北天に輝く   作:ペトラグヌス

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魔塔探索─The Future of the Two

 テレジアとの邂逅から数日後。

 漸くお医者様から出歩いてもいいとの許可をもらったおれは、ヘドリーと話をした。

 内容はなんてことはない。怪我の状態について軽く話したのと、彼がバベルと結んだ契約についての話だ。

 

 現状、おれたちは敗残兵と言ってもいいだろう。一応与えられた仕事の最低条件は満たしたものの、雇用主に救助されるという醜態を晒したというのが現実だ。人員に関しても、あのサルカズ傭兵が言っていたことに間違いはなく、囮として戦場に出ていた部隊はおれやΩ、イネスの部隊のみならず、そのすべてが多大なる損害を被っていた。

 全滅、即ち部隊としての戦闘能力を失っただとかそういう次元ではなく、殲滅されたのだ。部隊を率いていた隊長から部隊員に至るまで、その全員が文字通り磨り潰された。囮で生き残ったのはおれとΩ、イネス、そして幸運なほんの数人だけだ。

 本命を守っていたヘドリーの部隊も、それよりはましだとは言え人員の8割方を失っている。

 もとより少なくなっていた仕事、死闘の果てに使い果たした物資、消滅した人的資源。傭兵団としては末期も末期、もしこの場がカズデルであったのならば、ハイエナたちに一瞬にして食い尽くされる骸でしかなかっただろう。

 そんなおれたちの数少ない幸運が、バベルの存在だ。サルカズの王、テレジアが率いると思しきこの集団は、どうやらおれたちを継続雇用する意向らしい。

 これまでおれたちがしてきた形式と同じく、バベルが仕事を発注し、それを傭兵団が受注する。支払いも仕事単位で行うというのだから、最大限こちらの意向が反映されたものだろう。現に、ヘドリーもこれ程の好条件が得られるとは思っていなかったらしく、多少の困惑はあるようだ。

 とはいえ、まともな仲介人の心当たりもない今、この誘いに乗る他ない。

 どうやら、おれたちはこの船を拠点に、バベルお抱えの傭兵として再スタートをすることになりそうだ。

 

 

 

 さて、そんなわけで今後の見通しも立った今、おれが何をしているのかというと、端的に言って廊下に突っ立っていた。勿論、当てもなく呆けているわけではない。待ち人をしているのだ。

 

 ヘドリーとイネスは傭兵団の再編成を行っており、人員の配置や物資の補給等に精を出している。話を聞いて、おれもそれを手伝おうと思ったのだが、必要ないと言われた。何でも、彼らの予定では今後部隊は一部隊だけになるらしい。ヘドリーが隊長、イネスが副隊長を務める形だ。

 それではおれたちはどうなるのかというと、遊撃部隊(二人)ということになるそうだ。バベルの活動には小規模なものも数多く存在しており、それに宛がうための編成らしい。……それ以外の意図もあるような気がするが、まあいいだろう。おれにとって重要なのは、あいつと一緒であるということだ。

 そんなわけで、物資調達等に関してもこちらの裁量で行う事になったため、おれがあっちで手伝えることは特にないのだ。むしろ、さっさと自分の分の物資を揃えてしまえとはイネスの弁だったか。

 

 その言葉の通り、おれは既に戦闘に必要なものは確保の見通しを立てた。と言っても、大したものではない。食料と弾薬くらいのものだ。

 結果、現在おれは暇だった。

 そうして、同じ状況はもう一人にも当てはまるわけで。

 

「あら?早かったのね」

「部屋は退屈だからな」

 

 廊下の向こうから聞こえてきた声に返事を返す。声の主は当然、Ωだ。

 お互いにやることはやったのだが未だに仕事がないという状況にあったおれたちは、ちょいとこの船を探検してみようと考えた。今のところ、自分に宛がわれた病室とトイレくらいしか知らないが、ここは相当広いはずだ。これからどれくらいの期間かは分からないが拠点になる場所のことを、良く知っておくのも重要なことだろう。

 それで、お互いの部屋で準備をした後、集合して彼女と一緒に探索することにしたのだが……

 

「逆にお前は……」

 

 割と時間がかかったな。そう、言おうとしていた言葉が喉でつっかえて出てこなかった。原因は、彼女の姿が目に入ってきたことだ。

 いつものカーゴパンツにシャツ、それにブーツという姿を思い浮かべて振り返ったのに、実際現れたのはどうだ。

 シャツの上からは前を開けてジャケットを羽織り、ダボっとしたシルエットだったはずの脚はタイツに覆われてすらりと伸びており、少し上に目をやればプリーツの入った短いスカートなんかを纏っている。足元だって、鉄板入りのブーツから赤黒のスニーカーに変わっているではないか。

 

「どう?なかなかいいと思わない?」

 

 おれの驚きの表情を見て取ったのか、Ωがニヤリと笑って聞いてくる。

 そんなことを聞かれたら、おれにはこうとしか答えようがなかった。

 

「……ああ。すごく……魅力的だ」

「へ?あ、え、ええ、そうでしょ!?」

 

 少し服が変わっただけで、こんなにも変わるものなのか。

 黒いジャケットによってメリハリのついた上半身は、その均整の取れたプロポーションを明らかにし。

 これまでは分厚いパンツに覆い隠されていた脚は、タイツによってその彼女らしいしなやかな筋肉のついた美しいラインを浮かび上がらせている。

 黒と赤を基調としてまとめられたそのコーデを纏った彼女は、サルカズの象徴である真っ赤な角も相まって、とてもチャーミングに見えた。

 

「……ほら!さっさと行くわよ!」

「あ、ああ」

 

 ぼうっとしたまま、何故か語気を荒げるΩに手を引かれ、そのまま巨船の廊下を歩き始める。

 

 ……何だか、顔面に先制パンチの不意討ちを食らった気分だ。これまでかなり長い間共に過ごしてきたはずなのに、最近は次々と知らない彼女の姿に出会う気がする。たとえそれがどんな姿であっても、彼女がおれにとって一番大切な存在であることは変わりないのだが、こういうのは少しばかり卑怯だ。

 

 今の距離が一番心地いい距離感のはずなのに、そこからもう一歩踏み出したくなってしまう。

 踏み出してもいいと、勘違いしそうになってしまう。

 彼女から寄せられている好意は親愛で、それを裏切って傷つけるわけにはいかないのに。

 

 どこかお互いぎこちないまま、おれたちは当てもなく廊下を進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 待ち合わせからしばらくの間は余り記憶がない。まるで白昼夢でも見ているような気分だった。

 だが、それもしばらくたてば収まる。切り替えが上手でないと、傭兵という職業は務まらないのだ。

 そう言う訳で、今はもう二人で特に何事もなかったかのように連れ立って歩いていた。バベルの巨船は流石に巨大で、一体いくつ部屋があるんだと思わせるほどだ。どうやらここは居住区らしく、各々の居室と思しきネームプレートが掲げられた部屋が立ち並んでいる。書いてある名前はScoutだとかApoptosisだとか、一風変わった感じだ。

 ……おれたちが言えることじゃないけど。正直、部屋の外に『W』とデカデカと書かれたプレートが掲げられているのを見た時は、Ωと二人そろって大笑いしてしまった。ついでに彼女の部屋のほうも見に行ったら『オメガ』になっていて、二人そろって首を傾げたものだ。おれが昔書いて見せた『Ω』じゃなかったからな。

 それについて、大喜びでケルシー先生にクレームを入れに行った彼女の顛末について述べるのは、ここでは省略する。ただ、一つ言えるのはあの二人を二人きりにするのは止めた方がいいという事だ。

 

 さて、居住区は似たような造りが延々と続いていて、しかも個人の部屋なので開けられもしないため変化に乏しい。

 たまに見られる変化と言えば、所々剝き出しになった配線くらいのものだ。たまに手動でこじ開けなければならない扉があるのも鑑みると、この船は未だ未完成なのだろう。もしかすれば、完成させるためにレム・ビリトンからわざわざカズデルまで運んできたのかもしれない。

 

「こっちのほうはやっぱりつまんないわね」

「だな。多分優先して稼働させてるのは中枢のほうだろうし、賑わってそうなあっちに行くか?」

 

 などとぼやきながら歩いていると、またまた扉に差し掛かった。二人で息を合わせてこじ開けてみれば、そこには広大な空間が広がっている。

 

「ここ、何かしら?」

「広間……ってのは安直すぎるか」

 

 ぐるりと見渡してみれば、建材が剥き出しの壁に一定間隔を保って立っている柱、それと一応配線されているらしく、真っ白い照明が目に入ってくる。

 少し奥に進んでみれば、これは……何だろうか?障害物か何かなのか、大きなL字を描いて部屋を二つに分断する土台が存在している。その奥側には、パイプや何やらがのたうち回わっているようだ。

 少し考えてみる。まず、この部屋の広さ。おれが最初に広間といったように、恐らくここは大勢の人が使うために設けられた空間のはずだ。一人分のスペースとしてはいくら何でも大きすぎる。仮に当てはまるとしてもテレジアの居室くらいのものだが、そんなものは最初に作るだろう。

 ……あとはケルシー先生の居室とか?……流石にないか。もしそうだったとしたら、革命が勃発するに違いない。参加者は確実に一人は存在するだろう。

 ということで、居室という線はなし。多人数用の施設ということで考えてみる。ここはひとまず、謎解答に定評のあるΩさんから一言頂くとしよう。

 

「なあ、Ω」

「何?……あと次また謎解答とかくだらないこと言ったら肋骨ブチ折るわよ?」

「」

 

