クェーサー厨が行かされる難易度ちょっとハードモード   作:TFRS

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第七試合 上

『さあ、いよいよ勝負はラストスパート、同学校の同学年、ワンショットキルを得意とするシンクロン対えげつないアドをたたき出す甲虫装機の決闘が始まります、では選手入場!』

 

 入場と言った瞬間、場を覆うのは真っ暗な粘り気のある闇だ。

 

『ひたすらに相手を蹂躙する魔王、不死身竜、ソリティア、クソ虫等の蔑称が叫ばれるも本人は素知らぬ顔、堂々と笑顔でひたすら相手を潰し続ける最恐女子プロ、最上愛!』

 

 モーゼの十戒のように彼女の歩く場所のみが闇が割れその道を王の様に堂々と少女は歩く。

 歩く先、地面から突き上げられた棘に貫かれた骸が浮かびあがり、干からびた骸の口が開かれ、喝采するように苦悶が漏れ出していく。

 それら全ては彼女が愉しむために踏み潰された者達の成れの果て、愉しむだけ愉しんで投げ捨てられた物だ。

 

『対するは、瞬間火力はトップクラス、その火力から多くの決闘者の心をつかんで離さないシンクロ召喚に特化したローレベルデッキ、シンクロンを操る少年、彼はどこまで相対できるのか、ジャイアントキリングなるか!? 色々な期待が高まります、一般決闘者、水田裕ぅううっ!』

 

 裕の演出は小規模にしてくれと頼んでいた。自分はあまり期待されいない事を知っていたし派手な演出をさせて調子が狂ってしまうかもしれないという小心からだ。

 だからこそ今回の演出には面食らってしまう。

 白い煙が吹き上がらない、代わりに空を飛ぶのはその巨体は蒼く銀河のような輝きを内包した竜、青紫の鮫の様に鋭い体躯の海竜、先程の試合でも召還された白と黄色の希望の戦士、背中から糸を吐き出す巨大な修道女像だ。

 守るように、鼓舞するように宙を飛ぶそのモンスター達を見て、これを誰が仕掛けたのかすぐに分かり、裕は苦笑しつつ歩き出す。

 

「へー、面白い演出だなぁ」

 

 裕の背後に並ぶモンスターを見て、最上は笑う。

 

「ああそうだな、最高の応援だ、おかげで勝てる気がしてきた……!」

 

「あ? 今から負ける奴が何か言ったか?」

 

 耳に手を当て、言われた言葉の意味が分からないというように笑う最上、それを裕は睨み付け、

 

「俺が勝つって言ったんだよ。お前は性格は最悪だし言動は最低だ、正直、お前の勝ちにこだわる精神だけは凄いと思うし実際超強い、けどそれ以外はダメダメだ、だから俺が勝ってそのふざけた性根叩き直してやる!」

 

 口元にあるマイクを隠さずに裕は本音をぶちまける。

 それに対し最上は口元を歪めるだけだ。

 

「くだらない、カードとデッキを信じる? 仲間との絆を信じる? 他人を罵倒せず、他人を見下さずに勝負が終わった後に後腐れなく本心からにこやかに握手する? そんなバカみたいなことを本気で信じる性根のほうがふざけてる」

 

 そんな訳無いだろう。裕が願う物を最上は笑い飛ばす。

 

「そんな人間が居るわけねえだろ。かっこよくデッキを信じたところで、まっすぐで崇高できれいな信念持ったところで、デッキから一番上のカードを引いて相手の場を破壊して攻撃する、所詮これはただそれだけのカードゲームだ。思って叫んでも願ったところで引くカードが良くなるわけないだろ、それこそカードを書き換える事でもしないと、なぁ」

 

 薄ら笑いというよりは何らかの事を知っていて皮肉るような言葉に裕は眉を寄せ、今は関係のない事と切り捨てる。

 どちらの主張も交わる事の無い平行線、2人の願いは相反する物だ。だから言いたい事を言い終わり裕は最上へと一番聞きたかったことを問う。

 

