恋する錬成師は世界最強   作:見た目は子供、素顔は厨二

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10月17日 日刊21位、ありがとうございます!

次回エンディング! とか言っときながら閑話です。
エンディングは一章ラストの話にします。
暫くは閑話です。
ただ普通にメインストーリーに関係はあるので、読んでおいて損はない…と思う。

エリちゃんイベすぎょい。
庶民モードエリちゃん霊衣ありませんか?(懇願)
良い値で買いますよ?(課金オケ丸です)

まあ良いや、どうぞ!


閑話、宴が始まる

『神前決闘』決闘から一夜明けた。

 

 人族領全土に渡って配信されたその戦い。人々は【勇者】一行が勝ち、被疑者側に罰が下されると、そうとばかり予想していた。

 

 だがその結果は世界を揺るがしかねない程に、衝撃的な物だった。

 

 ──【勇者】天之河光輝の敗北

 

 人類の未来を期待されていた少年、その敗北は人類にとって不穏な未来を暗示する結果。()()()()()()

 

 だが人々はその結果に絶望などしなかった。むしろ彼らが見せた反応は──()()()()()()だ。

 

 空に浮かぶ虚像(モニター)、その中で煌めく『蒼』。只人でありながら、【勇者】と競り合う姿は歴戦の勇士と見紛う程。神敵かつ【無能】というレッテルがあって尚、彼の姿は人々の目に刻まれた。

 

 そして脳裏に刻まれた彼の陰が、人々に語り掛ける。

 

 ──自分はこのままでいいのか、と

 

 あの様な子供達が全力で己を賭している。だというのに自分達は現状に甘えてばかり。それで良いのか、と。

 

 才能? 理由にならない。彼は【錬成師】でありながら彼処にいる。

 

 年齢? 阿呆を言え。自分達は大人だ。子供になど負けていられるか。

 

 平穏? なら何故彼等は呼ばれた? それは自分達の平穏を守る為だろう。()()()()に護って貰ってまで得る物か? そんな人生を誇りと言えるか?

 

 ならばと彼等は叫んだ。彼方に居る少年達に負けぬ様、それぞれの武器を持って叫んだ。

 

 その熱狂は一人や二人だけの物では無い。大陸全土に渡り、覚醒の雄叫びは聞こえた。

 

 これが後に歴史で語られる事となる『黄金(バブル)時代』の始まりである。作物、商品、技術、戦力…【ハイリヒ王国】()()ではありとあらゆる物が溢れ、従来とは隔絶した革新を見せた。

 

 これを歴史として学ぶ子供達はまさか思うまい。その時代を生み出した切っ掛けが、ちっぽけな少年達の勇姿による物だと。

 

 そしてまさか思うまい。大人達が少年達の勇姿に()()()()()()()が、『黄金時代』を切り拓いたなどと。

 

 そんな荒唐無稽な話などと、誰が思う物か。

 

 さてさて。それでは歴史を変えた要因である少年達はと言うと──

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「え──っと…本当に僕で良いの?」

「うんうん。今日の主役は()()()()()だもん! みんな文句無いよ、ね?」

「ええ。香織の言う通りですわ、南雲さん。皆様お待ちですし、なるべく手短にお願い致しますわ」

「と言うかウォルペンさんがもう酒飲み始めてるから、早く言いなさい。小難しいのも今更だから、最低限で」

「子供より堪え性無いぞ、あのオッサン…」

 

【ハイリヒ王国】の城下町。その中でもここ最近、売り上げを凄まじい勢いで伸ばしている『アスタマリア食堂』の扉には、一つの看板がぶら下がっている。

 

 ──『只今、貸切中』

 

「それじゃあ本当に手短に…皆ありがとう! 乾杯!」

「「「「「乾杯!!」」」」」

 

 カ──ンッ! とコップ同士がぶつかり、甲高い音を鳴らす。それなりに広い食堂。その席一杯に座る者共が本日の主役に合わせて、声を上げた。

 

 まあ、つまりは…宴である。

 

 内容は言うまでも無い。『神前決闘』の勝利。そして何よりもハジメの冤罪の解消である。戦いが終わり、寝て覚めたら衣装を仕立てられて此処に到着だ。ハジメは意味が分からなかった。

 

 ただ一介の食堂である店主は今夢心地だろう。何せ貸切のメンバーがメンバーである。主人ノッズ=アスタマリアとその嫁さん、あと子供。全員がキッチンで両手いっぱいの色紙を抱えながら、感涙を堪えているのがその証左である。

