SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
勝機を予感したキッド。確かに、この方法なら、今の危機的な状況を打開できるかもしれない。だが、本当に可能なのだろうか。
キッドの、引いてはフラウの考えた作戦は、あまりにも運に頼りすぎている。
もしタイミングが一秒でもズレれば、失敗に終わる。文字通り危険な賭け。
そんな自分の賭けにベーゼラの命運を付き合わせて良いのだろうか。キッドは、僅かな時間だが悩む。
だが、もうこれしか勝つチャンスは残されていないのだ。ならば、やるしかない。
「これで、終わりだ!!」
アランが、ソードスキルを発動する体制をとった。あれは、≪ホリゾンタル≫。
やらなければ、やられるならば。
俺は!
「はぁ!」
刹那、キッドは導かれたかのように、アランの顔めがけある物を投げつけた。
今では見るも無残な形となってしまっている片手剣の柄だ。
「最後の悪あがきか!?」
この世界には投剣というスキルがある。
だが、それはそのスキルを使用することができる武器や、石ころなどに適用されるものであって、どの武器でも自由に使えるわけじゃない。
そして、キッドが投げつけた片手剣の柄。当然スキルの発動できる武器の中には入っていない。
故に、たとえその柄を当てたとしても、ダメージを与えることはできないのだ。
アランは、その柄を剣を持っていない左手で薙ぎ払おうとした。
最後の悪あがきを一蹴しようと。
だが、柄にアランの手が触れることはなかった。
「うぉ!」
剣の柄は、アランの目の前でガラスが割れるような音とともに青白いポリゴン片となったのだ。
破壊されたオブジェクトは、設定された耐久値が切れる事でその形を失う。そしてその時間は、どの武器の破片でも一定なのだ。
そのポリゴン片自体には攻撃力の設定なんてない。故に、目の前で壊れた柄の欠片は、アランの視覚を奪うことしかできない。
だが、ソレで十分。アランはその動作をワンテンポ遅らせることになる。
「このぉぉぉぉ!!!」
「くっ! 何を!」
ポリゴン片の向こう側にいたキッドは、その青白い光を突っ切るように現れると、アランの腹部にタックルを仕掛けた。
突然のことに驚いたアランは、思わずソードスキルを発動直前で解除してしまい、その勢いに押されて後ずさりしてしまう。
感覚的に五歩ほど後退した時。
「うあああぁぁぁ! あぁっ!!」
キッドは突然離れると、アランの顔面に思い切りの力がこもった右ストレートを放った。アランは、その攻撃によって地面に倒れた。
「よっしゃぁぁぁ!!」
バックステップで後退し、肘を九十度に曲げたガッツポーズを見せるキッド。しかし、その中でもアランは冷静だった。
「はっ、≪体術≫スキルも備わっていない攻撃を当てられたところで、痛くもかゆくも……」
そう、大事なのは“剣による攻撃”。打撃を当てられたところで若干HPを削られるだけ。
そう考えた刹那、アランはたどり着いた。
キッドが選択したこの行動の先にある答えに。
「まさか、貴様!」
アランは見た。キッドが、メニューウインドウを開いている姿を。
なるほど、全てはこの瞬間のためだった。自分を倒れさせ、距離を取り、その間にメニューウインドウのアイテムを出現させる。
その時間が必要だったのだ。
最後の悪あがきだと自分は彼のことをあざ笑った。
しかし、違う。
これは、“最善の悪あがき”。最後の最後まで勝つ方法を模索した先にあった答えが、これだったのだ。
♪I'm a Soldier、I'm Fire 探し続ける明日がある♪
「やらせるかぁぁぁ!!」
アランは、キッドがメニューウインドウから片手剣を取り出すまでにキッドに近づいてソードスキルを当てなければならなくなる。
立ち上がるのが先か、それとも駆けだすのが先なのか。
もはや一刻の猶予もない。アランはキッドめがけて、スラントの発動体制を取りながら駆け寄った。
もうここからは作戦も何も関係はない。
アランは、スキルを当てるのが先決。
キッドは、素早くメニューウインドウを操作してアイテムを取り出すことが先決。
勝負の決着はすぐそこにまで来ていた。
そして、アランがソードスキルの発動体制を終えたその時であった。キッドが、アイテムストレージの中から片手剣≪スモール・ソード≫を取り出したのは。
♪I'm a Soldier、I'm Fire 燃やし続ける夢がある♪
「うおぉぉぉぉ!!!」
「はぁぁぁぁぁ!!!」
互いの雄たけびがあたり一帯に響き渡る。キッドのそれは、まるで龍の咆哮のよう。かつて、何度も、夢の中で聞いたことがあるあの脳を揺さぶるかのような音だった。
勝負は―――一瞬。
♪命のまま♪
「な……に……」
そして―――一撃。
直後、
勝者は―――。
「……しゃぁ!」
キッド。
