE6…即ちエヒト神像の真下にて御座います』

 

 教会が保有するアーティファクトの一つ、念話石。それをイヤーカフスの形にした物を教会側の選手は身に付けている。それ故に最速最短のルートで天之河、檜山、鈴の三人はフィールドを駆け抜け、ハジメのいる場所へと向かう。

 

 ルールの一つにある、リーダーの撃破。これさえ成し遂げれば決着は付く。これまで辛酸を舐めさせられた経験もあって、【錬成師】だからという油断は無かった。

 

 教会側のリーダーである天之河光輝も迷う事なく、ハジメの方へと走っている。光輝にとっての宿敵、それがこの先にいるのだと思うと一秒一瞬さえも惜しかった。

 

(アイツを倒して…そして皆んなを取り戻す!)

 

 光輝は理解していた。旧友の心が自分から離れ離れとなってしまっている事を。

 

 更に理解してしまった。逆にハジメの周囲には人が着々と集まっている事を。

 

 耐え切れなかった。どうしようも無く嫌だった。何故自分に着いて来てくれないのかと、心の中で何度も騒ぎ立てた。

 

 そして天之河光輝の中にある闇は、爆発した。

 

 ──ぜんぶアイツの所為だ

 

 天之河光輝は断じたのだ。悪役(ラスボス)は南雲ハジメだと。だからこそハジメさえ倒せば物語の様に、全て解決するのだと。

 

 常人にはまず理解出来ないほど飛躍した思考回路。しかし天之河光輝の真っ直ぐで歪んだ正義感では、そこで思考は止まってしまっている。

 

 己にとって相棒である聖剣・聖鎧を装備から外したのも,そんな矜持(プライド)があってこそ。そんな物に頼らずとも、ハジメ()を倒す事が出来ると…そう信じているから。

 

 疾走の途中、ふと上から鳥の鳴き声が聞こえてきたが気にも止めない。いの一番にエヒト神像の元に辿り着いた光輝。その目の前には──

 

「来たね、天之河くん」

「…南雲」

 

 意外な様子も無く、ただそこに立つハジメがそこにはいた。その出立ちはあまりに自然体。気に負う物など何一つ無いと言っているかの様だ。

 

 そんな様子も苛立って…誰も来る気配が無い事に違和感を覚えた。光輝がそんな違和感を持っている事に気が付いたのか、ハジメは光輝へと話し掛ける。

 

「一応言っておくけど…他の二人は来ないよ?」

「お前! また何かしたのか!?」

「まあ、そうだね。()()()()()()やってはいるかな?」

 

 思い返すのは作戦会議。あの時、自分のすべき事は定まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベストは俺達全員で天之河をリンチする事だが…まあ無理だな」

「向こうが位置を特定する術を持って来てるだろうからね」

「ああ。アーティファクトか魔法か…いずれにせよ戦場全体の状況を理解出来る術は持ってきてるだろうな」

 

 メンバーが決まった後、次に話題に上がったのが具体的な戦い方だ。そして敵が教会側である以上、ハジメ等は敵側にある程度の理外の術(チート)がある事を想定する。

 

 だからこそ敵は迷い無く行動出来るだろうと考えた上で、此方のアドバンテージを上げる。

 

「ただこっちも戦場理解は出来る。俺の相棒ピナと“共眼”さえあれば、その辺りはオールグリーンだ。ピナレベルなら一般的な使い魔だし、『言い訳』にもされねーだろ。お前ら、ピナを崇めよ」

「「ハハ〜」」

えっへん(ピッピ)!』

「それに向こうは恐らく通信タイプで経路にワンクッションが必要になる。しかも戦場全体を隈なく見れるわけでも無い。位置取り合戦は圧倒的にこっちが有利だ。…だからこそ次に考えるのはどいつとどいつを戦わせるのか、だ」

 

 ピナには“千里眼”の固有魔法がある。そして幸利の“共眼”でピナと三人の視界を共有すれば、リアルタイムで敵味方の位置を知る事ができる。行動の後手に常に回る敵側の連絡よりも、遥かに早い速度で敵の位置が理解できるのだ。

 

 だからこそマッチングの優先権は間違い無くハジメ達の方にある訳だ。

 