 

「よーし! 今日は俺の奢りだ! 好きなだけ飲んで食らえぇえええ!!」

 

 ──王国騎士団長、メルド=ロギンス

 

「おっ。この酒安い癖してうめぇな。小僧は…飲めねぇのか、難儀だなァ」

「ふむ? ならばその分君がどんどん飲みたまえよ、旦那様。安心して欲しい。ちゃんと私は君をベッドに送り届けるから。…ただまあ、その分の労働費はその場で君から徴収するけれどね? あ、コラ逃げないでおくれよー!!」

「またトーリョーがシャクっちと夫婦漫才しててマジ卍」

「いつもの事じゃん。アレだアレ。………『嫌よ嫌よ嫌嫌よ』ってヤツ」

「…『嫌よ嫌よも好きなうち』の事を言ってるんスか? 嫌がってるだけじゃないっスか、それ? まー、俺そう言うコを落とすのも好きっスけど」

 

 ──王国工房【ウォルペン工房】棟梁、ウォルペン=スターク

 ──王国工房【アルソンス工房】棟梁、シャクナ=アルソンス

 ──以下、【ウォルペン工房】の幹部

 

「店主さん、今日は無理を言って開けて貰い感謝致しますわ。お礼と言っては何ですが、また働かせて頂きますわ。ランデルもいっその事、働いてみればどうですの? メソメソ泣いてないで」

「うぐぅ…余はもう立ち直りました! この失恋を糧にして進むと決めましたからぁ!! むしろ姉上こ──アッハイ、ゴメンナサイ」

「私も手伝わせて頂きます、ノッズ様。この人数は暴力的ですから」

「本当にこの場を設けて頂き、ありがとうございます。お陰で生徒達も喜んでいます。料理もとても美味しくて…また個人的に来させて貰ってもよろしいですか?」

 

 ──【ハイリヒ王国】第一王女、リリアーナ=S=B=ハイリヒ

 ──【ハイリヒ王国】第一王子、ランデル=S=B=ハイリヒ

 ──【傍付き】ヘリーナ

 ──【豊穣の女神】畑山愛子

 

「うまい! うまい! うまい!」

「何だろ…オカンの味がする…泣けて来た」

「宴開始数秒で泣くな、明人!?」

「でも、おいし〜よ〜。ほっぺた落ちるぅ〜」

「良い店見つけたね!」

 

 ──【愛ちゃん護衛隊】相川昇 

 ──仁村明人

 ──玉井淳史

 ──宮崎奈々

 ──菅原妙子

 

「ふん…奴もまあまあ慕われている様だな」

「デビッド…既に貴方もその一人でしょうに…」

「大衆食堂と侮っていけれど…これは中々…」

「神殿の食事と遜色無い。美味い…」

 

 ──【神殿騎士】デビッド=マーク

 ──チェイス=ルーティン

 ──クリス

 ──ジェイド

 

「俺ぁ嬉しいぜ、旦那が勝ってくれてョォ!!」

「分かりますぞ、ジェルノ氏! 某も未だに色んな水が溢れ出て溢れ出て…」

「俺なんか気絶したぜ! 開始数秒でな!」

「でも私、何だか南雲師匠が有名になって…何処か寂しくて…嬉しい筈なのに…」

「「「「「分かりみが深い」」」」」

 

 ──【ウル】錬成師棟梁、ジェルノ=サルマナ

 ──以下、【ウル】の【錬成師】

 

「何と言うか…凄い人達ばかりね? 分かっては居たけれど彼、人たらしが過ぎないかしら?」

「八重樫さん、マジでソレな? ここ到着した時、知らん奴割といるからコミュ障発現仕掛けてヤバかった…」

情けねぇなぁ(ピピピィ…)

「だからアンタ、さっきから私の後ろに引っ付いてるのね…」

 

 ──『神の使徒』八重樫雫

 ──黒ランク冒険者【魔物の歌い手(ハーメルン)】清水幸利

 ──使い魔、ピナ

 ──『神の使徒』園部優花

 

「改めて…おめでとー、ハジメくん!」

「うん。ありがとう、白崎さん」

 

 ──【聖女】白崎香織

 ──【蒼の錬成師】南雲ハジメ

 

 と、まぁ面子が面子。この宴の会場となった『アスタマリア食堂』はなお一層、客を獲得するに至るだろう。何というWin-Winか。

 

