ーーーーーーこのステージで、光輝くために。








アニポケヒロインの中で一番好きな子をセレナと出会わせたかっただけの話。

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バトンタッチ

 

 

スランプ、ではないと思った。

 

テールナーも、ヤンチャムもニンフィアも、もちろん私も調子は最高。

 

新天地なんだから、いつもよりやる気が出るのは当たり前だよね。

 

出来る限りのパフォーマンスはできたはず。

 

なのになんだろう、この不安は。

 

 

 

 

 

 

『優勝は……コガネシティ出身のルビー君!』

 

また別の人の名前が呼ばれる。

 

もう何回目だろうか。

 

私はゆっくりとため息をついて、傍らのテールナーに「またダメだったね」と呟く。

 

さっと荷物を纏め、控え室を出る。会場のエントランスでロッカーの鍵を返し、なんとなくベンチに座った。

 

目の前のモニターには、優勝した少年とミロカロスが映っている。

 

ちょっとだけ泣きそうになって、胸元の青いリボンを握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

ポケモンコンテストの本番、ホウエンに来て早2ヶ月。

 

パフォーマーの道を極めるべく、私は既に6度コンテストに参加した。

 

結果は全部一次落ち。

 

たった6回だけど、私の今まで培ってきた物とか、そういう自信みたいなものを打ち砕くのには十分だった。ぜったいに勝てると思ってた訳じゃないけど、せめて一次は越えたいと、いや越えられると思ってた。

 

なによりも問題なのは、何処がダメなのかがわからない。

 

自分のできる最高のパフォーマンスをしたのにも関わらず落ちてしまう。

 

うっすらと自分のパフォーマンスに何か違和感を感じるけど、その正体がハッキリしないのだ。

 

負けるたび、どうしようもない疲労感と悔しさがこみ上げる。

 

そのたびに青いリボンに力をもらっては、無理矢理前を向く。

 

だけどそろそろ限界だった。

 

こらえていた涙が溢れそうになって、思わず目に手を当てる。横からテールナーが

 

「大丈夫?」

 

と言うように鳴いているが、ごめんね、としか返せない。

 

 

ーーーーーーーダメ、泣いちゃダメ。

 

魅力的な女性になってまた会うと彼に約束したんだから。

 

俯いちゃダメ、前を向かなくちゃ。

 

大丈夫、私はまだやれるーーーーーーーーー

 

 

 

 

「ねえあなた、だいじょうぶ?」

 

自分の声でも、もちろんテールナーの声でもない声がした。

 

慌ててそちらを見れば、ロングヘアーの少女が心配そうにこちらを見ている。

 

コンテストの参加者だろうか。ともかく心配してくれているようなので笑って答える。

 

「ええ、大丈夫よ。負けが続いてちょっと疲れてただけ!ありがとうね!」

 

すると少女はちょっと眉を潜めて、

 

「ウソ。ぜんぜんだいじょばないって顔してるもの!ほら!」

 

と鏡をつき出す。そこに写っていたのは、無理して笑っているのがバレバレの、今にも泣きそうな私の顔だった。

 

「ね?……なんで我慢するの?悔しいときは泣かなくちゃダメよ」

 

私の隣に座った少女は、慰めるかのように言った。

 

「でも…………泣いたら、立ち止まっちゃうわ。もう泣かないって、前を向くってずっと前に決めたんだもの」

 

そう。あのヒヨクシティで泣いて、髪を切って。

 

前を向いて、どんなに苦しくても越えてみせると誓ったのだから。

 

ちょっと勝てないからって泣くわけにはいかない。

 

そう思っていると、隣から「それは違うと思うわ」との声。

 

「『泣かない』と『前を向く』って、全然違う。だって、泣くのは悔しい時とか悲しい時でしょ。それをやめちゃったら、悔しさも悲しさもずっと心に残っちゃうわ。それこそ前を向いて歩けないじゃない」

 

「それは……」

 

「へこんじゃったら泣いていいの。だって、悔しいの歩悲しいのも自分の生きた時なんだもん。それを心に刻んで、乗り越えるために次への一歩を踏み出す。それが大事だと、あたしは思うわ」

 

 

 

なにも言えなかった。

 

彼女の言うことは正しい。実際、私はずっと「なんで」「どうして」と自問自答を繰り返していたのだから。

 

そんな状況でいいパフォーマンスなんてできるはずもない。

 

気付けなかった自分が恥ずかしかった。

 