 いや、なんも言ってないんですけど。

 

「あんたの考えてることくらい顔みればわかるって言ってるでしょ?いい加減学習しなさい」

「……はい」

「それで、何が聞きたかったの?」

「……あ、うん。……大人数用の場所って言ったらなんか思いつくものあるか?」

「大人数用?そうね……」

 

 うーん、と腕を組み、目まで瞑って考え込むΩ。一体何と答えるのかニヤニヤしながら待ってると、やがて何かいいものを思いついたかのようにニンマリ笑い、指を立てて言い放った。

 

「食堂でしょ!」

「うはははは!やっぱり期待にそぐわな……ん?待てよ……」

 

 胸を張って食欲丸出しな解答をする彼女の姿に思わず笑ってしまったが、直後におやっと思う。

 あのL字に配置された障害物、そしてその向こう側にあったパイプの数々。パイプというのは、何らかの流体、つまり気体か液体を輸送するためのものだ。天井に付いているところからして、恐らくは気体運搬用。では、この拠点の屋内で運搬する必要のある気体とは何であろうか?

 まず思いつくのは換気。屋内の濁った空気を外の新鮮な空気と交換することは必要であろう。それに関しては、眼前に見える四角い角ばった管がその役割を果たすものと考えられる。入口が明らかに何かを吸い込みたそうな広い口をしてるし。

 それでは、もう一種類ある円柱型の管は何か。円は圧力に最も強い形だ、となれば中を通っているのは高圧の気体。ここが居住区なのも考えれば、挙げられるのは恐らく可燃性ガス!先ほどの角ばった管は換気ダクト!そして、L字のこれはカウンター!

 詰まるところ、ここは……

 

「調理場だ!」

「は?」

「そんでもって、こっちが食堂か!」

「……でしょ!?そうよね、やっぱり食堂よね!」

「ああ!となれば、やるぞ!」

「ええ!もうレーションの味にはウンザリだわ!」

 

「「飯を作るぞ!(食うわよ!)ここで!」」

 

 なお、テンションをぶち上げて部屋に戻った直後、まだ食材が補給できておらず、来るのが3日後なことに気付いて二人で発狂した模様。

 

 

 

 

 

「……あんたのせいで無駄にがっかりしたわ」

「……いや、お前が食堂とか言うからだろ」

「……食べたいわね。オニオングラタンスープとか」

「……やめようぜ。腹減るから」

 

 気力と体力をガッツリ持っていかれた状態で、トボトボと二人廊下を歩く。今度向かっているのは、この船の中枢の方向だ。ヘドリーに聞いたところによれば、会議室やら執務室やらがあり、バベルの中心メンバーたちが揃っているらしい。またイネス曰く、化け物揃いだそうだ。

 こちらの方については、おれたちが知っているのは医務室くらい。おれは怪我の状態を検査するため、Ωはケルシー先生にクレームを入れるために訪れている。

 そんなわけで、自室から医務室までの経路を外れたこの場所は未知の領域なのだ。……今はそんなワクワクとかないけど。

 

「あ、あの……大丈夫ですか?」

「ん?」

 

 肩を落としてうろついていたところに、後ろから声が掛けられる。振り向いてみれば、そこにいたのは長い耳を持った小さな女の子だった。あれはコータスだから、もしかするとレム・ビリトンから乗せてきたのだろうか?

 

「……へーきへーき。ただちょっと食事に飢えてるだけよ」

「えっ!ええと……あっ!もしかしたら……」

 

 そう言って、懐をガサゴソと漁る女の子。何かを取り出そうとしているのだろうか、懸命な表情が微笑ましい。だが、受け取るのは気持ちだけでいいだろう。飢えているのは食事に対してであって、口に入れるものを持っていない訳ではない。

 おれは女の子の頭に軽く手をやると、軽く撫ぜた。

 

「あっ、えっ……」

「ありがとう。その気持ちだけで嬉しいよ。けど、食べ物なら持ってるから大丈夫だ。……ほら」

 

 そういうと、ポケットから潰れたレーションのパッケージを取り出して見せる。それを見て、女の子は長い前髪の向こうで目を白黒させているようだ。

 

「あら?知らないの?これは食事とは言わないの。食事ってのは、シチューとかポトフとか、そういうもっと美味しいもののことを言うのよ」

「スープ系ばっかだなお前……」

「いいじゃない、あったかいもの食べたいのよ。ここはちょっと陰気だし」

 

 好き勝手ああだこうだと言っていると、フリーズから立ち直ったのか、女の子が恐る恐るという感じで呟いた。

 

「し、シチュー、ですか?」

「そ。食べたことないなら御馳走するわよ?……こいつが」

 

 勝手に安請け合いした挙句、見事なドヤ顔まで披露するΩ。……ちょっとかわいいのがムカつく。

 そんなおれの内心など置いてきぼりにしたまま、二人の食べ物トークは進行していった。

 