「まず全員合流して三対三になるのは避けたい。何たって敵側のバランスが良過ぎる。接近戦が十八番の檜山、防御特化の谷口。そんで極め付けにオールラウンダーの天之河…しかもアイツらは迷宮組だ。連携は半年間散々やって来てる。連携を取られたらまずこっちが負ける。だからこそ俺達が狙うのは──」

「──三つの1on1?」

「その通りだ、ハジメ。それが一番、アイツらに取って全力を出し辛くて、逆に俺たちは実力を発揮しやすい。敵が狙って来んのは間違い無くハジメだ。リーダーが落ちればゲームオーバーなんだ。そりゃ狙う。…だからハジメと戦わせる奴以外は俺と優花で足止めすりゃあ良い。そうすりゃ各々一対一が出来上がる。そんで後は各個撃破!ってする方がこっちに有利だ」

 

 迷宮組は多人数での戦闘に慣れ切っている。それ故に『連携』という物が戦いの前提に存在する。当然メルドの指揮の下、対人戦も訓練でこなしているが迷宮での戦闘の方が明らかに多い。

 

 対してハジメ達はメルドの訓練において一対一での対人戦をよく行っている。参加するメンバーも多く、様々な戦闘スタイルの相手への対応能力が培われている。

 

 だからこそ必ず合流させてはならない。それだけは肝に銘じ、遂にマッチングを決定して行く。

 

「で、分担だが…ハジメ。お前が天之河やれ」

「あーそういう…了解」

「速攻で理解したわね、コイツ」

「やり直し案件だよね、それも」

「その通りだ」

 

 リーダーであるハジメが同じくリーダーである光輝を倒す、それだけで『言い訳』はまず少なくなる。何と言っても光輝は敵側のメンバーで随一の実力者。それを被疑者であるハジメが単独で倒す…それが民衆の目にはどう映るか、と言う話だ。

 

 逆にこの勝負を避ければ、「ハジメが逃げた」という言い訳を作るかもしれない。かなりこじ付けに近いが、何せ民衆の注目は結論その二人だ。避けずに迎え撃った方が良いだろう。

 

「まあ、僕自身はそう言うのは別に良いんだよ。僕自身が天之河くんと戦いたいってだけで」

「はぁ? お前、ドMか?」

「言っておくけれど…光輝は強いわよ、南雲君。舐めて掛からない方がいいわ」

「舐めてる訳でも、驕ってるわけでも無いよ。ただ、勝たなきゃ行けないってだけだよ」

 

 すると天之河と戦う方が良いと言い出したハジメに全員が白い目をぶつける。遂に頭がおかしくなったか、と恐れていた事態が起きたかの様なリアクションだ。

 

 幸利が引き、雫がそんなハジメに注意をする。しかしハジメは曲げる気は無いらしい。真っ直ぐな目で宙を見て、言う。

 

「だって天之河くんが一番、白崎さんに近いでしょ?」

 

 そう、それだけの理由。

 

 ただ更に一歩、香織のいる場所へと近付く為に【勇者】と戦おうとしている。

 

「…お前、ちょっとヤンデレ患ってるよな?」

「へ?」

「コイツ、いずれ愛の為に世界を滅ぼしに掛かりそうで怖いわ」

「どんな状況!?」

 

 幸利と優花が遂に呆れたご様子だ。特に優花に関してはかの朝焼けの約束から共にいる。そのブレなさ加減にもはや恐怖すら覚えているだろう。

 

 だがきっとハジメにとっては大義にも勝る理由だ。その目的のため、この半年命懸けの道を走り抜けて来たのだ。

 

 合理性だとか企みなど関係無い。南雲ハジメと言う男は、常にその『原点』に背を押されているのだ。

 

「…まっ、そう言う事なら舞台は用意してやるよ。お前はタイマンで勝ってこい」

「本当に仕方がないわね。今度適当に何か奢りなさい。それでチャラよ」

「うん。ありがとう、二人とも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと…悪いわね鈴。此処からは私が相手するわよ?」

「…どいてよ。優花ちゃんは、関係ないでしょ?」

「無理よ。私なりの信念があるもの。そう易々と退けないわ」

 

 見晴らしの良い平地。起伏もほぼ無い、ただのなだらかな大地。地面にカランカランッと落ちたナイフを尻目に、女子二人は言葉を交える。

 

 互いに理由は同じ。『友』の為。

 

