SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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 万全の状態、と言うわけじゃありませんが、とりあえず出来上がった分を。


メインシナリオ 第二章 第10話

 二人がぶつかりあった瞬間、何が起こっていたのか。

 それは、決闘(デュエル)開始時まで遡らなければならない。

 

「しゃぁ! うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 キッドは、いつも自分が行っている掛け声で気合を入れた。これは、彼が戦いに出る際にいつもやっている物で、所謂ルーティンという物だ。

 剣を構えながらアランに向け駆け出し、片手剣のソードスキル、≪スラント≫の発動モーションを取る。

 だがここで彼は大きなミスをしてしまっていた。

 スキルが、発動しなかったのだ。

 おそらく、腕の静止が甘く、システムが認識しなかったのだろう。

 キッドはそれに気が付いていなかった。しかし、直接対峙しているアランは冷静にそのミスを分析し、胸の中でほくそ笑んでいた。

 初撃決着モードというのは、いわゆる“ジャンケンと同じものである”というのはアランの持論である。

 相手のソードスキルがどのような軌道を描くものなのか。

 上からか、下からか、それとも斜めの攻撃なのか。

 そして、その攻撃をいかにしていなすのか。それが勝利への鍵となる。そんな彼なりの理があった。

 故に、ジャンケンで後出しが圧倒的に有利である様に、ソードスキルもまた同じく、カウンターを仕掛けた方がより勝率が高いと考えていた。

 それは、初撃結着モードのルールの一つに要因がある。

 すなわち、“最初の攻撃を外したら半減決着モードに移行する”である。

 このルールがあるために、攻撃を外した者は敵のHPを半分にするために攻撃を続けなければならない。

 対して、“攻撃すらしていない者”は、ゆっくり、冷静に、そして着実に相手にソードスキルを当てればいいだけ。

 どちらの方が精神的な余裕があるのか、勿論後者であるのは、一目瞭然だろう。

 自分のHPが減ることもお構いなしに攻撃を仕掛けることすらも可能なのだから。

 加えて、ソードスキルを発動させたのちの硬直時間もある。他のプレイヤーの横槍が入らない決闘(デュエル)においては、逃す手は無い絶好の隙。

 これらの理由から、アランは最初から様子見しようと考えていたのだ。

 予想外だったのは、キッドが考えなしに突撃してくること。

 さらに言えば、ソードスキルすらも発動しないような攻撃なんてもってのほかだ。

 こんな攻撃、避ける価値もない。アランは、キッドの模擬的なスラントの軌跡を剣で防いだ。

 その瞬間だった。

 甲高い、鉄パイプを切断した時のような音が、周囲に鳴り響いた。

 

「うわっ! 折れたぁ!?」

 

 キッドの持っていた片手剣。それが根元から文字通り綺麗さっぱりと折れてしまったのである。

 その音を、アランはおそらく自分の勝利の鐘の音にも幻聴したのかもしれない。

 SAOにおいては、武器のような消耗品は使えば使うほど徐々にその耐久値が落ちていく。

 それを修繕しないままにしておくと、その内折れてしまい、使い物にならなくなってしまうのだ。

 そのため、一度フィールドやダンジョンを攻略した後は、町の中にいる鍛冶屋というジョブの人間のところにまでもっていって修繕してもらい、その耐久値を回復してもらう。

 しかし、キッドはそのことをうっかり忘れてしまっていたのだ。

 その結果がこれである。

 

「やばっ……」

 

 キッドは、手に残った剣の柄を見ながら息を吐くようにつぶやいた。

 剣はもう修繕不可能と思えるくらいに壊れてしまっている。が、それはまだいい。

 問題は現在進行形で行われているこの決闘(デュエル)だ。

 

「フッ! 剣が折れちまったんじゃ、もう勝負は決したも同じだな!」

 

 と、アランは大層嬉しそうに話す。

 無理もない。決闘(デュエル)の途中の武器の消失は命取り。

 キッドは無防備になった時点で負けがほぼ確定的になってしまっているのだ。

 いや、まだ勝機はある。

 

「ちょ、ちょっと待てって! 今新しい武器出すから!」

 

 実のところ、キッドはアイテムストレージの中にまだ片手剣を残していた。それを急いで取り出せば、まだ戦闘の続行は可能なのだ。

 しかし、そんなこと目の前の元βテスターが許してくれるわけもなかった。

 

「バカめ、そんな悠長なことさせられるか!」

「うぉっと!」

 

 アランは、ソードスキルを発動“させていない”斬撃を縦に放った。

 キッドは、紙一重で後ろにのけぞることによって避ける。

 しかし、まだ攻撃は終わらない。今度は、刃を地面と水平にしての横切りだ。

 キッドは、大慌てしながらもかがむと、そのままアランの脇を転がって、彼の背後に出る。

 キッドは、座ったままで右手を上から下にスライドさせ、メニューウインドウを出現させた。しかし。

 

「言ったはずだぜ? そんなことはさせないってな!」

「うわっ、あぶねぇ……」

 

 アランは振り向きながらも攻撃を仕掛けてきた。その攻撃自体は何とか避けられた。

 しかし静止状態でないとメニューウインドウが開けない仕様により、ウインドウは閉じてしまい、結局武器を取り出すことはできなかった。

 さすがに相手の方がこのSAOという物を知り尽くしている。おそらく、ソードスキルを発動させないのも、勝利よりもまず自分にメニューウインドウを出現させないためなのだろう。

 初撃決着モードの“初撃”。この言葉には様々な解釈があると思うが、厳密には“最初のソードスキルを伴った攻撃”という解釈になっている。

 精神的にキッドが疲れ、メニューウインドウを出す気力も無くなったところでソードスキルを当てる。アランの戦法はそのためにあるのだ。

 こうしてアランがスキルを使用しない剣閃を続けている限り、キッドに勝ち筋は生まれない。

 何とかしないと。キッドはしかし、考えるよりも先に体が動くタイプの人間であるため、効果的な対処法を見出せないでいた。

 

「キッドさん……」

「お願い、がんばって……」

 

 一方で、キッドの戦いを傍からでしか見ることのできないベーゼラとエイミー。

 ただ、祈ることでしか彼を応援することができない歯痒さと共に、エイミーは鎮痛な面持ちで俯いていた。

 なぜ、こうして見ていることしかできないのだ。この場所で、ベーゼラを守るためにいち早く動いた自分が、どうして蚊帳の外に置かれているのだ。

 本当だったら、自分が戦わないといけないのに。最初に手を出した人間として、責任を果たさなければならないのに。

 彼女は自問自答を始めた。だが、例え彼女がどのような決意をしていたとしても、結局は戦うことはできなかっただろう。

 なぜなら、彼女は今まともな武器を持っていないから。今ある武器は、最初期に使っていて、ソレほど扱いに慣れていないスモール・ソードのみ。

 扱い慣れていない武器ほど怖いものはない。だからこそ、こうしてはじまりの街に戻ってきて、もう一度あの〈救済の剣〉を入手するためのクエストに挑みにきたのに。

 結局、自分がしたことはキッドに自分が食らった痛みを、愛用の武器を失うと言う痛みを与えただけ。

 もし己がベーゼラのことを追わなかったら、こんなことにはならなかったかもしれないのに。

 そんな、自身の心を傷つけるような思いを、心の中で吐露した時だった。

 

「キッド! 残り二十秒!」

「え?」

「え、にじゅ、うぉ!」

 

 キッドは、その声に耳を傾けた結果、一瞬だけ反応が遅れた。

 しかし、運よくアランの攻撃は自分から外れており、ギリギリで避けることに成功していたようだ。

 

「フラウさん?」

「これだけで分かってもらえればいいんだけど……」

 

 と、フラウが心配そうに呟いた。

 おそらく、キッドになにかを伝えようとしていたと思われる。しかし、あまり話しすぎると決闘相手であるアランが勘付く恐れがあった。

 “二十秒”。だから彼女は、ただそれだけを言ったのだ。

 

「なんだよ、二十秒って……」

 

 この戦いの中で、アランが自分にメニューウインドウを開かせる時間なんて毛頭与えないのは確定的。

 ならば、彼女の言った二十秒というものに勝機を見出すしかないのだが、一体どう言う意味なのだろう。

 一体、自分が今持ち合わせているアイテムで、どう対処すればいいと言うのだろう。

 今自分にあるのは、その身一つと刀身の折れた片手剣のみ、一体どうすればいい。

 そう、刀身が折れた、修繕不可能な剣。

 

「あッ! そうか!」

 

 見つけたぞ、勝機を。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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