「本当ですか!……あ、す、すみません。急に大きな声を出して……」

「いいのいいの、食材を強請る口実にもなるしちょうどいいわ」

 

 ……おい。純真そうな小さいこの前でお前は何を言っているんだ。

 

「なんか向こうに食堂もあったし、調理場もあったしね。そこで食べましょ」

「……え、ええと……食堂って……ケルシー先生がまだ入っちゃダメだって……」

「……」

「……」

「……」

「……もしあの女に言ったら、あんたにシチューはやらないわ。いい?」

「は、はい!わかりました!」

 

 威圧するΩの前に、首を縦に振るコータスの少女。その姿を見て、彼女は満足げに頷いて言った。

 

「……よし。さ、行くわよ」

「いや、もうどこから突っ込めばいいかわかんないんだけど」

「お、お気を付けて……」

 

 三者三様、言葉を発して少女と別れる。

 いやはや、純粋な少女と成長した彼女の対比が見事な一幕であった。

 ……ところで、あの子は一体何なんだろうか?バベルが慈善団体か何かなら別に疑問は無いのだが、そうでないならば余りにも幼すぎる。ここで出会ったのは偶然だったにしても、この場にいるのには何か理由があるはずだ。

 ……バベルはまだまだ謎に包まれている。内側に潜り込んだというのに、それだからこそそのことがよく理解できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 おれたちの巨船探索はまだまだ続く。いよいよ中枢エリアにやってきたのか、廊下の感じもだんだん変わってきた。黒鉄に囲われたという印象だったものが、段々と白を基調としたものに変化してきたのだ。

 部屋に関しても、大きなガラス張りがされていて、中の様子が見えるようになっている。これまで通ってきた部屋は伽藍洞だったものの、先の部屋には人がいそうな雰囲気だ。

 ……なぜかって、さっきから大声が聞こえ続けてるからな。

 

「……ねえ、この先に行くのやめない?」

「……奇遇だな。おれもちょうどそう言おうと思ったところだ」

 

 二人で顔を見合わせて、コソコソと話し込む。その間にも向こうの方からは興奮したような声と何かが落ちる音が聞こえてきていた。

 

「な……!ボク…………ら………タ……のさ!」

「ケル……クソ……が!!!」

 

「……なんかちょっと気が合う気がしてきたわね」

「……やめとけ」

「あー!!もう…………!!ちょ…………外の空気吸ってくる!!」

「!」

 

 ……ヤバい。くだらないこと話しているうちに、件の人物が廊下に出てきやがった……!

 見つけられたら果てしなく面倒なことになりそうなので、即座に撤退を決定する。Ωとアイコンタクトを取り、一番近い廊下の曲がり角に無音かつ最速で飛び込もうとして……

 

「あ」

 

 ……後ろから声がする。Ωと一緒に、ぎちぎちと錆びたブリキ人形のように首を回すと、その碧い瞳におれたちのことを完全にロックオンした白衣の人物の姿があった。

 

「……」

「……」

「…………うへ、うへ、うへへへへへへへ!」

「走れ!」

 

 全員が固まったようにしてできた間を、おぞましい笑い声が吹き飛ばす。顔中の筋肉を緩めに緩めまくって涎を垂らすその姿を見て、おれは思わず叫んだ。Ωなどは、もはやそれを聞くまでもなく走り始めている。

 

「逃がさないよ……!隔壁閉鎖、E-11,12!」

 

 だが、逃走のためのその努力は虚しく白銀の壁に閉ざされた。ストーカーが叫びながら壁をぶん殴ると、人を殺せるんじゃないかって勢いで隔壁が降りてくる。それは実に的確なタイミングでおれたちの進路を閉ざすと、奴の後方までもを塞いだ。それはつまり、完全にこの場所に閉じ込められたことを意味する。

 

「うへへ……君たち新入りだよね?ふひ、ふひひ、やっと会えたねぇ……!」

「「ひっ!」」

 

 背筋にぶるりと寒気が走って、思わずΩに飛びついてしまう。こちらの背中にも手が回っている気がするのだが、そんなことにまで気が回らない。

 どうする!?ケルシー先生やテレジアの態度でバベルは敵対する気はないと思っていたが、おれの眼に狂いがあったのか!?こいつの言っていた新入りという言葉、もしかすると、契約というのはそういう事だったのか!?

 

「大丈夫。痛いのはちょっとだけだからさぁ。ボク、結構上手いんだ。だから……」

 

 懐から取り出され、こちらに向かって伸ばされる魔の手。おれは、アーツでそいつを消し飛ばすことを決意した。狙いを定め、重力の奔流を解き放──

 

「……紙?」

「ちょっとまずはアンケート書いてくれるかな?」

 

 ──は?

