偉大な先駆者の方々が多く存在する中で、これだけの方にお読みいただいていることに作者として喜びを隠せません。
本当にありがとうございます。
これからもマイペースに書いていきますので、よろしくお願いします。
──爆豪勝己side──
今の俺じゃあ、どう足掻いてもコイツには勝てねェ。
そう思っちまったのは、USJでアイツが脳無とかいうヴィランと戦ってんのを見ちまった時だ。
……いや、違ぇ。
これはそんな生易しいもんじゃねぇ。
俺は……俺は、アイツにずっと勝てないんじゃないかって───
───ザッけんなクソがッ!!
そのあと来たオールマイトが戦ってんのを見た。
これがプロの本気か、と思った。
俺がガキの頃から憧れた姿がそこにはあった。
……だが、はっきり言ってそこまでの衝撃はなかった。
アイツの戦いを先に見ちまったからだ。
オールマイトの雰囲気や迫力とは全く違ぇ。
むしろアイツのは真逆だ。
似ても似つかねぇ。
……なのに、その圧倒的存在感だけは同じ。
───クソがクソがクソがクソがッ!!!!
視界に映らねェようにしても嫌でも映っちまう。
考えないようにしても考えちまう。
あの時のアイツの戦う姿が、脳裏に焼き付いて消えやしねェ。
マジで腹が立つクソが。
必ずコイツを越えて俺がトップになってやる。
俺は現状を受け入れ、この胸糞悪い感情を無理やり噛み殺して糧にしたんだ。
なのによォ……クソムカつくんだよテメェのその“目”が。
その、自分と同じ土俵には誰もいないかのような。
全てを俯瞰してるようなその目がよォ────
「腹が立って仕方ねぇんだよクソがぁぁあああッ!!!!」
───BOOM!!
俺より今は強ェ、あのクソローブ野郎。
アイツの目には誰も映ってねェ。
誰一人として気にもとめちゃいねェ。
だが───アイツの視界にごく稀にだが唯一映る奴がいる。
───“デク”だ。
「なんでデクなんだぁ……俺は眼中にねェッてかクソが死ねやッ!!!!」
『おっと独走状態の破魔矢、早くも最終関門!! その後を追うのはともに1-A、爆豪勝己と轟焦凍!! こりゃあ熱戦だぜッ!!』
遠くに映るその姿。
あまりにも……遠い。
「よそ見か? 余裕だな」
「うるせぇ話しかけんな死ねッ!! 半分野郎ッ!!」
この障害物競走、空を自在に飛べるクソローブには有利すぎる内容。
特性上スロースターター、しかも持続力で欠ける俺の個性じゃ機動力で後れをとることは最初から分かっていた。
だが俺の視界にアイツは捉えてる。
身体もだいぶ温まってきた。
仕掛けるなら最終盤のここしかねぇッ!!
俺はギアを一段上げた。
『最終関門、その正体は……ここが戦場!! 怒りのアフガンだァ!! 地面には地雷ッ!! 上空にはミサイルが待ち受けているぞ!! 気をつけろよ破魔矢ッ!! YEAH!!』
ミサイルが四方八方からクソローブに迫っているのが見える。
アイツはどういうわけか動きを止めた。
どうでもいい。
これはチャンスだ。
『ここで爆豪、轟も最終関門突入ッ!! 地雷の位置はよく見りゃ分かる仕様になっているぞ!! 目と足を酷使しろ!! 地雷もミサイルも派手な音と見た目だから、失禁必至だぜ!!』
『それは人によるだろ』
『おぉっと動きを止めたぞ破魔矢ッ!! そんなことはお構い無しと大量のミサイルが迫るッ!! さぁどうするッ!?』
あそこまでミサイルに囲まれてたら、全て破壊しようがどうしたって爆風の影響は免れねぇ。
独走がアダとなりやがった。
俺は地上ギリギリならミサイルが反応しないことを確認しながら、爆破の威力をさらに強めた。
半分野郎も後続なんておかまいなしとばかりに、氷結を推進力にして高速で移動しやがる。
クソ、引き離せねェッ!
その時───
───アイツが全てのミサイルを凍らせるのが見えた。
『シヴィーッ!! 全てのミサイルを凍りつかせたァッ!! もう何でもアリだな破魔矢ッ!! 障害物なんてないってかッ!?』
チラり、とアイツが俺の方を見た。
そしてすぐさま───
───『バイキルト』
確かにアイツはそう呟いた。
その瞬間、今までとは比べもんにならねぇ程アイツは加速した。
まだ俺とアイツはかなり距離があるはずなのに、馬鹿みてぇな暴風が吹き荒れた。
……は?
……なんだそれ?
なら今までアイツは───
「舐めプしやがってクソがぁぁあああッ!!!!」
クソローブの姿はあっという間に見えなくなった。
そして聴こえてくるアイツの1位を告げる声。
俺が求めた完膚なきまでの1位。
アイツはそれをあっさりと実現しやがった。
ザッけんなザッけんな……ザッけんな……。
本気も出してねェアイツに……俺は───
───BOOM!!!!!!!
そのすぐあとの事だった。
クソデカい爆音と共に───“デク”が吹っ飛んできたのは。
++++++++++
「どう思う?」
鳴り止まない歓声のなか、教師陣席の後ろ、経営科の席で1人の生徒が隣に声をかける。
声をかけられた生徒は、ノートパソコンを片手に応えた。
「轟と爆豪。有名どころの2人を抑えてゴールした破魔矢と緑谷の株価急上昇だね。特に破魔矢はかなり個性的でキャラが立っているし、実力もある。見た目も悪くないとなると、売り出すのに苦労はないと思う。緑谷は個性を見せてないとなると先が読めないなぁ」
空を縦横無尽に飛べる翼。
圧倒的な破壊力をもつ雷。
全ての動きを止める氷。
それらを自在に操る実力に加え、選手宣誓だけで会場を呑み込むほどの独特のオーラ。
その底知れない力で魅せた破魔矢の評価は当然の如くとても高いものだった。
一方、緑谷は臨機応変かつユニークな発想で2位を獲得したとはいえ、如何せん未だ個性を見せていない。
評価が定まらないというのも仕方がないことであった。
「破魔矢のあのキャラは子供ウケもいいと思う。低年齢層からの支持を得るのに時間はかからないだろうね。緑谷はなぁ……彼の事務所経営を請け負ったと仮定して、どう売り出していくか意見を交えたいんだけど、どう思う?」
「見た目じゃまず無理だね。実力面や彼なりのアーティスティックなこだわりがあれば、そこを押し出せるけど、材料が揃わない事には難しいと思うよ」
彼らの意見はとても的を得ているものだった。
この障害物競走を目にしたほとんどのプロヒーローも、その意見に大きな差異はない。
事実、雄英体育祭は始まったばかりである。
本番はまさにこれからなのだ。
───『第2種目 騎馬戦』
その文字が大きく、スクリーンに映し出された。
お読みいただきありがとうございました。
爆豪勝己は良くも悪くもいいキャラしていますよね。