はい、バグりました。私厨二野郎です。
というのも、書き直しをクソ程やりまして…結果書き終わったのが2/19の0:00という…。
要はついさっきです。
いつもならもっと余裕が有るのですが、ヤバかったです。
龍太郎、清水、ウォルペン…許さねぇ!!
書き直しの大まかがテメェらのせいなんだよ!!
三時間で6180字から10506字にした俺を褒めてくれ!!
兎も角どうぞ!
「───ふぅ」
訓練開始から一週間が過ぎた。何かと慣れた物で、座学・訓練共に前程の負担は無い。…未だに頭痛は鳴り止む気配は無いし、打撲の痛みは減る事が無いが。
そしていつも通りの戦闘訓練直前、ハジメは訓練場の床にて座禅を組みながらそう考えていた。体内魔力を練り上げ、操作していく。一つ一つを意識して、流れの本流を作り出すのだ。
これがまあ、何とも難しい。腕が千本出来て、それを絶えず操作している様なものだ。頭痛が酷い。
ただ体内魔力の操作が己の数少ないアドバンテージであることは理解している。なぜ自分は出来るのか、それは分からない。本来ならば“魔力操作”が無ければ出来ない芸当だ。魔法に才の無い自分が出来るというのは何ともおかしい話だ。
(何回も倒れたからか? …いや、予想しても仕方ないか。そもそも体と魔力の関係性はブラックボックス、考えても仕方がない)
ちなみに試してみたのだが、“錬成”の無詠唱は出来ない。あくまでもハジメができるのは体内魔力の流れ、それを意識する事だけだ。好きに操れる、と言うわけでは無い。あくまでも詠唱や技能を使わずとも体内魔力を意識出来るだけに過ぎない。
ただこの意識を鍛えていけば、そう言った操作にも繋がるかもしれない。そんな期待からしょっちゅう座禅を組んでは意識をして、体内魔力の流れを操ろうとしている訳だ。
ちなみに座禅は精神統一も兼ねてのものだ。思考を他に寄せない為にも静かな場所で、瞑目しながら座禅をし集中する。
部屋でする際はヘリーナの目が少し気になるが、何の妨害もして来ないのでありがたい。終わって目を開いたら部屋が凄まじく綺麗になっていた、と言うこともある。音も無く家事を済ませるヘリーナは改めて侍女として万能だと実感した。
ちなみにヘリーナは掃除や洗濯のみならず夜の飯も作り置いてくれている。朝はあまりにも早すぎるので、迷惑だとハジメが断ったのだ。
そもそもオタクエリート家系に生まれたハジメとしては、朝飯を抜く程度問題無い。その後の訓練で中の物をぶち撒ける事もあるのだから、尚更だ。
メルドさんの訓練、スパルタだからな。そう思いつつも体内魔力の制御を尚も試みるハジメ。
すると背後から掛かる声があった。
「よう、南雲」
待ち合わせていたメルドとは異なる声に振り向く。そこにいたのはクラス一の巨漢。同時にハジメにとっては意外な人物だ。
「…坂上くん?」
「おう、南雲。久々だな」
にかりと笑い、ハジメに手を振る龍太郎。釣られてハジメも手を掲げる。以前から特に関わりの無い相手である龍太郎、少しばかりハジメの胸に緊張が走る。
「どうしたの? こんな朝早くに」
「メルドさんから聞いてな。南雲が朝から訓練してるってよ。だったらオレも強くなりてぇし、一緒に受けさせて貰えねぇかなって」
「ああ、なる程」
龍太郎は良くある体育会脳、すなわちやる気至上主義である。そんな彼は特に己へ過酷な修行を課す。一度大会で負け、山籠りをしたと噂が流れる程だ。そんな話を聞けば飛びつくだろうと、寸分の疑いもなく納得する。
そうして静寂が流れる。特に交流も互いに無い相手だ。メルドが来るまでは恐らくこの空気は続くだろう。座禅を続けながらハジメはそう判断する。
しかしハジメの予想を他所に、龍太郎はハジメへ話し掛ける。
「…なぁ、南雲」
「? どうしたの、坂上くん?」
「…ありがとよ」
龍太郎の目は訓練場の奥へ。されど言葉はハジメへと向けられた物。
ぶっきらぼうだ。丁寧さなどかけらも無い。されど込められた感謝の丈は確かだ。
「言っちゃ悪いが、今まで俺は南雲はそんな人間じゃねーって思ってた。学校じゃ寝てばっかで、部活もしねーし。トータスに来てからも鍛えようとさえしなかった。香織や光輝が言っても構いやしねー…根性のねー奴だと思ってた」
それは紛れもない事実だ。あの頃は今の様に切迫しておらず、オタク生活を全ての指針として掲げていた。褒められた態度でも無かっただろう。
恐らくはあの頃に戻っても、ハジメは学校では顔を机に突っ伏せるだろう。ただ香織への対応がぞんざい過ぎたかとは思う。それは深く反省している。
ただそれ以外に関しては譲る気がまあ無い。なのでそう思う人もいるだろうなぁと諦めて、龍太郎の言葉にうんうんと頷いている。
龍太郎は「お前が頷くのかよ」と愚痴を吐き、それでもと付け加えた。
「でも、お前はベヒモスと戦った。弱い癖に。根性無しの癖に…戦えた。俺らが全員じゃなきゃ出来なかったのに、お前一人で足止めした。本気でスゲェって、そう思った」
龍太郎にとってハジメが正しい間違っているなどはどうでも良かった。嫉妬、謀略、恥辱。龍太郎にそれらは無縁。彼の思考はもっとシンプルだ。ただ一言で示せる。
「俺は、そんなお前がカッケェなってそう思ったんだ」
にかりと龍太郎はそう言って笑う。
香織、メルド、優花…ハジメを認めてくれる者は確かにいる。ただあまりにもストレートな言葉。思わず「おおぅ」とハジメは仰反る。ハジメの気分は目の前の『陽』により目潰しされた気分だ。「目がァ! 目がァア!!」だ。
そしてにかりと歯を出して、眩しいほどの笑顔でハジメを見る。
「だから南雲! もし手伝える事があったら言ってくれ! 手ぇ貸すぜ!」
「っ──!!? おぐぅ…背中がぁ」
「おぉ、悪りぃ! 平気か!!?」
バシンッと龍太郎の掌がハジメの背中を叩く。本人としては悪気のない、ただのコミュニケーションのつもりだろう。しかし貧弱たるハジメにはよく効いた。
蹲り背中をさするハジメ。手のひらを合わせ、謝る龍太郎。
何とも締まらない絵面のまま、そこにメルドがやって来た。メルドは目を丸くしたが、かつてよりも遥かに近くなった二人の距離に笑みを浮かべた。
なお、その後起きたのは騎士団長と『使徒』きっての近接戦エリートが付いての訓練だ。
当然ながら飲むポーションの量は増え…結果、優花に会って早々心配される事となるのだが、それはまた別のお話。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
それはそうと6日前、メルドは訓練後にある事をハジメへと伝えた。それは──
「──ウォルペン工房への紹介、かぁ」
「へぇ。それって凄い事じゃないの?」
「とは言えメルドさんの推薦あっての話だけどね…」
メルドの推薦先、ウォルペン工房は数ある王宮工房の中でも異色の工房と言われている。その理由は技術の革新、それへのあまりもの積極性故である。
ウォルペンは技術の糧になると思えば本気でやらかす。例えば盗賊、罪人、奴隷…他にも様々なアウトローを「技術があるから」それだけの理由で工房に引き入れる。そして引き入れた者達を己の息子娘と言い出す始末だ。
もしもウォルペンに“錬成”の実力が無ければ却下も言い渡せるのだろう。しかしウォルペンの実力は元から標準の遥か上であり、そうした人材を取り込む度に進化を続けている。また工房全体の技術力もトップクラス。
結果王国の上層部は何も言えず、ウォルペン工房は実質無法地帯となっている訳だ。
ちなみに言っておくとメルド=ロギンスとウォルペン=スタークは互いに昔からの知人らしい。ただしロギンス家が貴族の名家であるのに対し、スターク家は王都の住宅街に家を構える平民の家と真反対。それでも二人の豪放磊落な性格が見事に合致し、長年良くやっている訳である。
とは言えウォルペンのマイペースぶりはメルドの頭を痛める程。伝言の際に「出来る事ならば奴の所にお前を行かせたくは無かった…」とメルドが苦虫を噛んだ様な顔になっていた事をハジメは思い出した。
「…本当に僕、どうなるんだろ?」
「大丈夫? あとサーモンサンドどう?」
「バジル?がアクセントになってて美味しいよ、本当にありがとうございます」
「大袈裟よ、やめなさい」
メルドを曇らせる程のヤベー奴に戦慄しつつも、優花作の昼飯をハムハムする。やはりサーモンサンドは人類の叡智。当然美味い。
ハジメがリスの様に頬を膨らませ、サンドをもぐもぐしているのを見ながら、優花はふふっと笑う。
「だいじょーぶよ、アンタなら。どうせビックリ人間同士波長合うでしょ?」
「園部さ…いや、その扱いは何?」
「同じ班の清水から聞いたのよ、魔法学の知識量がおかしいって。で、その上メルドさんの訓練受けて、今回の工房行きでしょ? 無尽蔵体力持ちのビックリ人間に違いないじゃ無い」
「清水くぅうううん!!!!??」
励ましと見せかけた罵倒。しかも予想外の所で裏切りが発生していた事に目を見開くハジメ。あれ以降勉強会をし続けており、何だかんだ仲良くなったが故の弊害か。
サーモンサンドをごっくんして、ご馳走様をしてから嘆くハジメ。優花の微笑から「ぷぷっ」と声が漏れた。
ハジメがムスッとすると優花は片手で謝罪を軽く済ませる。そして思い出したかの様に清水の話題を出した。
「そういや、私が弁当あげた日から清水と南雲って仲良くなったのよね?」
「あ───、うん。勉強会はあの日から何だかんだやってるね。今日は工房の件があるから、予めゴメンって言っておいたけど」
「あの日からなのよね。清水が気持ち明るくなったのって」
「…そうなの?」
「そうなのよ」
ハジメの問い掛けにうんうんと頷く優花。優花と清水は同じ『愛子ちゃん護衛隊』のメンバーだ。彼等は迷宮探索の代わりに【豊穣の女神】畑山愛子の護衛として責務を全うしている訳だ。あの日からまだそれ程経っていない為、初仕事はまだだが近い内にはあるだろうとされている。
まあ、同じ班である事を考えれば優花と清水が交流しているのは当然の話。そしてハジメとしては最近仲良くしている清水の話は多少ながら気になるものであった。耳を傾けているのもそれ故だ。
「清水って元々、コミュニケーション取る気あんのかってくらい無口だったのよね。…口聞いたのって精々詠唱の時とかぐらい」
「へぇ、そうだったんだ」
「ただ…推定アンタと関わってから喋れる様になったのよね」
曰く、この前南雲が本棚に頭ぶつけた上、本棚が倒れかかった。曰く、南雲が『パヌティチキーの法則』を10回連続で噛んだ。曰く、南雲が座ってた椅子が急に壊れて尻餅ついた際に、勢い余って後転した。…などなど。
ハジメにとっては隠したい系の話であった。ハジメは思わず片手で顔を覆う。そして恨言を告げる。
「…清水くんめ、僕の恥ずかしい話ばっかりして」
「でも、お陰でちょっと安心したわよ? アンタもアイツも『友達』居るんだって」
「………………とも、ダチ?」
思えば自分、南雲ハジメに友人という者は居ただろうか。ハジメはそう思考し始める。父さん母さんの部下、小学校の頃話し掛けて来た同級生、引っ越した隣のゲーム好きなお兄さん…どれも友人とは違う気がした。
そして思考してわずか、ハジメは気がつく。己に友人が今までいなかったこと。そして清水との関係性は割とそれに近い事を。
その事実に思わずハッとするハジメ。雷にでも打たれた気分だ。
「…今気づいた、みたいな顔してるわね」
「僕は…今まで友達がいなかった?」
「…何言ってんのよ?」
予想だにしなかった事実に、わなわな震えるハジメ。しかしそれを聞くに先ほどまで慈悲にあふれていた優花の顔が、不服を露わにした。
「私も、アンタの事そう思ってるわよ?」
「………僕と、園部さんが?」
「そりゃあこっちに来るまで接点は無かったけど。それでも私はそう思ってるわ。傍にいて面白いからね」
南雲はそう思ってくれないの?と優花はハジメに口を尖らせた。
ハジメは今までの人生経験上友人経験がゼロだったが故に、『友人』と言う概念を神聖視している傾向があった。しかし確かに清水や優花との対話ではそれほど気を使っていない。素に近い自分でいられる。
優花の言葉。それを咀嚼し、理解し、納得した。
「…そっか、これが友達かぁ。何て言うか…凄くしっくり来た」
「そ? なら良かったわ。こっちの一方的な勘違いだったら羞恥ものよ」
優花そう胸を撫で下ろす。彼女なりに緊張したのだろうか。顔も僅かに朱色が差していた。
ただ、同時に思った。優花といる時は素でいられる。彼女との友人という関係性も言われてみればそうだと、すっと合点が行った。きっと清水も…あと雫や龍太郎に対してもハジメはそう思っている。
しかし、彼女は違った。彼女には見栄を張りたい。格好をつけたい。心のどこかで、そう思っている。
(…僕は、白崎さんの事をどう思ってるんだろうか?)
闇の中瞬く憧憬だ。嵐の中導く指針だ。これに嘘偽りは無い。
ただ己にとってそれでも言い表し切れない。それ程に白崎香織は特別で…。
ならばどう香織は特別なのか。それの答えは今のハジメには分からないことであった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「で、ここか…」
工房は王城から離れた場所にあった。炉を温めているのか、排煙管から灰色の煙が上昇している。キンコンカンコンと鉄を打つ音、匂いがそこら一体に広がっている。ハジメの目のハイライトがキラキラ輝く。
「うぉおおおお…」
そして何よりも…入り口より先はハジメにとって誇張なしに宝の山だった。
滅多にお目に掛からないような鉱石の数々が棚に並び、煌めいている。フラム鉱石、感応石、魔銀鉱…。レアもレアな代物ばかりだ。
こんな夢の光景(錬成師視点)が工房の入り口からすぐに広がっているというのだ。ハジメの目が更に光を帯びたのは言うまでもない。もはやピッカピカである。
「…坊主、感動しているのは分かったが早く行け。ウォルペンが待ってるのだぞ」
「すみません。今までショーケース越しにしか見たことが無かったので」
「…言い方は悪いかもしれんが、このような石ころがそれほど貴重な物なのか?」
「そりゃあそうですよ! こちらのタウル鉱石なんて滅多に見れない代物ですよ! それにこの緑光石もオルクス迷宮でしか取れない物でして、更にはこちらの──」
「あー、分かった分かった。分かったから早く進め、坊主」
ハジメが異世界に来て間もなく鉱石オタクになってることにメルドは半端諦め気味にスルーしながら、ハジメに先に行くよう促す。確かに待たせるのも悪いのでハジメも渋々と言った様子で進み始める。
「っ!?! アザンチウム鉱石!? グラム単位で幾万ルタとする代物がこんな塊で!? 流石王宮の工房! 凄い!」
「さっさと行くぞ! 坊主!」
超激レアな鉱石にハジメが「異世界来てから最高潮じゃね?」クラスの大興奮を見せる中、遂にメルドが切れた。鉱石オタクの蝸牛の如き歩みの遅さに耐え切れなかったらしい。
それでもなお棚に張り付こうとするハジメをメルドはズリズリと引っ張った。まるで我が儘なペットと飼い主の様子だ。先程よりも深い溜息がメルドの口から漏れた。
「だがまぁ、貴様のその様子ならウォルペンとも良く出来るだろうな」
「…?」
「似た物同士、と言うことだ」
メルドは「俺には理解出来んがな」と溜息をつきながら、数多くの錬成師達を傍目に真っ直ぐ突きすすむ。錬成師達はメルドという王国最高クラスの権威を持つ者相手にも関わらず「お疲れ様です」と一言。そしてすぐに手元の作業に没頭した。
「相変わらずだな」とメルドがボヤく中、ハジメは錬成師達の仕事を横切る度に目に焼き付けようと見た目、そして息を呑む。
(これがっ、最高峰の仕事!?)
ハジメの“錬成”で張り合えるとすれば速さだけであろうか。無駄の無い魔力の煌めき、彫られた魔法陣の滑らかさ、機能美、そして一切損なわれない見た目と全てが絶妙なバランスの上で成り立っている。
錬成師達の仕事がハジメに語りかけている様だ。一流の仕事とはこういうことだ、と。
ハジメが引き摺られながらもそれらを観察していると、不意にメルドが足を止めた。前を見ると他と比べてもなお格が違う作りの扉がそこにはあった。
「着いたぞ。ここがウォルペン専用の工房だ。大体奴はこの部屋に二十四時間いる」
どうやらハジメが職人達の腕に酔いしれている間に目的の場所へと辿り着いたらしい。
メルドは「お前が先に入れ」とアイコンタクトで促した。確かにこれから工房に入ろうとしている身だ。自分の手で扉を開けるのが筋という物だろう。
ゴクリとハジメの喉が鳴る。そして自身の手で部屋の扉に手を掛けた。
すうぅと息を吸ってハジメは扉を開き、溌剌と大きな声で挨拶をした。
「初めまして! ウォルペンさんの工房に入門を希望します、南雲ハジメといいま──」
「ふははははは! できたぞぅ!! これこそが剣杖融合準アーティファクト、『エクニール』だぁ!!」
「えっ!? 何それ、浪漫!」
「おおっ、テメェ話分かんな! こっち来い!」
「はいっ!! わー、魔法陣の形成が綺麗!」
「あったりめぇだろ! 俺ぁ棟梁だぞ! こだわらねぇ奴もいるが、やっぱ【錬成師】に求められるのは丁寧さだ! そう思うだろ?」
「加工用の魔法ですからね、素早さよりも丁寧さが求められるのは必然ですよね!」
「そうだそうだ! お前【錬成師】だろ!? これに“錬成”やってみろ!」
「へ? “錬成”! …うわっ、全く加工出来ない!? これって…」
「刀身の部分が封印石なんだよ! これにより魔法を斬るっていう対魔対策が一つ増え──」
「なる程、封印石なら魔力を弾く性質が──」
ワイワイガヤガヤ。秒殺で馴染んだハジメにメルドは死んだ目で呟く。
「…連れてきて正解だったか」
結果、この男の浪漫語りは一時間に亘り繰り広げられる事となった。なお途中から別の職人も混じり出し、更なる喧騒を見せた。それによりメルドは終わる頃にはげっそりとしていたそうな。
「えーっと、若干話し込んでしまいましたけど…改めまして、南雲ハジメです」
「丁寧な小僧だな。分かっちゃあいるだろうが俺がウォルペン=スタークだ。よろしくな」
二人は散々ロマンを語り合った後、ようやく本題を思い出したのか事務室へと入り、挨拶を交わした。メルドの「若干は違うだろう」と言うぼやきは無視する事とする。
名前を聞けばハジメが王都で【裏切り者】とされているその人だと分かる筈だというのに、ウォルペンは顔をしかめる事もなく単に頷いた。
元々接点があった人間は兎も角、初対面の人間からはその外聞により邪険にされる事が多々とあるハジメ。だがウォルペンはハジメの外聞など気にしていないとばかりに話を続ける。
「で? お前は俺の工房に入りたい、そうだよな?」
「はいっ! それで試験は一体何で──」
「そんじゃあ合格。これからよろしくな、小僧」
「……………はい?」
「…む?」
事前に聞いていた話とは全く異なるスムーズさに目を丸くするハジメ。そしてハジメほどでは無いが、メルドもまた眉を顰める。
「何だ? 文句あんのか?」
「いや、いつものお前なら『贔屓何か知らん、とりあえず実力見せろ』とか言いそうだったからな。意外だったのだ」
「ああ、なる程。とは言えもうテストは済んだ様なもんだしなぁ」
「そうなのか?」
ほら、さっき武器の話してただろ? と嘯くウォルペン。まさかあれが試験だとは思っていなかったハジメ、メルドの二名は「あれか!?」と今更になって気が付いた。
「まあ何よりも『上位世界人』ってトコだな。要は文化が根本から違うんだ。新しい道具のアイディアとかバンバン出せるだろ。こっちからすりゃそれ程魅力的なモンはねぇからな」
当然ながらトータスと地球では文化が乖離している。主要なエネルギーも当然だが、需要や独自性、デザイン。何もかもが異なる。そしてハジメがいれば、その異なる文化が容易に得られるだろう。ウォルペンはそれを求めているのだ。
ただし引っかかる部分もある。ハジメが抱いたそれは代わりにメルドが言語化した。
「ほう? つまりはアイディアマンとしての雇用か?」
そう、要は技術を求められたというわけでは無いという話だ。雇用以上を求めるのは我がままだと思うが、それでも…と複雑さがハジメの中に宿った。
しかしそのメルドの言葉をウォルペンが訂正する。
「落ち着け、主目的がそれだけだったら他の『使徒』に協力依頼して終わりだ。わざわざ給料渡して雇わねぇよ。コイツにゃ将来性を期待してんだよ」
「将来性とな?」
「ああ、この小僧は“錬成”の知識量も十分だ。鉱石、魔法陣制作、錬成作業…さっきの俺の話題に簡単に乗っかれる程度にはある。知識がねぇ奴はいつものお前みたいに頷くだけだ」
「気付いているのなら俺に研究成果を論じるな、ストレスなんだぞ…」
「で、コイツの“錬成”は現状独学だそうだな。確かに粗もある。とても一流とは言えねぇ。…だが独学で
ちなみに基本五式とは属性・威力・射程・範囲・魔力吸収(消費する魔力量)の事である。“錬成”の場合、威力は変形の度合いに代わるがおおよそ違いはない。
一見ただの基礎のように思えるが侮ることなかれ。これらの調整はかなり困難だ。普通ならば何年も何年も時間をかけ最適解へと近づけていく。独学ともなれば下手な癖がつき、その矯正にも時間がかかることが多いのだそうだ。
しかしハジメにはその癖が少なく、かつ適切な処置も行えているのだそうだ。ウォルペンは続ける。
「恐らく少ない魔力量だからこそ自然と最適解を求めたんだろうな。ハッハァ! よく一か月も満たねぇ程度でここまで研究したもんだ!」
わしゃわしゃと雑にハジメの頭をなで、ウォルペンは笑う。それは裏表の無い豪快なものだった。
「小僧、お前の魔力量は錬成師の中でも少ない方だ。そんでもって錬成師にも魔力量主義の奴はいる。これから差別も受けるかもしんねぇ。噂聞いて馬鹿にしてくるかもしれねぇ。そんなオメェにアドバイスをやろう」
ウォルペンの笑みが悪ガキの様な物に変化する。ただそれは同時に覇者の笑みでもある。この世で飽きるほど存在する【錬成師】、その頂点に君臨する者の顔。
「実力で黙らせろ。コネコネうるせぇ奴らも、神神言ってる奴らも黙らせるぐれぇにだ! うちの工房の奴らは全員そうして来た。だからうちに入るってならそんぐらいには成って貰うぞ」
ウォルペンの瞳がハジメを捕らえる。吸い込まれるほどのカリスマが、傲慢さがその眼光に込められている。
そしてその言葉は酷く野蛮だ。弱肉強食にも程がある。以前までのハジメならば返事に戸惑ったかもしれない。
しかしハジメはそのウォルペンの言葉に──
──力も名誉も手に入れて! 才能なんて関係なくなるくらい強くなって! 世界が認めたくなくても認めざるを得ないぐらいに成り上がって──僕は君の横に立つ!
あまりにも似ていた。あの日、彼女へと捧げた言葉に。己の指針、そのままそっくりで。
「いいですね、それ。凄く
気が付けばハジメはウォルペンにそう言っていた。
爛々とハジメの目に眼光が灯る。楽しげで、愚かで、何よりも闘争的な瞳。その目にウォルペンはニヤリと笑みを返す。
「そんじゃま…“錬成”耐久テストだ。魔力が尽きるまでこの鉱石に出力し続けろ」
「──はいっ!!」
置かれた鉱石は先ほどハジメが触れた封印石。難易度は最上級。駆け出しの錬成師がするものではない。ハジメもよくそれを知っている。
しかしこんなところで躓いて良い筈がない。
蒼く蒼く。ハジメが魔力を両の手、その手袋へと宿す。そして声高くハジメは叫んだ。
「“錬成”!!」
蒼く蒼く。火花が散る。
その輝きは鮮烈にハジメの網膜を焼いた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ヘリーナ、南雲様はここ最近どうですか?」
──お嬢様にそう問われ、私は答えるのに少し困ってしまった。
私、ヘリーナはリリアーナお嬢様の【傍付き】にして、現在南雲ハジメの専属侍女を務めている。
初めはただただ監視を務めるのみ、侍女の役割はそれのカモフラージュにしか過ぎなかった。
しかしどうも南雲ハジメという人間はどうも危なっかしい。
というのも初日部屋の至る所に茶色く変色した、中には真新しい、血痕が残っていたこと。魔法陣が書かれた紙が剥き出しの上、山積みで放置されていたこと。更には睡眠時間の豪快な削り方…年頃の男子がこれで良いものかと、監視している私が思うほどだった。
…睡眠時間に関してはお嬢様もだ。私が主とする人間はどうしてこうも睡眠を怠るのか。
兎も角気が付けば監視を忘れ、南雲ハジメの助力をしていた。
当然監視も忘れてはいない。…ただ監視を進める程に、ただの心優しく臆病で、それでも一生懸命な子供なのだと思わされた。
恐らく教皇の言っていた宣言、あれは偽りなのだろう。私もお嬢様もそう考えている。
だとするならば、南雲ハジメ。彼はどれほど理不尽な状況にあったのか。そしてそれでもなお立ち上がろうとしているのは何故なのだろうか。
今南雲ハジメは戦闘訓練、座学、そして“錬成”。多種多様、そして多忙極まりなく彼は努力している。
そしてそれほどの中、なお南雲ハジメの瞳はまっすぐだ。それこそお嬢様を彷彿とさせるほどに。
「そうですね。まず朝は──」
報告しつつも私は思う。私にとって一番目に大切な時間はお嬢様に仕える時。それは絶対だ。過去十数年の中誓った忠誠、それが色褪せることなどありえない。
ただ二番目は?と尋ねられたなら、今の私はこう答えるだろう。南雲ハジメに仕える時だと。
南雲ハジメは見ていて飽きが来ない。我武者羅で真っ直ぐで、楽しげで。ついつい目を奪われる。
だからこそ不躾ながらもこうも思う。もしお嬢様の婚約者が南雲ハジメになれば、私にとってそれほど良いものは無いだろうと。
お嬢様と南雲ハジメは似ている。真っ直ぐで自己犠牲が強く、なんといっても我が強い。だがその我は常に大切なもののためにある。
勿論不可能であることは知っている。お嬢様には既に帝国に婚約者がいる。愛のない、そして恐らく不自由なものが。
私の忠誠に陰りは無い。どうなろうとお嬢様が私の全て。
だからせめて、せめて願いたい。あと僅かなお嬢様の自由が一生の思い出となることを。
そして願わくはお嬢様の自由を。
そして願ってしまっている。お嬢様に掛かる楔、それを誰かが解くことを。
…誰よりも矮小な彼に望んでしまっているのだから。
うーむ、取ってつけた様なハジカオ成分。
ハジユウが多いったらありゃしない。
前半はまだまだ続くが優花さんのヒロインシーンもまだあるし、他のヒロインも…
それに対して会えない香織さん、可愛そう…
ただハジメの根本に「白崎さんに認めてもらえた」「白崎さんの隣に居たい」てのが有るから、ハジメくんがグレない限りはこの作品は永劫ハジカオです。(真顔)
友達が増えたハジメくん、よかったね!
なお、なんだかんだ理解してくれた、リリアーナ、ヘリーナでした。
なんでこんな急にヘリーナさん視点を足したかって?
それはね…
次回! ヘリーナフラグを立てよう!(大嘘)(リリアーナです)
この作品、アナタは何メイン目的で読んでる?
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ハジカオ!
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オリジナル展開!
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成り上がり要素!
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考察要素!
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曇らせ!
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感想返し!
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ダイレクトマーケティング!