瞬きをするくらいに一瞬での出来事。スラントを仕掛けてきたアランのすぐ脇をギリギリでよけたキッドは、そのまま背後に回る際にその身体を腰から真っ二つに切り裂いたのだ。
その攻撃が初撃に認定されたのか、それともクリティカルでHPが半分以下になったから勝利判定を受けたのか。
どちらにしてもキッドの勝利は揺るがない者、それはWINNER表示を見ても明らかだった。
「キッドさん凄い!」
「エイミーちゃん! ほれ!」
「はい!」
駆け寄ってきたエイミーとハイタッチを交わしたキッド。
「あんな絶望的な状況から、よく勝てたな……」
「でも、勝ちは勝ちだよ、ね!」
とにもかくにも、元βテスターのプレイヤーへの勝利というジャイアントキリングとでも言うべきものを成し遂げたキッド。
これにて二勝。勝負あり、だ。
「これでもう、ベーゼラちゃんには手出しさせないからな!」
「あ、アラン……」
「くそ、覚えてろよ!!」
という、なんだか子悪党のようなセリフを言い残して二人組の男性プレイヤーは立ち去って行った。
ひとまず、この裏通りで発生した小さな事件に終止符が打たれた瞬間であった。
「これで、ひとまずは安心だね」
「うん。でも、またこの子の事を襲いに来るかも……」
「あ……」
確かに、この場はしのげたのかもしれないが、ほとぼりが冷めたころになってまた彼女のことを仲間に引き入れようとしてくるかもしれない。
ベーゼラをこの先も守るためにどうすればいいか。と、彼女たちが考えていた時だ。
ベーゼラが、心苦しそうに頭を下げた。
「あの……皆さん、ありがとうございます。見ず知らずの私のために……本当は、私が戦わないといけなかったのに、皆さんに戦わせてしまって……」
彼女の言葉に、笑顔を見せる彼、そして彼女たちは言った。
「ボクたちはただ、君のことが放っておけなかったから……アイツに影響されたみたい……」
「おばあちゃんが言ってた。狭い水槽の中で飼われている魚よりも、広い大海原を泳ぐ魚の方が、一番生き生きとしているって」
「そうそう、俺は川魚よりも海の魚の方が好きだし」
「そういう話じゃないと思いますけど……」
と、天然気なキッドの言葉に苦笑いを浮かべるエイミー。
こんな感じでゆっくりと話をしたいのもやぶさかではない。しかし忘れてはいけないこともある。
「あ、キッドさん。そろそろ戻らないとサマーさんたちが……」
「あ、いけね! 忘れてたぁ!」
この時まで失念していた。元々この町には、エイミーの片手剣のクエストを受けにサマーたちとともに来ていたのだ。
ベーゼラの一件ですっかり隅に置かれてしまったが、はやく彼女達とも合流しなければならない。
「そういえば、私は無断でこっちに来てるから、メッセージも送らないと……」
「あ、そうだな!」
「他にも仲間がいるんですか?」
「あぁ、そう! そうだ。ベーゼラちゃん、よかったらしばらく一緒に行動しないか?」
「え?」
「もしかしたら、またアイツらみたいなやつが襲ってくるかもしれないし、そん時に誰かが一緒にいてくれた方が安心だろ?」
「は、はい。お願いします!」
ベーゼラも、一人で自分の身を守ることができるレベルにならなければならないと思っていた。
誰か、他の仲間がいてくれれば心強いし、レベルを上げてさっきのような手合いに囲まれても攻撃して吹き飛ばすことができるくらいまでに強くならなければ。
「なら、ボクたちも一緒に行くよ」
「え? いいんですか?」
「うん! 旅は道連れ世は情け。っていうし」
さらに、互いの情報交換もかねてシシーラとフラウの二人もまた同伴することになった。
こうして終わりを迎えた一つの騒動。が、サマーたちのもとに戻る中、一人だけ浮かない顔をする少女がいたことを、誰も知らなかった。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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ヴァルキリーズfeatボーイ
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プロジェクトSAO
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アルティメットカオス
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無への逃走
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肯定あるいは否定
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フィクションスターズ
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい