魔王の苦悩アカデミア   作:黒雪ゆきは

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032:やっぱり向いてない。

『早速上位4チームを見てみようか!! 1位、破魔矢チーム!! 2位、轟チーム!! 3位、鉄て……アレェ!? オイッ!! 3位、心操チーム!? いつの間に逆転してたんだよ!! そして、4位は爆豪チーム!! 以上4組が最終種目へ進出だああああ!!』

 

 1000万の鉢巻をなんとか守りきり、騎馬戦を1位で通過することができた。

 思わず安堵の息が漏れる。

 最後の方は本当に怖かった。

 轟たちに1000万の鉢巻を取られたときもヤバかったけど、まさかの『コピー』するなんて個性をもったB組の人が一番衝撃的だったなー。

 

 世の中いろんな個性があるよ、ほんと。

 

 ……そういえば、響香たちは通過してないのか。

 気になって目を向けてみれば、悔しそうではあったけど、どこか晴れやかに響香は笑っていた。

 その姿に俺は安心する。

 響香にまんまと鉢巻取られたからなー。

 

「よ……4位だと……く、クソがァァァッ!!!!」

 

 爆豪がキレている。

 俺はそっと背を向ける。

 絡まれそうで怖い。

 

「や、やったね破魔矢くん!! 1位だよ!!」

 

「ない……す、うっぷ」

 

「大丈夫麗日さん!?」

 

「長く険しい修羅の道だったな」

 

 緑谷たちが嬉しそうに話しかけてくる。

 その顔を見ると、改めて俺は嬉しさが込み上げてきた。

 ほんと最高のチームだった。

 勝ててよかったと素直に思う。

 

「フハハハハハッ!! 当然の結果よ!!」

 

 ギロリ、と爆豪が睨んでくる。

 もう怖いのよあんた本当に。

 

 あ、そういえば。

 あのコピーの人大丈夫だろうか。

 俺は辺りを見渡す。

 見つけた。

 

「う……僕は、一体……」

 

「物間っ!!」

 

「目覚めたか! ほんとよかった……!」

 

 一声かけようと近づいていくと、コピーの人がちょうど目覚めたところだった。

 あぁよかった。

 気を失ったときは俺も焦ったわ。

 万が一ってのがあるからな。

 

 その時、コピーの人と目が合った。

 

 

 すると────

 

 

「キィィイイイイヤァァアアアアッ!!!!!」

 

 

「物間っ!?」

 

「おいどうした物間!! 待てよ!!」

 

 ……え。

 

 突如、奇声を上げながら物間と呼ばれたソイツは走って行ってしまった。

 な、何があったんだろう。

 反動が凄かったんかな……。

 

 とりあえず俺にできることはなさそうだよな……今の感じからして絶対に好かれてなさそうだし。

 

 はぁ……俺は知ってるんだ。

 あぁいうのは二次被害を生むということを。

 物間が俺を見て発狂したことはすぐに色んな人へと伝わっていくだろう。

 そしてその過程で情報はねじ曲げられ、悪者に仕立て上げられた俺の印象は最悪なものへと変わっていくんだ。

 

 ……あれ、1位になったはずなのにあんま嬉しくなくなってきたんですけど。

 俺は悲しみにくれながらとぼとぼと通路の方へと歩いていった。

 

「おつかれ魔央」

 

 しばらくすると響香がやってきた。

 

「……響香か」

 

「……あれ、アンタ1位だったよね? なんかあんま嬉しくなさそうじゃん」

 

「ハッ、あのようなお遊びに勝ったところで喜べんだけだ」

 

「あっそ。……ウチは残れなかったからやっぱ悔しいよ」

 

 …………。

 

 なああーッ!! 

 

 なんてデリカシーのないことを言ってるんだよ俺はクソッタレがー!! 

 死んじまえよお前ほんともう!! 

 アホ!! ボケ!! マヌケ!! 

 

 響香に嫌われたらマジどうすんだよ……。

 

「やっぱりまだまだダメだよねーウチって。そりゃー、アンタから鉢巻取れたときは嬉しかったけどさ、勝てなかったら意味ないっていうか……。こんなんじゃアンタの隣に……ウチは───」

 

「───誇るといい」

 

 なんか響香がネガティブなことを言い出した。

 俺は友達少ない、というか雄英に来るまでは友達なんてガチで響香だけだったし、あんまり気持ちを察するなんてことは出来ない。

 

 けど……響香の気持ちくらいは分かりたい。

 

 なんかこういうとき、パッと明るくできるような気の利いた一言を言いたい。

 

 だからとりあえず口を開いた。

 

 そんな気の利いた一言なんて言えるわけないと、誰よりも分かっていたけど。

 

「本当に見事であった。我に一泡吹かせることができたのは響香、お前一人よ。───誇るといい」

 

 実際、俺から鉢巻を取ったのは響香だけだった。

 轟たちには一度取られたけど、結局取り返したから。

 ほんと、何が『誇るがいい』だよ。

 こんな時に、こんなことしか言えない自分が嫌になる。

 

「……なに、励ましてくれてんの?」

 

 それでも───響香にはなぜか伝わってしまうのだから不思議だ。

 

「相変わらず分かりづらいねアンタ。……でもありがと。最終種目も頑張んなよ、応援してるからさ。まあ、アンタが負けるとは思えないけど。あー、お腹空いた。ご飯食べに行こうよ」

 

 そう言って、響香は歩いていく。

 その後ろ姿を俺は少しだけ見ていた。

 

「あれ? 行かないの魔央?」

 

「あぁ、行くさ。我に付き従うがいい、響香よ」

 

「はいはい」

 

 響香と一緒に歩く。

 

 歩きながら俺は思う。

 

 多分これが───『好き』ってことなんだろうなって。

 

 ……はぁ、やっぱり向いてない。

 

 俺は本当の意味で“ヒーロー”にはなれないんだと思う。

 

 なぜなら、たとえ100人の命と天秤にかけられたとしても、俺は迷うことなく響香を救う選択をするのだろうから。

 




お読みいただきありがとうございました。

いつもたくさんの感想をありがとうございます。
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