 ちなみに王城でも開けるのに、わざわざ店を借りたのは『王様、我々ちゃーんと調子に乗ってる訳じゃないっすよ? せいぜい大衆食堂一店貸切にする程度っすよ?』と言う言い訳のためである。あと普通にラフな方が良いと言うのもある。

 

 ちなみにハジメは現在、『アンタが主役や!』と書かれたタスキを肩からクロスに掛けている。特に意味は無い。強いて言うならばパーティーらしさが出る程度か。『使徒』男子衆によるノリの産物である。

 

 ちなみに【蒼の錬成師】はつい最近付いたハジメの二つ名だ。今迄は不名誉な二つ名が多かったが、何というか…何処ぞのフルメタルなアルケミストを彷彿とさせる二つ名だ。聞いた際にハジメと幸利、香織がちょっと笑ったのも仕方が無い話である。

 

 他にも大金星を勝ち取った故の【巨人殺し(ジャイアント・キリンガー)】。 “魔錬”により基本六大魔法を使い分けるが故の【六星】。武器を生み出し巧みに操る技の冴え故に与えられた【武器使い(ウェポンマスター)】。どれも厨二チックである。ハジメ的には大変恥ずかしい。…こう、頭の中にこびり付いている中学生の己が湧き出て来るので。

 

 ただまあ、以前と異なりもはや負の感情らしき物が向けられる事は無い。久しぶりに王城の廊下を気を張らず進む事が出来た。この際、ハジメが涙ぐんだのは秘密である。周囲は哀れさで泣いた。

 

 ちなみに優花と幸利にも新たに二つ名が付いた。

 

 優花はそのイケメンメンタルにより【女傑】。シンプルに格好良くて二人がムスッとした。ただまぁ、これで姉御と慕う一般人が増えるだろうなぁとも思った。ただ優花は厨二チックに全く慣れていないので、当時頬を真っ赤にしていたが。

 

 一方、幸利は元々【魔物の歌い手(ハーメルン)】という二つ名がある。これは冒険者として『黒』のランクを手に入れる際に、使い魔を使って大暴れした結果である。その為、幸利はテイマーとしては一流と判断されていた。

 

 ただ今回の『神前決闘』で、本体性能も凄まじい事が公衆の目前に晒された。まあそれに加えて古代魔法“影帝”と本人の黒っぽさから【陰者(シャドーマン)】と言われるに至った。幸利は悶えた。

 

 三者三様にボロボロになって戦った、『神前決闘』。世間の皆様はそんな彼等の健闘を讃え、二つ名を名付けたが…悲しきかな。まさかそれが当人らにとって一生刻まれる傷となるとは思わなかった事だろう。善意故の悲劇である。

 

 ──閑話休題(そんな事はどうでも良い)

 

「ところで坂上くんはどうしたの? 体調不良?」

「違うわ、もうちょっと真剣な理由よ。詳細な理由を言うのは…やめておくわ。野暮だもの」

「?」

 

 龍太郎の姿は無い。一応雫を通して、祝いの言葉はあったがそれのみだ。彼は義理心情に熱い人間なので、大丈夫かと心配してしまうが、雫がそう言うならば良いのかなと取り敢えず頷いた。

 

 凄くついでに言っておくとポチも王城でお留守番である。流石に店内で、大型魔物を連れてくる訳には行かない。幸利は後でお高いご飯をあげようと決めている。

 

 そこでふと幸利が何かに気付く。

 

「にしてもメルドさんやリリィって、こっち来て良かったのか? 此処に来る事で心象悪い奴だって居るだろ? 俺らはある程度自由な立場だけど、二人は対人関係とか色々あるだろうし…」

「む? それは我々だけ仲間外しにする宣言か? それは寂しいぞ、幸利」

「いや、そういう訳じゃ…」

「私、泣いてしまいますわ…よよよっ」

「「「「「泣ーかした、泣ーかした。ユーキくんが泣ーかした」」」」」

「やめろォ!! あと嘘泣きじゃん、コレ!?」

「チッ。バレましたか、ですわ」

「お嬢様がはしゃいでますね、コレ」

「相変わらず流れる様に泣くなぁ、お姫様は」

 

 一斉に非難された幸利だが、彼の懸念は尤もである。

 

 ハジメ派は今や、ある種の反教会勢力である。ハジメ本人にそのつもりは無いが、『神前決闘』を唯一生き残った罪人と言う名目がある以上、その印象を拭う事は出来ないだろう。

 

 市民達は問題視していないが、面目を気にする貴族共はハジメを注視している。次にどの様に動くか。何を仕出かすのか。

 

 これまではメルドやリリアーナにも「免罪を晴らす」為の協力と言う名目があった。が、これ以上ハジメを懇意にするならば、それは完全に『肩入れ』だ。他にも数多くの『神の使徒』がいる為、それは避けた方が良いと言うのが幸利の思考だ。

 

 幸利のこの判断は間違いでは無い。ただ…

 

「冗談はさて置き、ユッキー様の懸念は最もですわ。私達はなるべく此処にいるのを避けねばならない。それは事実…ですが私達にも情は有りますわよ?」

「その通り。坊主は半年間ボロボロになりながら戦って来た。その努力が漸く報われた…それを祝わずに居られる物か」

「リリアーナさん…。メルドさん…」

 

 …常に理性のままに動けるならば、人間に情と言う物は当の昔に捨てられている。慈愛の含まれた目で二人はハジメを見つめる。

 

 ハジメの戦いは長かった。単なる戦闘の時間としては短い物かもしれない。だが研鑽や思考を幾度と無く積み重ね、【無能】からの飛躍を見せた。苦痛だった筈だ。

 

 それが漸く晴らされたとあらば、祝いの場から退くなど出来はしない。二人はそう語る。

 

「あと私、その程度の不満でしたら話術で何とか出来ますし。私、王女ですわよ?」

「そう言う事をぐちぐち言ってくるのは大抵ザコだからなぁ。ぶちのめせば何も言わなくなる」

「メルドさんもリリィもやっぱり強いね!」

「何かしら…二人とも有無を言わさない気迫があるわ…」

 

 あとまあ、この二人の目の前でハジメを馬鹿にした時点で御察し案件なだけだ。イシュタルは権力とかがあったから見逃さざるを得なかっただけ。リリアーナは舌で、メルドは腕で。それぞれ黙らせられるだけの力がある。それは振るわずとも、だ。

 

 なので問題無いですとサムズアップする両者。素晴らしく強者である。説得力にはちょっと欠けて居なくも無いが、頷かざるを得ない。だってオーラが凄いもの。

 

 香織が目をキラキラさせ、雫が少しビビる。そんなハジメの付近にトコトコと、一人駆け寄って来る小さな陰があった。

 

「南雲君。改めておめでとうございます。ただ先生は他の生徒の見回りもあるのでこれくらいで失礼しますね? 君達は是非楽しんで」

「あ、はい。ユッキーの件とか色々有難う御座いました、先生」

「私が君に出来る事は少なかった。正直君は私に文句を言っても仕方が無いと言うのに…優しい子ですね。君は」

「? 僕からすれば先生の助力が無ければ、ユッキーと馬鹿やれて無かったので。感謝しかないですよ」

 

 それは紛れも無い本心だった。実際、愛子が幸利を雇わねば『神の使徒』の名を剥奪されている幸利はこの場には居れない。もっと別の場所で一人ぼっちとなっていただろう。

 

 ただまぁ、それを感謝する事は周囲に人が居るのが当たり前になっている人間には到底不可能な事ではあるのだが。

 

 それを思ってか。愛子はほのかに笑う。

 

「…ふふっ。本当に優しい子ですね、君は。どうかその心、大事にしてくださいね?」

「よく分かりませんが…でもそうして行きます」

「ええ。当たり前でいて、とても大切な事ですから。そのままで居てください」

 

 愛子が何をハジメに望んでいるのかは分からない。ただ愛子がそう言ってくれる所が、皆んなが共に歩んでくれた理由なのだと何となく察する事が出来た。だからこそ愛子のその言葉を、ハジメは真摯に受け取った。

 

 そうして去っていく愛子。そして愛子を守る為に追従する神殿騎士の四人。軽く四人が別れの挨拶やらを済ませて、店を出て行こうとする…が。

 

 そこで一人、扉の前で暫く静止したかと思えば、頭を掻き回して戻って来る陰があった。

 

「…デビッドさん」

 

 神殿騎士デビッド。未だにハジメに対して強めに当たるものの、何だかんだと味方で居てくれた騎士。

 

 あと【ウル】の最後に聞かされた言葉は、未だにハジメの胸へと刻まれている。

 

「………まぁ、貴様にしては良くやった。先ずは褒めてやろう」

「凄く既視感(デジャヴ)なんですけど…」

「静粛に聞け! …それで、まぁ、貴様は一応…また『神の使徒』と堂々と名乗れる様になった訳だ」

「そうですね。図書館の本、制限無く読める様になったので有り難いです」

「それは別に良い。それでだ………」

 

