SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
ブラボー!
ブラボー!!
ブラボー!!!
素晴らしい! 素晴らしい劇を見せてもらった!!
これがレヴュー!
これがスタァライト!
これがレヴュースタァライト!!
まさに最高の舞台だ!!
何の落ち度もない! 何の恨み辛みも無い最上級の娯楽だ!!
こんな物語を見れたことを誇りに思う!!
ブラボー!
ブラボー!!
ブラボー!!!
最高の終わりをありがとう!!!
ブラボー!
ブラボー!!
ブラボー!!!
(鳴り止まぬ拍手)
(喝采)
(ざわめき)
(遠く離れていく舞台)
(幕が降りる)
(無音)
カラカラコロコロ……。
カラカラコロコロ……。
幕が降りた舞台、観客席から響く不気味な笑い声。
サラサラユラユラ……。
サラサラユラユラ……。
一つの舞台が終わり、二度と開くことのない巨大な壁を見ている一人の人間。
もう終わりか! つまらぬ!
もっと我に見せてくれないのか! この素晴らしい観劇を!
アンコールは終わった。カーテンコールは終わった。再上演も終わった。その先の舞台も終わった。では、その先は?
終わりだと。まだ終わってはないじゃないか!
舞台がある限り、人間がいる限り、その劇は再び開かれるのだ!
もっと見たい! 死ぬまで見たい! すぐに次の劇を始めよ!
脚本家がいない? なら私がなってやろう!
この舞台の続き、いやその舞台が終わる直前から始まる新たな物語を!
奪われ、傷つき、悩み苦しみ、自らの人生を犠牲にしてでもキラメキを共有したい少女たちの物語を書いてしまおう!
例え、それが彼女達の本意でなかったとしても、客の本意でなくても、舞台の本質ではなかったとしても、私が見たい舞台のために!
さぁ、台本は出来上がった! 練習もなしのぶっつけ本番だ!
ブザーを鳴らせ! 幕を開ろ! 神々しく灯りをたけ! オーケストラよ轟け!
我はストーリーテラー! この物語を形作る物!
我はデウス・エクス・マキナ! 物語をいつでも終わりにすることのできる者!
さぁ、歌え! 踊れ! 声が枯れてもなお台詞を吐き続けろ!
疲れ、血を吐き這いつくばろうとも我の思いを世界中に伝えろ!
泣きつかれても! 手を血で染めても終えてはならぬ!
身も心も朽ち果てるまで演じ続けろ!
そう、これは私のための舞台。
私にしか見えない舞台。
誰も知らない舞台。
この舞台は、私だけの物だ!!
(ブザー)
(幕の開く音)
「あッ……」
不確かな幻想の世界。そこと別れを告げた少女の顔は、先ほどまで突っ伏していた机の上からパッと持ち上げられる。操り人形に命が宿ったかのようだ。
夢、だったのだろうか。少女
一体、自分はどんな夢を見ていたんだろう。気になって仕方がない。
「どうしたの、華恋ちゃん?」
「え?」
話しかけてきたのはクラスメイトでありルームメイトでもある少女、そして親友の一人である
華恋は、なんでもない心配させてごめんと謝った。
「そう……あ、そうだ華恋ちゃん」
「え?」
「クラスの掲示板に張り紙がされてるんだって」
「張り紙?」
「そう、次の
「!」
まひるのこの言葉に、寝ぼけ眼であった華恋の目は一気に冴え渡る。
「それじゃもしかして……」
「そうだよ。私たちのスタァライトの、クレールとフローラの配役も発表されたって」
スタァライト、それは彼女達の青春。彼女達が今ここにいる存在理由。そう言っても申し分のない舞台。
二人の少女の出会い、そして別れを記した物語。
その劇の主要人物の配役が発表されたのだ。
その聖翔祭の記念すべき第100回目、その舞台がスタァライトと呼ばれる物語。
いや違う。彼女達がスタァライトを演じるのは今回が初めてではない。1年前、彼女達が1年の時にも同じくスタァライトを演じてみせた。そして2年目も、最終学年である3年生でも同じ演目を彼女達はやる予定だ。これは、3年間同じ演目を見せることによって、去年よりもより研磨された舞台を観客に見せて、1年間の成長をわかりやすく示すためでもある。
