加えて、お気に入り件数も7000を越えました。
ここまで応援してくださり本当にありがとうございます。
粗を探せばいくらでも出てくるような拙作ですが、これからも暇で仕方ない時にでも読んでいただけると幸いです。
「教師としてのオールマイトはどんな感じですか?」
「フハハハハハ!! 貴様、我になんの対価もなく意見を求めるとは、いい度胸をしているな?」
「……へ?」
その記者は最初、彼が雄英の生徒であるとは分からなかった。
見た目からは判別がつかない。
なぜなら彼は妙な服装であり、雄英の制服を着ていなかったからだ。
不気味な迫力とオーラがあり、彼の通る道を記者が塞ぐことは無かった。
だが、彼はそのまま雄英の門をくぐろうとしたのだ。
ならば話を聞く。
必ずコメントを貰う。
記者という職業は、多少の恐怖に臆していては務まらないのである。
それは、まだ新人としての域を出ない彼女が抱く信念そのもの。
しかし、その結果は予想外のもの。
見た目通りと言えば見た目通りの返答が返ってきたのである。
彼女自身だけでなく、彼の放つ独特のオーラにあてられ、周りの記者にまでも困惑の波は広がっていく。
そんな時───
「あぁ、コイツの代わりにウチが答えますよ? なんスか?」
雄英の制服を着た女の子が現れた。
耳にイヤホンジャックのある女の子だ。
奇妙な服装を着た彼の身長が高いこともあり、とても小柄に見えてしまう。
その女の子が現れたことにより、多くの者は放心状態から回復した。
「きょ、教師としてのオールマイトはどんな感じですか?」
少し噛んでしまったが問題はないだろう。
「あー、いい感じスね。それじゃ授業に遅刻するとまずいんで」
それだけを言うと、その女の子は奇妙な服の男を連れて雄英の門をくぐって行ってしまった。
「あ、ちょ、ちょっと!!」
「おい、別の雄英生があっちから歩いてくるぞ!」
「あーもう! 了解です!」
そしてまた記者の女性は走る。
次こそは良いネタをものにできると信じて。
++++++++++
「よくやったぞ、響香。あの下賎な者共は見るに堪えんと思っておったところだ」
「まあウチも好きってわけじゃないからね、マスコミ」
あぁ、助かった。
マスコミって苦手だわほんと。
マジでどうしよかと焦ったー。
響香が来てくれて助かった。
教室に入り、朝から疲れたなーと思いながら席に向かっていると、ぱっちりとした目の女子に話しかけられた。
「おはよう響香ちゃん、破魔矢ちゃん」
「おはよー」
「出迎えご苦労、蛙の娘よ」
「梅雨ちゃんと呼んで」
いやすんません、それだけは本当に無理です。
そう言ってくれてめちゃくちゃ嬉しいんだけどね。
てかこの子何気にコミュ力くそ高いんだよなー。
だいたいの奴とはもう普通に喋ってるし。
「それにしても、今日の報道陣の数は凄いわね。しばらくの間、登下校時はこんな感じかも知れないわ」
「ホントだよねー。正直少しウザったいよ、アレは」
「でもプロヒーローになったら沢山のインタビューを受ける事になるのだから、今のうちにメディアに慣れておくのも悪くない手だと思うわ、けろ」
なるほどな。
確かにそうだわ。
有名になればなるほどそういう対応も必要になる。
ぶっちゃけこんな怪しさてんこ盛りの俺が人気ヒーローになるとは到底思えないが、プロヒーローになれば少なからずメディアとは関わっていくことになる。
この子意識たっかー。
「確かにその通りだな、蛙の娘よ。我を納得させるとは見事だ」
そう言って俺は───
「……けろ。少し恥ずかしいわ……破魔矢ちゃん」
なぜか俺の右手は蛙水の頭を撫でていた。
…………。
もう嫌だ本当に……。
「ちょっとアンタ!! 女子にそんな気安く触んなって!!」
響香が俺の右手を無理やり引き離す。
ナイスだ響香!!
