ホロライブラバーズ トロフィー「ファンタジーを覇する物」獲得ルート 作:TENSEI2
幸せっていうのはガラスと一緒だ。
自分ではそのありがたみに気づけなくて、でもふと他人を見るととても美しくて、羨ましくて。
なかなか罅割れには気づかなくて。
とても脆くて、儚くて。
あれは確か、四年程前の事だったか。
俺には、とても大切な家族が居たんだ。
仕事がとても忙しくて、なかなか帰ってこれないけど、俺が寂しくならないように毎日メールを送ってくれた父さん。
いつも側で俺の事を見守ってくれて、時に厳しく、時に優しく接してくれた母さん。
友達の家とは違って、兄弟は居なかったけど、それでもいつも楽しかった。
それと、少しうざったらしく聞こえてしまうかも知れないが、俺にはとても大切な彼女が居た。
幼稚園からの幼なじみで、家もすぐ近くだった。
母さんが用事で出掛けなきゃいけない時なんかは、いつもその家によくお世話になっていた。
でも、そいつは家の都合もあって、小学校に上がって少ししたくらいで遠くに引っ越してしまった。
そいつが引っ越す前に、二人でこっそり約束をした。
綺麗なおもちゃの指輪を交換して、結婚式の真似事をした。
「いつか大人になったら、絶対元就くんのお嫁さんになる! それまで待っててね!」
…約束、した筈なんだ。
それから二年程経ち、俺は中学二年生となった。
相変わらず父さんの仕事は忙しいらしくて、一年に一度会えるかどうかになってしまった。でも、毎日送ってくれるメールがあってか、寂しさはあったけど、悲しくはならなかった。
母さんは、最近パートを始めた。今までは家に帰って来たら必ず聞こえていた[おかえり]の声が聞こえなくなったのは少し寂しいけれど、それでもいつも早めに帰って来てくれるし、毎日美味しい食事を作ってくれるから、とても感謝している。
そんなこんなで毎日過ごしていたところ、彼女から久しぶりに電話がかかってきた。
「元就、そっちは相変わらず? こっちはとっても忙しくて……あんたにたまには会いたくなるわ。」
二年前と比べてがらりと変わった言葉使いに少し驚きながらも、俺は会話に花を咲かせた。
彼女の方は、最近駆け出しの読者モデルとしてデビューしたらしく、仕事が多忙すぎて死にそうとの事だった。
彼女がぼやき話を続けている間、俺は自然と笑顔になっていた。久々に彼女の声を聞けて、嬉しかったのだ。
「いつかどこかで、また遊ぼう。」と約束を交わし、この日は通話を切った。
この日から、既に幸せのガラスが罅割れていたんだ。
その日は、およそ10ヶ月振りに父さんが仕事から帰ってくる日だった。父さんが帰ってくるのは昼頃との事だったので、空港まで母さんが迎えに行っていた。生憎平日だった為、俺は空港には行かず、学校で授業を受けていた。
家に帰る途中、小腹が空いてたので近場の喫茶店に寄った。
アイスティーとパンケーキを頼み、来るのを待っていた時
「あっ! 元就! 久しぶりね!」
懐かしい声が聞こえた。声が聞こえた方に顔を向けると、そこには彼女が居た。
知らない男と腕を組みながら。
「はじめまして。こんにちは。」
男から声をかけられた。無視してあいつを突き詰めたい所だが、人の目もあるし無闇にアクシデントは起こしたくなかったので、とりあえず無難な挨拶を返しておいた。
「それにしても本当に久しぶりね……四、五年振りくらい?」
彼女は俺と話をしながらも、腕をほどく素振りを見せない。それどころか、男と時たま目配せをしてはニコニコと笑顔を振る舞っていた。
「あ、そうだ! 元就に言い忘れてたことがあるの!」
彼女が久々に口を開いた。 彼女は昔からとても楽しそうに話すのだ。俺はその笑顔が大好きで、よく他愛もない事で話していた。
彼女は何を話すのだろうか。あちらでの生活の事だろうか?
「元就、紹介するね! この人が私の彼氏!」
景色が色を失った。いや、化けの皮が剥がれたとでも言うべきか。
彼女は何と言った? 彼氏? 隣の男が? 俺との約束は忘れたのか?
頭の中を、絶望の黒と無意味な白が染め上げて行く。結局届いたパンケーキに口をつけることも無いまま、俺はその場を逃げるように去った。
無様に逃げ去った俺は、知らない間に公園へとやって来ていた。かつて、彼女と幾度となく遊んだ公園だ。
不意に、涙が零れた。
今まで自分が信じていた物が、無垢な子供の手で壊されたような気分だ。彼女を恨むことも、その彼氏とやらを恨む事もできない。ただただ、[彼女だから]と行動を起こさなかった自分が十割悪いのだ。
結局公園で散々泣き腫らし、もはや一生分の涙を流した所で、家に帰ることにした。おそらくもう父さんは帰ってきているだろう。父さんが世界を巡って経験した思い出を早く聞きたくて、家に歩みを向けた時だった。
ブブブブ、と携帯のバイブレーションが鳴り響く。恐らく父さんからだろう。大方、早く帰ってこいとか、晩飯が冷めるとかの小さな小言だろうと思って、電話に出た。
「あの、もしもし……」
どこか聞き覚えのある、女の人の声だった。親戚のおばさんだろうか。ならなぜ、父さんの携帯から俺に電話をかけたのだろうか。携帯でもどこかに忘れてしまったのか?
「……落ち着いて、聞いて欲しいんだけど……
……お父さんとお母さんが、先程………」
そこから先は、啜り泣く声で聞こえなかった。しかし、この時の俺は、それが意味する事に気づいてしまった。
父さんと母さんが、死んだんだと。
それからは、何もする気が起きなかった。何もかもどうでも良くなった。クラスの奴らからの目線が同情と興味を織り混ぜた視線となったことも、親戚からかけられる憐れみの言葉も、いつのまにか一人になった事も。
結局やる気の無いまま中学を卒業し、ホロライブ学園に通う事になった。この時ばかりは、友人が出来るかな、と少しだけ心に色が戻った。
よくよく考えたら、俺はクズだ。
なんで俺はほぼ初対面のるしあに対して、あそこまでの敵意と殺意を向けることが出来たのか?
それはただ、羨ましかったからだ。
俺はなぜ、わざわざ調理室でるしあに料理を作ったり、わざわざフレアの事に頭から突っ込んだりしたのか?
それは、俺が二人と友達だと信じたかったからだ。
ああ、なんだ
俺は結局―
自分の事しか考えてないクズに過ぎないじゃあないか。
トラウマ「奪われる事への無知、それによる反動」
今までに、二回大きな絆の途切れを経験した。その事に対しての反動か、はたまた無知か、他者との[繋がり]に異常なまでに執着する。
久々なので失踪します。