SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
クエストの攻略に乗り出したエイミーは、いくらかの回復アイテムを購入した後、村から出た。
討伐モンスターがいるのは、いくつかの草原を超えた先にあるダンジョン。確か〈戻らずの森〉という名前があったような気がする。多分、名前の由来はおばあちゃんが話してくれたように、入った人間はモンスターに襲われて帰ってこないことから来ているのだと思う。
果たして、そんなところに行って自分は大丈夫なのだろうか。と、エイミーは改めて、彼女は自分の装備品を確認する。
武器は、片手剣の〈救済の剣〉。スモールソードやブロンズソードよりも強い剣で、はじまりの街のクエストで手に入れた武器だ。
防具に関しては、初期のころから何も変えていない通常の装備品を使用している。いや、その上に〈毛皮の外套〉という名称のアイテムを羽織っているから、防御力に関してはちょっとだけ上がっている。といっても、その差は雀の涙程度。
靴は初期の茶色いブーツをそのまま着用。こんな自分で、本当に大丈夫なのだろうかと心配になるエイミーだが、おばあちゃんのためだとスゥ、と息を吐き、一つ目の草原を突破、その先にあるもう一つの草原を超えれば、自分が目的地としているダンジョンだ。
因みに、剣に関してだが、エイミーはドワーフのような外見のNPCの鍛冶屋のところに持って行って、取りあえず≪鋭さ≫と≪正確さ≫を一つずつ挙げている。
この世界では、鍛冶屋という場所に持っていけば、素材アイテムと引き換えにして武器を強化してくれ、その項目は≪鋭さ≫≪速さ≫≪正確さ≫≪重さ≫≪丈夫さ≫の五種類があった。攻撃力や防御力といった単純な物でなかったことに悩まされたエイミーは、とりあえずということで上記したような二つの項目を強化したのだ。
それで本当に攻撃力が上がったかどうかに関しては、あまり実感がわかないが、とりあえず数字の上では強くなったそうで、とりあえずは満足していた。
やっぱり、指南してくれる人が一人もいないこの世界で頑張るのは大変なことだ。考えてみると、現実世界の自分はいつも父や母、そして友達に助けてもらってばかりだった。どんな時でも、誰かが傍にいてくれて、助けてくれて、それに甘えていたのかもしれない。
でも、そんな自分からはもう卒業しなければならない。
変わらなければ、自分は。この世界で、強くならないといけないのだ。それが、この世界に閉じ込められたことによる恩恵であると、胸を張ってごまかすことができるように。
「ついた……」
草原のモンスターを何体か倒したのち、彼女はついにその〈戻らずの森〉に付いた。
不気味な森だということが、ありありと伝わってくるその外側。
まだ昼間だというのに、中は光が届いていないかのように真っ暗闇。わずかばかりの光を求めて木がその枝をクモの糸につかまりたいと願う罪人の手のように伸びている姿が何やら不気味だ。
そのうち、ざわざわという葉と葉がこすれあう音と同時に、中からモンスターらしき存在の鳴き声までも聞こえてきた。その中のいくつかは、彼女の知らないモンスターの鳴き声だった。
「……」
自分の知らないモンスターが中にいる。その恐ろしさを知らないエイミーではなかった。しかし、それでも使命感という物が彼女を後押しした。先ほどまでは意味も持っていなかったであろう森のざわめきも、自分に来い、来いと手招きをしているかのようにも聞こえている。
はっきり言うと、怖い。怖くて、今にも逃げ出したい。
でも、すすまなくちゃならない。だって、前に歩かなければ、絶対に未来なんてものにたどり着かないのだから。
おばあちゃんの思い出の指輪を取り戻さなければ。
「よし……」
エイミーは。勇気をもって足を一歩、踏み出した。
「……」
その姿を見てる人物がいることも知らずに。
いつだって、冒険者を喰らってきた魔物。それは、好奇心。
好奇心によって、人は簡単にその命を落としてしまう、とても卑劣な罠。深海の明るさも、道に空いた小さな洞穴も、突然光りだした本棚だって好奇心旺盛なモノを見入るための罠の中に入るのかもしれない。
確かに、その罠の中にはその人物を新しい不思議な冒険に足を踏み入れさせるための効果があるのかもしれない。けど、その多くはその人物の命を奪うことを目的とした、罠、罠、罠。
果たして、彼女が足を踏み入れたその好奇心は、一体どちらであったのか。そして、その答えを出すことのできる人間は、果たして存在するのだろうか。
答えは、勿論。
誰にも、分からない。
「ッ! やぁぁぁ!!」
エイミーは、モンスターリトルネペントと会敵していた。
この森に入ってどれくらいの時間がたったのだろうか。一体、どれだけのモンスターを倒してきたことか。今が昼なのか、夜なのかもわからないくらいに戦いを続けていた。
だが、それでも彼女のHPバーがまだ緑色の安全圏内であるということは、いくつもある不安要素のうちの一つが取り除かれたということであるのだから、いいことであるのかもしれない。
なお、HPが安全圏内であるということは、彼女がこの場所に到達するまでただの一度も攻撃を受けていないということとイコールというわけではなかった。
彼女は、この場所に来るまでの間、アイテムストレージの中に入っている回復アイテムのポーションを次々と使用していたのだ。だから、決して安全に来れたわけじゃない。むしろ、何度も危険な数値、赤色の危険域にまで達したことがあった。
死ぬのが怖くないわけじゃない。でも、それでも彼女は戦いを続けていた。まるで、そうしなければ死んでしまうマグロのように、彼女は戦わなければならなかったのかもしれない。
「ハァァァァ!!!」
