魔王の苦悩アカデミア   作:黒雪ゆきは

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アンケートの結果により掲示板回のようなものをやろうと思います。
たくさんの投票ありがとうございました。


028:罰ゲームのような。

 俺は第1種目を終え、特に疲れてもいないのでクリアな脳で思い出す。

 

 ───めちゃくちゃ怖かった、と。

 

 何がって? 

 あの爆発不良、爆豪勝己がである。

 いや、もはや怖い通り越して殺されるかとすら思ったんですけど。

 なに、なんかした俺ッ!? 

 

 障害物競走、最終盤。

 ミサイルを『ヒャド』で凍らせた。

 今までは氷塊を飛ばして攻撃するものだったけど、着弾した場所は例外なく凍りついていたから、轟みたいに凍らせることに焦点を当てて冷気のまま放つことはできないかと試してみた。

 そしたらできたというね。

 

 咄嗟のことだったけど、上手くいってよかったーと思ってた───そのすぐあと。

 

 ふと得体の知れない何かを感じて後ろを見たの。

 そしたら、かなり遠くだったけど俺の無駄に視力のいい目が捉えた。

 

 鬼の形相で迫る爆豪勝己を。

 

 怖ッ!! 

 と思って反射的に『バイキルト』を使って全力でガン逃げしてしまった。

 どうせなら新しく使えるようになった『ピオラ』を実戦で試したかったんだけど、あの時の俺にはそんな余裕はなかった。

 仕方ない。

 控えめに言って超怖かったもん。

 

 今はなんか肩で息しながら俯いている。

 多分障害物競走の順位に納得いってないんだろう。

 アイツ4位だし。

 

 ───ギロッ。

 

 突然、爆豪が顔を上げたと思ったら今にも人を殺しそうな目で俺を睨んできた。

 だから怖すぎッ!! 

 怖すぎなんだよもうッ!! 

 思わず叫びそうになったわッ!! 

 

「…………」

 

 ギャァァァッ!! 

 こっち来たァァァッ!! 

 

 爆豪がこっちに歩いてくる。

 無言でこっちに歩いてくる。

 うわー逃げたい! 

 脇目も振らず逃げ出したい! 

 だけどクソ個性のせいで逃げられない! 

 笑って待ち構えるしかできない! 

 もう嫌ほんと!! 

 

 と思っているうちに爆豪は俺の目の前までやってきた。

 そのまま爆豪はしばらく俺を睨み続ける。

 

 そして───

 

「……言いたいことは山ほどあるが、一つだけ聞かせろクソローブ」

 

 爆豪はとても静かだった。

 静かに俺に問いかける。

 

「テメェは時々デクに“勇者”って言うよなァ? ありゃどう意味だ? ふざけた言動をするがテメェは馬鹿じゃねぇ。まったく意味がないとは俺にはどうしても思えねぇ。……どういう意図で言ってんのか教えろテメェクソ」

 

 いろんな感情が溢れて自分でもよく分からない。

 爆豪はそんな顔をしていた。

 だが、その目はどこまでも真っ直ぐだ。

 何となく、ここは曖昧な答え方をしてはいけないと思った。

 

「ほぅ、珍しいな。貴様が我に問いかけるなど」

 

「……うるせェ。さっさと答えやがれ」

 

 “勇者”ねぇ。

 俺も明確な答えは分からない。

 何が条件で俺はそう口にするのか、完璧に理解するのは死ぬまで無理なんじゃないかと思う。

 でもUSJでの緑谷を見たときから、俺の中でこうなんじゃないかってのは決まってる。

 

「多くの者が誤った考えを抱いている。勇者とは、ただ勇ましく恐れを知らない者のことでは決してない。───恐怖を知ったうえで、尚恐怖に立ち向かうことのできる者のことよ」

 

「…………」

 

「そう、恐怖の象徴であり魔王たるこの我に立ち向かう愚か者のことを、蔑みと多少の敬意を込めて“勇者”と呼んでやるのよ。フハハハハハッ!!」

 

 最後ふざけた感出たけどそれは許して欲しい。

 キレないでね? 頼むよ爆豪くん。

 ……と思ったけど杞憂だった。

 爆豪は俺が笑うのなんて完全無視で、なんかまた俯いて何かを考えている。

 

「……そうかよ」

 

 しばらくすると、それだけ言って爆豪は離れていった。

 

 そして去り際に小さく、“デク……”と呟いた。

 

 なんだったんだ一体。

 何か納得した空気だしてたけど俺はお前の謎行動を何も納得してないですが。

 デクって緑谷のことだよな。

 

 ───何か思い当たる節でもあったんかね? 

 

 まあいいや。

 そろそろ第2種目が始まりそうだ。

 神楽坂さんたちも見てくれてるだろうし、恥ずかしい姿を晒すのは仕方ないとしても、みっともない姿は見せられない。

 頑張ろっと。

 

 

 ++++++++++

 

 

『1位に与えられるポイントは───1000万ッ!!!』

 

 ミッドナイトがつらつらと第2種目の説明をしていたから、俺はゆるい気持ちで聴いていた。

 そして告げられる意味不明なポイント。

 突き刺さる周りからの視線。

 

「フハハハハハ!! 面白い!! 我に挑むか? 愚か者共よ!!」

 

 あぁ……神よ。

 

 俺はお前が……嫌いだァァァアアアッ!!!! 

 

 ふぅ。

 内心だけでも叫んでおいた。

 わけがわからん。

 なんなのこれ。

 なんの罰ゲームなんこれ。

 ふざけんなよ……こちとら個性発現してからずっと罰ゲームみたいな人生だってのに……。

 この仕打ちはねぇだろッ!? えぇッ!? テメェに言ってんだよ神コラッ!! 

 

『制限時間は15分。ポイントの合計が騎馬のポイントとなり───』

 

 そのうえにまたフハハと笑って勝手に煽っていくスタイルよ。

 どうすんのこれ。

 まじどうすんのよコレ。

 ミッドナイト先生の説明が全然頭に入ってこん。

 騎馬戦だからみんなと仲良くワイワイできると思ってたのに……。

 

『それじゃあこれよりチーム決めの交渉スタートよ!』

 

 はいなんか始まりました。

 案の定俺のところには誰も来ません。

 

 そりゃそうだ。

 第1種目ではそこそこいい感じに個性を見せれたはずだけど、1位のリスクがあまりにデカすぎる。

 ポイントと個性の両方を考慮すると、爆豪と轟の方が断然いいわそりゃ。

 個性強いし、ポイントも高い。

 

 それに比べて俺……。

 1人だけ服装が違うことといい、意味不明な選手宣誓といい、恥ずかしすぎる言動といい……地雷要素の塊じゃねぇか!! 

 誰が組むねん!! 

 

 もう無理だ……。

 このまま誰とも組めない可哀想な奴として全国に晒されるんだぁ……。

 

 と思っていると───

 

「ねぇ、魔央」

 

「───響香か」

 

 響香きたぁぁぁああああ!! 

 女神すぎるんですけど!! 

 葉隠もいる!! 

 信じてた!! 

 

 響香なら俺と───

 

「ウチ、正直アンタに守られてばっかだよね。……雄英入ってからもずっと。───でも、守られるだけじゃなくて……ウチもヒーローになりたい。だから、アンタに挑むよ」

 

「……ほぅ」

 

「破魔矢くんっ!! わたしも負けないよぉ!!」

 

 そう言うと、響香と葉隠は離れていった。

 

 ……え。

 

 えぇぇぇぇぇぇ。

 

 マジかよ……ここでまさかの宣戦布告。

 障害物競走のときは頑張ってねって感じだったのに。

 なぜここで。

 はぁ……最悪だぁ。

 最後の希望だったのに。

 終わりだぁ。

 ごめん響香。

 俺は戦いにすら参加できそうに───

 

「───頂きに立つ者は常に孤独」

 

 後ろから誰かの声が聴こえた。

 いや、その声はよく知っている。

 俺は思わず振り返る。

 

「だがその追われし者の宿命、共に背負わせてくれないか? 破魔矢」

 

 腕を組み、誰よりも気高いその男。

 超カッコイイ常闇がそこにはいた。

 

「我と組むか───常闇!」

 

「共に修羅の道をゆこう、破魔矢!」

 

 最高すぎるぅぅぅううう!!! 

 きっと俺は薄ら笑みを浮かべてるだけだろうけど、内心ではぴょんぴょん跳ね回ってるから。

 嬉しすぎてヤバいからほんと。

 あぁ、常闇なんて良い奴なんだ。

 相変わらず喋り方がナチュラルに俺と似てるところも良き。

 修羅の道バンザイ。

 俺は良い友達をもったよ。

 やばい泣きそう。

 

 だが、俺の幸運はここで終わらなかった。

 

「常闇君! ぼ、僕たちと組んでくれないかな?」

 

「組もっ!」

 

 緑谷と麗日がきた。

 

「俺は既に破魔矢と組んでいる」

 

「え、破魔矢君と! むしろありがたいよ! ど、どうかな? 2人とも僕と組んでくれないかな?」

 

 神よ……さっきはすまん。

 やっぱアンタ良い奴だわ。

 

「ほぅ……勇者である貴様が我と手を組むというのか。───面白いッ!! 我らの前に敵は無しッ!! 全てを蹂躙してやろうッ!!」

 

「よっしゃー!! やったろー!!」

 

 俺の恥ずかしい言葉にもノリよく反応してくれる麗日めっちゃ可愛い。

 まじいい子。

 いやでも本当に嬉しい。

 普通にいい感じじゃね? 

 

 常闇のダークシャドウは全方位において索敵と牽制ができる。

 麗日の『無重力』も俺の翼と相性がいい。

 強いて言うなら緑谷だけど。

 

「破魔矢くんは騎手をやるのかな?」

 

「なんだ緑谷? 貴様も騎手がやりたいのか?」

 

「え、えっと、そういうわけじゃないんだけど……僕の個性的にできるのが騎手くらいしかなくて……」

 

 緑谷の控えめな視線が向けられる。

 別に俺は騎手じゃなくてもいいんだけど……ちょっと気になることがある。

 

「一つ聴かせろ。貴様の個性についてだ、緑谷」

 

 そう言うと、何故か緑谷はビクっとした。

 そんなに驚くことだろうか。

 

「な、なにかな?」

 

「貴様のその力、それは一瞬だけ強大な力を引き出すものなのか?」

 

「え、それはどういう……」

 

「簡単な話よ。貴様のその個性を発動し続け高速移動、なんてことはできないのかと聴いているのだ」

 

「───ッ!!」

 

 緑谷は目をカッと見開いた。

 え、怖っ。

 

「そ、そうか! 個性を超必殺技みたいに考えていた。オールマイトをあんな近くで見てきたのになんで気づかなかったんだ! そうだよ、個性は身体機能の一部。もっとフラットに考えればよかったんだ。みんなが当たり前にできることでも、僕にはまだ使うという意識がある。5%の力を呼吸するように使えれば……そう、例えばかっちゃんみたいな……」

 

 なんかブツブツと言い始めた緑谷。

 めちゃくちゃ1人の世界に入ってる。

 その様子を見て俺は結構不安になったけど、それ以上に友達と騎馬戦ができることがやっぱり嬉しい。

 楽しみの方が勝ってる。

 

 結局、緑谷は試してみたいことができたようで、俺が騎手をやることになった。

 

 

 ++++++++++

 

 

「───やっぱり、良い個性だよねぇ」

 

 物間寧人は不敵に微笑む。

 フハハと声を上げる黒いローブの男を見据えて。

 




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