 

 

 

「いやあ、ごめんごめん!ケルシーのクソバカアホにやりたかった検査を却下されちゃってさ。ちょっと興奮しちゃってたんだよね」

「……さいですか」

 

 十分後。おれたちはガラス張りの部屋の中に案内されて、ストーカーもといRidiculousと話をしていた。彼女はこのバベルの一員で、研究を主に行っているらしい。どうやら、この組織はドンパチするだけの脳筋集団ではなく、こうした活動もしているようだ。

 先ほどまでの何もなかった白い部屋とは違い、この部屋には様々な機器が設置されている。彼女がいうには、バベルにやってきた者たちはこれらの機器を使って身体データを色々と取るそうだ。その一環として血中源石濃度を調べるのだが、その時の採血針を刺すのはRidiculousの得意技らしい。何でも、他の人と比べてあまり痛くないと好評なんだと。

 ……いや、紛らわしすぎだろ!

 

「それでさ、いいかな?いいよね?」

「……どうする、Ω」

「……そうね……」

 

 彼女は、その検査をおれたちにもしたいらしい。本人曰く、これは規則だから必要なことらしいのだが、果たしてどうか。嘘を言っている雰囲気はなかったが、言外の含みを感じた。恐らく、バベルの人員が検査をしなければいけないというのは嘘ではないのだろう。ただ、それが傭兵のおれたちにまで適用されるかは微妙なところだ。

 ケルシー先生云々も、おれたちを検査することを却下されたのではないかという疑惑まである。単に彼女が自分の知的欲求を満たしたいだけでは、というのがおれの所見だ。

 ただ、メリットがないわけではない。自分たちの身体機能を、データとして知ることができるのは今後の作戦立案などに大きく役立つだろうし、現時点でバベルの化け物連中たちとおれたちの間に、どれくらい差があるのかを知ることもできる。

 逆にデメリットは何かされる危険があるというくらいか。……うーん。

 

「……もし検査以外の妙な真似をするようだったら、即座にアーツでお前を消す。それでもいいんだったら、いいだろう」

「ま、そんな落としどころでしょ。あたしも興味自体はあるしね」

「そんなの当たり前じゃん!ナチュラルじゃないデータなんて何の意味もないのに!」

「そ、そうか」

 

 物凄い剣幕で叫び、茜色の髪を振り乱すRidiculous。妙な地雷を踏んでしまったのかは分からないが、この様子ならあまり心配はないかもしれない。

 

「さ、さ、さ!やるよやるよやるよ!まずはこの器具を取り付けて……」

 

 

 

 それからしばらく、おれたちは彼女に言われるがまま検査を受けた。身長を測ったり、造影検査をしたりといったものから、ランニングマシンを用いた運動強度の測定、机上演習による戦術・戦略への適正の測定。さらには、ロボットを用いた模擬戦闘など、幅広い分野にわたってだ。

 どれも順調に行われていたのだが、唯一ひと悶着があったのは最後、アーツ適性検査の時だ。まず、手の内を見せたくないこちらと全部みたいあちらで揉めに揉めた。最終的には個々のアーツよりもアーツ学に基づいたゼネラルなデータの方が重要との判断で、こちらの要求が通った。通ったのだが……

 

「いやいやいや!おかしいって!何でそのアーツ適正でそんなショッッッッッッボいことしかできないのさ!?」

「……おい、お前見たのか?」

「違うよ!ボクはただ君のアーツが干渉したことによる場の乱れを計測しただけだって!」

 

 おれの質問に対して、全ギレで答えるRediculous。言っている意味は全然分からないが、とにかく本当に見ていないだろうことだけはわかる。おれはΩにアイコンタクトを取った。

 

「……アーツは発動してるはずなのにこっちへの影響が少なすぎる……まさかどっかにリソースを……うーーーーーん……うわー!クソ、バラしたい!バラして見てみたいけどダメだし……んぎぎぎぎぎぎ!」

「うわぁ……」

 

 彼女は考え込むと、何事かを突然ブツブツと呟き始めた。間間に物騒な言葉が挿入されているような気もするし、物凄い歯軋りをしているしで正直ドン引きだ。

 そんな状況をΩと二人で出口へ後ずさりしながら眺めていると、ピタリと動きが止まり、カサカサとこちらに近づいてきて彼女は言った。

 

「とりあえず、今日の所は帰った帰った!ボクはこれから色々やんなきゃいけないからさ。打倒ケルシー、ようこそ七徹!うへ、うへ、うへへっへへへへ!」

 

 お言葉に甘えて、おれたちは即座にその場を逃げ出した。勿論、これまで取ったデータのコピーはすべてΩが回収したので安心だ。

 

「今日の所はどころかもう二度と来たくねえなここ」

「あの女にチクっておくわ。それで一件落着でしょ」

 

 バベルは化け物だらけというイネスの言葉は実際正しかった。非戦闘員までそうだとは思ってもいなかったけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、この船の探索もいよいよクライマックスだ。バベルに住まう化け物たち、そのお顔を人目拝んでおくとしよう。