エイミーの最後の攻撃、片手剣のソードスキル【バーチカル】がリトルネペントの巨大な唇にヒットした。
その瞬間、リトルネペントは自分の身体を攻撃しようと振り上げていたムチを頭上で静止させ、その動きを永遠に止める。
そして、次の瞬間には青色のポリゴン片になって消滅。この世界で、もう何度も見た光景だ。最初は少しだけかわいそうに思えてきたその光景も、何度も何度も見ているうちに見慣れてくるという物。
「……」
エイミーは、目の前に現れた入手したコルなどを示すウィンドウを一瞥すると、少しだけ悲しげな眼でリトルネペントが立っていた場所を見ると、足早にそこから去る。罪悪感か、それとも、先ほどのようにリトルネペントが何かアイテムを落としていないのかを気にしたのか、彼女自身もわからなかった。
前者であってもらいたい、そう願いながら、彼女は進む。
全く、この世界にいると罪悪感という物が薄れてしまわないか心配だ。先ほども言ったように、自分はもう何度もモンスターを倒して、何度もその光景を見ているうちに、その死について何も思わなくなってきているよう気がした。
本当は、こんなことはしたくない、虫もあまり殺したことがなかったような人間だったというのに、生き物を殺すことに徐々にためらいを無くしてきている。
わかっている。この世界のモンスターは本当は生きていないのだと、そもそも倒さなければ自分が殺されてしまうのだと、それが嫌なら、最初から冒険になんて出なければいいのだと。
自分がとても大きな矛盾を孕みながら生きているということは、分かりきっているのだ。
でも、その矛盾を抱えながらでも戦わなければならない。それが、彼女が冒険に出た時に決めたこと。だから、彼女は戦うのだ。自分の決意に、嘘をつきたくないから。
果たして、自分が人間的に成長しているのか、それとも殺人鬼として成長しているのかと疑問に思いながら、ついに彼女はたどり着いた。
「え?」
とても大きなフィールドに。
まるで、木々がその場所にだけ根を下ろすのを忘れてしまったかのようにただっびろく広場のようになっているスペース。自然界においてこのような場所があったら、不自然極まりないような空間が彼女の前に広がっていた。
間違いない。ここに何かがでるのだ。彼女は、SAOをプレイする中で覚えたゲームのあるあるに当てはめるように考えた。
HPは、直前に回復したから大丈夫。ポーションも、まだ三つくらい残っている。〈救済の剣〉の耐久値も、たぶん大丈夫だろう。
そう、大丈夫。自分は、大丈夫。自分で自分を鼓舞しなければならなかったほどに怖い。でも、それでもやらなければ。少女は、一歩、その広場に足を踏み入れた。
刹那。
『シャァァァァァァ!!!!』
「ッ!」
森の奥から聞こえてきた何かの叫び声。
それと同時に、地響きのような音が近づいてくる。木々を無慈悲になぎ倒す音も。いや、でも近づいてい来るその姿から察するに、もしかしたら木々の方から避けているのかもしれない。そう思わすほどの圧倒感。
徐々にあらわになるそのシルエットは、先ほどまで戦っていたリトルネペントに似た物だ。でも、大きさが違う。もしかして、リトルネペントの上位種と呼ばれているラージネペントという物なのか。自分は遭遇したことがないが、ただ大きいというだけで言うのならばそうなのかもしれない。
けど、違っていた。
「え?」
ついに、モンスターが彼女の前に完全にその姿を現した。色も、そして名前も分かる。
姿は、やはりリトルネペントに似たような物。違うところと言ったら、リトルネペントは頭頂部に双葉を乗っけていたのだが、そのモンスターは頭頂部に、毒々しい色合いの花を持っていたということ。というか、全体的な色合いがそもそも毒々しい≪黒≫色である。なんだか、見ているだけでも毒に侵されてしまいそうな見た目だ。
それに、ムチも、二本じゃなく六本も持っている。もしも、そのムチが先ほどのリトルネペントのように自分を攻撃してきたのなら、逃げるのはそうとう苦労しそうだ。
そして、彼女が驚愕したのはその名前。
「〈グランネペント〉?」
〈グランネペント〉。ラージじゃない。リトルでももちろんない。グラン。まさか、ラージネペントのさらに上位種であるというのか。
いや、それだけじゃない。彼女が驚愕したのがただそれだけだったら生易しいものだ。彼女を一番驚かせたもの、それは―――。
「嘘……」
モンスターを指し示すカーソルの色が、クエストのターゲットであるという事を指し示す黄色い縁取りをほどこした、黒にほど近い赤いカーソルだったからだ。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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ヴァルキリーズfeatボーイ
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プロジェクトSAO
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アルティメットカオス
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無への逃走
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肯定あるいは否定
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フィクションスターズ
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい