「見つけた・・・私の伴侶(オーズ)になるべき者」
この下界でも『伴侶(オーズ)』とは出会えないのかと諦めかけていた時に・・・その『男』を見つけ出したのは。
その魂は荘厳な輝きを放ち、余りにも巨大でオラリオを覆ってしまえるほど大きかった。これほどの魂はオラリオで目にしたことがない。
無理矢理で例えるなら金碧珠(きんぺきしゅ)。青の中に金を隠し青緑色の海から金色の太陽が昇る様子を一色で表現した色で、二色が引き立て合うことで目の覚めるような鮮やかさが圧巻であった。
腰まで真っ直ぐ伸びる金髪、蒼色の軽装に包まれた細身の体、種族はヒューマン・・・【剣姫】!?ロキの眷族!?
あの子供の魂は視た事はある。目も眩むような鮮烈な光を放つ金色の輝きだったはず。それに女性であるはずの【剣姫】が『男』としか見れないのは何故?
『欲しい』
しかし、そんな些細な疑問など一瞬で消し飛ばしてしまう。全身がぞくぞくと打ち震え、下腹部は疼き、恍惚の吐息が喉から溢れ出してくる。彼を自分のモノにしたいと、醜くも子供のような望みがもたげた。
それは純粋な女神としての欲望。『未知』を前にした神の興味がつきることはない。
まず眷族達に【剣姫】を徹底的に調べさせよう。他神であり、ロキのお気に入りの眷族・・・必ず奪い合いになるはず。
アイズ・ヴァレンシュタイン 種族ヒューマン
未到達階層の開拓、遠征の失敗を機に経験値(エクセリア)を破棄。初期値からのやり直しで半年でLv.3に返り咲く。Lv.3へ昇華して僅か二週間でLv.4間近という噂が流れている。
細剣がメイン武器だったはずだが、破棄後Lv.1~2までは軽装に長剣と盾、Lv.3からは全身型鎧に特大剣と大剣を装備した二刀流スタイル。オッタルがダンジョンで観察した際には、以前の【剣姫】はモンスターを殺すためだけに特化した技。現在の【狂姫】はどちらかと言えば、対人戦に特化した技に変わっていたらしい。
趣味嗜好も変わっており、腰まで真っ直ぐ伸びる金髪を肩ほどまでバッサリと切り、服装も大きく背中が開かれた薄手の乳房に伸びる脇の線までかけて瑞々しい肌が丸見えの服を着ていたが、白衣、黒のスーツに革手袋、女性物ではなく男性物の服を着始めた。
冒険者稼業だけでなく、オラリオを統べる管理機関ギルドで事務、受付嬢、アドバイザーや【ディアンケヒト・ファミリア】治療師(ヒーラー)、アミッド・テアサナーレの助手や教育機関『学区』の非常勤講師や教会で聖職者や他にも様々な職に就いている。
本人いわく『スキルと魔法の習得と効果の底上げの為』らしいが詳細は不明。
アイズ・ヴァレンシュタインは夜の酒場や大賭博場でよく目撃されたりもする。
ゆっくりゆっくり知っていけばいい。そして距離を埋めていけばいい・・・と思っていたのだけど!半年、半年!!全く距離が埋めれてないわ!もう我慢の限界!耐えきれずちょっかいを出した事も偶然を装って接触しようとしても全く認識してもらえなかった。格上のはずのモンスターをぶつけても一蹴するし、そもそもオラリオでも『彼』と接触できずにいる。ダンジョンや仕事中は論外、彼の行きつけの酒場は隠れ家的なBarで一人飲みで『豊穣の女主人』には一切顔を出さなくなった。仕事以外でも何かしらやっているので気づいてもらえない。
【イシュタル・ファミリア】から助けた時もお礼と治療費を渡されただけで終わってしまった。
彼が今どこにいるか?そんな事は地上、オラリオ内であれば視ずともわかる。今日も側に少年がいる。
名はベル・クラネル。最近彼がアドバイザーとして担当している駆け出しの冒険者。
処女雪のような白い髪に、兎のような深紅の瞳、種族はヒューマン。魂の輝きは、とても小さかったが綺麗な色をしていた。コレクターとしては欲しい気もしなくもないが、彼ほどの感動は感じなかった。
ただ、私が欲しい彼を独占しているのが許せなくて、何度かモンスターをぶつけた事がある。
ミノタウロスを19回ほどwww。
10回は同行していた彼に助けられ、8回は逃げ切り、そして1回は撃破した。
これ以上は彼のアドバイザーとしての評価に影響が出てしまうと思い断念した。
その代わりに、ダンジョン外で四つ子の小人族で第一級冒険者である【炎金の四戦士】で襲わせた事もあるが、ベル・クラネルのピンチに颯爽と登場したアイズにより【炎金の四戦士】はボコボコにされてしまった。
何で側にいるのが私ではなく、その少年なの?
許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない!
私は覚えてもらえず、その他大勢のモブ女なの?
許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない!