「…………約束は覚えているよな、俺のクェーサーはどこだ?」

 

「ああ、ここだ」

 

 最上のエクストラデッキより抜かれた白枠のカード、よく見れば白い鎖の様な物でぐるぐる巻きにされ時折暴れる様に薄い光が漏れている。

 

「そういえば、いつか言ってたっけ、クェーサーなんたらがどうたらこうたらって、あれいつ見せてくれるの」

 

 最上の言葉の最後は疑問形ではない、嘲笑い、できないだろうと確信しているような笑みを見て裕はなんとしてもクェーサーを召喚してこの女の鼻を明かしてやると意気込む。

 

「今日だ!!」

 

「雑魚風情が、やれるもんならやってみろよぉ!」

 

 2人はデッキを取り出し決闘盤へ装填、身構え、司会者の言葉を待たずに2人は叫ぶ。

 

「「決闘!!」」

 

                      ●

 

「先攻は私だ、ドロー、強欲で謙虚な壺を発動」

 

 先攻は最上、山札を3枚手に取り。カードを見る。

 甲虫装機ダンセル、終末の騎士、和睦の使者というかなり良いカードが並ぶ中、最上が選ぶのは、

 

「ダンセルだ。そして終末の騎士を召喚、デッキより甲虫装機グルフを墓地へ、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

最上場      終末の騎士 ATK1400

LP4000    

手札4     伏せ1

 

裕場       

LP4000      

手札5                

 

 召喚された騎士の一振りでデッキより墓地へと虫が落ちた。

 そして先ほどデッキから加えられたかカードが裕の焦りを強くする。

 下手をすれば次のターンで終わってしまう可能性を秘めたパワーカード。LP8000ならともかくLP4000では防御カードなしでは1ターンどころかメインフェイズで死ぬ可能性もある。

 だからこそ、と裕はデッキに願う、負けたくはない、クェーサーを取り戻すためにデッキよ応えろと、

 

「やべえ、何とかしないと、ドロー! ……くっ、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

裕場       

L4000      

手札5         伏せ1

 

最上場      終末の騎士 ATK1400

LP4000    

手札3     伏せ1  

 

「そうだったな、それは虫に対する一つの手段だっけ」

 

 カードを引き、懐かしむように目を細め愛は呟く。

 ダンセルとホーネットが無制限時代、下手なカードを伏せて的にするぐらいなら何も伏せず次のターンが来るのを祈るという戦法もあった。だが、

 

「ライフ4000の世界で死なないとでも思ってるのか、行くぞ、お前の伏せを対象に魔法ナイトショット、効果は知ってるかは分からないけど説明しとく、そのカードはこのカードの効果にチェーンできない」

 

 砕かれたブレイクスルー・スキルを確認し、最上はふんと鼻を鳴らし、

 

「ダンセル召喚、効果で墓地のグルフを装備、グルフの効果でダンセルのレベルを1つ上げる、そしてダンセルの効果で」

 

「ここだ、増殖するG!」

 

 叫ぶようにたたきつけた裕の様子に、不機嫌そうに舌打ちをし最上は動く。

 

「ふうん、デッキから甲虫装機センチピートを特殊召喚、センチの効果で墓地のグルフを装備、グルフの効果でグルフを墓地に送り、センチのレベルを1つ上げる。そしてセンチの効果でデッキからダンセルをサーチ、バトルフェイズ、ダンセルで直接攻撃」

 

 終末の騎士1400、ダンセル1000、センチピート1600、その総攻撃力の合計はジャスト4000、この攻撃が全て通れば裕の敗北が決まる。

 だが最上はなんとなく防ぐ手段があるのだろうと予測していた。

 

「まだだ、速攻のかかしの効果発動、バトルフェイズを終了する!」

 

「だよなぁ……カードを1枚伏せてターンエンド」

 

最上場    終末の騎士 ATK1400

LP4000   甲虫装機―ダンセル ATK1000(+LV1)

手札2    甲虫装機―センチピート ATK1600(+LV1)

       伏せ3

 

裕場      

LP4000      

手札4 

 