 そこでデビッドは数秒黙る。顔を顰めて、うぬぬと唸る。やがてチェイス達はデビッドが何をしようとしているのか察したのか、「ほら、早く言いなさい」と急かしに掛かる。デビッドは楽しげに煽って来るチェイスに青筋を立てながら、再びハジメへと向き合った。

 

 そしてデビッドは…己の頭をハジメへと向かって()()()

 

「すまなかった、南雲ハジメ。出会い頭にお前に働いた我が不徳。この場にて改めて詫びよう」

 

 そこで気付いたが、デビッドは今迄一度もハジメに謝罪をする事は無かった。他の神殿騎士は【ウル】の時点で既に最初の態度に関しては謝っていたのだが…デビッドは性格が性格だ。とても素直にはなれなかったのだろう。

 

 ただまぁ、同時に真面目な人だなとも思う。過去の罪を謝罪もせず、有耶無耶にしようとする人はこの世に幾らでもいる。謝罪とは決して言葉だけでは意味が無いと言う。しかし同時に言葉にする事によってその反省の意思を()()()と言うのもまた道理である。

 

 だからこそハジメはデビッドに対して、心温かに許そうと思えるのだから。

 

「はい。その謝罪、しっかりと受け取りました。それと…あの時僕もデビッドさん達の事、『嫌な人だなぁ』って思ってました。すみません」

「あの時の我々は貴様を敵視していた。貴様がそう思うのも無理はない。謝罪する程の事では無いだろう」

「それでもです。実際、デビッドさんの言葉は今も役立ってますし…今は尊敬出来る大人の人達です。なのでこの謝罪、ちゃんと受け取ってください」

「…分かった。その謝罪、我々一同受け入れた」

「それで良いです!」

「…貴様、本当に顔に似合わず強情だな?」

「何処ぞのデビッドさんの所為ですね!」

「貴様のそれは元からだろう!? 我々に責任をなすり付けるな!」

 

 デビッドの叫びに、ハジメの周囲の人間が全員頷く。

 

「そうね。コイツ【オルクス大迷宮】で秒で前線突っ込んだし」

「沢山の怪我があったにも関わらず、白崎さんの所に歩いて行きましたからね…先生は気が気で無かったですよ」

「俺の作戦ちょいちょい無視するからな、お前。ホント心臓に悪いからヤメロ」

バーカ(ピーピ)

「俺がハードスケジュールだと言っても、坊主は一向に止める気配が無かったな…」

「ある種の暴走したゴーレムですわ…」

「その辺りは地球にいた頃から変わってないわね。香織に幾ら言われても、生活態度直さなかったり…」

「そう言えば…ベヒモスともう一度戦うって時も、私に譲るつもりなさそうだったなぁ」

「何これ、イジメ?」

 

 あんまりな言われ様だと、ハジメは泣いた。ただ彼等の言い分は御もっともなので、言い返せはしない。しくしく隅っこで三角座りだ。本日の主役とは思えない扱われ様である。

 

「そもそも俺と優花が意気投合したのも、『南雲ってヤベーよな?』ってのが始まりだもん」

「確かにそうね。そっから一時間ぐらいそれで喋ったわ」

「嘘だろ、オイ」

「あ、ごめん嘘だわ。もうちょい喋ってた」

「違う、そうじゃ無い」

 

 今明かされるまさかの真実。友人等にUMAを見る様な目で見られているとは思っていなかった。側から見れば噴飯物だろうが、個人的にはかなり恥ずかしい話である。

 

 そんな風に真っ白に燃え尽きて座っていると、その肩にふと何かが寄り添った。

 

 どうしたのか。ハジメが其方を向くと…天使がそこにいた。

 

 白色のワンピースを身に纏い、長い黒髪をたなびかせる天使。ワンポイントの蒼いヒールが眩しい。彼女のそんな姿は清涼感を超えて神聖さすら感じさせる。そんな彼女がハジメの肩に頭を乗せて、ほのかに桜色をした唇を動かして言う。

 

「でも、私はそう言うハジメくんも大好きだよ?」

「白崎さん……っ」

 

 たった一言。それだけでハジメの涙が悲しみ故の物から、歓喜の代物へと切り替わる。

 

 ハジメも自分の気持ちを伝える為か。彼女の肩にそっと手を添え、引き寄せる。二人の間にある余白がまるで無くなる。

 

 秒で展開される桃色空間。

 

『お互い、元から矢印は凄かったけれど…付き合う事になったらこうなるのね…とんでも無いわ』

『俺の飲んでた酒が急に甘くなったんだが…イチャつくのも程々にして貰えんものか…』

『お嬢様はアレを超えなければならないのですね…ファイトですよ!』

『ヘリーナ!? 何言ってますの!?』

『むぅ…あそこまでのイチャイチャ。妬けて来るね…そうだ! ダーリン!!』

『ヤベッ! 逃げろ!!』

『テロだろテロ! アレ、非モテへのテロだろ!? そうは思わないか!? 昇! 明人! 幸利!』

『『『応ともさ、淳史!!』』』

『『『うわぁ…』』』

 

 結果、外野が見事に荒れるわ荒れる。

 

 雫とメルドの反応はまだマシ。雫は「こうなるかぁ」と眺め、メルドは少しだけ愚痴を呟く。だが邪魔する様な事はしない。問題はその他全員である。

 

 ヘリーナは関心しながら、リリアーナに謎の応援。狼狽えるリリアーナを見て愉悦るので始末に負えない。そしてどうやら触発されたらしいシャクナが、ウォルペンに突貫。その気配を察してか、ウォルペンは酒瓶を放り投げ扉の外へと逃走を開始。『使徒』男子勢がこんな理不尽あって良い物かとキレ、女子組が男子のノリに引くという…控えめに言って混沌(カオス)がそこにはあった。

 

 収集が付かないレベルの外野の各反応。されど二人っきりの空間にいるハジメと香織は気付かない。あそこだけ別空間にあるのかな、と思っちゃうくらい一瞥もしない。

 

 愛の力ってすげぇと、比較的冷静な『使徒』女子組とメルドが白目を剥く。

 

「あ、でもね。ハジメくんの頑固さんな所で一つ、嫌な事があるんだ」

「え──っと…僕に治せそう?」

「大丈夫だよ。すぐに治せる事だから」

「それなら良いんだけど…何を治したら良い?」

 

 此処で香織一級ソムリエの雫が「おっ、風向き変わったな?」と○ュータイプの如く感知。

 

()()()()()、まだ私の事名字で呼んでるよね?」

「……………」

 

 ──Hey、突撃乙女モード…カモーンッッ!!

 

 最近会ってなかった為、ここ最近まではシリアスな恋愛だったが…生憎香織は香織。その根源が直る事はない。

 

 ここまで来れば雫じゃ無くても雰囲気が変わった事が分かるだろう。現に混沌(カオス)組が全員ハジメと香織の監視に戻っている。素晴らしく速い切り替わり様である。

 

 変わらぬ天使スマイル。されど何故だろう。般若が薄らと見える。

 

「リリィの事は下の名前で呼んでるのに?」

「……そうっすね」

「メルドさんの事もそうなのに…」

「あれ? カテゴライズおかしくない?」

「スタークさんに神殿騎士さん。サマンサさん?も名前で…」

「何故さっきから執拗に男性を羅列するんですか?」

「清水くんに至ってはあんな親しそうに呼んでるのに…」

「ちょっと待って、アレは親友だからってだけで──」

「だったら私は──恋人だよ!」

「仰る通りで御座います!」

 

 堂々と『恋人』と叫ぶ白崎さん。初心(ウブ)な『使徒』組は全員、本人でも無いのに照れる。ちなみにハジメも顔真っ赤である。

 

 外野の一部がこの修羅場(?)を酒のつまみやら賭けの材料にし始めた。何たる外道共か。ハジメはイラッとした。

 

「えーっと…要望は分かりました。ただその為には然るべき準備を──」

「必要あるかな?」

「心が! 心が追いつかないんです! どうか慈悲を!」

「残念だけどハジメくん…慈悲は無いよ!」

「くそぅ、可愛い…」

 

 ハジメさんは恋愛面において基本ヘタレである。どんだけ修羅場を潜り抜けようとも、その辺りは一寸たりとも変わらない。昨日告白した時点で、ハジメの勇気は売り切れだったりする。嗚呼、何たるチキンハートか。

 

 ただまあ、香織さんはその辺りを考慮する気は無いらしい。早く言えと身を乗り出し、迫る。香織がハジメを押し倒すみたいな構図となりつつある。

 

 ただまあ、実の所これはただ名前で呼ぶか呼ばないかというだけの口論。しかも香織さんが明らか押し勝っているので、ハジメが折れるのが目に見えている。詰まる所、側から見れば高度なイチャつきに見えなくも無い。

 

 再び『使徒』男子が呪詛を呟き始めた頃、ハジメの対応が変わる。

 

「そ、それじゃあ…香織さん」

 

 案の定、ハジメは折れた。照れ臭そうに顔は逸らしながら。それでも視線だけは香織を見つめて、彼女の名前を確かに呼んだ。

 

 ヒューッと囃し立てる外野。ハジメは彼等に復讐する事を決めた。

 

 …が、生憎その復讐は叶わない。何故ならば──

 

「香織、だよ?」

「マッ!?」

 

 ──香織さんが追撃を止める気配ZEROだからだ。

 

 更にぐぐいッと迫る香織。何かもう色々ヤバい絵面である。まさかの『さん』付けも許さないという想定外。ハジメは仰天する。

 

 何故そこまで拘るのか。それにはあまりにも単純な理由がある。

 

「だって清水くんは『ユッキー』でしょ!? 負けてられない!」

「男友達をライバル視するの辞めてもらえませんか!?」

「仲良さそうだもん! 嫉妬しちゃうよ!」

 

 まさかの理由に目を剥く香織。流石にアダ名呼びまでは強要しない様だが、それでもかな〜〜り恥ずかしいのは言うまでも無い。

 

 根気を使い果たしたと言わんばかりのハジメ。果たして言う事は出来るのか──

 

「……………かおり」

 

 ぼそりと、虫の鳴く様な小さな声。それでも確かに香織の名を呼んだ。

 

 今度こそファンファーレか!? 周囲が意気込む中、香織は──

 

「…なんて言ったかな?」

 

 ──まさかの聞き返しである。

 

 聞き逃したの!? と周囲が目を剥く。ハジメも目を剥く。

 

 我慢しきれなかったのか、ハジメは両手で顔を覆い隠して。それでもハジメは。

 

「か、かおり…」

「聞こえないよ?」

 

 絞り切るハジメ。だがそれでも香織は首を傾げる。

 

 此処で周囲は違和感に気付く。何故香織が聞き逃しているのか。他でも無い()()()()が、と。

 

 教室でハジメの一言一句を逃さんと会話していた香織が!

 

 異世界でハジメの為に献身を尽くして来たあの香織が!!

 

 あの香織が、()()()()だと!?

 

 答えは簡潔、ありえねぇ。こんな二度も聞き逃すギャルゲー主人公よろしくなイヤーを香織が取り付けている筈が無い。超高性能集音器に決まってると、その場の誰もが確信する。

 

 では何故。何故聞き逃してるのか?

 

 そんな理由は、あまりにも単純なものだ。

 

「…香織」

「えへへ。もう一回」

「…聞こえてるよね?」

 

 何度でも聞きたいと言う、単なる乙女心。

 

 単に名前を呼ばれるだけ。それでも香織の表情は宝物を独り占めしたかの様に、喜びに満ちていた。

 

 恐らくハジメは聞き直した時点で、それは察していたのだろう。ただもう羞恥心が限界らしい。実質的なギブの宣言である。

 

 それに対して、香織は覗き込む様な体勢で一言。

 

「言ってくれないの?」

「…言うよ、何度でも。香織」

「うん! これで良しだよ、ハジメくん!」

 

 取り敢えず満足した! と香織はふふんっと鼻を鳴らす。

 

 そして並べられた椅子の上でハジメは…顔を抱えながらふるふると震えていた。多分『神前決闘』よりも勇気使い果たしてんじゃね、というぐらい限界が来ていた。

 

 そんな二人の桃色空間を目の前にして、現場の皆様はというと…。

 

『体は砂糖で出来ている。血潮はシロップ、心は飴細工(ガラス)…』

『詠唱しようとするな』

『にしても…優しく抱かれたみたいになってんなぁ…南雲』

『確かに抱かれたな(概念)』

『抱かれてたね(概念)』

『坊主は将来どうであれ、香織に尻に敷かれそうだな』

『間違いねぇ』

 

 もう嫉妬とかそう言った物は無く、ただ純粋に目の前で起きるイチャイチャぶりを楽しんでいたのだった。

 

「あ、それと坊主。これからお前さんはどうするつもりなんだ?」

「…この状態の僕に聞きます?」

「日頃無茶ばかりするお前さんには良い薬だ。世にも珍しい甘い良薬だろう?」

「甘さで死んでるんですが、それは?」

「薬は過剰に取れば常に毒となる物だぞ。知らんのか?」

「なるほど…身に染みました」

 

 ニヤニヤと言ってくるメルドには一言や二言文句を言いたい。だが根気尽きた今では口論しても負ける気しかしないので、自重する。

 