そして今回、彼女達にとって二回目のスタァライト。再演たるスタァライトには、華恋を含めた数名の少女達にとっては一年前以上に感慨深い劇となる。華恋の目の色が変わったのも無理はない。
「ごめん! 先に行ってるねまひるちゃん!」
こうしちゃいられない。華恋は、すぐさま教室を飛び出して校舎前にある掲示板を見に行く。
ある種清々しいまでに予想通りのこうどうをとってくれる。自分の友達は。だが、彼女がいても立ってもいられなくなる理由を彼女は知っている。
ゆめだったからだ。約束だったからだ。『彼女』と一緒にスタァライトをすると言うことが。そのために彼女は精一杯の努力を重ねてきたのだから。
まひるは、ゆっくりと教室のドアを閉めると、俯き、つぶやく。
「やっぱり、覚えていないんだね……華恋ちゃん……」
俯いている少女は、しかし顔を上げると、ドアを開けて友達のあとを追う。けど、その顔は笑顔だった。
華恋が掲示板にたどり着いた頃、辺りは奇妙な雰囲気で騒然となっていた。
「えぇ、嘘ぉ……」
「次も『あの二人』だと思ってたのに……」
「どうして?」
掲示板の前に集まっていたのは、華恋とおなじくこの聖翔音楽学園の生徒である少女達だ。しかしなにか様子がおかしい。
理由は極めて簡単だ。配役が考えていた人物とは違うからだ
前回の聖翔祭にて、華恋たち第99期生がスタァライトを上演した際、主役たる二人の少女を演じたのは2年A組の主席であり、両親ともにスタァであり、その経歴に負けることなく精進する少女天堂真矢と次席でありかつて天才子役とも呼ばれた西條クロディーヌの二人。この二人が99期生の中でも実力は折り紙付きであり、この二人以上の存在など存在しない。それが少女達の共通認識だった。しかし、今回は違っていた。
「あッ……」
その時、一人の女生徒が華恋の姿を見つけた。思わず出たその声が後ろにいる少女にも伝わり、もう一人の少女も華恋の顔を見る。そして、その少女の驚きが後ろの少女にも波及し、そう言うふうに徐々に徐々に再前方にいる生徒にまで広がっていき、ついに全員が後ろにいた華恋の顔を見た。
まるで、旧約聖書に出てくるモーゼの起こした奇跡のように、集団は二つの方向に分かれていく。最初からそうすることが決められていたかのように、彼女が現れればそうするようにと命じられていたかのように、そしてついに彼女の道が出来上がった。
「……」
愛城華恋は、女生徒達が作り上げてくれた花道をゆっくりと歩き出す。
今日、この日が来るまでに多くの出来事があった。
長かった、長かったオーディションの日々。
だけど、思い返せばわずか2週間の間だけの話。
でも、『親友』と約束してからはもっと長い。
約束は、自分の燃料として、原動力として一緒にいてくれて、目標となって。その目標のために、その目標を思い出して、自分は今日まで頑張ることができた。
あの子と、スタァライトをする。いつか、きっと。
傷ついて、悩んで、苦しい思いもして、悲しい思いもして、喧嘩もして、戦って、勝って負けて、でも色々なことを教わった。色々なものをもらったあのオーディションがあったから、自分はここまで成長することができた。
周りにいる少女達は、不思議だった。なぜ、この学年の中で最も役にふさわしいといえるあの二人が主役の座を彼女に渡したのかと。けどその不思議もすぐに消えることになる。
キレイだ。自分たちが作った花道を歩く少女、愛城華恋はスポットライトの光を一心に受けているかのように光輝いている。
昨日まではそうは見えなかった。しかし、今の彼女はこれまでの彼女とは違うと、そう断言できる。それほどまでに変わっていた。
進化していた。そう表現する生徒もいる。
彼女なら大丈夫。彼女達なら大丈夫だ。自分たちのスタァライトは成功する。まだ、劇の一部も見ていないはずなのに、そこまで断言した生徒もいたという。それほどまでに、彼女はキラメイていた。
そして、愛城華恋は見た。掲示板に出されていた名前を。
「ッ!」
フローラ役
愛城華恋
そして、その上には……。
その時、もう一人の少女が場に登壇する。後ろの少女達の声を聞いた華恋は、その声に同じく後ろを向く。そこにいたのは……。
神楽ひかり
「ひかりちゃん!」
「うん……」
女神のような微笑みを浮かべる神楽ひかり。ついに、華恋の夢が、約束が叶えられる。その幕開けであった。
「華恋ちゃん、やっぱり覚えてないんだ」
「神楽さんは、どうなのかしら?」
「アイツの表情じゃ、何もわかんねえだろ」
「うちは、喜んでいるように見えるで、神楽はん」
「と、言うことは……」
「Mais pourquoi seulement deux personnes(でも、どうして二人だけ……)」
学校内にある庭園。そこに集まっているのは華恋やひかりのようにある特別なオーディションに参加した7人である。中には、露崎まひるや、先ほど名前をあげた天堂真矢と、西條クロディーヌの姿も見える。
だが、その顔はどこか暗いように見える。
彼女達には大きな秘密がある。それも、誰に行っても信じてもらえないような秘密が。愛城華恋と、神楽ひかりもその秘密に関わっていた。だが、彼女達7人は、二人の少女達以上の秘密を、不本意ながらも抱え込んでしまった。この秘密、打ち明けるべきであるか。
別段、打ち明けたとしても実はあまり問題のない秘密だ。いや、むしろ彼女達は知らなければならないことである。けど、もし打ち明けたのなら、今年度の聖翔祭に影響を与えるということは必死だ。
言うべきか、言わざるべきか。
だが、彼女達の悩みとは裏腹に、友は喜んでいる。約束を叶えられると、夢を叶えることができると。今は、それでいいのかもしれない。あれこれ考えるのはその後にして、今は喜ぼう。今という時を。受け入れよう、また別の舞台を。そして探そう、自分たちが歩むはずだった未来を。
いかがでしたでしょうか? この舞台の始まりは?
誰もが見たかった訳では無い新たなる舞台の幕開けは?
一流でも無い、二流でも無い、ましてや三流でも無い、なんでもないヒトの書いた台本は?
台本は、まだまだ未完成。舞台とリアルタイムでつらつらと重なっていく文字の羅列。
だが、この舞台に、レヴューにも名前はあります。
そう、何のことはない。これは、ここにあるすべての舞台に使われている名称。
他人の妄想を自分の妄想とし、その妄想の素晴らしさを他者に伝えるために汚泥の中を進む物。
いつ終わるか分からない。終わらせられるのか分からない。
身勝手な妄想によって崩される人生。そして、それを楽しむ者たち。
ただの人間を偽の神と仕立て上げ、人々を操り、身勝手なセリフを言わせる愚者の狂乱。
欲望に塗れ、もがき苦しみさせ、それでも笑ってその姿を見ている愚劣な遊戯。
《
それは、舞台にあこがれ、舞台に生きることを選んだ女の子の総称。
けど、もう一つの意味が存在する。
普通の喜び、女の子の楽しみ、全てを焼き尽くして遥かなる高みを目指す少女たち。
それも舞台少女。
高みのために普通の女の子たちのように遊ぶことは許されない。普通の女の子のように恋愛にかまけている暇なんてない。
それらすべての時間を舞台のために生きる少女たち。
それが、舞台少女。
そんな舞台少女の中でも極限られたメンバーのみが参加できるオーディションがあった。
そのオーディションの中で行われた秘密の公演。《レヴュー》。
ともに切磋琢磨し、高みを目指してきた仲間たちと争い、歌って、踊って、トップスタァの座を奪い合う。それが、レヴュー。
これは、そんなレヴューを経験した少女たちが手にしたある奇跡の物語。
決して、続くはずのなかったもう一つのレヴューの話。
二次創作のレヴュー、開演です。
この作品の扱いについて悩みに悩んだ挙句、こんなこんな感じになりました。本当は3年生に進級してもらう予定だったのだけれども……。
この小説、本編と外伝を……(希望する方を選んでください)
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一つの小説でやってもらいたい
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本編と外伝を分けて投稿してもらいたい