 

「ここ、か?」

「……多分ね」

 

 眼前にあるのは船の最上部。メインブリッジだ。恐らく、本来ならばおれたちが入れるような場所ではないのだろうが、まだ船が未完成なこともあり、セキュリティは機能していないようだった。思えば、これまでこんな風に自由にうろつくことが出来たのも、そのためかもしれない。

 

「……とりあえずノックしてみるか」

 

 コンコンコン、とリズムよく扉を叩く。すると、向こうからくぐもった声が聞こえてきた。

 

「ケルシー?」

 

 言葉とともに、ドアが開く。開けたのはテレジアだった。

 

「どうも、殿下」

「うわぁ!?……驚いたわ、ケルシーじゃなくてWだったなんて……あら、Ωもいるのね!さあ、入って!」

 

 殿下はいらないわよ、なんて言う彼女に連れられて、二人で部屋の中へと入っていく。見渡せば、一面に輝くディスプレイが広がっていた。

 

「それで、今日は二人で……あら?Ω、もしかしてそれ……」

「気分よ気分!今日はそういう気分だったのよ!」

 

 なんだろう、思ったよりもΩとテレジアが親しげだ。以前おれと一緒に会った以外にあまり接点もないと思っていたのだが、あの後も話す機会があったのだろうか。

 

「ふふっ、それについてはまた話を聞かせてもらおうかしら。……それで、二人はどうしてこんなところまで?」

「ちょっとした探検よ」

「取り敢えず、自分たちの拠点になる場所をよく知っておこうと思ったんだ」

 

 Ωの答えに付け加えるようにして、おれは建前上の理由を述べる。すると、テレジアは表情を緩めて嬉しそうに言った。

 

「まあ、ロドス・アイランドの探索を?」

「ロドス・アイランド?」

「そう、ロドス・アイランド。この船の名前よ」

 

 船の名前。そういえば、彼女は前に名前について悩んでいると言っていた。誰かのことかと思っていたが、もしや船の事だったのか。

 

「この間Wの話を聞いて改めて思ったの。きっと、名前というものには名付けた人の想いが込められているって。だから、ちゃんと本名を使ってあげなきゃ。ケルシーやドクターからは反対されたけれど……」

 

 壁に、いや船に目をやりながら、しみじみと語るテレジア。そんな彼女の言葉の中には、聞き逃せない単語があった。

 

「本名……?船に?」

「ええ。最深部に資料が残っていてね。どんな意味かは分からないけど……それでも、いい名前でしょう?」

 

 ロドス・アイランド。その名前を、口の中で転がしてみる。なるほど、不思議な響きだ。特にロドスという部分が、何だか少し聞き覚えがあるような気がして。けれども、いい名前だとも思った。

 

「ロドス……ああ、いい名前だと思う」

「ほら、やっぱり!それじゃあ、どうにか頑張ってケルシーを説得しなくちゃね」

「そういうことなら、あたしも手伝うわよ」

「どんだけ嫌いなんだ、お前は……」

 

 相手がケルシー先生と分かった瞬間、加勢することを即決したΩに呆れながらも、おれはあることに気づく。

 さっき、テレジアは名前が資料が残っていたと言った。それはつまり、この船はバベルの手によって造られたものではないということを意味するのではないだろうか。

 しかし、こんな巨大なもの、レム・ビリトンにあったとしても放っておかれるはずはない。そのまま使う事は無いにしても、解体すれば資材にはなる。だというのに、内装は未完とは言え、船としての体裁を保っているというのは一体どういうことなのだろう。

 考えられるのは、普通では見つからない場所に隠されていたという可能性。しかし、だとすればなぜバベルはそれを見つけられたのかという話になってくる。

 ……ダメだ。考えれば考えるほど、分からないことが増えていく。謎を一つ明らかにすれば、新たに謎が二つ三つ出てくる、そんな感じだ。これでは……

 

「そういえば、Wはどうなの?」

「……っ?」

「あんたの名前の話よ。これまで気にしたことはなかったけど、この船みたいにあんたにもあるの?本名っていうのは」

 

 テレジアの問いかけで、思考が中断される。慌てて意識を現実の方に引き戻すと、Ωが内容の補完をしてくれた。心なしか少しそわそわしているような気がする。

 ……本名、か。そう言われてみると、少し考えてしまう。

 これまで傭兵として生きてきて、名前というものに個体を識別する以上の役割は求めていなかった。Ωの時には、色々と変わったせいかそれ以上の役割を込めたけれども、あいつと出会う以前については特に頓着はなかった。

 Wという名前すら、どうして付けたか覚えていないほどなんだ。本名なんぞ、それ以上に覚えていない。

 ……その筈なのに、何故か本名が、Wでない名前があるような気だけはする。そうして、それが何か温かいものと結びついているという事も。

 