「俺のターン、よーし、よし、大嵐を発動!」

 

 裕は引いたカードにガッツポーズをとり見せつける様にカードを決闘盤へ入れる。

 その言葉に最上は挑発するように笑いながら伏せていたカードを開く。

 

「はぁ? 通ると思ってんのか! 罠発動、スターライト・ロード発動、大嵐を無効にしてスターダスト・ドラゴンをエクストラデッキから特殊召喚する」

 

 大嵐が止められたことに露骨に残念そうな態度を取りつつ、裕は祈るように眼を閉じ、

 

「……更に調律を発動、デッキからアンノウン・シンクロンを手札に加え、デッキトップを墓地に」

 

 墓地に落ちるのはレベルスティーラー、それを見て、裕はガッツポーズをする。

 

「よし! 相手の場にのみモンスターが居る時、アンノウン・シンクロンを特殊召喚。そしてチューニング・サポーターを召喚し、レベル1のチューニング・サポーターにレベル1のアンノウン・シンクロンをチューニング、レベル2、フォーミュラ・シンクロン!」

 

 チューニング・サポーターをシンクロ素材としたフォーミュラ・シンクロンに最上はめんどそうに舌打ちをするも妨害カードは開かれない。

 裕は更に調子づき、笑顔で声を張り上げる。

 

「シンクロ素材となったチューニング・サポーター、そしてシンクロ召喚に成功したフォーミュラの効果で2枚ドロー、そして精神操作でお前のスターダスト・ドラゴンのコントロールを得る」

 

「へえ、シュースタか?」

 

「そうしたいけど、今はこっちだ! レベル8のスターダスト・ドラゴンにレベル2のフォーミュラ・シンクロンでチューニング、レベル10、神樹の守護獣-牙王!」

 

 星屑の竜とF1カー戦士は星になり上空へと登る。降りてくるのは神樹の加護を得て禁断の竜の力を鎧へと変え新たな力を手にした獣の王が立ち、その力強い四肢を動かし飛び掛る。

 

「バトル。牙王でダンセルを攻撃だ!」

 

「残念、和睦の使者だ、戦闘での破壊を無効にする」

 

―――ダンセルも倒せないか…………!

 

 裕は心の中でぼやくも結果は変わらない。

 神樹の守護者―牙王には自分のメイン2以外にカード効果の対象とならない効果を持って居る。

 それにより甲虫装機ホーネットやヴォルカザウルス等のエクシーズモンスターの対象にはならない。

 これならば少しは何とかなる、そう思うも不安は拭いきれない。

 

「くっ、メイン2、ターンエンドだ」

 

 裕の声には不安が滲んでいて、それは観客、この試合を見ている者達にまで裕が何を思っているかが伝わっていく。

 

裕場       神樹の守護獣-牙王 ATK3100

LP4000      

手札3      伏せ0 

 

最上場     終末の騎士 ATK1400

LP4000    甲虫装機―ダンセル ATK1000(+LV1)

手札2     甲虫装機―センチピート ATK1600(+LV1)

        伏せ1

 

「ドロー、ダンセルの効果発動、墓地から」

 

「させるか! エフェクト・ヴェーラーだ、ダンセルの効果を無効にする!」

 

「ならば更地にするだけだ。そしてレベル4のセンチの効果で墓地のグルフを装備、グルフの効果で終末の騎士のレベルを2上げてデッキから甲虫装機ギガマンティスをサーチ、そしてダンセル召喚!」

 

 連打される虫の軍勢、その進撃は留まる事を知らない。

 

「ダンセルの効果発動、墓地よりグルフを装備、グルフの効果でレベル4のダンセルのレベルを2上げ、そしてダンセルの効果発動!」

 

「まだだ、まだ終わらない! 増殖するGだ!」

 

 再び放たれる手札誘発、それに最上は舌打ちどころか面倒くさいという表情を露骨に見せる。

 だが動きは止まらない。

 