女神の心奥で渦巻く感情。それは嫉妬から怒り、怒りは一途な狂気に変わる。
矜持も外聞も自ら課したルールを、富も名誉も栄光も全てを投げ出していい。必要なら眷族達を生け贄に捧げてもいい。ようやく気付けた。やっと気付けた。私は欲しいモノを手に入れる為なら、つまらない男でも一夜をともにするくらい安いと思っていた。だがこの半年間、誰かを閨事に誘う事はなかった。彼以外に触れられたくなかった。
彼でなければ駄目なの!だから・・・彼以外の全て、ひれ伏しなさい。
私の権能、魅力でも彼相手では大海の一滴の雫にすぎないでしょう。なら、その他を犯してしまえばいい。本当は使いたくなかった。
もう彼以外を愛する事はできない。彼が誰かに盗られるのは我慢ならない。彼以外に抱かれたくないと彼だけの愛が欲しいと思ってしまっている今の私で十全に発揮するかは未知数。
女神フレイヤは真の魅力を発動。
銀の神威が巨大な円蓋状の輝きとなって、オラリオを覆いつくした瞬間、魂の蹂躙が始まり、侵略され、ねじ曲げられ、統一される・・・はずだったが。蹂躙が始まる前に銀の神威が作り出した巨大な円蓋状の輝きは消え去った。
少年と一緒に都市外縁部で鍛練していたはずの彼が、途轍もない距離があるはずの都市中央、更に高さ五十階のバベルの最上階に当たる自室、椅子に腰をかけていたフレイヤの目の前に立っておりフレイヤを見下ろす。
『貴女は・・・今何をしようとした』
その後、彼からギルドに報告され【フレイヤ・ファミリア】は重い罰則を課せられた。
私は次の手を打った。
自分の全てを献上した上でロキに真っ正面から開戦を要求『戦争遊戯(ウォーゲーム)』。
彼の主神ロキは拒否したが、彼本人は条件付きでなら私からの戦争遊戯を受けると言った。
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条件その1
【猛者】【女神の戦車】【黒妖の魔剣】【白妖の魔杖】【炎金の四戦士】と【狂姫】の8VS1での決闘。
条件その2
武器、防具、道具の持ち込み制限無し。
条件その3
死んでしまっても相手に一切の責任を問わない。
条件その4
場所は迷宮都市オラリオの外で行う。
条件その5
戦争遊戯は一ヶ月後。
条件その6
今回の戦争遊戯は敗北した場合、申し込んだ者又は受けた者個人が支払うものとする。
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どういう事?
Lv.7が一人、Lv.6が三人とLv.5が四人の計八人。トップファミリアの【フレイヤ・ファミリア】最高戦力とLv.3一人で戦う?何の冗談?
元々殺す気なんてない。場所も期間も何の問題はない。ただ、条件の6は少し気になった。
『神フレイヤは私が欲しい・・・なら私も貴女を望みましょう。確か改宗(コンバージョン)の期間は一年でしたよね。それくらいの期間にしますかね。一年間貴女の愛を独占するのも悪くはないですねえ。ああ、神フレイヤは多情と聞きますが、私のモノになる一年間は火遊び厳禁です。ふふふ、【フレイヤ・ファミリア】は貴女の寵愛を得る為に毎日殺し合うとか?いやあ、そんな女神の愛を独占できるなんて感無量ですねえ・・・奪われたくないなら殺す気でこいよ最強達』
彼の言葉はオッタル達を焚き付ける為の方便にすぎない事はすぐ理解できた。
けど彼の言葉は私を打ち震わせる。
そして、一ヶ月後の戦争遊戯。
結果なんて最初から分かっていたことだった。
目の前の結果が全てである。
立っているのは【猛者】と【女神の戦車】と【白妖の魔杖】である。【黒妖の魔剣】【炎金の戦士】は戦闘不能。
【猛者】は無傷、【女神の戦車】は軽傷、【白妖の魔杖】は左腕を失っていた。
そして【狂姫】、彼は自らの血でできた血だまりに倒れ伏していた。
やる前から分かりきっていた現実。
私はその姿を見て、涙を流していた。
この涙は歓喜の涙ではない。自分の眷族が勝った喜びではない。彼が手に入るからではない。
「アイズ・ヴァレンシュタイン!!!・・・立って・・・ちなさい・・・立ちなさい!!!貴方は私が見初めた伴侶(オーズ)なのよ!!!奇跡の1つや2つくらい起こしてみなさいよ!!!」
この戦争遊戯の勝者・・・『アイズ・ヴァレンシュタイン』!!!
戦争遊戯の勝者はアイズ・ヴァレンシュタイン。
最初、実は舐めプしてましたwww。
『彼』が持つ『ステータスを大幅に減少させるかわりに経験値を大量に入手する』事ができるスキルを使用していましたが、さすがにフレイヤ・ファミリア最強戦力には封印したままでは勝てませんでした。
封印解除の全力+装備効果+スキル魔法の重ね掛け=ゴリ押しで勝利しました。