「……ある、とは思う」

「本当!?なんて──」

「けど、覚えてはいない」

「あ……ごめんなさい、私──」

 

 そのことを告げると、テレジアはハッとした表情をして、直後に申し訳なさそうな顔をする。そのまま、謝罪の言葉がやってくる前に、おれはそれを遮った。

 

「いや、いいんだ。名前を覚えていないなんて、カズデルではよくあることだしな」

「……」

「……けど、それが何か温かいものだってことは覚えてる」

「……!……ええ、ええ、そうよね!……やっぱり、私はみんなの名前を覚えておきたいわ。とても温かくて、そうして忘れられないものだもの」

 

 そう言って、彼女はどこか遠くを見つめるようにして儚く微笑んだ。

 ……やっぱり、テレジアはいい人だ。善良で、清廉で、篤厚で。こんなの、会って話せば誰でも絆されてしまうだろう。

 おれは少し、こんな風に言葉を交わしながら心の底で彼女を警戒している、自分のその心が嫌になった。

 

「W、それにΩ」

 

 小さな痛みを感じていると、テレジアがおれたち二人の方を見やって語り掛ける。

 

「これから、カズデルの運命が決まった後。あなたたちが「W」と「Ω」じゃなくなる時がきたら、きっと良い名前が欲しくなるわ。サルカズらしい、良い名前が」

 

 そこまで言って、彼女はいったん言葉をきる。どうやら、おれたちの様子を伺っているようだ。カズデルの運命が決まった後というのは、この内乱が終わって、もう戦う必要が無くなったらという事か。……どうなんだろうか。名前というのは、そんな時欲しくなるものなのだろうか。

 ちらりと隣に目をやれば、恐らくおれと同じであろう、どこか分からないような顔をしている。

 すると、おれが視線を戻さぬうちに、テレジアが先ほどの言葉の続きを口にした。

 

「二人で呼び合って、温かい気持ちになれる名前が」

 

 ……二人で呼び合う?作戦の最中に個体を識別するためではなくて、平穏の中で?

 それを想像したとたん、カッと顔が熱くなるのを感じた。慌てて、先ほどまで横にやっていた目をテレジアの方へ戻す。おれのその様子を見てか、テレジアが実に楽し気に笑った。

 

「ふふふっ!あなたたち、本当に仲がいいのね。今だって、動きがそっくりだったわ」

「「……っ!」」

 

 思わず息を呑む。あいつの表情を確かめてみたいような、確かめてみたくないような、そんな気持ちになって、目があちこちに泳いでしまう。

 なんだ?おれたちは殿下直々にからかわれているのか?

 

「ちょ、ちょっとテレジア、適当言うんじゃないわよ!からかってるの!?さっきから!」

「ダメよ、Ω。サルカズの女性はお淑やかじゃないと」

「……!!!」

「ちょ、落ち着けって!」

 

 おれは鼻息を荒くするΩのことを脇から抱えて必死に留める。それを見て、テレジアはからからと笑う。

 

 あいつが落ち着くまでの数分間、ずっと二人密着したままだったことに気付いて気まずくなったのは、テレジアに指摘されるまでもないことだった。

 

 

 

 

「一刻も早く、ロドスの食堂を完成させるべきよ!」

「それに関しては全面的に同意する。何より、調理場を早く完成させてくれ」

「ええと……できる限り頑張るわ。クロージャにも頼んでおくから……」

 

 それからも、おれたちとテレジアとの会話は続いた。雑談とも言うべきだろうか。彼女も今は暇のある時間らしく、いつの間にか会話の主題は食べ物の事へと移っていき、主導権は完全にΩが掌握していた。

 

「それから、次に補給できる食料ってのは一体何なの?こいつにメニューを考えさせるから、知っておきたいのよ」

「それが……急なことだったし、あんまり資金に余裕もないし……じゃがいもくらいしか……」

「じゃがいも!?……任せたわよ、あたしのシェフ」

「だからシェフじゃないって……まあ、任せとけとは言っておくけど」

 

 じゃがいも料理は前菜からスープまで、色々と揃っている。食堂&調理場のこけら落としに、じゃがいもフルコースというのもなかなかいいのではないだろうか。

 そんなこんなでテレジアを困らせながら、やいのやいのと騒いでいると、ドアが開いた。

 現れた人影は一つ、黒いフードを被った人物だ。

 

「ドクター!ちょうどいいところに……ああ、彼はドクターよ。二人にはまだ紹介してなかったわね」

「…………」

 

 ドクター。そう呼ばれた人物は、テレジアの言葉に反応してこちらを向いた。瞬間、ドクンと心臓が波打つ。まるで、こちらの全てを見透かすような視線。目は見えないのに、おれはまるで眼前に怪物の眼玉が迫っているかのような圧迫感を覚えた。