「ちっ、デッキよりセンチピートを特殊召喚する、そしてセンチピートの効果でグルフを装備する、そしてレベル6となっているダンセルと終末の騎士でオーバーレイ、現れろ甲虫装機エクサビートル!」

 

 渦の中へと飛び込む赤い虫と騎士、そして渦より登りあがるは巨大で黒に金の装飾の入ったカブトムシ型の甲冑だ。

 

「このモンスターは!?」

 

「エクサビートルのエクシーズ召喚成功時の効果発動、私の墓地よりスターダスト・ドラゴンをその攻撃力の半分をエクサビートルの攻撃力へと加える装備カードとする」

 

 生気の無く機械の様に動く甲冑は地面に腕を叩きつけると墓地より星屑竜が引き摺り出される。

 そのままカブトムシ甲冑はその外装を開き空っぽの中身を露出させると動かないスターダスト・ドラゴンを内部へと取り込み、そのカメラアイを光らせると先程とは打って変わって機敏に動き始めた。

 

「そして手札のギガマンティスの効果、このカードを攻撃力を2400ポイントアップさせる装備カードとしてエクサビートルに装備させる」

 

 蟷螂のような外装を身に纏った人型は手にした武器をエクサビートルへと放り投げるとエクサビートルへと走る。

 エクサビートルの背中が開きギガマンティスを収容し武器を手に取り、エクサビートルは更に力を増す。

 

「これで牙王の攻撃力を上回った、バトルフェイズ、エクサビートルで牙王を攻撃」

 

甲虫装機―エクサビートル ATK3650 VS神樹の守護獣-牙王 ATK3100

 

更に両手にトンファーのように腕を覆うように両刃のついた武器を構えを装備した巨大甲虫は獣の王へと地面を滑るように背中のブースターを蒸かし、近寄ってくる。

 接触は一瞬だ。

 剣をまみえる必要もないというように、相対する気がないようにその巨体からは想像できない俊敏さで2つの円を描く。

1刀目で4肢を、2刀目で飛びかかる牙王の首を切り落とす。

 

破壊→神樹の守護獣-牙王

裕LP4000→3450

 

「ぐ、ああぁああっ!」

 

 爆発の余波を受け吹き飛ばされ転がった裕はなんとか力を振り絞り立ち上がる。そこへ赤い人型の追撃が叩き込まれる。

 

「さらにダンセルで直接攻撃」

 

裕LP3450→2450

 

 再び吹っ飛ばされた裕は即座に態勢を立て直し手札を1枚引き抜く。

 

「まだだ! このダメージ計算終了時、冥府の使者ゴーズの効果発動、攻守1000ポイントのカイエントークンを守備表示で特殊召喚し、ゴーズを攻撃表示で特殊召喚する!」

 

 受けた痛みを晴らす様に裕の背後より甲冑を着た男が現れる、そして裕の方へと手をかざすと裕の体から黒い靄が立ち上り女性の形となる。

 

「ちっ、センチでカイエントークンを攻撃」

 

甲虫装機センチピート ATK2100 VS カイエントークン DEF1000

破壊→カイエントークン

 

「メイン2、グルフの効果でダンセルのレベルを1上げる、そしてセンチの効果でデッキから甲虫装機の魔剣ゼクトキャリバーを加え、ダンセルに装備させる」

 

 最上より投げ渡された剣をダンセルは握る。

 

「エクサビートルの効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い、ゴーズとダンセルの装備しているゼクトキャリバーを墓地に送る」

 

 オーバーレイユニットを一つ手に握りつぶしそのエネルギーを取り込みエクサビートルはダンセルの持っていた剣を奪い取るとゴーズへと投げつける、寸分狂わずに突き刺さったそれと共にゴーズは闇へと沈んでいく。

 

「そして墓地に送られたゼクトキャリバーとダンセルの効果発動、墓地のダンセルを手札に回収、そしてダンセルの効果でデッキから甲虫装機ホーネットを特殊召喚、ホーネットの効果で墓地のグルフを装備、そしてグルフの効果でホーネットのレベルを1つ上げるぅ!」

 

「レベル4が3体、まさか、また!?」

 

 連打される虫の進軍は止まらない。

 

「その通りだ、レベル4モンスター3体でオーバーレイ、その異能で全てを縛り敵を無能にし、私の前に跪かせろ、No.16色の支配者ショック・ルーラー! ショック・ルーラーの効果、オーバーレイユニットを1つ使いモンスター効果を発動できなくする」

 

「それ通したら負けるって! エフェクト・ヴェーラーだ!」

 

「ちっ今引いたのか……2枚伏せてターンエンド」

 

最上場     No.16色の支配者ショック・ルーラー ATK2300(ORU2)

LP4000    甲虫装機—エクサビートル ATK3650(ORU1)

手札2     甲虫装機―センチピート ATK1600

        伏せ3

        甲虫装機—ギガマンティス(装備魔法)

        スターダスト・ドラゴン(装備魔法)

 

裕場       

LP2450      

手札3      

 

 展開されるエクシーズモンスターの連打に観客は言葉を失う。

 裕が有利になったかに思った次のターンには強力な布陣を引き、次の虫が手札で出番を待ち構えている。

 普通に考えればうんざりするか諦めたくなる様な状況だ、だが裕は諦めない。

 1回戦で藤田プロに教えられたように自分は馬鹿で前しか見れないから、カードを引いてできる事を考えてそれを実行するだけだと、笑い、デッキを信じデッキに手をかける。

 

「俺のターン、ドロー! 魔法カード、増援でデッキからドッペル・ウォリアーを手札に加え、ジャンク・シンクロンを召喚。墓地からアンノウン・シンクロンを特殊召喚し、そして墓地から特殊召喚に成功したからドッペル・ウォリアーを特殊召喚する、レベル2のドッペル・ウォリアーにレベル3のジャンク・シンクロンをチューニング、レベル5、TGハイパーライブ」

 

 空へと上っていく2つの星と3つの輪が黒い笛へと吸い込まれ笛ごと星は砕け消える。

 

「カウンター罠、召喚の黒角笛、ライブラの特殊召喚は無効だ」

 

「げっ…………まだだ! 貪欲な壺を発動。フォーミュラ、ライブラリアン、増殖するGを2枚、エフェクト・ヴェーラーをデッキに戻し、2枚ドローッ!」

 

 蘇生系カードを引き当てすれば牙王を出せる、エクサビートルを倒し対象にとられない効果を持つ牙王を蘇生できれば勝てるかもしれない、そう考え牙王を墓地に残した上で貪欲な壺の対象を選択しデッキから2枚のカードを引き抜いた裕はちらりと見て笑う。

 

「調律を発動、クイック・シンクロンを手札に加えデッキトップから1枚を落とす」

 

 デッキより落ちるのはスキル・プリズナー。

 裕はますます顔の笑みを強くする。

 まるでデッキが力を貸してくれているように先ほどから調律による運任せの墓地肥しが成功している。

 カードが、デッキすらもが裕に力を与えてくれているように裕は感じ、それを無駄にしたくないと叫ぶ。

 

「幻獣機オライオンをコストにクイック・シンクロンを特殊召喚、墓地にオライオンの効果で幻獣機トークンを特殊召喚する、更にクイックのレベルを下げてレベル・スティーラーを特殊召喚、レベル1のレベル・スティーラーとレベル3の幻獣機トークン、レベル4となったクイック・シンクロンをチューニング、レベル8、ジャンク・デストロイヤー!!」

 

 星が上り降りてくるは破壊の力を持つ戦士だ、拳を振り上げ空を殴ると半透明のテントウムシと衛星が最上の伏せへと突撃していく。

 

「デストロイヤーの効果発動、チューナー以外のシンクロ素材の数だけ場のカードを破壊する、俺が破壊するのはお前の伏せカード2枚だ!」

 

 デストロイヤーの拳より呼ぶ破壊のエネルギー弾は最上の伏せていたリビングデットの呼び声とブラフのナイトショットを破壊した。

  

