SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
その日の私は不幸だった。そう言わざるを得ない。けど、何故だろうか、あまり悲壮感は感じない。多分、二週間前のあの出来事が原因だと思う。
突然宣告されたデスゲームの開催。そしてゲームの中に閉じ込められるという考えもしていなかった出来事。
今までたくさん苦労はしてきたけど、でも今回のそれは今までの苦労をはるかに凌駕するほどの苦労を通り越した、悲劇。そう、彼女は感じていた。
彼女は、イギリスからの留学生だった。半年ほど前、父親の病気の完治を見届けた後、自分の未来について考えた時に、少しでも道を広げてみたい。そう考えた時、選択肢として入ったのが、日本への留学の話だった。
何故日本だったのかは、今となっては詳しくは言わない。ただ、自分の恩人の一人の故郷であり、その人はその国で今でも戦っている。だから、その国を選んだ。ただ、それだけなのだ。
そんな自分が巻き込まれたデスゲーム。彼女に与えられたのは二つの道だった。当然、それは大多数のプレイヤーと同じ。死の危険性があったとしても、ゲーム攻略のために時分自身を強くしていくか、それとも、最初の町であるこのはじまりの街の中で羽化を待つサナギのようにゲームがクリアされるその日までじっと待っているのか。
しかし、彼女は二週間がたった今になっても答えが出せず、はじまりの街の中にいた。それでも、少しはコルも必要だし、レベルを上げとかなければならないという使命感から、はじまりの街周辺のフィールドで時折レベリングを行っていたわけだが、この街の周辺は、他のゲームで言うところのスライム程度の弱い敵しか出ないフィールド。
彼女のレベルは二から上に上がることなく、今日この日を迎えた。
そして、あの出会いを経験したのである。
「ねぇねぇ、彼女。俺たちと一緒にパーティーを組まない?」
「え、あの……」
突然、二人組の男性プレイヤーに話しかけられた彼女。なんだか、その二人がどこか自分の知っている二人組の小悪党に似ているように思えるのだが、他人の空似であろう。
どうやら、彼らは自分のことを仲間に引き入れたいと考えているようだが、どうして自分なんかに、そう思った彼女は、徐々に徐々に後ずさりをする。
だが、その内壁にまで追い立てられてしまい、囲まれてしまった。
「どうせ一人なんでしょ? だったら、パーティーを組んだ方が効率良いって」
と、男の一人が耳に付くような甲高い声で言う。
違う。そう、女性は思った。確かに、パーティーを組めば、相方が倒した敵のコルや経験値も自分は受け取ることができるから、レベリングやお金稼ぎのためには効率が言えるのかもしれない。
だが、この男。目の前にいる男性プレイヤーたちはそんな効率を重視しているようには思えない。むしろ、何だろう。
自分というシンボルを目当てにしている。そんな顔つきだ。なんとなく、女性はそう思った。
このSAO、知っての通り世のゲーマーが死ぬ気で入手するのに勤しんだゲームだ。そして、今こそ女性のゲーマーというのは物珍しいものではなくなってきているのだが、しかし遠目から見れば、まだまだ男性のゲーマーが多いという事には変わらない。
そのためなのか、必然的にこのゲームのプレイヤー、その性別比率は、男性九に対して、女性は一、と言われている。
ようは、このゲームのプレイヤーは全体でおよそ一万人であるため、その中での女性のプレイヤーは千人程度であるという試算だ。
これを、千人≪しか≫いない、ととらえるのかそれとも千人≪も≫いるのか捉えるのは人次第だが、その千人の女性プレイヤーの中でも、いわゆる綺麗どころを探すのはかなり難しい、とだけは言っておく。
無論、プロジェクトSAOのアイドル達、他大多数は知らないことだがプリキュアやらスーパー戦隊のメンバーやらといった綺麗どころがわんさかいるところから女性がプレイしているという例もあるのだが、そういうのは基本例外。
そのため、こうして歩いているときに綺麗な顔立ちの女性に出会うというのは、ある種でレアアイテムをモンスターからドロップするのよりも難しい。特に、一人きりでいる女性は、である。
つまり、彼らが自分たちのパーティーに綺麗な女の子がいるという優越感と、ソレを周りに見せつけるという虚栄心が目当てだったのだ。
そんなところまで頭の回らなかった女性は、しかしこのままついて行ったらろくなことにはならないと直感で感じ取った。
「すみません! 他をあたってください!」
「うおッ!」
女性は、二人組の間にあった隙間から逃げ出した。
「ちっ、追うぞスミシー」
「おう、アラン!」
男性プレイヤー二人もまた、すぐ女性を追いかける。もはや礼節や世間体も度外視だ。
今彼女がいる場所は、大通りとはいえ昼間はほとんどプレイヤーが通らないような閑散とした場所。いるのは、露店で武器やアイテムを撃っているようなNPCのみ。
当然、NPCが自分たちに与えられた仕事を放棄してでも、プレイヤーを助けるようにプログラミングされているわけがない。だから、目の前にいるとはいえ、そのNPCたちを当てにすることなんてできない。
はやく人がいる大通りに出なければ。いや、背後をちらっと見たところ、二人は自分よりも速いように思える。おそらく、俊敏力を中心に上げているのか。
このままでは、人のいるところに出る前につかまってしまう。そう考えた彼女は、作戦を変更した。
「ッ!」
裏通りを使うのである。薄暗い通りに入った彼女を追って、男二人もまた一瞬だけ足を止めて曲がっていった。
この広大な町。当然その内部は広く複雑。大通りはまだしも、裏通りにまでくればもはや迷路と見間違うほどの広さを持っているため一度二度通っただけじゃ覚え切る事はできない。
そんな立体的な迷路の中を細かく移動していれば、必ず追っ手を撒けるはず。そう考えた彼女の行動だった。キッドたちが目撃したのは、この時の光景だったのだ。
何十回と道を曲がったことか、もう数えていない。そして、自分が町の中のどこにいるのかも、もはやわからない。ふっ、と後ろを振り返ってみた彼女は、その先に追っ手だった二人組の男がいないことを確認する。どうやら撒くことができたようだ。女性は、徐々にスピードを落としていき、ついにその動きを止めた。
その瞬間だった。
「ようやく止まったか」
「あっ!」
進行方向。つまり、自分が止まらかったら突き進んでいたであろう方向から、男性プレイヤーの姿が現れた。それは、先ほど自分のことを追っていたプレイヤーである。
先回りしていたのか。でも、迷路みたいなこの裏通りをどうやって。何にしても、早く逃げなければ。女性は、今来た道を逆走しようとした。が、無駄なこと。
「おっと、逃がさないぜ!」
「ッ!」
もう一人の、自分の事を追っていたプレイヤーが彼女の背後を取った。挟み撃ちにされてしまった。
失礼ではある物の、こういった作戦を立ててくる相手には思えなかったため、これは誤算だったと言えよう。
しかしおかしい。この裏通りは先ほども言った通り迷路のように入り組んでいる。それなのに、どうして相手は先回りできたのだろうか。不思議そうに考えていたその時、先回りしてた方の男が言った。
「へへ、悪いな。俺は元βテスターなんでな。この裏通りのことも把握済みよ」
「βテスター……」
何たる不運であろうか。女性は、自らのハードラックを恨まずにはいられなかった。まさか、先行でプレイする権利を渡された者に追われていたなんて。だが、他の者よりも早くゲームをプレイしていたのであれば、ここまで入り組んだ道を先回りすることなんて余裕なのだろうか。
それにしても、である。βテスターとしての優位性があるというのに、それに加えて綺麗な婦女子を自分たちの仲間にしてそれを誇りたいと思う彼らの気持ちが、全く持って理解できない。自分たちの腕に自信がないのか、それとも、ただ単に支配欲求にのまれてしまったのか。おそらく、どちらものはず。
何にしても、そんな人間たちと一緒にこれから先ゲームを攻略していくなんて、死んでもごめんだ。そう、女性は考えていた。
だが、どうすればいい。この状況で、どうすれば逃げ出すことができるというのだ。
このゲームでは、街中で他のプレイヤーを押して動かすという事が基本的にはできないように設定されている。これを、ネットゲームでは≪ブロック≫というらしい。いや、今は囲まれている状況であるのだから、どちらかというと≪ボックス≫、なのだろうか。どちらにしても、現在進行形で他のプレイヤーに囲まれているというこの状況では逃げ道が限られてしまう。相手二人は徐々に徐々に自分に迫ってきて、さらに囲い込もうとしてくるし、その前に逃げ出せたとしても先ほどのように回り込まれてしまえば、再び動けなくなる。そんなことを繰り返して、果たして自分の精神が持つかどうか。
こんな卑劣な男たちに屈するのだけはいやだ。何かないのか、なにか。あの時のような≪魔法≫であったとしてもかまわない。でも、同じくあの時のよう≪誰かを傷つけない≫魔法であってほしい。そんな矛盾した願いを心の中で祈った。
その時だった。
「ひどいことはやめてください!」
「あ?」
「え?」
その声を発したのは、彼女のことを追いかけていたキッド、ではなかった。桃色の髪を持つ女性プレイヤー、エイミーである。