 

 

「………あなたの言う通りだわ。私、ずっと後悔しかしてなかった。越えるための努力をしてなかったの。……うん、初心に返ってみる。きっとまだ見えてないものがあるはずだから」

 

私がそう言うと、彼女はにっこり笑って

 

「頑張ってね!きっと今のあなたならだいじょうぶ!」

 

と返す。

 

 

 

 

「あ、ついでなんだけど………あなた、テールナーで出場してたわよね?」

 

「え?…ええ、そうだけど」

 

「これ。ちょっと見てみて」

 

そう言ってタブレットを取り出し、なにやら動画を再生する。

 

まず再生されたのは私のパフォーマンス。

 

テールナーのだいもんじとサイケこうせんのフィニッシュで、中々にうまくいっていた。

 

次に優勝した少年のパフォーマンス。

 

ボールカプセルは泡模様で、その中央からミロカロスが飛び出す。と同時にみずのはどうを放ち、ステージに取り付けられたプールに当てた。そこですかさずふぶき。水しぶきが凍り付き、キラキラと輝いて見える。それに拍車をかけるようにミラーコート。

 

誰もが美しい、と言うような見事なパフォーマンスだった。

 

「さーて、ここで問題。あなたと彼の違いはなに?」

 

少女は動画を止めて私に訊いた。

 

「何って………まず、出しているポケモン。使ってるわざ。あとは………ステージの使い方?」

 

「そう。この際最初の二つも最後の「ステージの使い方」に含まれるの。コンテストではどんな状況でもポケモンを美しく見せる、っていう観点でも見るために、ステージに何らかの工夫がある場合が多いわ。それを生かせれば、ぐっと優勝に近付くの」

 

それと、と続けて少女はまたもやバッグを漁る。

 

取り出したのはボックス型のケースと、ちょうど握りやすい大きさの細長いケース。

 

「これ、なにか知ってる?」

 

「ううん、何かの入れ物…?」

 

すると少女は細長いケースから色とりどりの小さなキューブを、もう一方からこれまたカラフルな手のひらサイズの焼き菓子を取り出した。

 

「ポロックとポフィンっていうの。食べたポケモンのコンディションを上げるお菓子よ。赤はかっこよさ、青は美しさ。ピンクは可愛さで、緑は賢さ。それに黄色はたくましさを磨いてくれるわ」

 

コンテストの必需品なの、作るのは案外簡単だから試してみて、と付け加えて彼女はそれらをバッグにしまう。

 

と、いきなり少女は立ち上がる。

 

「さて、と。こんなもんかしら!……あなたのパフォーマンス、すごく素敵だったわ。素敵だけど、キチンと評価されないとコンテストでは勝てない。今教えたのはあなたのパフォーマンスを得点に変換するための技術なの。それを忘れないで。長々と一方的に話しちゃってごめんね!」

 

そう言って立ち去ろうとする少女に思わず、「待って!」と声をかけた。

 

「なんで、私にそれを教えてくれたの?」

 

彼女が私にかまう必要なんてどこにもなかったはず。それなのに励ましてくれて、更に技術まで教えてくれたのだ。自分が努力を重ねて身につけた技術を。

 

見ず知らずの人にそこまでするだろうか。

 

 

その問いの答えはちょっと笑った顔と、「わかんない。でも、あたしも前に落ち込んじゃった時があったの。その時の自分とちょっと重ねちゃったのかも」という言葉だった。

 

 

 

「その時、あたしもある人に助けてもらって、励ましてもらったの。だからつぎはあたしの番かなって!」

 

笑顔で続けて、今度こそ「じゃあね!」と歩き出す少女。

 

ーーーーーーー彼にどことなく、似てたなぁ。

 

頭を下げながら青いリボンを握った。

 

彼女の名前を聞き忘れたけれど、きっとどこかでまた会える。

 

なんとなく、そんな気がする。

 

 

その時には、私も誰かを助けられてるといいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間後。

 

ステージ裏で出番を待っていた私は、会場のアナウンスに耳を傾ける。

 

『続いてはエントリーナンバー5番!セレナさんです!』

 

歓声が響く中、目を瞑って一言呟く。

 

「絶対大丈夫!」

 

彼女が何度も口に出していた言葉。

 

私は目を開いて、ステージへと飛び出す。

 

 

大切な仲間と、輝くために。

 

 

 

 

 

 

 






ナンバー5。個人的には2と3の子が好きです。

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