「そしてデストロイヤーのレベルを下げてレベル・スティーラーを特殊召喚、レベル1のスティーラーにレベル1のアンノウン・シンクロンをチューニング、レベル2、フォーミュラ・シンクロン! 効果でデッキから1枚ドロー」

 

 祈る様に引き抜いたカードより風が放たれる。

 まだだ、まだ終わらない。そう願う裕の声に呼応するように風が速度を増し、吹き荒れる。

 

「まだだ、デストロイヤーのレベルを下げ、レベル・スティーラーを攻撃表示で特殊召喚、レベル6となったジャンク・デストロイヤーにレベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング、レベル8!」

 

 その出現に空が割れる、星が並び揃い爆発し現れるのは黒と赤の四肢の長い竜、その身に宿すのは自分の前で頭を垂れない全てを排除する強力で孤高の力だ。

 

「現れろ、琰魔竜レッドデーモンッ! 琰魔竜の効果だ、攻撃表示のモンスター全てを破壊する!」

 

 味方すらも焼き尽くし場にいるナンバーズも強力な力の甲虫もすべてを破壊し竜が拳に焔を宿す。

 

「バトルだ、レッド・デーモンで直接攻撃!」

 

 握り拳が最上へとぶちかまされる寸前、最上の手札より終了を告げる鐘の音が響き渡った。

 

「バトルフェーダーの効果だ、バトルフェイズを終了させる!」

 

「だったらメイン2、レッド・デーモンのレベルを下げてレベル・スティーラーを特殊召喚、緊急テレポートを発動、デッキからリ・バイブルを特殊召喚する」

 

 並んだモンスターのレベルを見、最上に思い当るカードが在る。

 クイックを使うデッキならば入れていてもおかしくないカード、だがそれを裕には渡していない。

 

「まさか!? いや、だってお前が持ってるはずないっ!」

 

 最上は驚愕の声をあげる。

 それは当然だ、自分が渡していないカードを裕は召喚しようとしているからだ。

 

「確かに俺はレアカードを買う金はない、だが教えてやる、全てを解決させる魔法の言葉を」

 

 一呼吸置き、裕は大きく息を吸い込み、得意げに叫ぶ。

 

「カードは拾ったっ! レベル7となったレッド・デーモンにレベル1のレベル・スティーラー、レベル1のリ・バイブルをチューニング、現れろ、氷結界の龍トリシューラァッ!」

 

 熱波の後にくるのは氷河期を思わせる氷の暴力だ、空より落ちてくる氷山は爆散し龍が降りて来る、そして始まるのは全てを削ぎ落とすブリザードだ。

 

「トリシューラの効果発動、お前の墓地のホーネット、場のバトルフェーダー、そしてお前の最後の手札、ダンセルを除外しろ!」

 

 手札の後続、墓地の重要な役割、場の壁、それらを一瞬で失い、先程まで裕を追い詰めていた最上が一転して窮地に追い込まれる。

 裕はレベル・スティーラーを特殊召喚しようかと迷うも、ガイアドラグーンを特殊召喚されてしまえば敗北が確定する事を考え、止める。

 

「よし、これで、ターンエンド!」

 

裕場      氷結界の龍トリシューラ ATK2700

LP2450      

手札1     

 

最上場      

LP4000   

手札0     

 

「……だ、……だだ」

 

 ぽつりとつぶやいた声、それを聞き観客は最上が焦っている事を知る。

 今まで聞いたことのない声色の最上、その顔は俯き気味であり裕からも読み取れない。

 

「まだだ、こんな奴に私が負けるものか」

 

 再び観客が聞いたのは自己愛の咆哮。負けたくない、己が見下してきたこんな奴に私が負ける筈が無い。そう自負する感情だ。

 

「こんな雑魚に私が負けるもんか、私が勝つんだッ!」

 

 どんなに性格が歪んでようとも、どんなにデッキを愛さなくても、最上愛の決闘における実力は揺らがない。

 強く純粋にひたすら自分のためだけに勝つという意思は敗北する運命を超越する。

 我欲のみが輝くその意思は全てをねじ伏せ、逆転の1枚を彼女は引き当てる

 

「ダンセル召喚ッ!」

 

「最後の1枚を引き当てた!?」

 

「ダンセルの効果でグルフを装備し、グルフ効果ダンセルのレベルを1つ上げる、そしてダンセルの効果でデッキから甲虫装機―ホッパーを特殊召喚。そしてオーバーレイ、現れろダイガスタ・エメラル! エメラルの効果発動、墓地のダンセル1体センチピート2体をデッキに戻し1枚ドロー!」

 

 再び煌めく我欲が描くは勝利への渇望。

 見下していた相手に負けるはずが無い。その感情は更なる蹂躙を約束する。

 

「負けるものか、死者蘇生、ダンセルを特殊召喚。ダンセルの効果で墓地のグルフを装備、グルフの効果でダンセルのレベルを2つ上げる、ダンセルの効果でデッキからセンチピートを特殊召喚、センチピートの効果グルフを装備、グルフの効果でセンチピートのレベルを2つ上げ、センチピートの効果でデッキから甲虫装機ゼクトキャリバーをサーチ、そしてレベル5のダンセルとセンチでオーバーレイ、現れろ、甲虫装機エクサスタッグ!」

 

 渦の中登りあがるは銀に黒のラインの入ったクワガタムシ型の甲冑だ。

 白銀に青の甲冑のそれはエクサビートルのように即座に動かず突っ立ったままだ。

 

「エクサスタッグの効果発動、オーバーレイユニットを使い、お前の墓地の牙王を装備する!」

 

 宙を浮く玉が吸い込まれるとガシャンガシャンと音を立て動き始める。

 内部を露出させるように外装が展開し裕の墓地より牙王が引き吊り出され飲み込まれた。

 牙王を内部へと収納したエクサスタッグはカメラアイを輝かせ動き出した。

 

「さらにゼクトキャリバーを装備!」

 

 空中に投げられた剣を掴みエクサスタッグは滑らかに移動する。

 

「エクサダックでトリシューラを攻撃だ!」

 

甲虫装機エクサダック ATK3150 VS 氷結界の龍トリシューラATK2700 

 

 エクサビートルのように背中のブースターを蒸かし手に持った剣で切りかかるエクスダック、翼の一部を斬り飛ばされるも致命傷を避けたトリシューラは空中に氷山を作り叩きつけるもそれを切り捨てたエクサダックは飛び上がると剣を一振りトリシューラを両断した。

 

破壊→氷結界の龍トリシューラ

裕LP2450→2000

 

「これでリバイブルの効果も使えない、墓地で使えるカードはレベル・スティーラーのみだ、私はこれでターンエンド!」

 

最上場    ダイガスタ・エメラル DEF800

LP4000   甲虫装機エクサスタッグ ATK3150

手札0    甲虫装機の魔剣ゼクトキャリバー

 

裕場     

LP2000      

手札1     

 

 破壊しても破壊しても繰り返される虫の進軍、ひたすらに繰り返される黒いカード達の殴打がそこにはある。

 ドローソースをほとんど使わず罠カードを僅かに使い、ただカードシリーズとしての性能だけで場を覆していくその姿に観客も解説の片桐プロさえ言葉を失う。

 これは本当に自分たちの知っている決闘なのだろうか、否、これはもはや暴力と呼ぶにはまだ生ぬるい。

 蹂躙や殲滅と言ってもまだ弱いと感じるほどの相手を叩き潰すことのみを至高とする暴力装置がそこにある。

 動けば狙われるかのように皆が動きを止め固唾を飲んで見守る中、絶望的ともいえるこの状況でも狂人の様に裕は笑う。

 

―――空元気でも良い、デッキを信じるだけだ。クェーサー、力を貸せ! こいつをぶっ倒さないといけないんだ!

 

「俺のターン、ドロー! ジャンク・シンクロンを召喚、墓地のアンノウン・シンクロンを特殊召喚、そしておろかな埋葬でデッキからボルト・ヘッジホッグを墓地に送る、そしてボルト・ヘッジホッグの効果で自身を特殊召喚する」

 

 低いレベルのモンスターが場に並ぶ。それはシンクロン系の得意とする連続シンクロだ。そしてその中核たるモンスターが今度こそ出現する。

 

「レベル2のボルト・ヘッジホッグにレベル3のジャンク・シンクロンをチューニング、レベル5、TGハイパーライブラリアン!」

 

 最上の伏せ、手札はなく妨害はあるはずない。そしてシンクロ召喚ができたことに喜ぶべきなのだが裕の表情は優れない、エクストラデッキとを見ては考え込み、

 

「…………くぅ、ライブラリアンのレベルを下げてレベル・スティーラーを特殊召喚、レベル1のレベル・スティーラーにレベル1のアンノウン・シンクロンをチューニング、レベル2、焔紫竜ピュラリス」

 

 シンクロチューナーのフォーミュラ・シンクロンが1枚しか入れられないため、裕は2枚目のフォーミュラ・シンクロンとしてシンクロチューナーであるピュラリスを入れた。

 そのカード効果はほとんど意味を成さないが、この状況ではチューナーという事だけで十分だ。

 

「ハイパーライブラリアンの効果でドロー! ⋯⋯死者蘇生を発動、墓地からクイック・シンクロンを特殊召喚、更にクイック・シンクロンのレベルを1つ下げてレベル・スティーラーを特殊召喚、レベル1のレベル・スティーラーにレベル2の焔紫竜ピュラリスをチューニング、レベル3、霞鳥クラウソラス! ライブラリアンの効果でドローしクラウソラスの効果発動、エクサスダックの効果を無効にし攻撃力を0にする」

 

 巨鳥のはなった羽に内部のエネルギー源との接続がとぎれたのか首を前に倒し手に持っていた剣を落としクワガタ甲冑は動かなくなった。

 

「まだ終わらない! レベル3のクラウソラスにレベル4となったクイック・シンクロンをチューニング、レベル7、ジャンク・バーサーカー! ライブラリアンの効果でドロー、くっ、レベルが足りない……!」

 

 エクストラデッキと手札を交互に何度も見て考える。

 裕のシンクロンデッキのエクストラデッキはしカツカツである。

 あのカードがあれば逆転できるのに、と裕は自分の選択を悔むも現状は打開できない。

 この場でジャンク・アーチャーやニトロ・ウォリアーを出せればそれだけで勝っていただろうが、そう自分を罵倒しつつ、悩んだ末に裕はダメージを与える事に専念する。

 

「バトル、バーサーカーでエクサスダックを攻撃!」

 

ジャンク・バーサーカー ATK2700 VS 甲虫装機エクサスダック ATK0

破壊→甲虫装機エクサスダック

最上LP4000→1300

 

「ゼクトキャリバーが破壊された事により墓地からダンセルを回収する」

 

 最上は怒りに燃える瞳で優を睨み付け、冷静に声を飛ばす。

 最上より叩きつけられる害意に裕は膝を折りかけるも、

 

―――もうあんな負け方はしたくない、ここまで力添えをしてくれたデッキの為に諦めない!

 

 必死で声を振り絞り、腹の底から恐怖を吐き出そうと叫ぶ。

 

「ハイパーライブラリアンでダイガスタ・エメラルを攻撃する!」

 

TGハイパーライブラリアン ATK2400 VS ダイガスタ・エメラル DEF800

破壊ダイガスタ・エメラル

 

「メイン2、……バーサーカーのレベルを下げてレベル・スティーラーを特殊召喚、して、カードを伏せてターンエンドだ」

 

 仕留められなかった事を悔やむように、肩を落とし表情は暗く裕は溜息をつき、手札にある最後のカードに願いを託し、ターン終了宣言をした。

 

裕場      TGハイパーライブラリアン ATK2400 (LV4)

LP2000   ジャンク・バーサーカー ATK2700 (LV6)    

手札1     レベル・スティーラー DEF0

       伏せ1

 

最上場      

LP1300   

手札1        

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