そう、実はキッドが少女のことを追いかけようとした瞬間、サマーやハワードが話をしているその時、エイミーはもう彼女の後を追っていたのだ。
彼女自身、どうしてそんな行動をとったのか分からなかった。ただ、心の動かすままに動いていたら、いつの間にか彼女のことを追っていたのだ。
そして、何とか彼女と、彼女を追っていた男性プレイヤーに追いついたエイミー。そのカーソルを見て、相手がNPCではないことを確認した瞬間、彼女に飛来したのはこの状況をどう解決するべきなのかという戸惑いと、首を突っ込んだという後悔。
勝手に首を突っ込んでしまった者の、実際には一体どんなことが起こっているのか全く理解できていないのだ。だから、どちらが悪いとか、どんな事情があるかなんてわからない。この状況で、自分に何ができるのか、彼女は全く理解できないでいた。
「エイミーちゃん離れて!」
昨日のように、身の丈に合わない行動をしたことに後悔をしていた彼女の背後から、また一人の男性が現れた。
「こんのぉ!!」
キッド、である。キッドは、片手剣の一つである≪ブロンズ・ソード≫を取り出すと、ソードスキルを発動させずに男性プレイヤーに切りかかった。しかし、無常にも攻撃は男性プレイヤーには届かない。
「うおッ!」
紫色の膜のようなものがキッドの目の前に出現し、小さな火花のようなものが彼の前で散った。
すると、攻撃を仕掛けたはずのキッドの方がのけぞり、尻餅をついてしまう。
「ハハハ! バカじゃねぇのか! デュエルを申し込まなくちゃ圏内でどれだけ攻撃しても無駄なんだよ!」
そうなのだ。言わずも名がこのはじまりの街はアンチクリミナルコード有効圏内。プレイヤーが他のプレイヤーを襲うことなんて絶対にできないのである。
「キッドさん!」
「くっそぉ……」
吹き飛ばされ、地面を転がったキッドに近づいたエイミー。キッドは、立ち上がるとすぐさま彼女を守るように前に出ると、家の敷地内で飼われている凶暴なトイプードルのように言った。
「お前ら、寄ってたかって女の子を追いかけるなんてくだらないこと、さっさとやめろ!」
「ハッ! お前だって女の子をパーティーメンバーに入れて、俺たちみたいに男同士でつるんでいる奴らを見返したいだけなんじゃないのか?」
「そんなんじゃない! 俺はただ、この子や、その子のことを守りたいだけだ! お前たちみたいな、卑怯者からな!」
「なんだと?」
おそらく、ナイトがこの場にいるのならば、珍しく声を荒らげる物だと思うのかもしれない。確かに、少しだけ乱暴な言葉だったかもと、キッドは考えている。しかし、人間はちょっとやそっとの挑発にすぐに乗る生き物である。それを彼は身をもって知っていた。
やっぱりそうだ。キッドへと二人の意識が向いた。次の瞬間だった。
「いまだ! こっちに来て!」
「ッ! は、はい!」
キッドの言葉の真意をすぐに理解した少女は、彼の誘いに乗って囲い込みを甘くした二人の男性プレイヤーの間からスルリと抜け出し、キッドとエイミーの方に走りこむ。
「あ、おい!」
男性プレイヤーたちは手を伸ばしてそれを止めようとするがもはや後の祭り。少女はあっさりと包囲網を突破して二人の背後に逃げ込んだ。
これで作戦は成功。が、ここからが問題である。
「てめぇ、舐めた真似してくれたじゃねぇか……」
果たして挑発され激高した二人組から逃げることができるだろうか。
それに、少女はともかくとして自分とエイミーの俊敏力には差があり、彼女の方が若干遅い。走力に差がある二人ないし三人が一緒に逃げたとして、無事に逃げ切れる保証はない。
「お前ら、こんな時にプレイヤー同士で争っている場合じゃないだろ!」
「そ、そうです! 今は、みんなで協力してSAOを攻略しないと……」
「その協力を拒んでいるのはお前らじゃないのか!」
だめだ、なんとか説得してみようと試みた物の、怒り心頭の二人組には一切話が通じない。こうなれば、自分一人がおとりになって。
そう、彼が考えていたその時だった。
「おばあちゃんが言ってた」
「え?」
その。どこまでも透き通るような声が、聞こえて来たのは。
プレイヤー№ 78 椎野大吾(アラン【Alan】)≪原作菜那和玖実オリジナルキャラ≫
プレイヤー№ 79 七重翔(スミシー【smithy】)≪原作菜那和玖実オリジナルキャラ≫
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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肯定あるいは否定
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい