SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ 第二章 4話

 勝負は―――。

 一瞬ッ―――。

 

「はぁぁぁぁあ!!!!」

『キシャァァァァァ!!!!』

「今だ!」

「え?」

 

 目を閉じ、全てを諦めていた彼女の耳に、〈グラン・ネペント〉の叫び声にも似た奇声が聞こえてきた。

 エイミーは、二度と開けるはずがなかった目を開くと、そこには、自慢のツルを切断されて苦しんでいるモンスターの姿、そしてそれと同時に感じたのは浮遊感だ。

 助かったのか、自分は。何が何だかわからないけれど、とりあえず助かった。

 いや、まだだ。たとえツルから逃れたとしてもこの高さ。粘着効果で身動きが取れず、着地もできない以上地面に激突した時のダメージでHPが減らされる恐れがある。大体自分の身長の五倍ほどあっただろうか。そんな高さから落とされて、一体どれほどのダメージが与えられることになるのかわからないがしかし、少なくとも今の自分にとってはどのようなダメージであったとしても致命傷になる。

 一体、どうすればいい。そう考えていたエイミーだったが、そんな心配は杞憂に終わった。

 

「ッ!!」

 

 誰かが、彼女の身体を受け止めてくれたのだ。それも、二人一緒に、である。

 一人は黒髪で、とても整った女優のような顔立ちの女性プレイヤー。

 もう一人も女性で、さらにどことなく自分に似た髪色、そして髪型をしているのが分かる。

 

「あ、あの……」

「話は後だ!」

「え?」

 

 と、その時。後方から五人程度のプレイヤーが駆け寄ってきた。そして、自分と、それから二人の女性プレイヤーを守るかのように〈グラン・ネペント〉の前に立つと、それぞれの武器を構える。

 そして、今まで気がつかなかった。〈グラン・ネペント〉の目の前には、二人の男性プレイヤーがいた。しかし、モンスターは、そんな彼に目もくれずに残った一本のツタを自分に伸ばそうとする。

 

「タゲはまだこの子にあるみたいだね……」

「えぇ、私たちが殿を務めます」

「その間に、姉ちゃんたちはこのフィールドから出て!」

「私たちも、しばらく戦ったらすぐに向かいます!」

「お願い! 行きましょう」

「えぇ」

 

 守ってくれている。本当に、比喩でもなんでもなく、自分のことを。

 でも、どうして。自分は、彼女たちに見覚えなんてない。多分、一度も話したことなんてないと思う。そんな人たちが、どうして自分のことを助けてくれるのか。いや、それ以前にどうやって彼女たちはエイミーを助けることができたのか。

 分からないままに、〈グラン・ネペント〉の出現したフィールドから脱出し、ダンジョン内部に点在している安全地帯にまで後退した彼女たち。安全地帯とは、ダンジョンの中でモンスターの出現が一切ないエリアのことだ。その場所にいれば、たとえどれだけ周囲をモンスターが徘徊しようとも、まるで見えていないかのようにモンスターはプレイヤーを攻撃してこない。

 そこまで、まだレベルも低いため筋力の強化が不十分なプレイヤーが、同じプレイヤーを運ぶのは、相当な苦労と根気が必要だったはず。どうしてそこまでして、自分を助けようと思ったのか。エイミーはそれも知りたかった。

 回復アイテムのポーションを使い、とりあえず危険域のHPを脱したエイミーに、黒髪の女性は聞く。

 

「なんであんな危険なことをしたの?」

「え?」

「あのモンスターは、カーソルを見てもソロプレイで戦うような相手じゃない。複数人のプレイヤーが協力することによってはじめて倒せるかもしれない。そんなモンスターだったわ」

「……」

「なぜ?」

「……」

 

 一時の無言。後、エイミーは申し訳なさそうに言った。

 

「こんな私でも、何かできることがあったら嬉しいなって、そう思ったんです」

「……」

 

 返事は、帰ってこなかった。

 そして、続けざまにエイミーは語る。クエストのこと、おばあちゃんの事、指輪とモンスターの関係、そして、自分が戦おうとしたわけも含めて。

 

「いくら何でも無茶よ、そんなこと」

 

 というのは、もう一人の自分と同じピンク髪の女性の話だ。女性は、さらにあきれながらも言う。

 

「第一、いくらかわいそうだったからってNPCのために命かけるなんて……そんなの命がいくらあっても足りないわよ」

「そうかも……知れないですね」

 

 言われて初めて気がつく、わけじゃない。改めて思った。自分は、一体どれほど危険を冒していたのかと。死がすぐにゲームオーバーにつながるこの世界において、一番やってはならないこと、それが過信、そして同情。

 自分にならできるはずと過信をしすぎて罠があるかもしれない部屋に意気揚々と入っていって、あっけなくその命を散らすことになるかもしれない。

 誰かがかわいそうだからと、そう考えて行動して、その結果最悪な未来があるかもしれない。

 自分は、そんな二つのことを考えていないかった。だから、こんなことになってしまったのだ。

 

「私って、本当に、バカですよね……」

 

 電子の空間に、消え入るようなつぶやきが放たれた瞬間だった。目の前にいた、黒髪の女性プレイヤーが言う。

 

「本当に……あなたは、愚か者よ」

「え?」

 

 女性は、少女はそういうと手に持った短剣をエイミーに向けて言った。

 

「ただ約束を守りたかったから、それも相手は意識のないNPC……どうかしてるわ」

 

 先ほどのピンク髪の女性から言われた言葉を要約したような言葉。でも、何故だろうか彼女よりも迫力のある言葉だ。武器を向けられているからだろうか。いや、違う。彼女本体自身がそう言った覇気を放っているのだ。

 声色、表情、そしてしぐさに至るまで、自分に恐ろしさを植え付けるような一挙手一投足に、エイミーは、何も言葉が出なかった。

 