 ふと、ドクターがこちらから目を反らす。それで、おれはプレッシャーから解放された。ちらりと隣のΩも見やる。彼女もまた、額に嫌な汗を浮かべているようだった。

 

「……やあ。君たちのことはテレジアから聞いているよ。彼女と同じく、私も二人を歓迎するよ」

 

 ドクターは、先ほどあの威圧感を放っていた人物と同じとは思えないほど、朗らかな声でそんなことを宣った。

 ……なるほど。彼が一番の化け物だったか。

 テレジアも、ケルシー先生も、確かに化け物と言われるようなヒリついた感覚を感じさせられる。何か、秘められた強大なモノを感じることはできる。

 ただ、このドクターはそういうものではない。テレジアともまた違った未知。何も感じないはずなのに、何もかもを知られているような気がする。

 

「……よろしく、ドクター。殿下、彼はすごい人物ですね」

「……そうね。ドクターは私たちにとって大切な人だもの。特に……」

「テレジア。なぜ彼らがここにいるんだ?」

「うげっ……」

 

 テレジアの声を遮り、室内に響き渡った声を聞いて、Ωがげんなりとした声を上げる。

 視線の先には、予想通りの人がいた。即ち、ケルシー先生だ。

 

「ロドス・アイランドを探検しに来たんですって。それで、私が迎え入れたの」

「はあ……テレジア。あまり君を縛ることを言いたくは無いが……もう少し行動には気を付けてくれ。君に何かがあれば……いや、ここでは止そう」

 

 明らかにおれたちのことを気にした目線を残して、彼女は口を噤んだ。

 改めて室内を見渡してみる。

 テレジア。ドクター。ケルシー先生。なるほど、これがバベルのトップ達か。

 確かに皆化け物だ、その認識には変わりはない。

 

 けれども、それだけではないこともわかった。

 ケルシー先生に苦言を呈されて、困ったような表情をしているテレジア。その二人の様子を見て、苦笑といった雰囲気のドクター。

 皆化け物だけれども、同時に人間でもあった。

 

 ……おれは、バベルの謎についてあれこれ考えていたけれども、それは謎が謎を呼ぶいたちごっこで。けれども、それはおれの考える謎の組織、「バベル」だ。

 もしかすれば、バベルというのは、おれが今日見てきたもの、そのものなのかもしれない。

 

 奇人変人、化け物が勢揃いで。

 そして、それらが皆、人間として暮らしている場所、というものが。

 

 

 

 

 




 基礎情報                      
【コードネーム】W
【性別】男
【戦闘経験】十年
【出身地】カズデル
【誕生日】本人は忘れたと主張
【種族】サルカズ
【身長】178cm
【鉱石病感染状況】
メディカルチェックの結果、感染者に認定。
 能力測定                      
【物理強度】標準
【戦場機動】標準
【生理的耐性】優秀
【戦術立案】優秀
【戦闘技術】優秀
【アーツ適正】■■
 健康診断                      
造影検査の結果、臓器の輪郭は不明瞭で異常陰影も認められる。循環器系源石顆粒検査の結果においても、同じく鉱石病の兆候が認められる。以上の結果から、鉱石病感染者と判定。

【源石融合率】17%
明らかな感染の形跡がある。診断はまだ不十分であり、今後も継続的な診断が必要だと考えられる。

【血液中源石濃度】0.33u/L
長年のカズデルでの傭兵としての活動、及びアーツの多用により、Wの感染状況は芳しくない。

血液中源石濃度のモニタリングしながらアーツを使ってもらったんだけど、ちょっと変なんだよね。なんかあんまりフィードバックされてないっていうか。もうちょっと、限界までアーツを使ってもらってもいいかな?

──医療オペレーターRidiculous

 第一資料                      
彼のアーツは異常の一言だね。理論上最大値どころか理論値をぶっちぎっているアーツ適正とアーツ規模のはずなのに、実際に現実に出力されているアーツは極めて小規模かつ精度の悪いものなんだから!敢えて例えるのならば、そこらへんのオリジムシに移動都市の源石エンジンを積んで、それが動いて「はい、すごいね」って言ってるようなものだよ、彼の現状は!こんなモノを目の前にして、何もできないだなんて研究者としては血の涙を流さんばかりの思いだったね。ついては、ボクに彼を解剖する権限を与えてほしいな。一つの個体を解剖するだけで、その数万、数億倍の個体をから得られる以上の成果を得られるんだから、安いものさ。傭兵をやらせとくには余りにも勿体ない。そんな風に戦場で何をやってもできることには限りがあるけど、ボクの所に来てくれればその何千倍ものことが出来るようになるはずだよ。もしボクの邪魔をするって言うんだったら、例え相手がケルシーだろうと──え!?ケルシー先生!?いつの間に……あ、いや、違うんです!ボクは……あ、ああああああああ!

──医療オペレーターRidiculousの馬鹿げた提案は、ケルシー医師によって却下された。
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