 だからこそ鈴は周囲に障壁を展開。対して優花は己の相棒たるナイフを構える。

 

「そう…それなら鈴は優花ちゃんを吹き飛ばして、先に行くよ」

「ふふっ、単純で分かり易いわね。なら返り討ちにしてあげるわ」

 

 義を尽くし来れるのはどちらかのみ。少女等は勝つ為に魔力を迸らせた。

 

──『神前決闘』被疑者側、園部優花

 

 

 

 

 

「…チッ。相手はテメェかよ、クソ陰キャ」

「お褒めいただき誠に感謝するよ、ド三流のチンピラ」

「…接近職()魔法職(オマエ)でマトモに戦えるとでも思ってんのか?」

「残念ながら…楽勝だね」

 

 対するは森の中。膨大な数の動物がそこにはいた。それだけならばまだあり得る話かもしれないが、その視線がたった一人に集まっているのは、あまりに特異であった。

 

 その囲まれている男、檜山は木の枝に座る少年を睨みつけた。しかし臆する様子は無い。その程度の恐怖はとうに乗り越えている。

 

 幸利のそんな余裕ぶった態度が癇に触ったのか。檜山は槍を構え、戦闘態勢に入る。

 

「クソが…秒で死ね」

「語彙も貧弱だな。まあ良い、遊んでやるよ。なぁ、ピナ?」

『ピィーッ!!』

 

 彼等は共に『罪人』。されど異なる在り方、それが如何なる結末を見せるかは、まだ。

 

──『神前決闘』被疑者側、清水幸利

 

 

 

 

 

 

「そうか…南雲、悔い改める気は無いのか?」

「無いよ。僕のこの道を、肯定してくれる人が居るから」

「そうか…ならもう言葉は要らないな」

「そうだね。僕等はどうしても分かり合えない。だから──」

 

 廃れた古代都市の跡地。ひび割れた壁に、崩れ落ちた屋根。その上に立ち、二人は睨み合う。

 

 唯一、崩れ落ちていないエヒト神像。巨大なそれのすぐ下で、彼等は永きに渡る勝敗を決する事となる。

 

 それは正しく『神前決闘』。片や澄んだ白、片や空の如き蒼。それが二人を中心に渦巻き、やがて衝突した。

 

「お前は、俺が倒す! 南雲!」

「僕は、君を超える! 天之河光輝!」

 

 果たして勝つのは『正義』か。それとも『憧憬』か。

 

 相いれぬ意思を持つ二人は、ただこの闘争に身を投じた。

 

──『神前決闘』被疑者側、南雲ハジメ

 

 全てを決する戦いが、今──




これにて終了!
次回は多分、優花VS鈴のキャッツファイトです。
ぶっちゃけ主人公以外の戦いって需要ある?感強いですが、作者はサブキャラの戦闘をハッキリ描写したいタイプの作者!
一話丸々使います(宣言)

あと次回から戦闘メンバーのステータス開示をしていきたいと思います。
面倒だけど頑張るね。

出来れば来週は二話投稿したいなー、なーんて(多分感想で催促来るから、こうして自分に発破を掛ける賢い手段)

それではまた次回!


ーー追記
タイヨー様
評価感謝致します!
また文章が複雑骨折している私に誤字修正を投げてくれる皆様!
及び最近お馴染みの面子になり出している愉快な感想欄の皆様!
君たちにセクシーサンキュー!!!
これらは全て作者の活力。

そんで持って遂に総感想が300超えました!
読者の声がこれだけ募ったってのは作者的に誇りです。
いやー、やはりこれだけの感想!
見返すと感動ーーーー
・発狂してるハジカオニスト
・ワインを飲む愉悦部
・曇らせに反応するヤベー奴ら
・エゲつない文量の考察勢
・怒涛の構文
・ちょくちょくいるハジカオ作家神達
ーーーーなんやこれ?(正気)
改めて考えるとウチの感想欄濃い奴多いなぁ。
何でやろ?
それは兎も角、次は400を目指して頑張ります!
応援してね!

それではまたねー!!

この作品、アナタは何メイン目的で読んでる?

  • ハジカオ!
  • オリジナル展開!
  • 成り上がり要素!
  • 考察要素!
  • 曇らせ!
  • 感想返し!
  • ダイレクトマーケティング!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。