 取り敢えず冤罪を被らないという、この世界における第一目標は終わった。メルドが尋ねているのはその次の目標が何か、という事だろう。

 

 今のハジメならば、大概の事には手を出せる。王国や神殿の戦士として働くも、研究に身を費やすも、【錬成師】として工房を開くも良しだ。全て道が保障されている。

 

 しかも『神前決闘』により得た『お願い』は優花、幸利共にまだ使用していない。つまりその次の目標に関しては教会の力をフルに利用する事が出来るのだ。何とまあ、贅沢な事か。これまでの苦労を考えれば、割と正当な報酬では無かろうか。

 

 と、言う訳で。大体何でもやれる現状。とは言えハジメの次の目標は既に()()()()()()()()──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──カランコロンッ

 

 扉に付けられた鈴の音が鳴る。

 

 愛子達が戻って来たか。或いは龍太郎が参戦しに来たか。

 

 そうした呑気な予想はものの見事に…外れた。

 

 そこに居たのは少なくとも、呼ばれざる客。ハジメ達にとって()()()()()、親しい間柄では無いと断言出来る。

 

 ただ、貸切中の店への無断侵入。それを誰もが咎める事は出来ない。店主ノッズが反射的にその客の立ち入りを止めようとしたが、侵入者の顔を見てすぐ。店主の腰が砕けた。

 

 それ程の威光。それ程の気迫。それ程の武威。

 

 ニィッと獰猛さを感じさせる笑みを浮かべ、彼は堂々と店の中へと足を踏み入れた。

 

 そして彼は──()()()()()()は言う。

 

「その話、俺も混ぜてはくれねぇか? 南雲ハジメ」

 

 世の中にはこんな言葉がある。一難去ってまた一難。

 

 物の見事に現状に相応しい言葉が、ハジメの脳裏には浮かんでいた。




私はハジカオ系統のカップラーですが、その中でも『いざという時はハジメが攻めるけど、基本的には香織がハジメをタジタジにするハジカオ』が好みです。
原作からしてハジメの自覚ありの攻めって割と少ないんですよね。
無自覚か後手が基本スタイル。
なのでそれで考えると香織には基本後手…即ち受け!!(QED!)
結論、私は割りかしカオハジ部類に属する作者だったりします。
でも、いざって時はハジメ攻めなので実質ハジカオです(サムズアップ)

ちなみに此処でもちょいちょい二章以降への伏線を散りばめてたりします。
何処だろね?(ニコニコ)

次回も引き続き宴編です。
本来は一話にまとめる予定でしたが、作者は無駄に文字数が多いので普通にこの時点で一万字越えです。
うーむ、もう少しテンポを良くしたい。
登場人物がいつもより多いので、会話が無駄に膨らみました。
一応弁明はしておきます。
これでも減らしました(マジ)

一章がもうじき終わるので、自分の中で作品の流れを整理してたんですが、各章のラスボスが(かなり無理矢理ですが)七つの大罪(八つの枢要罪含む)に対応出来たんで作者は嬉しいです。
ちなみに光輝の区分は【憤怒】となります。
【嫉妬】に見えなくも無いですが、その辺りはもっと相応しい奴がいるので。
ちなみに全員原作キャラです!
ボス想定は全員で九人!
是非予想してみてね!
多分フルは当たらないから(煽ります)


ーー追記
マノエアキラ様
雲日様
紅海兎様
405soh405様
無限夢幻様
コリン様
Kaimax様
トコロテン様
キティー様
spica569様
バカヤロウ逃げるぞ様
sahala様
虚数地帯様
九十欠様
TSK BRAVER様
焼き鮭の極み様
デーモン政様
エービール様
沢山の評価、誠にありがとうございます!
計18人! 過去最高!
すごいね(語彙力消失)
並びに前回のアホみてぇな文字数から誤字を探してくださった誤字報告の皆様。
欲しがりの作者に感想(エサ)を投げつけてくれる読者の皆様!
全員に全身全霊の感謝を!
この作品はそう言った応援にて出来ております。
と言うか感想数も過去最大でした。
まさかの三十超えでした。
…すごいね!(再び語彙力崩壊)

これからも頑張ります!
ハジカオは終わらせねぇ!!

この作品、アナタは何メイン目的で読んでる?

  • ハジカオ!
  • オリジナル展開!
  • 成り上がり要素!
  • 考察要素!
  • 曇らせ!
  • 感想返し!
  • ダイレクトマーケティング!
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