「誰かの為、誰かの為、誰かの為、約束の為、確かにそれは時には大切なのかもしれない。自分を奮い立たせるのかもしれない。でも、その約束の矛先を間違えた。そんな中途半端な覚悟しかできないのなら、貴方はこのゲームを攻略するに値しないわ」

「中途、半端……」

 

 自分の、この決意は中途半端だったのだろうか。家族や、友達にまた会いたいから、自分以外の誰かも、みんな怖いはずなのに、それでも前に向かって歩き出しているから。だから、自分だって一歩を踏み出せるはず。そんな決意をもって歩き出した自分の、覚悟が、中途半端だというのか。

 

「そ」

 

 そんなことはない。そう言おうとした彼女の言葉は、しかし、たったの一文字で遮られてしまった。

 

「そんなことはない、あなたはそういうのかもしれないわ。でも、あなたのその中途半端な覚悟が、実際に今何人ものプレイヤーを危機に陥らせているのよ」

「……え?」

 

 それは、どういうことなのだろうか。自分は、この世界に来てからという物、ほとんど人には会わずに過ごしてきたし、この決断だって自分一人で勝手に決めたこと、そしてクエストだってたった一人で挑んで、別に誰かに迷惑をかけているわけじゃないような気もする。

 いや、実際に迷惑をかけていたのだ。彼女の自覚がないだけで。そのこと自体が、彼女の覚悟が中途半端だったという事の何よりの証拠であった。

 

「それって、もしかして≪冬樹≫や≪サーヴァント≫さんたちのことを言ってるの?」

 

 桃髪の少女の言葉。その名前、もしかして先ほど自分のことを助けてくれたプレイヤーの事なのだろうか。

 刹那、ハッという言葉が表情から読み取れるようにエイミーの顔つきが変わった。

 そう、忘れていた、いや気が付いていなかった。自分は、自分のことを助けてくれたプレイヤーのことを失念していたのだ。

 

「そう。あなたを逃がすために、殿として残ったプレイヤーたち……でも、その全員が無事に帰ってくるとは限らない。何か一つ間違えれば、誰かがそこでゲームオーバーになることだってある。あなたが中途半端な覚悟でクエストに臨んだ結果、死ぬかもしれない命がある」

「……」

 

 現実を突きつけられた。思ってもみなかったこと、いやあの場で思わなければならなかったことだったのに、自分は自分の命惜しさにそのことをすっかりと忘れていた。いや、命が惜しい者があんな危険なクエストに挑むはずがない。やっぱり、自分が中途半端だっただけだ。

 中途半端な決意で、中途半端にかかわって、結果、自分のことを助けてくれたであろう何名ものプレイヤーの命を危険にさらしてしまった。

 

「思いもよらなかったって顔しているわね……そんな、大切なことも頭によぎらないのなら、あなたはこの先……大勢の命を殺すことになる」

「ッ!」

「今のうちに、手を引くことね」

 

 ただ、それだけを言うと黒髪の女性は短剣を引っ込めて安全エリアから離れて行った。

 残されたのは、失望感に押しつぶされそうになっているエイミーと、それから女性の迫力に言葉も出なかった桃髪の女性だけ。

 

「びっくりした……あの人とは私も初対面だけど、あんなこと言うのね……」

「あ、あの……」

「……あぁ、謝らなくていいからね」

「え?」

 

 どうして、分かったのだろう。自分が、彼女たちに謝罪をしたい、その考えが。雰囲気だろうか。自分が醸し出している果てしないほどの罪悪感のオーラが、彼女にそう察せるほどの力を持っていたのだろうか。ある意味で、先ほどまでいた女性とは正反対のオーラではあるが。

 

「私たちがあなたを助けたのは、私たちがそうしたかったから。別に、私は巻き込まれたとか考えてないから。冬樹たちもね」

「……」

 

 そういうと、女性は満面の笑みを自分に向けると言った。

 

「大丈夫。みんなすぐに帰ってくるから。信じて待ちましょう」

「……」

 

 強い人、とはこういう人なのかもしれない。仲間たちが無事に帰ってきてくれるという事を、信じて待つことができる。それは、とても強固な心の持ち主でなければできないことだ。

 対して、自分は弱い。家族や友達がもしかしたら待ちつかれて、自分の帰る場所がなくなるかもしれない。そんな恐怖心に押しつぶされて、背中を押されてしまって覚悟もちゃんと定まっていないうちに旅に出て。

 本当に、このまま旅を、ゲーム攻略のための旅を続けていてもいいのだろうか。そんな、不安、疑心が頭によぎるなか、女性は言う。

 

「あ、そうだ。自己紹介がまだだったっけ……私は≪サマー≫。よろしく」

「私はま……じゃなくて、エイミーです……」

 

 それから、サマーの仲間のプレイヤーが全員、安全エリアにたどり着くまでの間、色々と話をしていた二人。でも、そのほとんどがあまり頭に入ってこなかった。

 これから先の不安、そして自分自身の方針を考えるのに必死で、それどころじゃなかった。

 このゲームは最悪だ。内外問わずして、いつどのタイミングでもその関係者に絶望を与えうるのだから。

 果たして、その絶望に押しつぶされてしまうのか、それとも絶望もはねのけて前に進み続けるのか、それは当事者であったとしても、すぐには決めることのできないパンドラの箱のようなものであったのだった。




プレイヤー№ 69 ???(サマー【SUMMER】)≪原作:???≫

 因みに途中で出てきた黒髪のプレイヤーはほむらではありません。念の為に。
 性格的にも行動的にも色々と似てるかもしれませんが。別の人です。次回、エイミーを助けてくれたサマー以外の八人のプレイヤーについての情報が出てきます。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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