SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ 第二章 6話

「戻ってきた、はじまりの街……」

 

 この世界に降り立ってから初めてとなる誰かと過ごす夜が終わった次の日の午前。エイミーは一週間ぶりにはじまりの街に足を踏み入れた。

 たった一週間しか経っていないので当たり前ではあるが、雰囲気にあまり変わりはない。

 あるとしたら、行きかう人が若干減ったくらいで、外見に差異は見当たらないはずだ。西洋風の、外国に来たかのように錯覚できるその街に、そもそも日付の経過とともに外見が変わるという設定があるのかは不明であるが。

 それにしても、何故今更彼女がはじまりの街に戻ってきたのかと、不思議に思う者もいるかもしれない。

 もしかすると、恐怖に逃げたのかもしれない。〈グラン・ネペント〉との戦いで心を折られて、攻略からリタイアしてしまったのか。いや、違う。まだ彼女の心は折れてはいなかった。と、言うよりも折れるという物を知らなかった。

 一度や二度の失敗で挫けていたら、この先攻略なんてできっこない。そう、彼女は出発するときにサマーたちに語っていたという。

 これを、彼女の心が強いのであると論ずることができるのか、それともまだこのデスゲームのことを真に理解していないのだと鼻で笑うことができるかは、人それぞれである。しかし、少なくともまだ次があるのだと考えている時点で、彼女はまだこのデスゲームの世界に順応できていないのだと思う。

 そう、それこそ昨晩、ナイトが言ったようなたった一度のチャンス。ソレをはき違えているようにも。

 ともかく、だ。彼女はリタイアをしたわけではないのは確実。では、何故彼女はいきなりこの町に戻ってくることになったのか。彼女と≪一緒に来た面々≫は口々に言う。

 

「いやぁ、この街も久しぶりだなぁ!」

「確かに。僕も来るのはサービス開始の次の日以来かな?」

「えっと、それでエイミーちゃん? この町のどこかに、剣のクエストの起点になるNPCがいるんだっけ?」

「はい、そうなんです」

「そんなの、気が付かなかったわ……」

 

 キッド、ハワード、サーヴァント、サマーの四人だ。今回エイミーがはじまりの街に戻ることになったきっかけ、それは〈グラン・ネペント〉との戦闘によって破壊されてしまった片手剣使い専用の武器の〈救済の剣〉を再入手のためだったのである。

 その日の早朝、エイミーはおっかなびっくりに目を開けた。もしも、目を開けた時に自分が一人ぼっちだったらどうしようとか、もしも自分の寝相が悪くて安全エリアから出てしまってて、モンスターに囲まれてたらどうしようとか、そんなことを考えながら。

 特に前者。もともと自分と彼女たちは、仲間でもなんでもない一時的なパーティーを組んでいた。いや、そもそもパーティー申請もしていないし彼女たちと一緒に戦ったわけでもないので、どこをどう見繕っても赤の他人同士だった。だから、もう昨晩のうちにどこか別のエリアに行っているという可能性も無きにしも非ずだなと、そう考えていたのだ。

 でも、当然のことであるがそんな考え杞憂に終わる。彼女の身体は、ちゃんと安全エリアの中にあったし両隣にはサマーやサーヴァントが寝袋にくるまって眠っていた。サマーの向こう側には、スノーとラフルールの姿もある。それに、少しだけ離れたところにはキッド、クリプティッド、そしてハワードの男性プレイヤー三人の姿も。

 ナイトは、一人すでに寝袋から出て椅子に座り、辺りを警戒していた。何かを警戒しているかのようだ。

 どうやら、彼、彼女たちは自分が眠りについた後、男女で別れて寝ていたらしい。一応、キッドやナイトがやましいことをするような人間には見えないし、この世界でそんなことができるのかはわからない。それに、誰が言い出したのかも定かではないのだが、少なくとも女性陣が安心して眠れる環境を作ってくれたことは確かだ。

 それから間もなく、全員が目を覚ますと朝食を口にし、今後の方針について話し合った。

 その中でも急務であったのは自分、エイミーの武器について。昨晩の戦いで主要武器を破壊された自分が持っているのは初期武器のスモールソードのみ。たとえ武器強化を施したとしても、モンスターと戦っていくにはあまりにも頼りなさすぎる。

 だから、エイミーははじまりの街に帰って、もう一度〈救済の剣〉を入手するためのクエストに挑もうと考えたのだ。

 だが先も言ったが、スモールソード一つだけをもってモンスターがはびこっている森の中、そしてはじまりの街まで続くフィールドを超えるのはあまりにも危険すぎる。

 そこで、はじまりの街にたどり着くまでの間、護衛としてつくことになったのが、キッドら四人なのだ。

 別にそこまでしてもらわなくても大丈夫だと、一度は躊躇したのだが、知り合った縁なのだからと、喜んでついて来てくれた。その間他の四人のプレイヤーは、近くのフィールドにてモンスターを狩ったり、武器の修復などのメンテナンスを行うとのことだ。

 どうして、こんなに自分に優しくしてくれるのか。こんな、足手まといの自分を、仲間でもない自分を心配してくれるのかと、ある意味で戸惑いの表情を見せたエイミーは、はじまりの街に入って早々彼らに言った。

 

「ここまででいいです。後は私が何とかしますから」

 

 と。〈救済の剣〉入手のクエストは、ゲーム素人の自分でもクリアできるくらいの難易度の優しいクエストだ。これ以上彼らの時間を使うわけにもいかないし、護衛はもうここまでで十分すぎるほどだ。後は自分で何とかする。いや、しなければならない。一人でもできることができない人間が、ゲームを攻略することなんて、できないのだから。