もうほんとナイスすぎる!!
「なんだ響香、お前もやって欲しいのか? ほれ、やってやらんこともないぞ?」
「うっさいバカ!! アンタもう大人しく席に座ってろ!!」
「響香ちゃん、大丈夫よ。……不思議なのだけど、その、そんなに嫌ではないの。それどころか……むしろ安心感のようなものを────」
「ほれ、蛙の娘もこう言っているぞ?」
「だああ!! もう早く座って!!」
そう言って、響香は俺の背を無理やり押していく。
てか薄々思ってたけど俺って……女子に気安すぎでは!?!?
今まで響香以外と絡んだことなんてほぼないから分からんかった。
奇跡的にみんなが寛大だけど、このままじゃ女子から嫌われるまで秒読み。
となると、頼みは幼馴染みの響香だけ!!
俺の楽しい学校生活の生命線は響香だったんだ!!
その事をまず伝えとこう。
「案ずるな。貴様以上に我が信頼している者などおらんよ」
「──っ。は、はァ!? 何言ってんのアンタ。マジ訳わかんない事ばっか言ってないでもう大人しくしてて」
なぜか俺を押す力が強くなった。
あれ、今のは割と伝えられたはずなんだけど。
席に着き、響香の顔を見るとなぜか頬が少し赤みがかっていた。
風邪ではないのかと聞こうとしたが、その前に響香は慌ただしく自分の席へと行ってしまった。
……また怒らせてしまってないか不安なんですけど……。
++++++++++
朝のHRでは相澤先生から昨日の戦闘訓練についての小言を言われたあと、学級委員長を決めろと言われた。
俺は正直こんなのやりたくない。
つくづくヒーローに向いていないなと思う。
だから俺は、めちゃくちゃやりたそうだったメガネくんに票を入れておいた。
1票入ってる!? と言って喜んでたっぽいから良かったんじゃないかと思う。
まあ、どのみち委員長にも副委員長にもなれてなくて落ち込んでいたけど。
結局、緑谷が3票を獲得して委員長に、八百万という女子が2票を獲得して副委員長に決定した。
いいんじゃねーのって感じ。
緑谷はなんだかんだ責任感とかありそうだし、優柔不断なところはしっかりしてそうなあの女子がカバーするだろ。
……ただ、一つだけ不思議なことがあった。
俺に1票入っていたことだ。
一体誰が入れたんだ……と思っていると、あっという間に午前の授業が終わり、昼休みとなった。
俺は弁当を広げる。
ちなみに、クラスでも特に仲良くなった上鳴と峰田は学食派なのでいない。
この時いつも不安なんだ。
俺のコミュ力じゃ自分から一緒に食べようと誘うことができないから。
今のところ響香が一緒に食べてくれるのだが、アイツは友達が多い。
いつ来てくれなくなってもおかしくな───
「ういス」
……来てくれた。
ほんっと良い奴。
きっと俺があまりに惨めで可哀想な奴だから見るに堪えなくて、一緒に食べてくれるんだ。
なんて良い奴なんだ響香マジで。
「待っていたぞ、我が眷属響香よ。貴様と食事を共にするのは悪くない」
「……あっそ」
「あぁ、そうだ」
「ウチも……別に嫌では───」
その時、まさかな事が起こった。
「響香ちゃん! 破魔矢くん! 私も一緒に食べていい?」
葉隠がまさかの登場。
嘘だろおいこんなことってあるかよッ!?
昨日の戦闘訓練であんなことしたんだ。
変態クソ野郎と思われていてもおかしくない。
なのに、そんな俺と……一緒に食べてていい? だと。
奇跡かよ!!
そんなのいいに決まって───
───俺は見てしまった。
瞬きする程の一瞬。
ほんの一瞬だけ───響香が悲しそうな顔をした。
「いいに決まってんじゃん。ね、破魔矢アンタもいいっしょ?」
「あ、あぁ……」
「やったー! やっぱお弁当はみんなで食べる方が美味しいもんね!」
それから俺たちは弁当を食べた。
葉隠はめちゃくちゃ明るい女子だった。
なんかいるだけで会話が盛り上がるというか、雰囲気が楽しげになるというか。
ただ、俺は響香のあの悲しげな顔が頭から離れなくて、会話の内容がイマイチ入ってこなかった。
女子2人と弁当を食べるという、極めてリア充な状況だというのに。
「ん? どうしたのアンタ、ぼーっとして?」
「破魔矢くん大丈夫ー??」
2人が話しかけてくる。
俺は一旦そのことは忘れることにした。
俺のせいで空気を悪くしてはいけない。
「あぁ、少し考え事をしていた。───ときに響香よ、我に票を入れたのは貴様か?」
気になっていたことをとりあえず聞いてみることにした。
まあ俺に入れるのなんて響香くらいなもんだから、たぶんそうだろうなーと思いつつ。
「え、違うけど。ウチは普通に自分に入れた。てかアンタそういうのやりたいタイプじゃないって知ってるし」
まさかの不正解。
顔には多分微塵もでてないけど、結構驚いていた。
でもやっぱ響香は俺の事をわかっているな。
さすが幼馴染み。
「ほう、そうか。ならば一体誰が……」
「あ、それ私だよ!」
えー、まさかの葉隠。
一体なぜ俺?
てか昨日のことがプレイバックしてまともに顔見れないんですけど。
いや、そもそも物理的に見えないけど。
逆に葉隠はなんでこんな余裕なんだろう、と俺は思った。
「貴様だったのか。なぜ我に入れたのだ?」
「え! そ、それ聴いちゃう……? えっとね、その、破魔矢くんは───」
その時、突然校内放送用のスピーカーから警報が鳴り響いた。
教室に残っていたクラスメイトたちがなんだなんだと騒ぎ出す。
『セキュリティー3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外に避難して下さい』
スピーカーから避難指示が流れる。
なんだよセキュリティー3て。
どのくらいヤバい状況なのかがわからん。
「屋外ってどこにいけばいいの?」
「ななな、なんか凄いことになっちゃったね! どうしよ破魔矢くん!」
「落ち着け、慌てる必要などなかろう。 この魔王である我がいるのだぞ? 何を恐れることがあるというのだ?」
「そ、そうだよね……破魔矢くんがいるもんね……」
何言ってんだ俺はバカタレ。
葉隠が呆れてるわ。
なぜかさっきまで元気だったのに声も小さくなっとるがな。
いやでもマジでどうすればいいんだろ。
割と普通に困っていると───
「あら? ねぇ皆、窓の外を見てちょうだい。アレただのマスコミよ」
蛙水の声が聞こえた。
「あ、ホントだ! 相澤先生とマイク先生が対処にあたっているみたいだね!」
「なんだよマスコミかよ〜。心配して損したぜ」
その言葉にようやく皆が落ち着きを取り戻した。
席に戻り食事を再開する者、マスコミの様子を窓から確認する者。
行動は様々だが先程での緊張感はすでにない。
「チッ、つまんねーな!!」
爆発不良の声が聞こえた。
何がつまらないのだろうか、と俺は思ったが絶対に口にはしない。
絡まれたくない。
ふと後ろを見れば、爆豪は一人で飯を食ってる様子だったので、俺はバレないように勝ち誇った視線を送ってやった。
その後、放課後のHRで緑谷があのメガネくんの方が学級委員長には適任だと告げた。
どうやら昼食時の騒ぎを鎮めるのに一役かったらしい。
その様子を上鳴たちも見ていたようだ。
結局反対意見は出ず、委員長はメガネくんになった。
そういえば、あのとき葉隠はなんて言おうとしたのだろうか?
なんで俺なんかに票を入れたんだろ。
そんなことを考えながら帰り支度を始めた。
お読みいただきありがとうございました。