 そう思ったエイミーだったのだが。

 

「いやいや、乗り掛かった舟だし。僕たちもそのクエストに協力するよ」

「え?」

「そのクエストって、一人じゃないとダメなクエストなの?」

「いえ、そういうわけじゃないですけど……」

 

 〈救済の剣〉入手のクエスト。それは、いたってシンプル。はじまりの街の外のフィールドで手に入れることのできる≪あるアイテム≫を入手すると言うもの。確か、その時の説明文には、ソロプレイ限定のミッションであるという明記はなかった。

 この世界に来てから、彼女はクエストには二つの種類があるという事を知っていた。それが、ソロプレイ限定のクエストと、そしてパーティーでのクエスト攻略が許されているクエストの両極端の種類。

 ソロプレイ限定のクエスト、というのはその名前の通り、誰の手も借りずにたった一人でクエスト攻略に挑まなければならないという、いざという時には助けてもらえない危険な種類のクエスト。

 その逆で、パーティー申請さえしていれば、複数人での攻略を許されるクエストという物もある。その場合、クエストを受注したプレイヤー以外がクエストの標的モンスターを、例えばフレンジー・ボアを十体倒せ、というものだとすると、受注した人間以外でフレンジー・ボアを十体倒したとしてもクエストは成功という事で、剣はクエスト受注者が手に入れるという事になる。

 確かにパーティーを組んで挑めば、一人の時よりも早くにクエストを攻略することができるのかもしれない。でも、それは同時に彼らの攻略に支障をきたす危険性がある。という言葉とも同じ意味合いを持ってくるのだが。

 

「なら、決まりだな。一緒にクエストをクリアしに行こう!」

「でも……いいんですか? ゲームの攻略に戻らなくて……」

「いいのいいの。一緒に寝た仲じゃない、そんな小さなことなんて気にしないの」

「はぁ……」

 

 小さい、のだろうか。エイミーはよくわからなかった。

 デスゲームが始まってからという物、自分は時間に追われ続けていた。はやく攻略しなければ、はやく現実に戻らなければと、ずっと焦らされている気持ちがしてならなくて。でも、彼女たちはそんな焦りを小さなことだと笑ってごまかして。

 一体どっちが正しいのだろう。他人にかまけて、攻略をおろそかにする彼女たちと、攻略に戻るためにと、クエストを受けようとする自分と、どっちが。

 

「あれ?」

「え?」

 

 町の中を歩いていた五人。クエストを受注できるNPCがいるのは、彼女たちが入ったはじまりの街の入口から真逆の位置に存在している。そのため、町の大通りを突っ切っていたのだが、その時キッドが裏通りの方に走っていった三人のプレイヤーの姿を見たそうだ。

 そのうち、二人は男性プレイヤー、一人は女性プレイヤーだったのだが、彼が見たところ、女性プレイヤーは男性プレイヤー二人に追いかけれていたような気がするらしい。

 

「どういうこと?」

「まさか、追剥!?」

「ゲームの世界で?」

「あ、そっか……」

 

 ハワードは、冷静にサマーの勘違いを訂正する。確かに、現実の世界であったのならばこの状況的には女性が追剥や白昼強盗の被害にあっていると考えるのが普通だろう。しかし、忘れてはならないのがこの世界がゲームの中の世界であるという事。

 窃盗も殺人も、安全圏内である街中ではできないはずなのだ。階層を上がっていったり、またスキルいかんによっては違うのかもしれないが、少なくともゲーム開始からわずか二週間足らずでそこまで荒れた人間が現れるとは思えない。

 で、あるのならば。キッドが見た三人組は何だったのだろう。ただ悪ふざけで追いかけあっているのか。いや、それはない。キッドが見た時、明らかに女性プレイヤーは必至の形相で逃げていた。悪ふざけや遊びであそこまでの顔を作る人間は見たことがない。

 逆に男性プレイヤーは、まるでどこかの世紀末にいそうな形相、獲物を追うハンターのような顔つきだった。たとえ犯罪行為でなかったにしろ、女性プレイヤーが何らかのトラブルに巻き込まれているというのは確実であろう。

 

「俺、ちょっと助けに行ってくる!」

「え? ちょ……」

「また?」

 

 キッドは、制止する三人の言葉に目もくれず、急いで路地裏の方へと消えて言ったプレイヤーたちを追っていった。

 まぁ、先も言った通りこの安全圏内の中では殺人行為は行えないため、デュエルなんてものをしない限りはHPも減らずゲームオーバーになることもないから、安心といえば安心だ。

 でも、昨晩のエイミーの件もそうだが、本当になんでもかんでも首を突っ込みたがる人間である。もしも現実でもこんな感じだったのならば、彼の親友であるナイトがげんなりするのも分かるような気がしてならない。確かに、あのお人よし加減はNPCのために命を懸けようとしていたエイミーとどっこいどっこいか。

 そう思って、彼女に話を振ろうとしたサーヴァントは気が付いた。

 

「ってあれ、エイミーは?」

「え?」

 

 彼女の姿が、消えてしまっていたという事を。これは、単純に彼女たちのミステイク。思いもよらなかったのだろう。先ほど、ハワードがサマーの言葉を訂正した際、気を逸らしている間に彼女が誰にも気が付かれないうちに動いていたなど。分かるはずがなかった。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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